薮田織也の女性ポートレートゼミ
ポージング&フレーミング on the Web #00
~ ポーフレ・はじめに ~
Photo & Text 薮田織也 モデル:響-kyo-/恩田嘉子/鈴木たかこ
TOPIX
肖像画としてのポートレートを撮る上で大切なこととは一体なんでしょう。一番には被写体の人物が持つ個性を最大限魅力的に表現することです。それを実現するために必要な6つのテクニックの中から、この連載ではポージングとフレーミングに焦点を当ててお届けします。( 薮田 ) |
■ ポートレート撮影で重要な要素
ポートレートは他の撮影ジャンルと違い、被写体と撮影者が共同で作品を創り上げるという、楽しくもありますが、その分難しさがあるとても奥深いアートです。ポートレートで大切なことは、被写体である人物の個性を映像化するために、以下の6つのことを実行することです。
- コミュニケーション … 被写体の個性を知る上でもっとも重要
- ロケーショニング …… 被写体の個性が表現できる場所
- スタイリング ………… 被写体の個性を表現する衣装
- フレーミング ………… 被写体の個性を活かす構図
- ポージング …………… 被写体の個性に合わせた所作
- ライティング ………… 被写体の個性を強調する照明
「 場の光を読む 」は、ロケーショニングに含まれます。光を読んだ上で、必要であれば人為的に照明を当てることを「ライティング」と呼びます。
■ ポージングの重要性
ポートレートにおいて、被写体の人物にポージングを指示するということは、ポートレート撮影の約半分の主導権を握ることにつながります。残り半分は言うまでも無く被写体が握ります。プロのモデルや撮られ馴れている人物に対し、ポージング指示をせずに撮影して素敵な写真ができあがったとしても──きついことを敢えて書きますが──それは「 被写体に撮らされている写真 」でしかありません。適切なポージングの指示は、ポートレートを被写体と一緒に創り上げるためのとても重要なメソッドなのです。
よく、「 ポージングなんて不自然だ。私が撮りたいのは自然な姿勢と表情だ 」と言って、ポージングの重要性を否定する人がいますが、それは大きな間違いです。一切の演出が許されないスナップポートレートならいざ知らず、撮影者を意識せざるを得ないポートレート撮影において、レンズを前にして「 自然 」な表情や姿勢を維持することは、たとえプロのモデルだとしても絶対にできません。もしできているとしたら、それは撮影者が直接的、間接的を問わず、間違いなく適切なポージング指示をしているのです。すなわち、自然な姿勢と表情を撮るためのポージングを指示または環境を作ることが大切なのです。念のために書いておきますが、ポージング指示とは、「 あざといポーズを要求することではない 」のです。
■ フレーミングの重要性
リアルセミナーである SG on the ROAD は、2004 年に Vol.1 を開催し、その8年後の 2012 年に再開されて今に続いています。これまではライティングに重点を置いたセミナーばかりでしたが、ライティングを学びに来てくださる受講者の方々の写真を拝見しているとき、ライティングの前に伝えなければならないことがあると気付いたことがきっかけで、2014 年からポージングと併せてフレーミングのためのセミナーを始めました。なぜなら、たとえライティングが上手にできたとしても、フレーミングが下手だとすべてが台無しになってしまうからです。逆にライティングが下手でもフレーミングが上手なら、その写真はある程度は観られるものになります。もちろん、どちらも上手であれば言うことはありません。
上手なフレーミングは撮影者のセンスであり天性のものだと言う人がいます。それは特定の範囲で正解ですが、大部分では大間違いです。実は、フレーミングはライティングと同じで「 理論 」で必ず上達します。理論を持たずに結果的に上手なフレーミングができる人もいますが、それこそ天性のセンスです。しかし、そうした天性のセンスを持った人が、写真を必要とするすべてのシーンで必ずしも上手な写真が撮れるわけではないのです。たとえば広告に掲載する写真を思い浮かべてください。その広告が必要とするアイキャッチとしての写真を撮るとなれば、理論的なフレーミングが不可欠であり、天性のセンスだけで撮られた写真では、どんなに写真として素敵であったとしても、その広告には不釣り合いとなる場合があるのです。
■ 撮る前にテーマとイメージを決める
魅力的なポートレートを撮る方法はきっとたくさんありますが、筆者は必ず撮る前にテーマを決め、イメージを頭に描いてから撮影にのぞみます。そうすることで撮った結果が経験につながり、必ず次に活かされると考えているからです。そうでなくても見た目に良い写真が撮れたりしますが、それはその場限りのものになりがちです。よく「 なかなか良い写真が撮れない 」という声をセミナーで耳にしますが、そういう方達は、テーマが決まっていないのはもちろん、シャッターを切る前にイメージを頭に描いていない場合がほとんどです。
ではどのようにしてテーマやイメージを描けばよいのでしょうか。
ポートレートの場合、テーマを決めることはそんなに難しくはありません。被写体の人物をよく観察し、自身で感じた「 この人の魅力( 個性 )はここ! 」をテーマにするだけでもいいのです。それに馴れてきたら、感じた魅力をベースにしたストーリーを考え、あなたの世界観が表現できるようになればしめたものです。まずは、「 被写体の魅力 」を言葉にしてみましょう。その言葉を、写真を観る人に対して伝えたいテーマにしてみましょう。
■ 理論8割、遊び2割
ポージング指示もフレーミングも、理論を理解すれば必ず上達します。極論ではありますが、「 魅力的な写真は8割が理屈で、残り2割を遊んで撮る 」ことを筆者はむねとして普段から撮影しています。撮影の度にポージングとフレーミングの理屈( 基本 )を実践していれば、そのうちに頭で考えずとも自然に理論通りの撮影ができるようになります。ただ、理論だけで撮られた写真は、やはりどこか教科書的で理屈っぽい写真になりがちですので、そこに遊び心を加えることが大切です。この「 遊び 」がいわゆる「 センス 」で、これだけは理屈では説明できにくく、定型はないと思ってよいでしょう。敢えて「 遊び 」の中のひとつを言葉で説明すると、「 基本を無視する 」ことがあげられると思います。
■ 「 遊び 」のひとつ、「 基本を壊す 」
基本を無視するという「 遊び 」は、基本をしっかりと学び、常に実践できている人だけができるものです。そうした「 遊び 」の多くは、「 なんとなくこうした 」という漠然としたものではなく、また、最後の一筆が足りない「 画竜点睛を欠く 」ようなものでもありません。あくまでも「 こうした方がより面白い 」とか、「 完璧の一歩手前でわざと終了させる 」といった、意図的な遊びです。つまり、理屈では説明できないけれども、作者の「 意図 」が込められたものであることが望ましいのです。その意図の目的は、「 写真で伝えたいこと 」に他なりません。
■ 一般人を魅力的に撮るために
ポージング&フレーミング( 通称:ポーフレ )の連載では、「 一般の女性を魅力的に撮るためのテクニック 」を前提にしてお届けしていきます。記事中に登場する女性はほとんどがプロモデルだったり女優だったりですが、一般女性にも登場していただきながら楽しい記事を心がけていく予定です。また、この連載と連動しながらリアルセミナーであるポージング&フレーミング on the ROAD も開催していきますので、記事だけでは理解しにくいことや、実践的なテクニックを覚えたいという読者は、無料のメルマガに登録して、on the ROAD の情報を逃さないようにお願いします。
それでは、薮田織也の女性ポートレートゼミ ポージング&フレーミング on the Web をお楽しみください。
薮田織也の女性ポートレートゼミ ポージング&フレーミング on the Web #001 は、2016 年 2 月 25 日公開です。 |