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大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第5回 熱海( 後編 )


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TOPIX

「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」のシリーズ5回目は熱海まで旅していただきました。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地 」です。今回も KIPON レンズを使い早春の熱海を切り撮ります。さわやかな早春の熱海スナップをお楽しみください。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部


「 予算1万円でスナップ撮影の旅に出る 」という、旅好きの私にとっては願ってもいないこの企画。
後半に入る前に再度、今回の旅の機材を再度ご紹介したいと思います。「 IBERIT 」レンズは、Eマウントの MF レンズです。開放 F2.4 の単焦点で、焦点距離は24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm の5本がラインナップされています。ドイツで開発とテストを行い、ドイツの品質基準に沿って製造されています。鏡胴はブラックとシルバーの2色。マウントは、ソニーE、富士フイルムX、ライカM、ライカSL の4種類です。重厚感のあるクラシカルな造りが魅力的です。

写真1
 IBERIT(イベリット)シリーズ

IBERIT(イベリット)シリーズ

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Index

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1.起雲閣へ

写真2
F4

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「 アカオ ハーブ & ローズガーデン 」を出て、車で約 10 分走り「 起雲閣 」へ。

「 起雲閣 」は 1919 (大正8)年に実業家・根津嘉一郎の別荘として築かれ、1947 ( 昭和22 )年からは旅館として営業していましたが、現在は熱海市所有の観光施設となっています。インターネットで熱海を検索していた際に気になったので、立ち寄ってみました。

写真3
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日本の伝統的な建築様式と、外国の様式が融合しているモダンさがとにかく素敵!建物の隅々にまで細かい装飾が施されており、どのお部屋も優雅で、気品が溢れていました。

IBERIT で撮った写真はどこか懐かしい感じに仕上がるので、起雲閣との相性はバッチリだなと思いました。

写真4
F2.4

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旅館時代には、山本有三、志賀直哉、谷崎潤一郎、太宰治などの、日本を代表する文豪たちにも愛されたようです。実際に文豪が宿泊した部屋も公開されていて、文豪マニアな私は胸が高鳴りました。

窓の外に広がる春爛漫なお庭の光景は、この世のものとは思えないほど穏やかで美しかったです。こんな場所に滞在していたら、それは執筆活動が捗るだろうな、と思いました。

写真5
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昔の浴室も見学できます。今では見かけない黒い蛇口のひんやりと硬い質感を、IBERT がうまく表現してくれました。

写真6
F5.6

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起雲閣の目の前はもう熱海の海です。海沿いは公園として整備されていて、デッキ沿いに歩くことができます。海風が気持ち良い!

今度は、海側から熱海の街を観察したいと思い、遊覧船サンレモに乗ってみることにしました。「 サンレモ 」の船名は、1976 年に熱海市と姉妹都市になったイタリア共和国リグーリア州インペリア県にある港町「 サンレモ 」が由来なのだそうです。

写真7
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海辺にはユリカモメがたくさん。人に慣れているのでこんなに近づいても逃げません。絞りを開放にしてぐっと寄り、カモメの存在感を強調してみました。

写真8
F2.4

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遊覧船の屋根の上にもユリカモメ。影が妙にコミカルでめちゃ可愛いです。

写真9
F5.6

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いよいよ出港です。船内では、かもめのえさとして、かっぱえびせんが売られています。それを目当てにどんどん集まってくるユリカモメ。集団になると野性味が強くなってちょっと怖い。

写真10
F2.4

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屋外に出てみると、海側から熱海の街を見渡せます。改めて眺めると、熱海は、山の傾斜に沿って作られた街なのだなあと思います。

手すりにつかまっていないと、海へ投げ出されてしまうほど船は激しく揺れていました。踏ん張っているお兄さんにピントを合わせて、熱海の街をボカしてみました。50mm の適度に立体のある描写が本当に好きです。

写真11
F2.4

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遊覧船を降りたあとは、熱海の商店街をブラブラ。夕暮れ時の、昭和を感じさせる古い町並みは落ち着きます。IBERIT の 50mm は、引き絵で絞り開放にすると、心地の良い奥行き感を表現できます。こういうシーンには最高。

写真12
F2.4

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商店街に佇むレトロな喫茶店に入り、大好きなクリームソーダを注文してみました。最短撮影距離0.6mまで寄るとこのくらいです。ギリギリ席を立たずに撮影ができます。

写真13
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なんと、店内にインベーダーゲームが!コインを入れれば実際にプレイできるとのことで、早速やってみることにしました。ゲームのシステム自体はものすごくシンプルですが、ジョイスティックが細かく動かせなくてすごく難しかったです!(笑)

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2.旅の総括

熱海は温泉以外にも、こんなにも楽しいスポットがあるのだな、というのが正直な感想です。とても魅力的な街なので、取り憑かれる人が多くいるのもわかる気がしました。一日では行ってみたい場所を到底周りきれなかったので、そのうちまた街歩きにチャレンジしてみたいです。

今回は、「 1万円旅 」史上最高、お天気に恵まれた回でした。あたたかく穏やかな天候の下、熱海の春の息吹をふんだんに楽しめました。そして、IBERIT の優しく忠実な質感描写が、私の感じた熱海の春をしっかりと表現してくれたので、旅・写真の仕上がり、両方とも満足のいく一日となりました。

50mm 一本というセレクトも良かったかなと思いました。レンズ交換がなかったので、とにかく撮影に集中できました。また、オールマイティな焦点距離だったので、室内、海、料理、どのシチュエーションでも「画角が狭(広)すぎる!」というストレスはありませんでした。50mm はやはり万能。

自分の好きな場所で好きなものを好きなように撮れて、これ以上ないほど幸せな春の一万円旅でした。

< 旅の収支 >
・高速代 4,260円(往復)
・アカオ ハーブ&ローズガーデン 入場料 1,100円
・COEDA HOUSE 860円
・お昼代 1,400円
・起雲閣 入場料 610円
・遊覧船サンレモ 1,300円
・クリームソーダ 750円
———————————————-
合計 10,280円

280 円は自腹です。。。

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著者について
■ 大村 祐里子 - Yuriko Omura - ■ 1983 年 東京都生まれ 写真家( 有限会社ハーベストタイム所属 )  雑誌、書籍、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。『写ガール』にて「読書感想写真」、CAMERA fanにて「SHUTTER GIRL WORLD」連載中。http://shutter-girl.jp/