大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第4回 蓼科( 後編 )
TOPIX
「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」のシリーズ4回目は前回の自粛期間とは異なり、Go To キャンペーンも開催されていることから長野県の蓼科まで足を延ばしていただきました。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地 」です。今回も KIPON レンズを使い霧~ 晴れの蓼科高原を切り撮ります。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部 |
「 予算1万円でスナップ撮影の旅に出る 」という、旅好きの私にとっては願ってもいないこの企画。
後半に入る前に再度、今回の旅の機材を再度ご紹介したいと思います。「 IBERIT 」レンズは、Eマウントの MF レンズです。開放 F2.4 の単焦点で、焦点距離は24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm の5本がラインナップされています。ドイツで開発とテストを行い、ドイツの品質基準に沿って製造されています。鏡胴はブラックとシルバーの2色。マウントは、ソニーE、富士フイルムX、ライカM、ライカSL の4種類です。重厚感のあるクラシカルな造りが魅力的です。
Index
1.北八ヶ岳ロープウェーに乗る
白樺公園自然散策路を出てすぐのところに「 白樺高原 夕陽の丘 」というビュースポットがあり、眼下に広がる悠々とした山並みを眺められます。色づいた山々に、深まる秋を感じます。
夕陽の丘から車で 10 分ほど行くと、今度は「 女の神展望台 」があります。標高 1,700m と高い場所にあるため、八ヶ岳、南アルプスの山々、八ヶ岳の裾野の広大な森を一度に堪能できます。雲の合間から差し込む光に照らされて、森の色が急に鮮やかになる瞬間がとても美しいなと思いました。隅々まで写したかったので F8 まで絞ってみました。
展望台のベンチにとんぼがとまっていたので、最短撮影距離 0.35m まで寄ってみました。35mm は 75mm よりも寄れるので、被写体に近づきたいとき便利です。絞りは開放にして、ふんわりとした空気感を出してみました。
女の神展望台から車を 10 分ほど走らせると、北八ヶ岳ロープウェイの駐車場に到着します。北八ヶ岳ロープウェイは、八ヶ岳の北端に位置する北横岳と縞枯山の間に架かり、山麓駅( 標高 1,771m )から山頂駅( 同 2,237m )までの高低差 466m を駆け上がります。蓼科に来たらここは外せません。
乗車時間は約7分と短めなのですが、刻々と変化していく山の風景から目が離せません。小さな男の子も、食い入るように窓の外を眺めていました。絞りを開放にして、絵に立体感を出してみました。
山頂駅に着くと、再び周辺が深い霧に包まれ始めました。駅付近はトレッキングコースになっており、散策もできるのですが、あまりに霧が深いのと、とても寒かったことがあり、外に出るのをやめて構内で帰りのロープウェイを待つことにしました。
駅の中のカフェでコーヒーを頼んでひと休憩。コーヒーの熱が、かじかんだ手をじんわりと温めてくれます。最短撮影距離0.35m だと、片手に持ったコーヒーも十分に撮影できます。
帰りのロープウェイに乗車する頃には、ロープ以外、何も見えないほど霧が深くなっていました。景色どころか、自分が一体どこにいるのかもまったくわからないような状態に。同乗していたおばさまが「 残念、これじゃなにも見えないね 」と嘆き悲しんでいました。
標高が下がるにつれ、徐々に霧が晴れて、周りの景色を確認できるようになってきました。
山麓の駅に近づくと、急に雲間から光が差し込んできました。駅周辺は天使の梯子に取り囲まれ、このあと神様が降臨してくるかのような光景に。思わず、心の中で「うわ〜〜ッ!」と叫んでしまいました。背後ではおばさまが相変わらず「今日は残念だった」という話をしていましたが、私は内心「いや、めっちゃラッキーでしょ!」と思っていました。
駅に降り立つと、もう夕方。そろそろ帰路につくことにしました。最後に、北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅から 20 分ほど走ったところにある蓼科湖に立ち寄ってみました。大きな雲に太陽が隠れて、漏れてくる光がドラマティックでした。
学生時代に何度か訪れた場所ですが、湖の周りはだいぶ記憶とは違っていました。ボートや行楽施設が立ち並び、かなり賑わっていました。
蓼科湖の湖畔にあるお店で牛乳ソフトを購入。テラスに座り、紅葉を眺めながら本日の締めに美味しくいただきました。充実した旅の最後には、時期を問わず、どうしてかソフトクリームが食べたくなります。
2.旅の総括
晴れ間を求めて出かけたはずでしたが、いつの間にか、蓼科のコロコロ変わる天気と自然を楽しむ旅になっていました。でも、そういった予測不可能なところが旅の面白さです。天気に翻弄されたおかげで、趣の違う絵がたくさん撮れて大満足です。
特に、霧のなかで撮影した写真は想い出深いものになりました。記事を書くために改めて見返しましたが、どれもものすごく好きです。やはり気持ちの入った写真ほど、心に残ります。
今回の旅のお供をしてくれた IBERIT の35mm と 75mm は、我ながらとても良いチョイスだったと感じました。基本は視野に近い 35mm で撮り、被写体をグッと引き寄せたい場合は 75mm を使いました。山は全体的に景色が広いので、35mm だけだとやや間延びした印象になっていたのではないかと思います。
また、IBERIT は絞り開放時の柔らかさと、絞ったときのシャープな描写が極端ですが、そのレンズの2面性が、蓼科の自然の優しさと厳しさをしっかり写してくれたように思います。
久しぶりに、好きなレンズを持って自由気ままに旅ができて嬉しかったです。心から癒やされました。あとは、1万円をうまく使い切れたのでよかったです(笑)
次の旅も楽しみです。
■ 制作・著作 ■
新東京物産株式会社
大村祐里子
スタジオグラフィックス