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新・女性の撮りかた講座
第1部 人工光で女性を演出
第17回 ストロボは反射させて使う (バウンス) 2005/01/19
 
■新・女性の撮りかた講座のはじまりです
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●光がテーマ

 

  「光」をテーマにした「新・女性の撮りかた講座」。これからの第1部の数回は、タイトルとして「人工光で女性を演出」です。人工光とは、読んで字のごとく、人工的な光のこと。例えば、白熱灯や蛍光灯などの灯りですね。もちろん、カメラに必須の「ストロボ」も人工光です。第1部の「人工光で女性を演出」では、このストロボをメインに取り上げ、さらにその他の人工光を上手に組み合わせて撮影する方法を紹介します。

 さて、「人工光で女性を演出」、その手始めに、「ストロボは反射させて使う」をおおくりしましょう。

▼写真0  
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ソファに横になってもらったモデルの斜め上部に銀レフを配置して、その銀レフに向かってストロボを発光。直接ストロボを照射するのに比べて、比較的柔らかい光が当たっているのがわかります。ここでは顔にできる影とのコントラストを出したかったので、白レフではなく銀レフを使い、反射光とはいえ、より強い光が当たるようにしました。
モデル:藍 海夏
   
■暗い場所でのストロボの正面照射は絵的につまらない
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●ダメダメな写真

 

 写真1を見てください。この写真は、写真に興味をまったく持っていない人が撮る、ストロボを使ったスナップショットの例ですね。撮影場所は室内灯のほとんどない、加えてほとんどの壁が黒いという、とっても暗い室内です。こういった場所で人物撮影する場合は、それはもう、ストロボを使わなければほとんど何も写りません。で、気軽にストロボを焚いて撮影となるわけですが、でも、本講座に興味のある人なら、写真1のような撮影はしてはいけませんよね。



●ストロボは正面から照らしてはダメ

 

 写真1悪いポイントは、カメラに内蔵されたストロボでモデルに正面照射していることです。そのため、モデルのアゴの下や、背景の壁に影ができてしまいました。撮影の角度によっては、もっとひどい影ができることがあります。また、正面照射だと絵の色味も平坦になって面白みがありませんよね。肌の滑らかさも表現できていませんし、顔はお化粧をしているので白っぽくなってしまいます。さらに、壁にストロボの光が映りこんで、作品としては完全な失敗例になりました。

▼写真1 失敗例
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薄暗い室内で E-10 の内蔵ストロボを発光しています。内蔵ストロボは正面照射しかできないため、このアングルだとモデルのアゴの下や、背景の壁に影ができてしまいます。また、正面照射だと絵の色味も平坦で面白みがありませんし、お化粧をしている顔が白っぽくなってしまいます。さらに、壁にストロボの光が映りこんで、作品としては完全な失敗例になりました。
モデル : 寺崎 佑紀

 

 

 このような薄暗い室内では、ストロボの正面照射はご法度だと思ってください。写真1は E-10 の内蔵ストロボを使っていますが、内蔵ストロボは正面照射しかできないので、ワンランク上の写真が撮りたい思ったら、迷わず「外部ストロボ」を使いましょう。

   
■外部ストロボだと何ができる?
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 写真2は、私が E-1 で使っている FL-40 というガイドナンバー(*1) 40 のストロボです。本当は E-1 を使いこなすなら FL-50 という長時間発光のできるガイドナンバー 50 のストロボの方が適しているのですが……。まぁ、そのうち購入する予定です。

 さて、写真2のような外部ストロボを使うと、どんなことができ、どんなメリットがあるのでしょう。まず、写真1のような正面照射 - 直焚きともいいますが - による失敗例を回避できるようになります。それは、こうした外部ストロボの多くは、発光部分を回転させることができ、照射角度を変えられるからなのです。照射角度を変えることで、光を壁などに反射させてから被写体に照射する、「バウンス発光」にできるのです。他にも、まだまだ外部ストロボによるメリットやテクニックがありますが、今回は、バウンス発光について掘り下げていきましょう。

▼写真2  
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オリンパスの FL-40 というガイドナンバー40のストロボ。(オリンパスではフラッシュと呼ぶ) E-1 のアクセサリからは外されてしまいましたが、まだまだ現役で頑張ってくれているストロボです。
   
■色かぶりしないものに反射させる
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●テクニックと注意点

 

 それでは、バウンス発光の具体的なテクニックと注意点を紹介します。


 
  1. モデルにどの方向から光を反射させて当てるかを考える
  2. 光を反射させる壁や天井に、モデルに色かぶりするようなが色がないか注意する。黒は反射しない
  3. 反射させる所がない場合は、白や銀の紙や布で代用する
  4. ストロボの照射距離長くなることを考慮して露出補正する

 

 

 以上のことを考えて、写真3のような状況で撮影してみました。こうして撮れた写真が写真4です。また、写真0は、銀レフの位置をモデルの斜め上部に持っていっての撮影です。この撮影ではアシスタントがいたので、私がストロボを向けた方向にレフを持っていってもらうように頼んでいたので、比較的楽に、銀レフの位置を気にせずに撮影できました。

 ストロボをバウンス発光させた撮影でのポイントですが、写真のイメージをあらかじめ決めておき、反射光がどのようにモデルにあたるのかをよく考えましょう。



●色映りに注意

 

 バウンスさせた光は、光を反射させる場所に強く影響されます。例えば、青い壁に反射させれば、写真全体が青く色かぶりしてしまいます。それを狙った写真であればまったく問題はないのですが、普通にポートレートを撮るのであれば、なるべく白い壁や紙に反射させるようにしましょう。逆に、黒い壁や紙は、当たり前ですが光を吸収してしまい、反射しません。この性質を利用して、モデルに影を作るために、光源とモデルを結ぶ線の延長線上に黒い壁や布を用意するという方法もあります。私は影のある写真が基本的に好きなので、これをよく利用します。

▼写真3  
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ストロボの照射角度を変えて、モデルではなく、壁や天井などに向けて発光させることを「バウンス発光」と呼びます。この写真の場合は、アシスタントに銀レフを持ってもらい、そこにバウンスさせています。銀レフは、台所にあるアルミホイルなどを代用しても構いません。また、三脚などに立てかけておくと一人でもできます。バウンス発光のポイントは、まずモデルに向かってカメラマンの立ち位置を決め、光を当てたい方向を決めたら、そこに銀レフを置きます。この写真の場合は、モデルの背後が黒壁になっていることにも注目してください。反射した光が黒壁に吸収されて、モデルに陰影がつくようになります。


▼写真4  
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写真3の状況で撮影した写真です。ストロボはマニュアル設定にして、G.N.を 7.0 と、撮影距離にしては強めに設定してみました。なので、かなりコントラストの強い写真になっていますね。モデルの背後が黒壁なので、光がモデルの背面まで回り込まずに、顔や胸の谷間に影を作ってくれています。
モデル:藍 海夏

 

   
■ところでガイドナンバーってなに? &おまけ写真
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 冒頭で登場した「ガイドナンバー」について解説して起きましょう。

*1 ガイドナンバー(GN) ひとつ前のページに戻る

 ガイドナンバー(以下 GN )とは、ストロボを使ったときのカメラの最適露出を表す数値です。ただし、ストロボのカタログ値として使われるときは、ストロボの光量、すなわち性能を表す数値として考えていも良いでしょう。ストロボの性能としてみるときは、 GN の数が大きいほど光量が強く、小さいほど弱くなります。なお、 GN は、ISO 感度 100 を基準にしています。

 最適露出の数値としてみるときは、以下の式を当てはめます。

  GN = 絞り値 × 距離(m)

 たとえば、絞り値が 2 で、ストロボから被写体までの距離が 3m だとすると、2×3=6 ですから、 GN が 6 であれば十分な光量が得られるということになります。この式を入れ替えて、以下のようにすれば、最大 GN と距離だけがわかっているときに、最適な絞り値を得たり、最大 GN と開放したときの絞り値がわかっているときに、最長の距離を知ることができます。

  絞り値 = GN ÷ 距離(m)
  距離(m) = GN ÷ 絞り値

 たとえば、 GN 40 のストロボは、開放の絞り値が 2 の場合、20m 先の被写体を写せるということになり、また、同じストロボで 10m 先の被写体を写すときは、最適な絞り値が 4 であるということがわかります。

 さて、 GN は ISO 感度 100 を基準にしていると書きましたが、ではデジタルカメラを ISO 200 のモードに切り替えたときは、上記の式はどうなるのでしょう。 ISO 100 に対して ISO 200 は2倍の感度があるということになりますね。だとすると、 GN 40 のストロボは、 ISO 200 で撮影したときに、 GN 80 相当になるのでしょうか? 残念ながら ISO 200 では、約 1.4 倍の GN 56 相当 にしかなりません。これは、ストロボの光が放射状に拡散するためです。ストロボと被写体の距離が倍になると、光が照射される面積は「4倍」になるので、 GN を2倍相当にしたいときは、ISO 感度を4倍にする必要があるということになります。この関係を式にすると以下のようになります。

  GN = ISO 100 のGN × √( 設定した ISO 感度 / ISO 100 )

 たとえば、 GN 40 のストロボを ISO 200 で使うときは、40 × √( 200 ÷ 100 ) となり、つまり 40 × √2 で、40 × 約 1.4 = 56 となるわけです。

 

 
▼写真5  
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黒い壁や床に赤いソファのコントラストがエロチックで、モデルの魅力を引き出してくれます。
モデル:藍 海夏
▼写真6  
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女性の顔に影を作るのを嫌う人もいますが、私は結構好きですね。
モデル:藍 海夏
■ハウススタジオの紹介と次回予告
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●Studio Vintage

 

 今回の撮影は、世田谷は用賀にあるハウススタジオ「Studio Vintage」をお借りして行なったものです。都内に数あるハウススタジオの中でも品質と利用料金のバランスがとってもいいスタジオさんです。自然光が嬉しい各種部屋や、光を遮蔽してむき出しのコンクリートの部屋、そして遮るものがなにもない青空の下での撮影まで、さまざまなロケーションを提供してくれています。

 神崎洋治がお送りする「初心者向けスナップ講座 特別編」でも Studio Vintage の様子が掲載されています。そちらもご覧ください。

 さて、次回は、ストロボとその他の人工光を併用しての撮影テクニックについて紹介する予定です。お楽しみに。

▼写真7  
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Studio Vintage。スチール専門のハウススタジオです。1F、2F、そして屋上が撮影場所になっていて、さまざまなロケーションを提供してくれながらも、リーズナブルな利用料金が嬉しいスタジオです。
※一般の方への貸し出しはしていません。
   
 
初出:2005/01/19 修正:2005/06/14 このページのトップへ
 

     
 
 

     
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