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2006年 08月 02日 水曜日 |
合成写真を見破る方法? |
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月の7月7日のことですが、某民放キー局の報道から 「北朝鮮サイドが日本のメディアに見せた、横田めぐみさんの写真が合成写真かどうかを見極めて欲しい」 との電話がありました。撮影やレタッチを仕事にしている関係で、たまにこうした取材があったりするんですが、検分する写真が写真ですので、少々身構えてしまいましたよ。でもまぁ、一応専門職ではあるので、取材の要請に応えて某テレビ局へと歩いて行きました。(事務所から歩いて5分程度の場所にあるので…) それにしても、キー局のニュース番組の取材は初めてですよ。六本木にあるテレビ局のバラエティ番組は何回か出てるんですがね。そんなわけで、局までの道中、バラエティ風な話し方にならないようにと、発声練習なんかしたり、ちょっとは専門家風に見えるかななんて、商店のガラス窓に映る自分を見ちゃったりして。普段、ほとんどテレビを見ない髭も、ニュース番組となると結構意識しちゃうんだと、初めて知りましたよ。
成写真ってのは、今の技術で考えるとすぐに Photoshop が思い浮かぶと思いますが、以前はフィルムを直接加工したり、切り貼りした紙焼きプリントをもう一度写真に撮ったりして作っていました。しかし、従来のやり方は想像するだけでも手間で、大変な作業です。フィルムの加工なんか、失敗は絶対に許されませんしね。現在は Photoshop などのグラフィックソフトが登場したおかげで、合成写真が簡単に、さらに高度にできるようになりました。髭も広告写真でよく合成写真を作ります。そのおかげか、完成度の高い合成写真でも、ある程度は見破ることができるようになりました。コンピュータで合成した写真で、その実物のデータを見せてもらうことができるなら、99.9%は見破れると思います。見破るコツは、画像を拡大表示して細部を注意深くチェックします。合成写真を作成する過程においては、必ず部分的なデータの拡大縮小や変形をするはずで、その際に画像編集ソフトが勝手に作るピクセル(画素)を見つけるのです。合成写真であるなら、必ずといっていいほど、周囲と比べると不自然なピクセルが見つかるはずです。例えば、部分的にノイズがのっていない、滑らかなピクセルがあるなら、その写真は十中八九合成です。また、ノイズののり方が部分的に違っていて、その部分のノイズののり方に、ある一定の法則があるなら、これも合成だといえるでしょう。
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「写真レタッチ講座 第7回、8回、9回で題材にした合成写真です。このときのレッスンでは合成に向かない素材写真を使ったので、じっくり見なくても違和感を覚えますが、合成しやすい素材を選ぶと、見破るのも大変なほどのリアルな合成写真が作れます。 |
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ちろん、こうした方法でのチェックは、経験がものをいいます。写真を編集した画像ソフトによって、ピクセルの作られ方に違いがあります。それに、ピクセルでの判断は、合成後の実データでなければ意味がなく、リサイズして JPEG で保存した写真となると、判断は困難です。(リサイズと JPEG の圧縮でピクセルが潰れてしまうからです) そういえば2年前、初めて北朝鮮から送られてきた横田めぐみさんの写真の判定では、JPEG で圧縮された写真で判断している人がいて、人物の輪郭に白い画素があるので合成写真だと決めていましたが、その白い画素はどう見ても JPEG のブロックノイズでした。(BMPファイルで保存した同じ写真にはありませんでしたから) それはともかくとして、髭に対するテレビ局からの依頼は、北朝鮮でテレビクルーがビデオカメラで撮影した写真データを、テレビモニタで見て判断しろというものでした。これだと JPEG どころの騒ぎじゃありません。テレビ局まで来ておいてなんですが、断って帰ろうかと思いましたよ。しかし、髭も一応プロの端くれという自覚はあるので、別の方法で判断することにしました。それは極めて初歩的な方法です。 |
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ず、写真に写っているすべての影の角度と、それぞれの影の濃さ(コントラスト)を見比べます。日中の太陽の下で撮った写真なら、影の角度は同じはずですし、影の濃さも、実体と影の距離が同じであれば一様のはずです。もし、影の角度が違ったり、同じ距離にできている影のコントラストが違えば、合成写真である可能性がでてきます。このとき注意しなければならないのは、影ができている場所が地面で、カメラと地面との角度があまりないときは、地面の影の角度はあまり当てになりません。地面の凹凸によっては、影の角度が違った方向に伸びているように見えることがあるからです。そういった注意点を意識しながら影を観察したら、次は色味のチェックです。
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源がひとつの写真であるならば、写真全体が光源の色に染まります。例えば日中の屋外で撮った写真なら、太陽や太陽光が当たって光を反射させている物体の色が影響します。背景に空が映っているなら、空の色が影響します。光は様々な場所に反射して、必ず被写体にまで回り込んでくるからです。普通のスナップ写真において、空の色や周囲の色と被写体の色味が大きく異なるのなら、それは合成写真だと疑えます。もちろん、撮影時にレフ板や日中シンクロを使って、被写体に補助光を当てている場合はこの限りではありませんが…。いずれにしても、写真の色味での判断こそ、経験がものをいいます。いろいろな状況での撮影を経験し、その状況下でどんな写真が撮れるのかを知っていることが重要です。 |
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局、横田めぐみさんの写真はどうだったのかといいますと、難しかったです。件の報道番組を観ていた人なら、髭が何を言ったか知っているでしょうが、とても曖昧な回答でした。写真は2枚ありまして、1枚は屋内でもストロボ撮影したと思われる写真。もう1枚は北朝鮮の凱旋門の前で、撮った曇天下の写真。この凱旋門前の写真は、はっきり言って変な写真です。人物の色味と背景の凱旋門、空、道路の色味がまったく違うんです。人物のアゴの下にできている影と、それ以外の背景にある影のコントラストと色味が違い過ぎるんですね。古い写真だから変色しているとも言えますが、だとしたら、人物の色がもっと退色していていいと思うのです。しかし、一番退色しやすい赤系(黄色を含む)の色が退色していません。めぐみさんのスカートの赤なんて鮮やかですからね。背景だけ退色するなんてことはありえません。これはどうみても合成写真です。 |
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内の写真は、めぐみさんと金英男さん、そしてご息女のキム・ヘギョン(ウンギョン)さんが1歳を迎えた誕生日に撮影されたものです。どうやら夕方か夜らしく、カメラに付けたストロボ1灯で撮影されています。この写真については、偽物だとの判断はできませんでした。疑わしい箇所が見つからないんです。もちろん、実物を見れば、違った判断になるかもしれませんが…。
だ、あくまでも個人的にですが、この屋内の写真に関しては、本物であって欲しいと願いました。写真には、めぐみさんと英男さんに挟まれて無邪気な笑顔を浮かべている1歳のヘギョンさんが映っています。撮影の技術は未熟な素人のスナップ写真ですが、そこに登場する人物は、誰もが幸せそうな表情です。めぐみさんと英男さんの過去と現在の境遇がどうであれ、この写真を撮った瞬間だけは、きっと、とても幸せだったのでしょう。 |
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