大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第6回 奥多摩( 前編 )
TOPIX
「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」のシリーズ6回目は奥多摩まで足を延ばしていただきました。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地 」です。今回も KIPON レンズを使い奥多摩を切り撮ります。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部 |
Index
1.本連載のルール
1万円以内で行かれるところであれば場所はどこでもOK 、かつ、好きなものを撮って良い、という夢のようなこちらの企画。第6回目は、東京都奥多摩へ行ってまいりました。
機材は、引き続きソニーα7R IV + KIPON製レンズの組み合わせを使用しています。こちらの記事は、撮影スポットガイド、そして機材選びの参考としてご覧になっていただけたら嬉しいです。(大村)
2.目的地紹介
今回は、漠然と「東京都」の中で小旅行がしたいと考えていました。そのときにふと頭に浮かんだのが奥多摩でした。東京都とはいえ、都心から車で2時間以上。大自然に囲まれてのんびりリフレッシュできる奥多摩は、昔から大好きな場所です。振り返ってみると年一回くらいのペースで訪れていたのですが、今年はまだ一度も奥多摩へ行っていないことに気が付いたので、今回の目的地に選ぶことにしました。
3.今回の機材紹介
ボディはソニーα7R IV、レンズはKIPONの「 IBERIT 」シリーズを使用しました。
「 IBERIT 」レンズは、Eマウントの MF レンズです。開放 F2.4 の単焦点で、焦点距離は24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm の5本がラインナップされています。ドイツで開発とテストを行い、ドイツの品質基準に沿って製造されています。鏡胴はブラックとシルバーの2色。マウントは、ソニーE、富士フイルムX、ライカM、ライカSL の4種類です。重厚感のあるクラシカルな造りが魅力的です。
奥多摩は広い絵を撮りやすいイメージがあるため、今までで最も使用頻度の低い 24mm を使ってみようと思いました。
4.日原鍾乳洞で神秘的な世界を散策
爽やかな秋晴れのある日、朝7時に都内を出発し、車を走らせること2時間半。車一台すれ違うのがやっと、という細い山道を延々とのぼった先に、最初の目的地である「日原鍾乳洞」があります。
こんな山奥に、ここまで大きい鍾乳洞があるなんて!と驚いてしまうほど広い日原鍾乳洞。以前、撮影のお仕事で訪れたのですが、その神秘的な世界の虜になってしまい、いつかまた来たいと思っていました。
駐車場の横から渓谷に沿って延びる急な階段を下っていくと、鍾乳洞の入り口があります。
鍾乳洞の中に一歩足を踏み入れると、急に冷蔵庫の中へ入ったような気温になります。内部の平均気温は常時 10 度前後。登山用のパーカーを羽織っていても寒いと感じるほどでした。
薄暗いなか「ピチョン、ピチョン……」と水の垂れる音と、自分の呼吸音だけが聞こえます。オレンジ色のライトで照らされた洞内はおぼろげで、この世のものとは思えません。黄泉の国はこんな雰囲気なのかなあと想像してしまいます。
私は岩壁に滴る水滴が大好きです。この日も岩と水滴ばかりを撮ってしまいました。最短撮影距離である 0.24m まで近づいて撮影してみました。絞りを開放にすると背景も大きくボケて良い感じです。
様々な色でライトアップされている場所もあります。赤いライトで照らされた岩肌は妖しくてうっとりしてしまいます。
IBERIT は、岩を硬く写しすぎず、適度に土っぽさを残してリアルに描写してくれるので、こういった場所との相性が良いなと思いました。
濡れた岩が好きすぎてそればかり撮ってしまいます。24mm は、グッと寄るとハイライトが滲む描写が際立ちます。結果、岩のようなハードなものを撮っても、水で濡れて光っている部分がじんわり滲んで写り、どこかファンタジックに。
最後の方は、急な階段が続きます。すぐに息切れしてしまうので、こまめに休憩をしながら進みました。ホワイトバランスを寒色側に振って、クールな印象に。
ホラーゲームに登場するような階段がたまらなく好きだったので思わずパシャリ。どこかノスタルジックな写りをする IBERIT が、絶妙な質感で階段を描いてくれました。
陰キャな私は、こういった場所を歩いているだけで心が鎮まっていきます。前回と同様に、今回も「 ここに住みたい 」と思ってしまいました。薄暗くて湿っぽいところ、最高!
日原鍾乳洞は、普通の速度で歩いて、約1時間で回れます。
5.鳩ノ巣渓谷
日原鍾乳洞を出たあと、30分ほど車を走らせて、今度は「 鳩ノ巣渓谷 」へ。
駐車場から少し歩いたところに渓谷があります。周辺はゆるやかなトレッキングコースになっており、体力に自信がない人でも安心。
渓谷に架かる吊り橋から下を覗くと、ごつごつした岩の間を、多摩川の源流が流れていく爽快な音が響いていました。
エメラルドグリーン色をした水がとても綺麗!
IBERITは、絞りこむと隅々まで解像するので、こういった広い場所で気持ちの良い絵が撮れます。
鳩ノ巣渓谷の近くにあった、古い道路標識。IBERITがどこか懐かしい雰囲気の1枚に仕上げてくれました。
後編に続く
■ 制作・著作 ■
新東京物産株式会社
大村祐里子
スタジオグラフィックス