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番外編 興津川の鮎の産卵を撮影 (前編) 2011/03/09
 
番外編 興津川の鮎を捕る 前編

みなさんこんにちは! 水中写真テクニック講座担当の中野誠志です。

番外編となる今回のテクニック講座は、 今年は力を入れて行こうと思っている川での撮影へと
舞台を移して、『鮎の産卵』についての体験記をお話いたします。

鮎の産卵は、激しくも美しく、心揺さぶられる感動の体験でした。

Photo & Text by 中野誠志
 
  まえがき このページのトップへ  


みなさんこんにちは!
水中写真テクニック講座担当の中野誠志です。

番外編となる今回のテクニック講座は、
今年は力を入れて行こうと思っている川での撮影へと舞台を移して、『鮎の産卵』についての体験記を
お話いたします。

鮎は、渓流に輝く銀色の体を、産卵期には美しい婚姻色に変えて、集団で一丸となって
河口付近の水底へ産卵していきます。
婚姻色とは繁殖期になると体色が変化する独特の色合いのことです。

びっしりと群れる千を超える鮎たちが、すぐ足もとで繰り広げる命の躍動と産卵にかける鮎たちの熱気。
鮎の産卵は、激しくも美しく、心揺さぶられる感動の体験だったのでした。

今回はその熱い鮎の産卵についてお話ししていきたいと思います。


  プロローグ このページのトップへ  

私が伊豆に来て早5年が経ちましたが、静岡県清水区の「興津川(おきつがわ)の鮎の産卵がすごいらしい」ということをクリスマスの季節である12月になると毎年耳にしていました。

ところが、実際にホームページなどに掲載された写真を見てみても、マクロレンズで撮影された単体や産卵シーンのアップが多く、いまいちどれほど凄いのかイメージが湧かなかったのです。

そうこうしているうちに、撮影に行く機会がないままこれまで過ごしてきたのですが、2011年の4月から出身地である熊本へと撮影の拠点を移すことになり、「これは心残りの無いように、鮎の産卵をぜひ見ておきたい!!」ということで、現地の達人にガイドをお願いして興津川へと行ってきたのでした。

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写真A

今回の水中撮影機材

撮影機材
カメラ :Canon 5D markU
レンズ:・ TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di
      MACRO 1:1
     ・ Kenko デジタルテレプラス
      PRO300 1.4X DGX
     ・ Sigma 15mm F2.8 EX DG
      DIAGONAL FISHEYE
カメラハウジング:anthis Nexus 5DMkll
ストロボ:INON Z-240 ×2灯



  達人(ガイド) との出会い このページのトップへ  

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写真B

落ち鮎を狙う釣り人

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写真C

ダイバーズプロショップアイアン』のガイド、鉄氏

鮎の産卵を観察するにあたって、良い写真をとるためには現地での鮎の産卵場所や、産卵時期を熟知したガイドの存在は不可欠です。

それに、撮影によって落ち鮎狙いの釣り人の釣り場を荒らしてしまうトラブルを避けるためにも、ガイドの存在はとても心強いんですよね。

 

今回は、興津川にほど近い清水区三保で、この道のベテランである『ダイバーズプロショップアイアン』の鉄氏に鮎ガイドをお願いしました。

鉄氏は鮎の産卵についても毎年産卵シーズン前から興津川を調査されており、長年の経験と例年の産卵傾向や直近の天候から、当日の産卵場所を割り出すのだそうです。

まさに鮎の産卵のプロフェッショナルです。

また、御自身も写真家として活躍されており、昨年はフランスのマルセイユで開かれた 「第37回水中イメージフェスティバル」にも鮎の写真を出展されています。

 


  鮎撮影の準備 このページのトップへ  

産卵シーズンになると、鮎の産卵は毎日夕方に一斉に行われます。
今回は午前中に1回海に潜って、三保の海中を撮影してから川へと移動するスタイルです。

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写真D

鮎の産卵現場での打ち合わせ風景

打ち合わせでは、鉄さんから「鮎を追いかけまわしても撮れないし、水が濁ります。待つようなスタンスで撮影すると良いでしょう」というアドバイスを受けて撮影に挑戦しました。

この日の興津川の水温は13℃。
午前中に潜った海中が水温18℃ですから、けっこう寒いです。

さらに、鮎の産卵期となる12月は、陽が出ている日中は暖かいですが、陽が陰るととたんに寒さが際立ってきます。

もちろん13℃の水温は水着のみでは耐えられる水温ではありませんので、防寒対策をしっかりして鮎の産卵観察に挑みます。

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写真E

鮎の産卵観察用器材

鮎の産卵観察で必要なもの

  • 体が濡れないダイビング用のドライスーツ
    または6.5ミリ以上の厚手のウェットスーツ
  • 低い水温で手がかじかむのを防ぐために、
    寒冷地などでのダイビングで使用するゴム製の冬用グローブ
  • 水中マスク・スノーケルのセット


  撮影スタート このページのトップへ  

午後2時半。

興津川のポイントに到着して着替えると、まずは鮎の産卵場所のチェックです。

例年の産卵傾向、直近の雨の様子、前日までの産卵などの要素から、当日の産卵場所を捜索します。

「おっ、・・・いるいる!」


ガイドの鉄さんの案内で、釣り人を避けながら、心当たりの産卵場所を順番に見て回り、10分程で今日の産卵場所を探し当てることができました。

足元の水底にはたくさんの鮎たちがうろうろしており、燃えるようなオレンジと黒のきれいな婚姻色になっています。

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産卵前の婚姻色になった錆び鮎たち
Canon EOS 5D Mark II ストロボ:INON Z-240 ×2灯
F/11 1/30秒 ISO400  撮影地:静岡県 興津川


  鮎の産卵 このページのトップへ  

午後3時。

一斉に産卵が始まりました。

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鮎の産卵
Canon EOS 5D Mark II ストロボ:INON Z-240 ×2灯
F/9.0 1/10秒 ISO400  撮影地:静岡県 興津川

鮎の産卵は基本的にメス1匹をオス2匹が挟んで、
ほぼ100%、3匹単位で行われます。

これは、鮎の親戚の鮭の産卵が1対1で行われるのに比べても、一般的な魚たちがペア産卵か、集団で産むのに比べても、かなり特殊な産卵形態だと思います。

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3尾1組の産卵の様子
Canon EOS 5D Mark II ストロボ:INON Z-240 ×2灯
F/11 1/200秒 ISO200  撮影地:静岡県 興津川

産卵している3匹の直ぐ後ろにはそれに続く群れがおり、彼らはなんと直前に産卵された他の鮎の卵を食べてから、自分の卵を産み付けていきます。

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卵食風景
Canon EOS 5D Mark II ストロボ:INON Z-240 ×2灯
F/8.0 1/10秒 ISO400  撮影地:静岡県 興津川

これには2つの説があるそうで、1つが目前の産卵の為に栄養たっぷりの卵を食べて、自分のエネルギーに変えるためだという説。

もう1つが、将来自分の子孫が、川でより大きな縄張りを持てるようにとのことです。

縄張りが大きくなれば、鮎の餌である苔が生える岩をたくさん所持することができるため、栄養状態と発育がよくなり、体のサイズも大きくなります。

そうすることでより優位に子孫を残すことができるのでしょう。こうした卵食は、事前に将来の競争者を排除するためだと考えられているそうです。

これもまた親の愛の形なのかとも思いますが、この説が正しいのだとすると壮絶な自然界の摂理ですよね。

最初は警戒心が強くてなかなか近づく事が難しかった鮎たちですが、この頃にはもう完全に産卵に集中していて、しゃがんで撮影していればお尻の下に、腹ばいになって撮影していれば、その腹の下にまで潜りこんで産卵していきます。

産卵する際の「ビビビビ」という振動が、スーツ越しにこちらの体にも伝わってくるほどです。
鮎の強さ、逞しさをまさに肌で感じます。


  夕景の興津川 このページのトップへ  

午後5時半。
とっぷりと日が落ちた興津川。辺りはすっかり暗くなってきました。

もはやオートフォーカスではピントを合わせることが難しく、激しかった鮎たちの動きも落ち着いてきました。
どうやら今日の産卵はここまでで、休息をとるようです。

夢中になって撮影していたのであっという間に時間が経っていましたが、これで今日の撮影も終了のようです。

気が付けば、もう2時間以上冷たい川に浸かっていましたが、寒さは全然感じませんでした。
むしろ壮大な産卵風景を目にすることができたことで、心地よい高揚を感じて心はホッカホカに暖かくなっていました。

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夕方の興津川
Canon EOS 5D Mark II ストロボ:INON Z-240 ×2灯
F/10 1/60秒 ISO400  撮影地:静岡県 興津川


  撮影のポイント このページのトップへ  


鮎の産卵の撮影を終えて感じたこと。

鮎は産卵までは警戒心が強いのでなかなか近づくことができませんが、いざ産卵が始まると向こうから接近してくれます。

追いかけ回しても鮎も逃げていく一方なので、自然と一体になるように気配を消すことが大切です。そうすれば、反対に鮎の方から近づいてくれることもあるので、良い写真が撮れるでしょう。

そのため、撮影機材としては、APS-Cなら60mmマクロクラスのレンズを。
フォーサーズやフルサイズなら、35mm換算で100mm相当〜50mm程度のマクロレンズが良いでしょう。

海のように透明度が良くない川での撮影となりますので、ワイドレンズでは接写できるフィッシュアイレンズが良いでしょうが、3次元的に魚がいる海とは違い、水底に平面的に魚がいる川での撮影ですので、フルサイズでの撮影の場合はフィッシュアイレンズ単体よりも、テレコンバーターとの組み合わせでの使用をおすすめします。

また、APS-C機の場合はトキナーの10〜17のフィッシュアイズームレンズの17mm側で撮影したり、フルサイズ対応の単焦点フィッシュアイレンズを装着するのもお勧めです。
どちらもしっかり寄れば画面いっぱいに撮れるので大迫力!ですよ。

また、鮎の産卵は、海に比べて流れの速い川での撮影となりますので、流されないように気を付ける必要があります。

基本的にはフィン(足ヒレ)もつけませんから、足が付くところで足、膝や肘で踏ん張っておく必要があります。
これは長時間続くとかなり疲労してきますので、適度に伸びや休憩しながら観察・撮影するようにしましょう。

ウェットスーツ・ドライスーツ、いずれの装備にしても、良い産卵シーンを撮影するためには、体を水に充分に沈めるのが前提条件となります。

装着するウェイトの量が少なければ、体が水に浮いてしまって安定しませんから、無理のない程度に重めの量に設定して、楽に撮影できるようにすると良いでしょう。
スノーケルを利用すると、水面上に顔を上げずに済むので撮影に集中できますよ。

鮎の産卵を観察・撮影する際の注意点

鮎の産卵や孵化を撮影する際、下記の点に注意しましょう。

1:鮎が産卵した卵は、ある程度時間が経てば固くなるが、
  産卵直後はまだ柔らかいので、産卵した場所を歩き回らないようにした方が良いこと

2:産卵後、約2週間経つと稚魚の孵化が始まるが、
  孵化直前の卵も中から稚魚が出てくるために柔らかくなり始めるので、
  卵がある場所は歩き回らないようにすること

3:これら2点の鮎の卵に与えるダメージをなるべく避けるために、
  観察する際にはできるだけ鮎ガイドの進む後をついていくようにすること

次回につづく

次回は「番外編 興津川の鮎の産卵を撮影 (後編)
鮎の撮影の後日談として、珍しい鮎の孵化や、稚魚たちが必死に生き抜いている様子をお送りします。

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初出:2011/03/09
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