大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第2回 四万温泉( 後編 )
TOPIX
新連載「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」の2回目です。今回は四万温泉の後編です。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地」です。今回は KIPON レンズをおともにしました。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部 |
「 予算1万円でスナップ撮影の旅に出る 」という、旅好きの私にとっては願ってもいないこの企画。
後半に入る前に再度、今回の旅の機材を再度ご紹介したいと思います。ボディは、購入したばかりのソニー α7R IV 、レンズは α に装着できる E マウントレンズかつ MF レンズの KIPON の「 IBERIT 」シリーズを選びました。レンズをお貸し出しいただきました、新東京物産さんありがとうございます!
「 IBERIT 」レンズは、開放 F2.4の単焦点レンズで、焦点距離は24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm の5本がラインナップされています。ドイツで開発とテストを行い、ドイツの品質基準に沿って製造されています。鏡胴はブラックとシルバーの2色。マウントは、ソニーE、富士フイルムX、ライカM、ライカSL の4種類です。重厚感のあるクラシカルな造りが魅力的です。
今回の撮影では、広大な空間を切り取ることが多いと予想して「 IBERIT 」シリーズの24 mm と35 mm を、そして変化をつけるために90 mm、の計3本を使用しました。
さて、お腹も満たされたところで、気ままな街歩きを再開したいと思います。
Index
1.街歩き後半戦スタート!
歩いていると、いろいろなところで「 焼きまんじゅう 」ののぼりを目にします。これがご当地名物なのだろうな、という推測が働きます。
焼ける味噌ダレのイイ香りに誘われて『焼きまんじゅう島村』さんで焼きまんじゅうを購入することにしました。昼食とは、別腹です。
注文すると、女将さんが炭火で丁寧におまんじゅうを焼いてくださいます。おまんじゅう、というか大きなお団子みたいな感じです。ウキウキして待ちます。
焼きまんじゅうは軒先に座っていただけます。ラムネも一緒に購入してみました。おまんじゅうとラムネの存在を際立たせたかったので開放にして撮影しました。開放時の特に柔らかい描写が、現地のゆっくり流れる空気を誇張せずに写しとってくれました。
焼きまんじゅう、という名前ですが、フカフカとした食感で、どちらかというと味噌ダレで焼いた「パン」に近い印象を受けました。隣で食べていた小さい子も「パンみたい!」と言っていました。ひとつが拳くらいの大きさなので、一見食べ応えがありそうなのですが、案外軽く、昼食の直後にも関わらずペロリとたいらげてしまいました。中毒性のある味で、このあと私は定期的に焼きまんじゅうのことを思い出すようになってしまいました。また食べたい……。
食後は『焼きまんじゅう島村』さんから歩いてすぐのところにある『 塩之湯飲泉所 』へ。こちらは、文字通り温泉が無料で飲める施設です。温泉の水を飲むのは初体験!実際にいただいてみると、ぬるめで、少し塩気がきいている感じで飲みやすかったです。胃腸病や食欲増進に効果があるとのこと。これ以上食欲増進したら困りますが。
ふたたび川沿いをブラブラ。グリーンが映り込むコバルトブルー色の川を眺めていると、異界へトリップしてしまったような気分になります。絞って川と街並みの両方を収めてみました。F8 から11 程度に絞ったときの描写はスッキリしていて大変好みです。
ガードレールに止まったトンボを発見。開放で寄ってみました。ピントの芯はしっかりしていますが、全体的にはふんわり柔らかく描写され、ファンタジックな一枚に。
車に乗って「 四万の甌穴 」まで足を伸ばしてみました。甌穴とは、四万川の流れが数万年もの年月をかけて川底の岩盤を侵食したものだそうです。現地では、甌穴の真横まで降りることができます。実際に近くで見るとその壮大さに圧倒されます。スケール感をおさめたいと思い24 mmにチェンジしました。フレアを入れてドラマチックな一枚に仕上げてみました。
甌穴を高いところから眺めてみました。ブルーというか、グリーンというか、神秘的な水の色が美しいなと思いました。
甌穴の駐車場にある『森のカフェKISEKI』さんでひと休憩。グリーンの川の色と見たせいか、無性にクリームソーダが飲みたくなったので注文。森を背景にしたクリームソーダが可愛かったので、90 mm を使い、絞りは開放にしてその存在感を際立たせました。広角レンズと一緒に90 mm という長めのレンズがあると、絵にメリハリを持たせることができていいなと思いました。
せっかく温泉街にきたのに、まだ温泉に一度も浸かっていない!ということで、気軽に入れる「 ゆずりは社の足湯飲泉所 」へ。八角形の建物の中は広々としていて、ベンチも有り、座ってゆっくりと足湯をエンジョイすることができます。
お湯はかなりぬるめで、長時間浸かっていてものぼせません。私は読書しながらのんびりとしてしまい、結局1時間くらい居座ってしまいました。体がじんわりと温まり、とても心地よい時間でした……。天国……。
気がつけば、日が暮れる時間になってしまいました。ぽつぽつと灯りがともり始める街並みを 90 mmで撮影しました。赤い街灯の光をあえて画面内に大きく取り入れ、記憶の中を歩いているような雰囲気に仕上げてみました。演出として光を大胆に入れたいとき、そうできるのが IBERIT シリーズの良いところだと思いました。色のにじみ方は独特。
明かりの灯った温泉街と四万川を24mmで撮影しました。開放時の少しにじむような描写が、夜へと向かう町のぼんやりとした光をうまく表現してくれたように思います。
2.旅の収支
・交通費 6,180円(高速代3,090円/片道)
・お昼代 1,000円
・焼きまんじゅう 300円
・クリームソーダ 700円
・ガソリン代 1,800円
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合計 9,980円
3.旅の総括
思いつくままに場所と機材を決めたのですが、結果的にどちらも大正解でした!自分グッジョブ!と言いたい気分です。
旅の内容はもちろんですが、KIPON レンズのノスタルジックな描写が、四万温泉の雰囲気と最高にマッチしていて、写真の撮れ高も大変満足度の高いものとなりました。
KIPON レンズは開放付近だと非常に柔らかい描写で、ボケ方も独特で、オールドレンズのような味わい深さがあります。一方で絞り込むと、途端に解像感が増し、キリリとした絵に変わります。1本で2度美味しいレンズだなと思いました。今回は、その特性を、目の前の状況に応じて使い分けていくのが楽しかったです。
まる1日3本のレンズをリュックに入れて持ち歩きましたが、小型軽量ゆえにまったく苦になりませんでした。KIPON レンズは旅の撮影にとっても向いていると思いました。
またKIPONレンズを持ってどこか旅に出たいです。
■ 制作・著作 ■
新東京物産株式会社
大村祐里子
スタジオグラフィックス