|
|
|
|
第19回 2つのストロボを使った多灯撮影テクニック |
2005/03/16 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
こんにちは。一ヶ月以上もお待たせしての、めちゃ久しぶりの更新です。あまりにも久しぶりなので、お詫びの気持ちを込めて、写真も内容も少しですが、「増量」でお届けしたいと思います。
|
●暗い場所を明るくする照明
|
さて、早速ですが写真0をご覧ください。なんだか色っぽい写真ですが……、あっ、これ、先週末に北京のホテルで撮ってきたものです……、って、そんなとこはどうでもいいですね。で、この写真、どんな環境で撮ったものかおわかりになりますか? 実は、撮影時刻は夜の11時。室内の照明はほとんどすべて消して、ベッドにあるナイトライトだけが灯っている状況での撮影なんです。では、なんでこんなに明るく写っているんだと思うでしょうね。それが、今回紹介する「ストロボの多灯撮影テクニック」なんですね。
|
|
写真0 |
ストロボ2灯とビデオライトを使った撮影例。室内照明はありません。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
|
|
こうした写真を撮影するには、それなりの機材を用意する必要がありますが、そんなに高価なものではありません。使用した機材は、以下で紹介していますので、興味があったら手に入れてみてください。これまでとは一味違った女性の写真が撮れるようになるはずです。それでは、「ストロボの多灯撮影テクニック」、お楽しみください。 |
|
|
●ストロボ撮影にありがちな失敗
|
まずは、写真1の、暗い室内でストロボを使った失敗例から見てみましょう。これはおわかりの通り、カメラに装着したストロボをモデルに向かって正面照射したものです。「第17回 ストロボは反射させて使う
(バウンス)」で掲載している失敗例も同じ写真ですね。これらの写真の良くない点は、ストロボの正面照射のせいで、モデルが平面的に写ってしまうところです。モデルの肌にストロボの光が強く当たってしまうので、コントラストも強くなってしまい、けっして魅力的な写真だとはいえません。
|
●失敗を防ぐにはバウンス発光
|
こうした失敗を防ぐために、「第17回 ストロボは反射させて使う
(バウンス)」では、ストロボのバウンス発光による撮影テクニックを紹介しました。ただ、バウンス発光は文字通り光を反射させて使うので、光量が弱くなるので多少暗い写真になってしまいますし、ストロボ1灯だけの撮影になるので、被写体のモデルに比較的強く影が出てしまいます。コントラストの強い写真を撮る場合は良いのですが、女性の柔らかさを演出したいときは、どうしても他の補助光が必要になってきますね。
|
●スレーブユニットで多灯撮影
|
次に、写真2を見て、写真1の失敗例と比べてみてください。写真2は、モデルの肌を柔らかい光が包んで、写真1の強い影はまったくなく、キレイな陰影がついているのがわかると思います。
この写真2も写真1とまったく同じ場所で、撮影の照明となるような室内の灯りが一切ない場所での撮影です。使った照明は外部ストロボが2灯です。もちろん、カメラには基本的にストロボは1灯しか装着できないので、2灯目のストロボはある装置を使って発光させます。
その装置が写真3の「スレーブユニット」です。
スレーブ(奴隷)なんて言葉は悪いですが、要はメインのストロボの発光に合わせて(シンクロさせて)、ユニットに装着した2灯目のストロボを発光させるものです。そのために、スレーブユニットにはストロボを装着するためのホットシューが搭載されています。
写真3にはふたつのスレーブユニットが載っていますが、両方ともエツミの製品で、左がアナログカメラ用のもので、右がデジタルカメラ用として発売されているものです。デジタルカメラ用の方は、ストロボのプリ発光(赤目防止や露出調整のための予備発光)を検知して、プリ発光はわざと無視して、本番の発光でシンクロさせる機能が搭載されています。
ところが、当初、デジタルカメラ用を購入して試したところ、私のオリンパス
E-1
と外部ストロボ FL-50
の組み合わせでは、スレーブユニットに装着したストロボの FL-40
(オリンパス製)がまったくシンクロしなかったので、アナログ用に交換したのです。プリ発光対策機能が使えないのは残念ですが、本格的に多灯撮影する場合は、ストロボもカメラもマニュアル設定して使うし、モデルへの正面照射はほとんどしないので、プリ発光は使いませんから問題はありません。また、アナログカメラ用のスレーブユニットには、シンクロケーブルの端子も付いているので、本格的に多灯撮影したい人には、アナログカメラ用がおすすめです。
|
●三脚に取り付けて使う
|
写真4は、スレーブユニットの使用例です。外部ストロボを装着したスレーブユニットは、三脚に取り付けて使います。もちろん、カメラ用の三脚で構いませんが、カメラで三脚を使うこともあるでしょうから、スレーブユニット用に小さめの三脚を購入するとよいでしょう。
|
●ディフューザーを付ける
|
次に、スレーブ用のストロボ(以下、スレーブストロボ)の光を柔らかくするために、「ディフューザー」を用意しましょう。写真5は、ルミクエストのソフトボックスというディフューザーで、マジックテープでストロボへの着脱が容易なだけでなく、折り畳んで仕舞える収納性にも優れた製品です。
|
●スレーブユニットを延長して使う
|
スレーブユニットは、本体にある受光センサー(半球の部分)で、メインストロボの発光を検知しますが、スレーブストロボを設置する場所によっては、メインストロボの光が届かずに、スレーブストロボがシンクロ(同期発光)しないことがあります。そうした問題を避けるために、ストロボ延長ケーブルを使って、スレーブユニットだけを自由に移動できるようにしておきます。写真7が今回使った延長ケーブルで、オリンパスの「オフフラッシュケーブル
FL-CB05」という製品です。これらをすべて装着した状態が、写真6です。
ちょっとものものしくなってしまいましたが、なんとなく本格的でしょ? このセットをもう一台用意すると、もっと高度な多灯撮影ができます。例えば1灯のスレーブストロボをサイドライトにして、もう1灯をトップライトするなど…。まぁ、予算の余裕があればの話ですが、これで魅力的な写真が撮れると思えば奮発してみる気にもなるんじゃないでしょうか?
|
|
写真1 |
失敗例 カメラに取り付けたストロボだけで撮影した例。まったくの素人写真です。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
写真2 |
メインストロボとスレーブストロボを使った撮影例。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
写真3 |
メインストロボとシンクロ(同期)して、もう一灯のストロボを発光させるための「スレーブユニット」。
拡大写真 (写真をClickで拡大)
|
|
写真4 |
スレーブユニットの基本的な使い方
拡大写真 (写真をClickで拡大) |
|
写真5 |
今回活躍したもうひとつは、ストロボに取り付けて使うディフューザー。
拡大写真 (写真をClickで拡大)
|
|
写真6 |
今回の撮影で、実際に使ったスレーブストロボのセット。
拡大写真 (写真をClickで拡大)
|
|
写真7 |
スレーブユニットをスレーブストロボから遠ざけて使うために用いた、延長ケーブルです。
拡大写真 (写真をClickで拡大)
|
|
|
写真8 |
メインストロボとして使った
GN50 のオリンパス純正 FL-50。
拡大写真 (写真をClickで拡大)
|
|
|
照明4 |
写真2を撮影したときの状況。
拡大写真 (写真をClickで拡大)
|
|
|
|
■両ストロボの発光量とカメラの露出はすべてマニュアルで |
|
|
|
|
多灯ストロボ撮影するときに必要なことは、ストロボの発光量とカメラの露光をすべてマニュアルで設定することです。スレーブストロボはカメラでコントロールできないわけですから、当然といえば当然ですよね。マニュアル撮影は経験がモノを言いますが、そこはデジタルカメラ。撮影したら液晶画面で確認して、何度でもチャレンジしてみてください。一応、多灯撮影時のマニュアル設定のポイントを以下にあげておきます。
|
|
- 撮りたい絵をイメージする
- メインストロボの照射角度を決める
- スレーブストロボの位置や高さを決める
- カメラの露出を決める
- 両ストロボのガイドナンバーを決める
|
●イメージを頭で描く
|
一番重要なのが、これから撮りたい写真のイメージを思い描くことです。まず、2つのストロボを使ってどんな光と影を作るのかを想像してみてください。イメージが決まったら、2つのストロボの位置と照射角度を決めます。業務用ストロボであればモデリングライトという常時点灯しているライトによって、被写体の陰影を目で確かめることができますが、ここで紹介しているストロボは一般的なもので、ストロボが閃光した際のイメージは、撮影した後でしか確認できませんので、あくまでも想像力を膨らませて考えてください。
|
●光量の算出方法
|
さて、次はカメラの露出とストロボの光量、つまりガイドナンバー(GN)を決めるわけですが、ここが一番難しいところです。
いきなりイメージ通りの光と影の写真を撮れることは稀ですので、最初は、最適と思われる露出になる方法を覚えましょう。露出と
GN のどちらを先に決めなければならないというルールはありませんが、ここではまず露出を暫定的に決めてみましょう。例えば、写真10のようにモデルに寄って撮影し、顔以外はぼかしたいと思えば、絞りは開放に設定します。つまり、使っているレンズの一番明るい絞り値です。(シャッタースピードはまだ決めません)
絞りが決まったら、GN =
絞り値 × 距離(m) の式(「第17回 ストロボは反射させて使う」のガイドナンバーの項目を参照)に当てはめて、まず、メインストロボの
GN を決めます。例えば、絞りが「2」で、メインストロボからモデルまでの距離が「3m」だったとしたら、GN
は2×3で、「6」前後だと考えます。
但し、メインストロボをバウンス発光させるのであれば、ストロボから光をバウンスさせる壁までの距離と、壁からモデルまでの距離を足して計算する必要があります。スレーブストロボの
GN も同様の式で決定します。これも、ディフューザーを使っている場合は、式で求めた
GN では光が弱くなってしまうので、それも加味して決定します。
|
|
写真10 |
メインストロボを強めに設定して天井バウンス。また、スレーブストロボをモデルの腰の辺りで発光。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
写真11 |
スレーブストロボをズームに設定して、モデルの脚に近づけて発光。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
写真12 |
スレーブストロボをモデルの正面左の床に転がしておき、メインストロボはカメラマンの背後にある壁面にバウンス発光。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
写真13 |
天井が高く暗く、そして白い壁面のない広い場所での撮影。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
|
●シャッタースピードは?
|
最後はシャッタースピードですが、これには、使っているカメラには、ストロボにシンクロする限界のシャッタースピードがあるということを知る必要があります。ここでは長くなってしまうので、詳細は解説しませんから、使っているカメラのカタログやマニュアルを参照して、最大のシャッタースピードを知っておいてください。そして、その限界値よりも低いシャッタースピードで、とりあえず撮影をしてみてください。撮影した写真を液晶画面で確認して、暗いようならシャッタースピードをさらに遅く、明るすぎるようなら、限界値を超えない程度の範囲でシャッタースピードを早くしてください。
|
●ストロボの位置を調整する
|
最適と思われる露出が決まったら、最初にイメージした絵に近づけるために、メインとスレーブのストロボの位置や角度、さらに
GN の値を変えて、さらに、絞りとシャッタースピードも微調整してみてください。なんだかとても面倒のように感じるかもしれませんが、たくさんの経験を積むことが大切なのです。
|
|
|
|
|
最後は、前回紹介したモデルの背後から補助光を当てて、被写体の輪郭を浮き立たせるテクニックを、スレーブストロボでも試してみましょう。
これらの写真はすべて、照明5のセッティングで撮ったものですが、写真14と写真15は、メインストロボの
GN を極端に大きく設定して、さらに、メインストロボは白い壁や天井にバウンス発光させて撮影しています。これは、モデルの全身に光が回り込むようにして、全体的にハイキーなイメージを狙っています。このとき、スレーブストロボの
GN はメインストロボのそれよりも大きくして、モデルの輪郭に光の輪ができるようにしています。
同じ、モデルの背後からスレーブストロボを照射する撮影でも、写真17と写真18は、メインストロボの
GN をより小さくして、スレーブストロボの光でモデルの体の輪郭を強調させています。こうすると、かなりエロティックな写真になると思いませんか?
さて、今回で第1部の「人工光で女性を演出」はおしまいです。次回から、第2部に突入です。お楽しみに。
|
|
写真14 |
通常の照明がまったくない夜の部屋での撮影ですが、ストロボだけで十分な光を作り、1/80秒という比較的高速なシャッタースピードで撮影しました。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
|
写真15 |
影を作らずに、全体を柔らかい光で包み込むようにして撮影しました。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
写真18 |
写真17と同じ設定で、カメラマンが少し後ろにひいての撮影です。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
|
照明5 |
写真14、15を撮影したときの照明の設置状況。
拡大写真 (写真をClickで拡大)
|
|
写真17 |
モデル背面のスレーブストロボの方が強い光のため、胸の影がはっきりと布地に写りこみました。
撮影データ (写真をClickで拡大)
|
|
モデル
: 澤口留美 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|