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大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第5回 熱海( 前編 )


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TOPIX

「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」のシリーズ5回目は昨今の情勢を鑑み熱海まで足を延ばしていただきました。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地 」です。今回も KIPON レンズを使い早春の熱海を切り撮ります。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部

Index

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1.本連載のルール

1万円以内で行かれるところであれば場所はどこでもOK 、かつ、好きなものを撮って良い、という夢のようなこちらの企画。第5回目は、静岡県の熱海へ行ってまいりました。

機材は、引き続きソニーα7R IV + KIPON製レンズの組み合わせを使用しています。こちらの記事は、撮影スポットガイド、そして機材選びの参考としてご覧になっていただけたら嬉しいです。(大村)

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2.目的地紹介

目的地に選んだのは、日本で一二を争う有名な温泉地・静岡県の熱海です。東京から2時間程度で行けるところはどこかな、と考えていたときにふと思いつきました。両親が熱海大好きなので、小さい頃からよく遊びに行っていましたが、終日温泉宿で過ごすスタイルだったので、熱海の「街」を歩いた記憶は全くと言って良いほどありません。そこで、街のほうには一体何があるのかを知る意味もこめて、目的地に熱海を選びました。

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3.今回の機材紹介

ボディはソニーα7R IV、レンズはKIPONの「 IBERIT 」シリーズを使用しました。

「 IBERIT 」レンズは、Eマウントの MF レンズです。開放 F2.4 の単焦点で、焦点距離は24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm の5本がラインナップされています。ドイツで開発とテストを行い、ドイツの品質基準に沿って製造されています。鏡胴はブラックとシルバーの2色。マウントは、ソニーE、富士フイルムX、ライカM、ライカSL の4種類です。重厚感のあるクラシカルな造りが魅力的です。

 IBERIT(イベリット)シリーズ

IBERIT(イベリット)シリーズ

連載も5回目。このあたりで標準レンズ一本勝負も面白いかと思い、今回は 50mm だけで撮影することにしました。

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4.「アカオ ハーブ&ローズガーデン」でうららかな春を感じる

写真1
F2.4

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3月中旬、朝7時に都内を出発し、車で走ること約2時間。9時ごろ「アカオ ハーブ&ローズガーデン」に到着。気温はすでに 20 度近く、車内でも暖房がいらないくらいの気候でした。

アカオハーブ&ローズガーデンは、断崖が続く名勝「錦ヶ浦」の地形を活かして作られたお庭です。20 万坪の広大な園内では様々な花や植物と触れ合えるとのことで、春先に訪れるにはぴったりの場所ではないかと思い、第一目的地に選びました。

入り口のピンクの壁に差し込む木漏れ日が美しく、シャッターを切りました。うららかな天気に気分がよくなり、心のなかでは「今日はいい日になりそうだ」と呟きました。

写真2
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園内に入ると、すぐに専用バスで頂上まで連れて行ってくれます。足腰の弱い方でも安心。車窓からは、咲き始めた桜もチラホラ見えました。

写真3
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バスには白いワンちゃんも乗り合わせていました。私は白い犬愛好家なので、一気にテンションは最高潮に。IBERIT は MFレンズですが、α の機能を使いピント部分を拡大すれば、バスの揺れの中でもワンちゃんの瞳にしっかりとピントを合わせられます。

写真4
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バスを降り、頂上から海の方を望みます。淡いグリーン、ピンク、ブルーに包まれた光景は穏やかで優しく、まるで平和を絵に描いたようでした。

50mm だとこういった引き絵のときも、広すぎず狭すぎず非常に使いやすいです。

写真5
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運転疲れもあったので、頂上付近にあるカフェ「 COEDA HOUSE 」でひと休憩。目の前には海と空が広がり、まさに絶景!

シュワっと気分転換したくて、アイスレモネードと熱海タルトを注文しました。絞りを開放にして、50mm の最短撮影距離である 0.6m まで寄ってみました。合焦部の描写の切れのよさが炭酸のピリッとした雰囲気を、ボケの柔らかさが、この日のふんわりとした空気をうまく表現してくれたように思います。お気に入りの一枚。

写真6
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カフェの横には、まるで空に向かって漕ぎ出しているかのような「 空飛ぶブランコ 」があります。女の子がずっと「 菅田将暉はこういうブランコ乗らないからー!!! 」と絶叫しながらブランコを漕いでいました。

えっと、どういう意味。

写真7
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カフェを出て、園内をぶらりと散歩します。所狭しといろいろなお花が咲いていて、マスク越しでも、常にいい香りが伝わってきました。

春の力強さを感じさせる、濃いグリーンと濃いピンク。気になったものひとつひとつに、MF でピントを合わせていきます。写真撮影という「行為」を噛みしめるよう味わうためには、やはりMFが欠かせないと思いました。

写真8
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チューリップもたくさん咲いていました。手前に咲いていた花を大きく前ボケとして使ってみました。IBERIT はこういう柔らかくてふんわりした描写も得意です。

写真9
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目に映るものすべてがキラキラと輝いていた一日でした。

このレンズは絞りを開放にするとボケがグルグルと円を描くような感じになりますが、それがかえって写真に春の命の勢いみたいなものを吹き込んでくれるように思いました。

写真10
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出口に到達すると、もうお昼の時間になっていました。

園内にあるイタリアンレストラン「ミッレフィオーレ」でガーデンピザを注文してみました。たっぷり野菜の上にハーブチキンやドライトマトが贅沢すぎるほどトッピングされていて美味しそう。

露出をやや落として、ピザのしっとりした感じを出してみました。IBERITの少しアンダーにしたときの忠実な質感描写がとても好きです。

後編に続く

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