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礒村浩一の探せ!デジカメ・ギア 第10回
 ポータブル赤道儀ケンコースカイメモ RS で
 幻想的な星景撮影にチャレンジ

Posted On 02 12月 2014
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Photo : Kazuya Seki


TOPIX

デジタルカメラを使いこなすための、あったら便利、使うと楽しい、そんなアイテム「 デジカメ・ギア 」を紹介していく礒村浩一の探せ!デジカメ・ギア。今回は魅力的な星空を撮るためにあると便利なデジ・ギア、「 ポータブル赤道儀 」を紹介します。写真家礒村浩一の星景写真を楽しみながら、ポータブル赤道儀の使いかたを学びましょう。 by 編集部

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秋も深まり、いよいよ冬を迎えるこの時期。夜空に輝く星々もだんだんと冬の様相を見せる。気温がぐっと下がる冬は気流も安定し、大気中の塵や水蒸気による光の遮りも減るため、星のゆらぎが少なくなる。寒い冬の夜空はクリアな星の撮影には最適な空となる。そこで今回はデジタルカメラでの星の撮影について考えてみよう。

星の撮影は難しいのではないかと思う人も少なくない。なかには「デジカメで星は撮れないのでは?」と聞いてくる人もいるくらいだ。確かにカメラを手持ちして星を撮影することはほぼ無理だが、最近のデジタル一眼カメラは高感度撮影も得意なのでカメラの感度を ISO1600 ~ 3200 といった高感度に設定し、カメラを三脚に据え付け 15 秒から 30 秒といった長めのシャッタースピードで撮影すれば、思いのほか簡単に星が撮影できてしまうのだ。ただし、ここで忘れてはいけないのは星は時間とともに移動するということだ。

写真1
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■ 空を移動する星を追いかけて撮影

星は時間とともにその位置が東から西へと移動する。これは日周運動と呼ばれ、正しくは地球の回転により星々が移動しているように見える現象だ。そのため、カメラを三脚に固定した状態で長時間露光を行なうと、あたかも星が東から西へと弧を書くかのように輝線として露光される。これはこれでとても美しい写真となり、風景と絡めた作品として私もよく撮影する。

写真2 三脚で固定撮影

カメラを三脚に固定して撮影モードをバルブにし、約3分間カメラのシャッターを開けっ放しにして撮影した。その間に星は日周運動により移動するので、夜空に輝線として写し出される。ぼんやりと赤い雲のように見えるのは天の川の星々だ。

写真3

おなじく三脚で固定撮影。富士登山の人々のヘッドライトの光と、富士山の上に輝く星々を2分間の長時間露光で撮影。星は2分間で天空を約 0.5 度移動するため、シルエットの富士山の上空に流れて写る。

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写真4

赤城山小沼の空にかかるオリオン座。これも固定撮影だが、24mm 広角レンズでの撮影であることと、20 秒という比較的短めの露光時間であるため星の動きがさほど目立たず写せた。しかし厳密には画像を拡大すると星が流れていることが判る。

三脚にカメラを据え付けただけの固定撮影であっても、広角レンズでの撮影、かつ 30 秒程度の露光時間であれば、星の流れはさほど目立たない。だがそのためには高感度での撮影が必要となり、それに伴い多少なりとも高感度ノイズも発生する。また写真を拡大すると星のずれも目立ってしまう。では星を流さずに撮影するにはどうすればよいか。それには動く星を同じ速度で追いかけて撮影すれば良いのだ。超スローシャッターの流し撮りと思ってもらえればわかりやすいだろう。そのための撮影アイテムが、今回取り上げるポータブル赤道儀「 ケンコースカイメモ RS 」なのである。

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■ ケンコースカイメモ RS のセッティング

そもそも赤道儀とは、天体観測を行なう際に望遠鏡が星を視野から外さないように追いかけるために作られたものであり、その望遠鏡にカメラを取り付け天体観測を目的とした撮影を行なうことが主な目的であった。今回とりあげるポータブル赤道儀「 ケンコースカイメモ RS 」は、カメラでの天体撮影に用途を絞った赤道儀である。従来の赤道儀は大きな天体望遠鏡を載せる必要があるため、積載荷重が大きく設定されていたことで赤道儀も頑丈で重く大きいものであった。それを積載荷重を5kgまでとしたことで赤道儀としては持ち運びしやすい大きさと質量となっている。

ポータブル赤道儀の構造を簡単に説明すると、星の動きに合わせてまわるカメラの雲台、それを動かすためのモーター、およびそのモーターの軸を正確に地球の回転軸( 極軸 )に合わせるためのガイド用望遠鏡( 極軸望遠鏡 )で構成されている。つまりポータブル赤道儀の回転軸を地球の回転軸と平行に合わせ、地球の回転を相殺させるようにカメラを逆回転させることで、星との位置関係を変えることなく相対的に固定できる仕組みとなっている。

写真5

まずは「 ケンコースカイメモ RS 」を安定して据え付けるための三脚をしっかりと立てる。ここでは専用の三脚「 大型微動マウントセット・ WH 」( 別売り )を使って説明する。かならず三本の脚の長さを調整して地面と水平になるように接地する。このとき方位磁石で北を確認しておき、前脚を北に向けて三脚を立てておく。一般の写真用三脚を使う場合も同様で、必ず水平となるように立て雲台は真北を向くように合わせておく。


写真6

事前に撮影地の緯度と経度、北の方位を確認しておくとセッティングに役立つ。最近では GPS 搭載スマートフォンのアプリでこれらを計測できるのでとても便利だ。カメラに搭載された GPS 機能も活用できる。

写真7

三脚の雲台を正確に北に向け、さらに仰角を撮影地の緯度に合わせる。北極星の高さは撮影地の緯度と同じ角度となるためだ。このときホームセンターなどで手に入れられる角度計を使うと正確に合わせることができる。


写真9

「 ケンコースカイメモ RS 」のコントロールパネル。電源の ON/OFF スイッチはなく外部電源からのコネクターを抜き差しする。DIRECTION スイッチは北半球では N に南半球では W に合わせる。北半球と南半球では星のまわる方向が逆になるからだ。追尾モードは太陽、月、恒星モードの三種類。恒星モードには 1/2 倍速度モードも用意されている。

 

ここまでは辺りが暗くなるまでに済ませておくと安心だ。この後は日が沈み星が良く見えるようになってから設定する。

写真8

三脚に「 ケンコースカイメモ RS 」をしっかりと固定する。この本体の中心を貫くように配置されているものがモーターで回転する極軸。この軸が星の回転と同じ角速度で回る。また極軸には極軸望遠鏡が内蔵されている。この極軸望遠鏡を使って北極の位置に正確に極軸( 赤道儀の中心軸 )を合わせる。電源は単二電池4本の外部電源ケースから供給。また極軸望遠鏡内のガイド指標を照らすための LED が搭載されている。


写真10

外部コントローラーを使って動きを一時的に倍速で動かしたり停止させることもできる。外部コントローラーはコントロールパネルの「 CONTROL 」ジャックに接続する。

写真11

この画像は極軸望遠鏡を覗いたところ。三脚を正しく北に向け仰角を合わせていれば視野の中心近くに北極星が見えているはずだ。極軸望遠鏡内には北極星を捉えるためのガイドパターンが印刷されている。鏡筒を回転させるとガイドパターンも回転するので、いま実際に見えている北極星と「 北斗七星 」もしくは「 カシオペア座 」の位置関係に合うようにガイドパターンを合わせる( 極軸望遠鏡の視野内には「 北斗七星 」および「 カシオペア座 」は見えない )。そのうえで A, B, C のガイド線の隙間に基準星となる星が入るように三脚の向きと角度を微調整する。なお、ガイド線の中心から北極星をずらしているのは、僅かながらに北極星が真北の中心からずれているからだ。( 黄色点はこの説明用に模擬的に記した星の位置 )


写真13

カメラクランプからウエイトを取り外しカメラを二台装着した例。このときもクランプの左右でバランスを取るようにする。片側 2.5kg、計 5kg まで。

写真12

ケンコースカイメモ RS の向きを真北の中心に正確に合わせたら、カメラクランプを極軸にしっかりと取付ける。カメラクランプの先端に自由雲台( 別売り )を取り付けそこにカメラをセットする。カメラクランプのもう一方の先端にはバランスを取るためのウエイト( 別売り )を装着する。バランスが取れたらカメラを撮りたい空に向けピントを合わせ構図を決めて撮影を開始する。

 
 
 

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■ 追尾撮影による撮影作品

「 ケンコースカイメモ RS 」のセッティングが正しければ、あとは搭載したカメラで星空の撮影を行なう。撮影モードはマニュアルもしくはバルブモードにして、レンズの絞りは開放~1段絞り程度にする。

なお、ピントはライブビューモードで合わせることをおすすめする。できるだけ明るい星を画面中央付近に捉え、拡大ライブビュー画面で MF にて合わせる。いちどピントを合わせればズームで焦点距離を変えない限りそのままで大丈夫だ。誤ってピントリングを回さないようにテープなどで固定すると良いだろう。

自由雲台で構図を整えて撮影。リモートケーブルを使ってカメラに振動を与えないようにしてシャッターを切る。必要に応じてミラーアップも併用すると安心だ。

露光時間はまずは1分~5分程度を目安にしよう。ISO 感度は 400 ~ 3200 の範囲でテスト撮影の結果を見ながら調整するとよい。

写真14

冬の星座のかなでも代表的なオリオン座と空でいちばん明るいシリウスの周辺の星空を撮影。35mm F1.4 の明るいレンズを使い2分間追尾露光したことで、肉眼では見えない暗い星々までも捉えることができた。


写真15

ケンコースカイメモ RS を使って星を追尾撮影した天の川。星が流れることなく点像となっている。約2分間の長時間露光によって天の川の淡い雲のような星の集まりも捉えることができた。

写真16

こちらもオリオン座とシリウスの周辺の星空だが、12mm の広角レンズを使うことで地上から天頂付近の星々までの広い範囲を捉えた。開放絞り値が F4.5 と少し暗いため ISO800 で5分間露光した。それに伴い地上の景色は流れる。

 
 
 
 
 
 
 

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写真17

ケンコースカイメモ RS は、多くあるポータブル赤道儀のなかでも精度が高い製品であることが特徴だ。それにより望遠撮影でもズレの少ない撮影ができる。この写真はオリオン座のなかにある M42 オリオン大星雲を 480mm 相当で撮影したものだ。撮影画像は RAW 現像時に明るさやコントラストなどを調整しているが、開放絞り F6.3 となる高倍率ズームレンズでも、デジタルカメラの高感度とケンコースカイメモ RS の正確な追尾で、淡いベールのような散光と赤い光を幻想的に捉えることができた。


写真18

M45 プレアデス星団。昴( すばる )としても良く知られる、天頂付近で輝く星団を 448mm 相当で撮影。ケンコースカイメモ RS の極軸をセッティングで正確に合わせることができているかを検証するため、あえて ISO100 のまま4分間の追尾撮影を行なった。極軸が正しく合わされていなければ大きく星は流れて写る。セッティング後はかならずテスト撮影を行ない確認しよう。


写真19

この写真は9月9日のスーパームーンを撮影したもの。月は星と比べると格段に明るいため、通常の三脚でも撮影することができる。しかし思いのほか月の動きは早く、さらにこの写真では 1800mm 相当の超望遠レンズを使って撮影しているため、あっという間にフレームから外れてしまう。また絞り値が F13 と極端に暗いためシャッタースピードは 1/160 秒となり、月の動きでぶれてしまう恐れがある。そこで月撮影モードで月の動きを追尾しながら撮影した。なおケンコースカイメモ RS には太陽の追尾に使用する太陽撮影モードも用意されている。

 

このように「 ケンコースカイメモ RS を」使うことで、固定撮影では撮れない本格的な星空撮影を行なうことができる。赤道儀を使った追尾撮影自体はフイルムカメラの頃より行なわれているものではあるが、フイルムでの撮影では高感度撮影や長時間撮影はとても高度なテクニックと知識が必要であった。そのことを考えると現在の高画質かつ低ノイズな高感度撮影が可能なデジタルカメラを活かせば、星空撮影は誰でもチャレンジすることがでできる分野となったと言えるだろう。赤道儀のセッティングには少し慣れが必要ではあるが、コンパクト化されたポータブル赤道儀ならば旅先に持って行き撮影することもできる。星空撮影に興味を持たれた方には、ぜひともチャレンジしていただきたい。

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礒村 浩一
著者について
■ 礒村 浩一 写真家 ■(いそむらこういち)   1967 年福岡県生まれ。東京写真専門学校( 現 東京ビジュアルアーツ )卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍や Web 誌にも数多く寄稿している。近著「 オリンパス OM-D の撮り方教室 OM-D で写真表現と仲良くなる 」( 朝日新聞出版社 )、「 マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド 」( 玄光社 )など。 2015 年 9 月よりデジタルハリウッド「 カメラの学校 」講師。Web サイトは http://isopy.jp/ Twitter ID : k_isopy
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