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第11回 デジタル放送はコピーできないの?
「コピーワンス」と「ダビング10」を理解する
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2008/04/16 |
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■ブルーレイ版がレンタルビデオ店に |
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●デジタル番組ってコピーできないの?
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東芝がHD DVDから撤退し、事実上次世代DVDがブルーレイに一本化されたことで、ブルーレイ版の映画を置くレンタルビデオ店を出てきました。
早速、消費者にとっては良い方向に向かっていますね。ネットでレンタルして、郵便ポストに返却できるツタヤDISCASでも、ブルーレイ版映画の貸し出しが既に始まり、高画質なハイビジョンで映画を楽しめるようになりました。東芝撤退の騒動がきっかけでデジタル放送やハイビジョンにも興味が出てきた、という人も多いようですが、多くのユーザが声を揃えて言うのが「デジタル放送ってコピーできないんでしょ?」という疑問。
そこで今回は、2008年4月時点での、デジタル放送とコピーやダビングについての基本道を解説します。
そもそもデジタル放送がコピーできない理由は、コピーしても画質が落ちないので、高画質のままコピーされたら、コピーされ放題、コピーしたもん勝ち、著作権者や制作者の利益を守れないよ、ということからはじまっています。もちろんハリウッドのような映画制作や配給会社からしてみれば、海賊版の横行にもつながる、というわけです。
そこで、デジタル放送は「CPRM」(Content Protection for Recordable Media)という著作権保護技術を利用して、コピーを制限することにしました。
ちなみに著作権保護にうるさい米国でも、日本のようなテレビ番組にコピーを制限するしくみは導入されていません。米国では消費者が不便になるディスクのコピー制限よりも、悪質なネット配信などを抑止することを重んじて協議されているからです。
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■「コピーワンス」の評判が悪い理由
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●デジタル番組はコピーではなくムーブで |
DVDレコーダーの内蔵HDDに録画した(デジタル放送)番組を一般の(CPRMに対応していない)DVDデ
ィスクにコピーしたり移動することはできません。(『体系的に学ぶ 次世代DVDのしくみ』日経BPソフトプレス刊より) |
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DVDレコーダーの内蔵HDDに録画した番組をCPRMに対応したDVD-R、DVD-RW、DVD-RAMディスクに
移動することはできます。(『体系的に学ぶ 次世代DVDのしくみ』日経BPソフトプレス刊より) |
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デジタル放送の録画に対応したパ
ナソニックのCPRM対応DVD-R
ディスクのパッケージ(16倍速)。
「CPRM録画対応機器専用」と書か
れていて、従来の非対応DVDレコーダーでは使用してはいけません。(『体系的に学ぶ 次世代DVDのしくみ』日経BPソフトプレス刊より) |
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デジタル放送をDVDディスクに録画や保存する場合にはCPRM対応のレコーダーとディスクを使う必要があります。更に「コピーワンス」という仕様になります。しかし、それが一般の消費者に十分PRされていないため、敷居の高いものになってしまいました。
【コピーワンスによるコピー制限】
・CPRM対応のレコーダーとディスクが必要
・コピーしたら元映像は削除する「ムーブ」仕様
・コピーされたディスクはDVD-VideoではなくDVD-VRモードになる
地デジであってもケーブルTVであってもデジタル番組であれば、現時点では原則としてすべての放送がCPRMで著作権保護された番組となっていて「コピーワンス」に制限されます。
コピーワンスというのは録画した番組や作品を1回だけ、コピーワンス対応のディスクに録画が可能、というしくみです。コピーワンスはディスクに保存したり、コピーするときの制限なので、DVDレコーダーの内蔵HDDに録画する場合は通常通りに録画ができます。
ただし、直接、記録型DVDディスクに録画したり、内蔵HDDに保存した番組をDVDディスクに移動する際には「録画やコピーはCPRM対応のディスクに限る」という制限があります。だからディスクを買うときに「CPRM対応」とか「デジタル放送録画対応」と書かれたディスクを購入する必要があります。
また、「なんだよ、コピーワンスとか言って、それじゃあムーブワンスじゃねーか。一回もコピーできねぇぞ」「それじゃあ、なにかい?コピーに失敗したら大切な録画内容はパーじゃねーか?」という賢明な読者の方もいるでしょう。
そうです。内蔵HDDに保存したデジタル放送をDVDディスクへコピーして保存することをここでは「コピー」と表現しましたが、正しくは「移動(ムーブ)」です。CPRM対応ディスクへコピーされた後、内蔵HDDに保存されている番組は消去されるしくみになっています。ムーブしたディスクがトラブッていたり、なんらかのコピー失敗が発生していたら録画した番組は失われ、あとの祭りというケースもありえます。
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●DVD-Rの互換性は地に落ちた?
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そして何より、デジタル番組はDVDビデオでは保存できないのです。
DVD-Rに録画保存する場合、規格上、2つのモードが用意されています。ひとつはDVD-Videoモード。市販の映画やアニメ作品と同じ、最も互換性の高いモードです。もうひとつはDVD-VRモード。DVDレコーダーで番組録画に利用されているモードです。
ディスクの外観は同じでも、モードによって録画された状態が異なるわけです。一般にユーザはDVD-Rに録画したら、市販の映画やアニメ作品と同じ「DVD-Video」で録画されているものと思いがちですが、コピーワンスのデジタル番組をコピーしたDVDディスクには、DVD-VRモードで録画されています。そのため、互換性が幾分低く、機器の組み合わせによっては他のポータブルDVDプレーヤーで再生ができない、昔買ったDVDレコーダーで再生できない、などのトラブルが起こることがあるのです。
すなわち、デジタル放送録画の仕様に振り回され、消費者が感じていた「DVD-R=互換性が高い」という定説はあやふやて曖昧なものになってしまったのです。
余談ですが、一般の消費者にとって、DVDビデオ(DVD-Video)は、なんだか新しめの規格に感じられますが、実際は既に古めかしいものになっています。というのも、以前にも解説しましたが、DVDビデオにはハイビジョンで録画するしくみはなく、更にコピーワンスの仕様もありません。
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■新しい録画ルール「ダビング10」 |
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●ダビング10とはなにか?
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社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が、使い勝手が悪い「コピーワンス」に代わり、デジタル放送の著作権保護と録画に関する新しいルールとして検討を進めているのが「ダビング10」(ダビングテン)です。
ダビング10では、DVDレコーダなどの内蔵HDDに録画した番組は、DVDなどの別のメディアに9回のコピーと、1回のムーブ(移動)が可能です(9回まで別のディスクにコピーすることができ、10回めはムーブ(移動)となる)。
コピー先に使用できるDVDメディアは従来通りCPRM対応ディスクで、AACSに対応している次世代DVD(BDやHD DVD)ディスクもOKです。なお、ダビング10でコピーしたディスクから、別のディスクにコピー(孫コピー)することはできません。また、NTSCケーブルなどを使用し、アナログ接続した機器にコピーする場合は回数制限等はありません。
ダビング10は、2008年の運用開始を目指して検討されていますが、すべてのデジタル放送に一律で適用されない可能性があること、ダビングして私的に編集して楽しみたいユーザーのニーズには応えられないこと、従来のダビング10に対応していないDVDレコーダを使用している場合はコピーワンスになること、など当面はユーザーを混乱させる要因になる恐れも懸念されています。
なお、市販の最新機種DVDレコーダーやブルーレイレコーダーでは、ダビング10が正式導入された際にはアップデートで対応することを発表している機種やメーカーもありますので、期にしてチェックしてみると良いでしょう。 |
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【ダビング10のルール】
ダビング10では、HDDに録画した番組を9回までディスクにコピーすることができ、10回めはムーブ(移動)
になるしくみになります。 |
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■どうなのダビング10? |
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●今よりは評価できるモノの混乱は必至
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デジタル放送を録画した映像をダビングしてディスクに保存したいというニーズを持つ消費者に罪はありません。海賊版を大量に作って販売する悪質な業者に対して有効なしくみでなければいけません。その意味では、1回ムーブというメチャクチャな制限から、9回コピーという消費者向けの仕様に大きく変わったことは評価できるでしょう。多くの消費者は使いやすくなると思います。
しかし、旧来の機器環境との互換性は損なわれます。機器によってダビング10になったり、コピーワンスになったりする環境になります。これらのPRが不足すれば「わかりにくい」「再生できない」「コピーできない」など、消費者が嫌な思いをする期間がまた延びることになるでしょう。
互換性の高い、どんなプレイヤーでも再生できる仕様、DVDビデオでデジタル放送の録画ができるようにならないことも、消費者にとってはガッカリな点だと言えるでしょう。せめて次世代DVDでは、普及する前に、このDVDビデオの失敗を繰り返さない工夫が望まれます。
>> 新コーナー「地デジ生活 2000GT」も読んでね。
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