大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第2回 上野( 前編 )
TOPIX
「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」のシリーズ2回目は年始の上野の風景を取り上げました。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地 」です。今回も KIPON レンズを使い年始の上野を切り撮ります。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部 |
Index
1.本連載のルール
1万円以内で行かれるところであれば場所はどこでも OK 、かつ、好きなものを撮って良い、という夢のようなこちらの企画。今回は、撮影時期がちょうどお正月(1月3日)だったので、新年っぽい雰囲気を味わえる場所を訪れてみました。前回に引き続き、ソニーα7R IV + KIPON 製レンズの組み合わせで撮影しています。こちらの記事は、撮影スポットガイド、そして機材選びの参考としてご覧になっていただけたら嬉しいです。( 大村 )
2.目的地紹介
目的地に選んだのは、都内有数の人気観光地である「 上野 」( 東京都 )です。実は、上野駅周辺の施設はお正月から営業しているところばかりなのです。ゆえに、三が日から、駅の周りに立ち並ぶ上野動物園や美術館・博物館といった文化施設は多くの家族連れで賑わっています。一方で、駅の横にあるアメヤ横丁( 商店街 )も、買い物客や外国人観光客で大盛況です。せっかくお正月に撮影をするので、新年の賑わいを肌で感じられそうな上野を目的地にいたしました。
3.今回の機材紹介
ボディはソニーα7R IV、レンズはKIPON の「 IBERIT 」シリーズを使用しました。
「 IBERIT 」レンズは、Eマウントの MF レンズです。開放 F2.4の単焦点で、焦点距離は24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm の5本がラインナップされています。ドイツで開発とテストを行い、ドイツの品質基準に沿って製造されています。鏡胴はブラックとシルバーの2色。マウントは、ソニーE、富士フイルムX、ライカM、ライカSL の4種類です。重厚感のあるクラシカルな造りが魅力的です。
「 四万温泉編 」では、24 mm、35 mm、90 mm を使用しました。上野編では、まだ使用していない 50 mm と 75 mm をメインで使用してみます。広い画角で撮りたいときだけ、35 mm を使っています。
4.上野へGO!
JR上野駅で下車したら、不忍口を出ます。西郷隆盛像の横を通って上野恩賜公園の中へ入っていきます。9時の、人もまばらな公園をパシャリ。IBERIT シリーズは、強い逆光下ではこういったフレアやゴーストが入りますが、絵になる形で入ってくれるので大歓迎です。朝の爽やかな空気感が演出できたかなと思います。
公園内から不忍池の方向へ降りる階段の上でシャッターを切りました。私は上野をよく訪れるのですが、この場所が大好きなのです!必ずここで一枚撮影します( 笑 )階段の上から緑色の屋根をした辯天堂( べんてんどう )まで一気に見渡せて、とっても気持ちが良いからです。F8 まで絞ってキリリと写しました。
階段をおりて、辯天堂へ。見上げると、カラフルなのぼりが。IBERITシリーズの控えめな色ノリは、冬という季節を描くのに合っている気がします。
手水舎には朝の光が差し込んでいて、清々しい空気に満ちていました。自然と背筋が伸びます。
不忍池のほとりにある辯天堂は、江戸最古の谷中七福神の一つで、ご本尊の弁才天(八臂大弁財天)は、長寿や芸能の守りとして信仰されているそうです。朝からお参りにいらしている方でいっぱいでした。
目の前のワンちゃんと目が合いました。ちょっと眠そうなお顔が可愛いです。
α のピント拡大機能と併せて使えば、「 あっ 」と思った瞬間に MF でも素早くピント合わせができます。また、IBERIT シリーズはヘリコイドがやや重めなので、絞りを開放にしていても、的確なピント合わせができます。
奉納された絵馬。IBERITの描写はコントラストが髙いので、こういった明暗差のある場所を力強く写すのにも向いています。
辯天堂の真横に広がる不忍池には、野鳥も多く生息しています。都会の真ん中とは思えない景観に癒やされます。フレアとゴーストを盛大に入れて、お正月の日差しの暖かさが感じられるような一枚にしました。
2、3分歩いて、上野恩賜公園の中にある花園稲荷神社へ。おきつねさまをパシャリ。IBERIT のコントラストが高く堅実な描写は、石との相性がとっても良い気がします。かたいけれども少ししっとりした石の質感をきちんと写せるように思います。このレンズを持っていると石ばかり撮りたくなります……。
花園稲荷神社は、縁結びの御神徳のあるパワースポットとして有名なのですって。通りでカップルが多いわけです。
少し歩いて、今度は上野東照宮の中にある「 ぼたん苑 」へ。苑内では 200 株の冬牡丹や、寒牡丹を鑑賞できます。蠟梅、満作、早咲きの梅などの花木もあり、まさに百花繚乱。
苑内にはところどころにお正月の飾りも。絞りを開放にして、フレアとゴーストをたくさん入れて、冬の空気の柔らかさを描いてみました。
淡いピンク色の牡丹は可憐でとっても美しいです。牡丹を鑑賞していると、真冬なのに華やいだ気分になれます。最短撮影距離の 0.6 m まで近づいてみました。もうちょっと近づけるといいな、と感じることもあります。しかし、近づけないレンズを持っていると視野が広くなる( と、私は思っている )ので、これはこれでいいのかなと思いました。
後編に続く・・・
■ 制作・著作 ■
新東京物産株式会社
大村祐里子
スタジオグラフィックス