第2回 ライティングボックス
TOPIX
写真家・礒村浩一の新連載、「 探せ!デジカメ・ギア 」。デジタルカメラを使いこなすための、あったら便利、使うと楽しい、そんなアイテム「 デジカメ・ギア 」を紹介していく本講座。第2回は、ブツ撮りに欠かせない「 ライティングボックス 」です。
「 探せ!デジカメ・ギア 」第2回目に取り上げるのは、デジタルカメラで簡単にブツ撮りができるライティングボックスだ。一般にブツ撮りと聞くと、専用のスタジオでプロ用のライトなどの機材を使って撮るという難しいイメージがある。もちろんその製品の魅力を最大限に引き出すための広告や製品カタログ向けの写真では、プロのノウハウを活かしたクオリティーの高い撮影をする必要がある。しかし、お店で作成するチラシや Web での商品カタログ程度の撮影ならば、ある程度の知識さえ持てば自身で撮影できるのだ
■ 簡易スタジオになるライティングボックス
そこで活用したいのがライティングボックスである。ライティングボックスとは、撮影したいブツをそのボックス内に置くことで簡易的なライティング撮影ができるアイテムだ。今回紹介するライティングボックスはドーム型のものと箱型の2種類となる。なにはともあれ実際にライティングボックスを使って撮影した写真(?写真02?)を見ていただきたい。
ライティングボックスの基本構造はブツを置く背景となるグレーの布を、光を拡散する薄地の白布で囲む造りとなっている。この白布が外部からの光を和らげると同時にボックス内で光を反射拡散させることで、ブツの影となる箇所へ光をまわし明るくしてくれるのだ。
■ 艶のある被写体の場合
次は同じ条件で表面に艶のあるクルマのミニチュアを撮影した。影の硬さを見ると同時にボディへの写り込みも見てほしい。
ここで注目していただきたいのがボディへの写り込みの違いだ。ライティングボックスを使わず、天井の蛍光灯のみで撮影した画像(?写真05?)及び LED 照明を直接当てた画像(?写真03?)は、部屋の周囲のものがボディに写り込んでいる。一方、ライティングボックスを使用したもの(?写真04?)は、ボックス内のグレー背景がボディに写り込むことで均一なボディ面となっていることが判るだろう。つまり、艶があるブツは周囲の物が写り込んでしまうことを防ぐ( グレー布や白布をわざと写し込む )ことで均一な表面とすることができるのだ。
ちなみにこのクルマのミニチュアは、実際に販売されている自動車の色見本用に作られたものだ。したがって塗装面は実写とほぼ同じ塗料で仕上げられている。実際の自動車の撮影現場においても、実車を大きく囲むようなドーム型のスタジオで撮影することがある。これも白く塗ったドーム内壁を自動車のボディに写し込むことでライティングするのだ。光を外から透過させてライティングするライティングボックスとは違い、実車の場合はドーム壁面を中から照明により明るくライティングすること以外は、基本的に同じ効果による撮影となる。
■ ボトルのライティング
もうひとつ周囲が写り込むブツの例としてワインボトルのライティングボックスでの撮影方法を挙げよう。ここでは箱型のライティングボックス(?写真06)を使う。
このボトル撮影において箱型のライティングボックスを使ったのは、ボトル側面に写り込みを左右均一に入れるためだ。ドーム型ライティングボックスでも白布を写り込みとして利用したが、今回は正面から見て手前から奥へと曲面となっているボトルの表面にライティングボックス左右の白布壁を写し込んでいる。また左右の壁から均等な距離( ライティングボックスの中央 )にボトルを置く事で、白い写り込みの幅を均等にすることができた。なお、写り込みはドーム型でも発生するが作例のような直線的な写り込みにはならない。
このようにブツ撮りにおける光の硬軟の調整とブツへの写り込みを比較的簡単にコントロールできるライティングボックスはとても便利なアイテムだ。背景もシンプルな単色になっているのでブツがちゃんと浮き立って写る。またブツに写り込んでも色変わりが起き難いグレーとなっているのもありがたい。これらはブツのみを Photoshop などで切り抜く際にも便利だ。大量の商品を撮影しなければいけない場合でも効率よくライティングできるので、ショップの通販商品の撮影などにもオススメだ。もちろん個人的な撮影にも活用できる。
左:ライティングボックスを使わず LED 照明のみで撮影。部屋の周囲にライトの光が届いていないことで、写り込みは軽減しているがボトルが真っ黒になることで立体感のない写真となった。
右:ライティングボックスを使って LED 照明で撮影。余分な写り込みがなくなると同時にボトルの左右に均等な写り込みを入れることができた。この白い写り込みはライティングボックスの左右の白布の壁が写り込んだもの。またボトルの天面も均等なライティングとなっている。これにより自然な立体感のあるボトルとして表現することができた。
■ 次回予告
今回はライティングボックスを使った基本的なライティングについてお話させていただいたが、これに照明を2灯、3灯と足していけばより高度なライティングもできる。もちろん LED でなくワイヤレス機能を活かしたクリップオンストロボでの撮影もできる。逆に部屋の蛍光灯のみでの撮影でも、ただデスクの上でブツを撮影するよりはキレイに撮影できるはずだ。ブツ撮りに興味のある方はご自身でいろいろと試していただきたい。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
礒村浩一写真事務所