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礒村浩一の探せ!デジカメ・ギア 第9回
 独特の効果が楽しめる LENSBABY

Posted On 29 10月 2014
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写真家・礒村浩一の「 探せ!デジカメ・ギア 」。デジタルカメラを使いこなすための、あったら便利、使うと楽しい、そんなアイテム「 デジカメ・ギア 」を紹介していく本講座。今回は光軸を傾けることで「 滲み 」や「 片ボケ 」などの独特の描写ができる少し変わったレンズにスポットをあて、礒村浩一独自の視点でご紹介します。  by 編集部

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■ 「 滲み 」や「 片ボケ 」はレンズの悪い特性?

デジタルカメラの画質向上はいまや留まるところを知らない。解像度も高くなり高感度撮影においての画質も数年前と比べると飛躍的に向上している。またその高画質を引き出すためのレンズもますます高性能になっており、これらの組み合わせによって驚く程にクリアな写真を撮影できる。一方、デジタルならではの新しい表現の手法として、写真の片ボケや滲みなどをカメラ内で再現できるアート系フィルターが搭載されるようになり、いわゆる「 ゆるふわ 」や「 味のある 」写真としてとても人気が高い。デジタル処理によって得られるこれらの表現はとても手軽で面白いものだが、これらの効果の多くはレンズが本来持っている特性をシミュレーションしたものだ。そして、こうした効果は本来レンズの「 良い特性 」ではなく、どちらかというと「 悪い特性 」とされてきたものなのだ。

では、レンズの「 悪い特性 」とはなにか。代表的なものを挙げると「 滲み 」、「 片ボケ 」、「 歪み 」、「 周辺光量落ち 」である。こうした特性は古い時期に作られたレンズによく見られ、欠点とされてきた。これらの問題を新しい技術や設計で解消してきたことが、レンズの高性能化の歴史なのだ。とろこが、こうした「 滲み 」や「 片ボケ 」などの本来悪いとされてきた特性を、「 ゆるふわ 」や「 味のある 」写真表現として活かそうというレンズも存在している。今回紹介する「 LENSBABY 」シリーズも、そうした特性を活かした独特の描写が人気のレンズだ。

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■ 光軸を自在に動かせる鏡筒と個性的なレンズユニットの組み合わせ

「 LENSBABY 」シリーズはマニュアルフォーカス機構を持ったレンズ鏡筒と交換式のレンズユニットを組み合わせて使うシステムだ。鏡筒には細かな構造の違いによっていくつかのモデルがあるが、基本的な構造はピント合わせのためのレンズ繰り出し機構と、レンズの光軸を傾ける機構で構成されている。そこに使いたいレンズユニットを組み込んで撮影をする。

レンズユニットには焦点距離の違いや、レンズの素材、構成の違いによって描写が異なるものが複数用意されており、望む効果に合わせてユニットを選べる。

写真1

LENSBABY には効果に合わせて数種類のレンズユニットやアクセサリーが用意されている。クローズアップレンズやテレ&ワイドコンバージョンレンズもある。


写真2

レンズユニットは鏡筒に組み込んで使う。各レンズユニットにはそれぞれ特徴があり描写が異なるので用途に合わせて組み替える。

写真3

LENSBABY の鏡筒「 コンポーザープロ 」とレンズユニット「 スウィート 35 」を組み合わせて、キヤノン EOS 5D MarkIII に装着。LENSBABY はフルサイズフォーマットに対応している。

写真4

「 コンポーザープロ 」はキヤノン EOS、ニコン F、フォーサーズ、ペンタックス K、ソニー A の各マウントに対応。レンズマウント部には電気接点がないので動作はすべてマニュアル。撮影情報もカメラへは伝わらない。ちなみにここで組み合わせているレンズユニット「 スウィート 35 」には絞り羽根が内蔵されている。

LENSBABY の面白さは、あえて「 滲み 」、「 片ボケ 」、「 歪み 」といったものが強く出るレンズユニットを使い、また意図的に光軸を傾けることにより像の流れを生み出すところにある。

写真5 鏡筒が自在に傾けられる

LENSBABY の鏡筒は自在に傾けることができる。これによってレンズの光軸を傾けカメラの撮像素子に対してピントの合う面をずらして意図的に片ボケを作ることができる。

写真6 鏡筒が真っすぐの場合

LENSBABY の鏡筒を真っすぐにした状態で撮影したもの。使ったレンズユニットは「 ダブルグラス オプティック 」。このレンズユニットの特性で中心部はクリアに描写し、そこから均等に画像周辺部が滲んでいる。

写真7 カメラを固定して鏡筒を上下左右に傾けた場合

【左上】鏡筒を右手に曲げて撮影。クリアに写っている部分が左寄りとなり画面右側がおおきく流れる。写る範囲も右にずれる。【右上】鏡筒を左手に曲げて撮影。クリアに写っている部分が右寄りとなり画面左側がおおきく流れる。写る範囲も左にずれる。【左下】鏡筒を上に曲げて撮影。クリアに写っている部分が下寄りとなり画面上側がおおきく流れる。写る範囲も上にずれる。【右下】鏡筒を下に曲げて撮影。クリアに写っている部分が上寄りとなり画面下側がおおきく流れる。写る範囲も下にずれる。

写真8 コンポーザープロとダブルグラス オプティックの組み合わせ

コンポーザープロとダブルグラス オプティックの組み合わせ。50mm F2。1群2枚のマルチコートレンズで構成。ピントの合った部分はシャープに、周辺は大きく滲んだ描写をする。

写真9 コンポーザープロとダブルグラス オプティックの組み合わせで撮影

コンポーザープロとダブルグラス オプティックの組み合わせで撮影。

写真10 絞りディスクとその装着

ダブルグラス オプティックには「 絞りディスク 」が付属している。絞り値に合わせたディスクをレンズ前面より、マグネット式の交換ツールを使って装着する。

ダブルグラス オプティックに絞りディスクを装着し、絞りの値による描写の変化を見た。鏡筒は真っすぐに、ピントは中心部に合わせている。絞り値が大きくなることにより周辺部の滲みが解消されていくことが判る。中心部の解像力も向上する。

写真11-1 絞りディスク未装着と F2.8、F4、F5.6 の絞りディスクを装着して撮影

絞りディスク未装着( F2 )から F2.8、F4、F5.6 のそれぞれ絞りディスクを装着して撮影。

写真11-2 F8、F11、F16、F22 の絞りディスクを装着して撮影

F8、F11、F16、F22 のそれぞれ絞りディスクを装着して撮影。

同じくダブルグラス オプティックに絞りディスクを装着し、鏡筒を若干右側に曲げて像を流し、そのうえで絞りの値による描写の変化を見た。ピントは左寄りの木に合わせてある。やはり絞り値が大きくなることにより周辺部の滲みが解消されていくが、光軸のずれによる像の流れは残っていることが判る。

写真12-1 絞りディスク未装着と F2.8、F4、F5.6 の絞りディスクを装着して撮影

絞りディスク未装着( F2 )から F2.8、F4、F5.6 のそれぞれ絞りディスクを装着して撮影。

写真12-2 F8、F11、F16、F22 の絞りディスクを装着して撮影

F8、F11、F16、F22 のそれぞれ絞りディスクを装着して撮影。

このように絞りディスクを装着することで、滲みと解像感、そして被写界深度も調整することが可能だ。表現したいものに合わせて適した絞りディスクを装着すると良いだろう。

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■ F4 の絞りディスクを使った作例

こちらの作例はダブルグラス オプティックに F4 の絞りディスクを装着。中心部と周辺部の描写の差が若干抑えられることで、より自然な像の流れとなっている。作画の狙いにもよるが、F2.8 ~ F4 程度の絞りディスクを装着した状態が写真としては馴染みが良いようだ。

写真13

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 +1EV ss:1/100 ISO:200


写真15

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 +0.67EV ss:1/100 ISO:3200


写真17

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 +1.67EV ss:1/400 ISO:400

写真14

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 +1EV ss:1/30 ISO:3200


写真16

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 +0.67EV ss:1/1250 ISO:3200


写真18

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 -0.33EV ss:1/25 ISO:800

ダブルグラス オプティックを F2 の開放絞の状態でイルミネーションなどの光源を捉える。大胆なぼけと滲みで光が美しく幻想的になる。

写真19

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/2.0 -0.0EV ss:1/30 ISO:800

写真20

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/2.0 -0.0EV ss:1/13 ISO:800

LENSBABY にはマクロコンバーターも用意されている。レンズユニットと鏡筒の間に取付けることで、接写撮影ができる。8mm と 16mm があり、またこれらを重ねて使うこともできる。こちらの作例はダブルグラス オプティックとマクロコンバーター 16mm を重ね合わせて撮影。

写真21

カメラ:Canon EOS 5D Mark III ダブルグラス オプティック+マクロコンバーター 16mm -0.0EV ss:1/160 ISO:100

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■ スウィート 35 オプティックでボケを楽しむ

「 スウィート 35 オプティック 」は 35mm F2.5 3群4枚マルチコートレンズユニットだ。絞り羽根を内蔵しているので即座に実絞りでの撮影ができる。12 枚の円形絞りを採用しているのでぼけが美しいのも特徴。APS-C サイズのセンサーを搭載したカメラでは標準域の焦点距離となり、スナップ撮影からポートレート撮影までボケを活かした撮影にも扱いやすい。

写真22 スウィート 35 オプティック

スウィート 35 オプティック

スウィート 35 オプティックの絞りの値による描写の変化を見た。鏡筒は真っすぐに、ピントは中心部に合わせている。開放絞りでも中央部はかなりクリアだ。周辺に行くに従ってぼけと像の流れが均一に広がる。絞りを絞っていくに従って解像力が上がり F8 ~ 11 付近が一番解像する。ぼけと像の流れのバランスと併せると F8 前後がクリアに描写させるのにいい頃合いだ。

写真23-1 開放絞り( F2.5 )から F2.8、F4、F5.6 にて撮影

開放絞り( F2.5 )から F2.8、F4、F5.6 にて撮影。

写真23-2 F8、F11、F16、F22 にて撮影

F8、F11、F16、F22 にて撮影。

同じくスウィート 35 オプティック鏡筒を若干右側に曲げ像を流し、そのうえで絞りの値による描写の変化を見た。ピントは左寄りの花に合わせてある。しかし開放絞りでは像の流れによりきっちりとピントを合わせるのは非常に難しい。クリアに見せるには F11 ~ 16 程度まで絞る必要があるが、全体の「 ゆるさ 」を前面に出すのであれば F4 ~ 5.6 付近の描写がテーマには合うだろう。なお、画面右上端に黒いケラレが写っている。スウィート 35 オプティックは焦点距離 35mm と広角なので、鏡筒を傾けるとイメージサークルを超えてしまいやすいので注意が必要だ。

写真24-1 開放絞り( F2.5 )から F2.8、F4、F5.6 にて撮影

開放絞り( F2.5 )から F2.8、F4、F5.6 にて撮影。

写真24-2 F8、F11、F16、F22 にて撮影

F8、F11、F16、F22 にて撮影。

こちらはスウィート 35 オプティックを使用した作例。絞りを絞り込むことでクリアな描写と幻想的な緩さを同時に得ることができる。焦点距離が 35mm と広角であることも、周辺部へと流れを作るのに効果的だ。

写真25 

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/5.6 +1.33EV ss:1/800 ISO:100


写真26 

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/5.6 +1.33EV ss:1/60 ISO:100

写真27 

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 +2.0EV ss:1/80 ISO:100


写真28 

カメラ:Canon EOS 5D Mark III f/4.0 +0.33EV ss:1/500 ISO:100

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■ ソフトフォーカス オプティックでふんわり撮影

ソフトフォーカス オプティックはソフトフォーカス効果を得られるレンズユニットだ。画面全体が滲むようなソフトな描写となり、光が当たった明るい箇所はとくに大きく滲む。光軸を傾けるとぼけとの相乗効果でよりふんわりとした効果が得られるが、強すぎると像がぼけ過ぎてしまうため、光軸の傾けはほどほどにした方が良い結果となる。

写真29 ソフトフォーカス オプティックで撮影

ソフトフォーカス オプティックで撮影

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■ LENSBABY は写真を自由に楽しむレンズ

LENSBABY は高解像度を目指し進化を続けるデジタルカメラとは、まったく異なる方向性の楽しみ方を提案してくれるとてもユニークなレンズだ。そのうえレンズユニットを選ぶことで望みの効果を自在に得たり、マクロコンバーターなどアクセサリーを使用する事で拡張性も高い。効果的な画像を得るためには明るい光がレンズに射すような被写体や構図を選ぶ必要があるなど若干のコツは必要だが、LENSBABY で得られる像に対して、さらにカメラ内のアート効果を相乗させるなど、楽しみ方は限りなく広げることができる。普段はきっちりとした写真を撮影しているヒトでも、ときには心を自由にして楽しむ。そんな楽しみ方を LENSBABY は教えてくれるに違いない。

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礒村 浩一
著者について
■ 礒村 浩一 写真家 ■(いそむらこういち)   1967 年福岡県生まれ。東京写真専門学校( 現 東京ビジュアルアーツ )卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍や Web 誌にも数多く寄稿している。近著「 オリンパス OM-D の撮り方教室 OM-D で写真表現と仲良くなる 」( 朝日新聞出版社 )、「 マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド 」( 玄光社 )など。 2015 年 9 月よりデジタルハリウッド「 カメラの学校 」講師。Web サイトは http://isopy.jp/ Twitter ID : k_isopy
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