大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第2回 上野( 後編 )
TOPIX
「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」の2回目です。今回は上野(後編)です。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地」です。今回は KIPON レンズをおともにしました。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部 |
「 予算1万円でスナップ撮影の旅に出る 」という、旅好きの私にとっては願ってもいないこの企画。
後半に入る前に再度、今回の旅の機材を再度ご紹介したいと思います。「 四万温泉編 」では、KIPON IBERIT( キポン イベリット )シリーズ 24 mm、35 mm、90 mm を使用しました。上野編では、まだ使用していない 50 mm と 75 mm をメインで使用してみます。広い画角で撮りたいときだけ、35 mm を使っています。
Index
1.後半戦スタート!
歩き回ってお腹が空いてきたので、上野東照宮のすぐ裏手にある、上野精養軒本店「 カフェラン ランドーレ 」へ。上野の森と不忍池を眺めながら、カジュアルな洋食をいただけます。私はこちらのお店がとても好きで、よく立ち寄っています。
上野精養軒は、夏目漱石や太宰治など数々の文豪が通っていた歴史あるお店です。文豪オタクとしては、訪れるたびにテンションが上がります。あの作品のあのページに精養軒が登場したなあ……と回想しながら食事をすると、たいへん愉快な気分になります(笑)
一日 30 食限定の「 パンダプレート 」を注文してみました。スープ・ビーフシチュー・ポークソテー・パンダミルクパン・骨付きソーセージ・鶏竜田揚げ……と盛りだくさんです。美味しく、ボリュームもあり、わんぱくな胃袋を持つ私も大満足です。
お隣ではマダム二人組が楽しそうにランチしていました。お昼どきの和やかな雰囲気がとても心地よかったです。
お腹も満たされたところで、今度は駅のほうに戻り、アメヤ横丁( 以下、アメ横 )を覗いてみることにしました。アメ横は、上野駅と御徒町駅のあいだにある高架下約 500 ~ 600 メートルを中心に、約 400 店を有する商店街です。海鮮丼をはじめ、中華や韓国料理など様々な国のグルメも楽しめます。また、スポーツ用品店なども多く立ち並んでいます。
しかし、すごい人出です!見渡す限り、人・人・人!みんなお正月から何をしているのでしょうか〜?この人の波を写真におさめようと、カメラとレンズを高く掲げてノーファインダーで撮影してみました。レンズが小さいので片手でこういった撮り方もできちゃいますね。思いっきり逆光でふんわりと仕上げてみました。
よく見てみると、さまざまなお店が立ち並んでいます。こちらは果物屋さん。つやつやして美味しそうなチェリー。
なんだろう……豚の顔……?アメ横にはアジア系のお店も多数あり、海外の屋台村のような雑多な雰囲気を醸し出しています。75 mm は少し遠くにあるものを引き寄せて写すのに最適ですね。
飲み屋さんもたくさん。赤ちょうちんの下で、多くのオトナが昼間からお酒を飲み、顔を赤らめていてとても楽しそうでした。私も一杯引っ掛けようかと思いましたが、どこも入れないほどに飲み屋さんは大盛況でした。
75 mm で飲み屋さんの軒先を撮影してみました。ほどよい圧縮効果が画面に奥行きをもたらしてくれました。
人混みの中、ふと上を見上げると、お店から出た煙が空を霞ませ、渋くてかっこいい情景が広がっていました。IBERIT の落ち着いた発色と堅実な写りは、こういった裏路地のような空気感を描くのに向いていると感じました。
長時間雑踏の中を歩けないタイプなので( 笑 )たまたま見つけたレトロな喫茶店に入って休憩することにしました。地下にあって人目につきづらいからか、空いていました。あたたかいオレンジ色の光に、ほっとします。
喫茶店に来るとついクリームソーダを頼んでしまいます。50 mm でぐっと寄って撮影してみました。最短撮影距離は 0.6m と、椅子に座ったままテーブル上のものがギリギリ撮れます。
最後は、せっかくなので上野動物園へ行ってみることにしました。動物園はお正月から営業しているのです!驚き!
園内から望める不忍池には、たくさんの野鳥の姿を確認できます。ときどき、動物園で飼育されている立派な鳥が紛れていてびっくりします。
フラミンゴ。75mmという焦点距離は、檻の中にいる動物を適度な大きさで写したいときにピッタリです。
日が傾いてきた頃、柳の下で兄弟が葉っぱを取ろうとジャンプしていました。フレアを入れて、夕暮れ時の優しい空気を演出しました。
2.旅の収支
・交通費 1,000円( 往復運賃 )
・ぼたん苑 700円
・お昼代 2,680円
・クリームソーダ 700円
・上野動物園入園料 600円
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合計 5,680円
3.旅の総括
私は、日本のお正月が持つ、温かくて柔らかい、それでいてどこか背筋が伸びる凛とした空気が大好きです。今回は、KIPON レンズがまさにそんな雰囲気をしっかりと写し撮ってくれたように思います。
絞り開放にして、フレアを入れふんわりと仕上げた一枚も、やや絞って被写体の質感をかっちり写した一枚も、どちらも私の思い描くお正月のイメージそのものでした。いままで何年もお正月にスナップをしてきましたが、今回はもっとも自分の想像する「 お正月 」を写真に写し込めたように思います。
また、MF は、その場にじっくりと身を浸して撮影するような感覚があります。サッサと通りすぎていくのではなく、1シーン1シーンを噛みしめるようにして撮っていくので、この撮影では、上野を「 撮る 」だけではなく、「 楽しんだ 」という深い充足感が得られました。
■ 制作・著作 ■
新東京物産株式会社
大村祐里子
スタジオグラフィックス