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第26回 クラブやライブハウスでの撮影 <1> |
2005/08/24 |
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この夏、Photoshop
CS2 のレビューと、マトボッククリ集めに夢中になって、「女性の撮りかた講座」を二ヶ月近くもおろそかにしてしまった薮田でございます。皆さんお元気でしたか?
夏バテしてませんか? 私はヘベレケです。
突然ですが、今回の「女性の撮りかた講座」は番外編をお届けします。でもなぜに番外編か。それは、「撮りかた講座はどうなったんだ!手抜きもいいかげんにしろ!」という読者の怒声が聞こえてきそうな予感がするので、そろそろ撮りかた講座のネタ仕入れと趣味を兼ねて、渋谷
真理子のライブを撮影しに行ったわけなんですが、そんな私の行動を柱の陰から覗き見していたかのような、実にタイムリーな質問メールがある読者の方から届いたから……と、いうわけなんですよ。本来なら、前回の予告通りに「間接光の室内編」をお届けしなければならないのですが、生来、生真面目で通してきた私としては、読者の質問をおろそかにすることなんかデケません。だから今回は番外編として、読者の質問に答えることにしますったらします。
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●北海道は R.T さんからの質問
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「いつも勉強させてもらってます。早速、質問ですが、クラブやライブハウスで人物を綺麗に撮るテクニックを教えてください。
僕の持っているカメラは、Canon EOS kiss digital Nです。レンズは
EFS 18−55 / f3.5 - 5.6 と、EF 28 - 200 / f3.5
- 5.6 の 2 本です。何回かスナップを撮りにいってるのですが、スポットライトの赤い光が被写体に映り込んだりと、どうにもうまく撮れません。どうかご教授願います」
ちょこっと文章を勝手に修正させてもらいましたけど、そうなんですよ、難しいんですよ。なんてったって、暗いですからね。特にクラブは暗い。でも暗いからこそ隣に座ったおねぃさんの膝に手が置ける……って、そのクラブじゃない? ああ、平坦に発音するクラブですね。いずれにしても、どっちのクラブも、ライブハウスも、撮影するのは不可能といえるほど暗いんです。そして、音楽を楽しみにして来た観客がいるわけですから、基本的にストロボは使えません。
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写真0 |
薄暗いライブハウスで演奏中の渋谷真理子を、外部ストロボを2灯使って多灯撮影した写真です。ステージの上袖(客席から向かって右側)に、スレーブユニットを装着したスレーブ・ストロボをあらかじめ仕込んでおき、下袖(客席から向かって左側)からカメラに装着したメイン・ストロボの発光でシンクロ発光させています。本来、ライブ中のストロボ撮影はマナー違反ですが、この日はジャケット写真の撮影も兼ねていたので、あらかじめお客にことわってから撮影しました。
撮影データ (写真をClickで拡大)
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モデル:渋谷
真理子 |
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解説1 |
内蔵と外部ストロボの同時発光
(図をClickで拡大)
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というか、使うことはマナー違反だといえます。ここ数年、駆け出しのアーティストのライブを撮影する仕事が年に数回あって、いつもこの暗さに悩まされてきました。大きなホールとか、ライブハウスでもそこそこ規模が大きくなれば、照明も増えて被写体を明るく照らしてくれますが、それでも常に一定の明るさで、同じ場所を照らしてくれるわけじゃありませんので、カメラマンの悩みは尽きません。そんな悩みをどう解決するかのか、正直言って確実な方法ではありませんが、以下で紹介していきましょう。
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●なるべく明るいレンズを使う
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まずは失敗例から観てください。写真1は、寄りと引きの両方の写真を撮りたいために、14
- 54mm のズームレンズに、1.4 倍のテレコンバータレンズを装着して撮ったものです。持っているレンズが限られているとき、こうしたテレコンバータはとっても重宝するレンズですが、クラブやライブハウスなど、暗い撮影場所では使わない方が無難です。というのも、テレコンバータを装着すると、レンズの開放
F 値が大きくなってしまい、結果、とても暗いレンズになってしまうのです。写真1で使っているレンズは本来、F2.8-3.5
と、かなり明るいレンズなのですが、テレコンバータを装着することで、F4.0 -
4.9 と、極端に暗くなってしまいます。クラブやライブハウスに限らず、ストロボが使えない場所では、とにかく明るいレンズをチョイスすること。これが一番の基本です。できれば、F2.0
代のレンズを使い、なるべく絞りを開放にして撮影します。
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●ISO をノイズが発生しない程度に増感
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次に、写真1の失敗は、レンズの暗さやシャッタースピードの制限を補うために、ISO
感度を極端に増感していることです。写真1は、動く被写体を撮るために、シャッタースピードを
1/100 秒と高速にしています。また、寄りの写真を撮るために、目一杯ズームをテレ側にしているので、開放
F 値が、F4.9 になってしまいました。この状況で適正露出の写真にするためには、ISO
感度を 1600 まで増感しなくてはなりません。しかし、ご覧の通り、増感のしすぎで写真にノイズが大量に発生してしまいました。カメラの性能や露出の設定によって、ノイズの発生する
ISO 感度の設定値は変わるので、どの ISO 感度がベストなのかは断定できません。現場でテスト撮影を繰り返して、ノイズが出にくい
ISO 感度を選びましょう。
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写真1 |
失敗例 ストロボを使わないで撮影するには、できるだけ明るいレンズを使い、絞りは常に開放して、ISO
感度を増感させる方法しかありません。被写体は常に動いていますから、シャッタースピードを
1/100 秒より下げるわけにはいきません。この写真は失敗例として、わざと
1.4 倍のテレコンバーターレンズを装着してレンズを暗くしています。さらに、ISO
感度を 1600 に増感して撮りました。よって、こんなにカラーノイズが発生してしまいました。ストロボや補助光が使えない場所では、テレコンバータは使わずに、素直に望遠レンズを使いましょう。その方がレンズを明るく使えます。
撮影データ (写真をClickで拡大)
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モデル:渋谷
真理子 |
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●シャッタースピードを限界まで下げて、ブレないシャッターチャンスを狙う
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動いている被写体を撮影するには、できれば 1/125 秒程度のシャッタースピードは欲しいところです。しかし、レンズの明るさや
ISO 感度との組み合わせの制限で、こうした高速なシャッタースピードはほとんど不可能でしょう。結果、1/60
秒や 1/40 秒といった低速なシャッタースピードを選ばざるを得なくなります。こんなんじゃ、確実に被写体はブレてしまうと思いますよね。でも、写真2と写真3をご覧ください。これ、ふたつとも
1/40 秒で撮影したものです。周囲の暗さは写真1と同じか、それ以上に暗いライブハウスでの撮影です。なぜこんなにも遅いシャッタースピードでブレていないのかというと、被写体が動きを止める瞬間を狙って撮影しているからなんです。動きを止める瞬間とは、ロングトーンで歌っているときです。ロングトーンとは「長い音」。歌には必ずといっていいほど、同じ音を長く響かせる場面がありますよね。このロングトーンの時には、歌手は必ず動きを止めます。そこがシャッターチャンス。さらに、ロングトーンの時は、写真3のような力強い表情や、甘く切ない表情を見せてくれたりもします。まさに狙い目です。
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写真2 |
今度はテレコンバータレンズを使わず、50
- 200 mm の望遠ズームを使って撮影しています。写真1よりも焦点距離が長いのに、最小絞り値は
F2.8 と明るくなっています。さらに、ISO 感度をノイズの出にくい
800 に抑えての撮影です。ISO 感度を下げてしまったので、シャッタースピードは残念ながら
1/40 秒より速くは設定できません。なので、被写体の顔が動かなくなる瞬間、たとえばロングトーン(音を長く伸ばす)で歌っているときなどを狙って撮影します。顔以外の手などがブレても、それはそれで味になります。
撮影データ (写真をClickで拡大)
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モデル:JAM
/ 宮澤篤司 |
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写真3 |
照明による色かぶりは仕方ありません。一定の色の照明が当たっている場合は、ホワイトバランスである程度修正できますが、証明の色がコロコロ変わるライブハウスなどの場合は、色かぶりを避ける方法はありません。でも、スポットライトの色が映りこんでいる方が、ライブの臨場感が増すのではないかと思いますが、どうでしょうか? この写真は照明の光そのものをフレームインさせて、ライブ会場の雰囲気を少しでも出そうとしています。このような構図で撮るときは、測光モードを中央重点測光にして、被写体の顔で
AE ロックをかけてからフレーミングしなおします。
撮影データ (写真をClickで拡大)
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モデル:JAM
/ 宮澤篤司 |
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●測光モードは「中央重点測光」で
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最後の基本は、測光モードです。絞り優先やシャッタースピード優先など、カメラの
AE に頼って撮影するなら、「中央重点測光」モードにして測光することが大切です。環境光の暗いクラブやライブハウスで「マルチ測光モード」を使うと、被写体の顔が暗くなってしまうことがあるので気をつけましょう。「中央重点測光」モードにして、被写体の顔をファインダーの中央において
AE
ロックし、撮りたい構図へフレーミングしなおします。こうすることで、被写体の顔を適正露出に保った状態で撮影できます。
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●照明の色かぶりは臨場感の演出
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質問メールをくれた R.T さんは、スポットライトの色が被写体に被るのを懸念していますが、ある程度の色かぶりは仕方のないことだと思います。写真1と写真2の会場は照明の位置や色が固定されているので、ホワイトバランスを調整することで自然な色味を出すことができますが、写真3の会場は、ロボット制御された照明が間断なく動き、色を変えていくので、照明の色かぶりは避けることができません。しかし、会場にいる観客の目にも、同じように色かぶりした被写体が映っているわけなので、私はこうした色かぶりを肯定的に捉えるようにしています。つまり、ライブハウスの臨場感というわけです。今回、ここでは掲載していませんが、これまでにスポットライトで真っ赤にそまった写真を撮ったりもしました。それはそれで、ライブの臨場感を伝えるものだと思うのです。
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●許可がもらえるなら…
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ストロボの使用はマナー違反だといいながら、実は私はちゃっかりストロボを使っちゃいました。実は、来月に渋谷
真理子のミニアルバムが発売されるのですが、今回のライブで、そのジャケット用の写真撮影をしたというわけです。もちろん、観客にとってはストロボ撮影は邪魔になります。なので、上演前にその旨を観客に伝えておき、最小限の撮影に留めるようにしましょう。
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●多灯ストロボで撮影
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ストロボが使える場合でも、当講座で繰り返し説明してきたように、被写体への正面照射は禁物です。被写体の影が映りこんだり、被写体が平面的な写真になってしまうからです。カメラに装着したストロボは、基本的に壁や天井への「バウンス発光」です。
( 第17回 ストロボは反射させて使うを参照
) 壁や天井が黒いライブハウスでも、効果はあります。ただ、天井が高かったり、あまりに広い会場では、その効果は期待できません。そういう場合は、メイン・ストロボにディフューザーを付けて光を拡散させましょう。
さらに、スレーブユニットを装着したスレーブ・ストロボを用意して、ステージの端に設置しておき、多灯撮影をすると、より幅広い演出ができるはずです。(
多灯撮影は、第19回 2つのストロボを使った多灯撮影テクニックを参照
)
多灯撮影の際のポイントは、スレーブ・ストロボをどう利用するかです。私は、被写体に対して逆光になるように配置し、撮影するときは、スレーブ・ストロボが必ず被写体の背後にくるように場所を移動しながら撮影しました。スレーブ・ストロボを壁や天井にバウンスさせるという手もあるでしょうが、ステージの壁や天井が明るくなりすぎるのは趣がないので、私はあまりやりません。
さて、今回はとりあえずここまで。次回も引き続き、ライブハウスでの撮影ノウハウをご紹介したいと思います。「どうせ暗いなら、ブレを楽しんじゃおう」というのがテーマです。お楽しみに。
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写真4 |
写真0と同じ、外部ストロボを2灯使って多灯撮影した写真です。スレーブユニットを装着したスレーブ・ストロボは、メインの被写体の背後に設置してあります。スレーブ・ストロボは、カメラに装着したメイン・ストロボの発光でシンクロ発光します。メイン・ストロボは必ず壁や天井にバウンス発光させて使います。この会場の壁や天井は明るい色だったので、光が会場内に反射、拡散してくれましたが、たとえ暗い壁や天井でも、必ず効果があります。こうした撮影のポイントは、スレーブ・ストロボが必ず被写体の背後になるような位置で撮影することです。
撮影データ (写真をClickで拡大)
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モデル:渋谷
真理子 |
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写真5 |
メイン・ストロボの光量を落とし、背面にバウンスさせることで、被写体の正面を暗くして、スレーブ・ストロボの光で被写体のシルエットを表現します。ちょっといい感じでしょ?。
撮影データ (写真をClickで拡大)
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モデル:渋谷
真理子 |
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