萩原和幸の旅スナップ ~ Trip-Snap
第15回 神戸を行く<前編>
TOPIX
坂の街を旅しながらのスナップをお届けしている「 萩原和幸の旅スナップ~ Trip-Snap 」。第 15 回目は「 神戸 」からお届けします。神戸の旅に萩原氏がお供に選んだレンズは、フルサイズ対応標準ズーム「 AT-X 24-70 F2.8 PRO FX 」と「 Lensbaby Twist 60 」の2本。今回のスナップでは「 AT-X 24-70 F2.8 PRO FX 」をメインにお届けして、ぐるぐるボケが面白い「 Lensbaby Twist 60 」の魅力は後編の次回でご紹介。それではお楽しみください。 by 編集部 |
今回の「 萩原和幸の旅スナップ 」は神戸。日本の「 坂の街 」としては筆頭格では、と思われるほど、認識度の高い神戸を今回は選択。関西方面って、僕自身あまり縁がなかったし、そういえば神戸へはかれこれ四半世紀ほど訪れていないんだけど、あの大震災からの復興、私の住む横浜との共通点などを考えていたら、急に行ってみたくなった。
撮影日程中は全国的に雨。機材は最小限にしておいた方がいいな。坂の街だし、雨の中のレンズ交換は、何時なんどきでも気を使うもの。そこで、機材は本当に最小限にしよう。今回のお供の機材は、フルサイズ対応標準ズーム「 AT-X 24-70 F2.8 PRO FX 」にフルサイズ機の Canon EOS 5D MarkIII とシンプルに。それとグルグルボケで面白い「 Lensbaby Twist 60 」。グルグル効果を堪能するならフルサイズ機だな。
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直接神戸に入っても良かったんだが、せっかくだ、伊丹に立ち寄ってみることとしよう。酒好きなら、伊丹は興味津々。
伊丹は清酒醸造法発祥の地。つまり、それまでの酒は甘みの強い白濁の酒。いわゆる「 濁り酒 」だ。それを江戸時代の初期に、今では一般的な透明な酒、いわゆる「 清酒 」の製法を確立したのが、ここ伊丹の酒蔵だったわけ。今じゃ当たり前なんだけどね、透明な酒は。まあ、ドブロクも好きだけどね。
そういうこともあって、伊丹は江戸時代、酒造でかなりの賑わいだったそう。旨い酒といえば伊丹、とまあそういうことだ。
もっとも、それも今は昔。造り酒屋は2軒を残すのみとなってしまったそうだ。それでも、規模は小さいものの面影残す町並みがあり、いい感じだ。
造り酒屋さんは大変な時代だと思う。僕も静岡で随分突っ込んだ撮影をさせていただいていた「 満寿一酒造 」さんが廃業されて、すごく寂しい思いをした。酒蔵めぐり、楽しいんだよね。この連載でも、その地の酒蔵を巡ったりしているが、「 酒蔵めぐり散歩 」だけで写真撮りながらやりたいねえ。完全に呑んべえのための企画になりそうだけど。
伊丹駅から酒蔵の町並みに向かうと、商店街の裏は飲屋街。天気は予想どおりの雨。いきなりカメラを構えた看板に歓迎される。そりゃ面白い! こちらもカメラを構えてみるか、とシャッターを切る。
酒蔵周辺は、綺麗だけどやはり「 呑み 」の匂い。この樽の上で、ワイングラスに日本酒注いで、町並み眺めながら立ち飲みしたくなったよ。
現在残っている2軒の造り酒屋の一つ「 老松酒造 」前では、地元の方々は水を汲みにやってきていた。旨い酒はやはり旨い水から。仕込み水は文句なしにうまくないとね。造り酒屋さんの前では、こういった水を提供しているところが多い。ぜひ飲んでいただきたい。
でもここ、まるで町内会の案内板みたくなっている。それだけ地元の方々が多く集まるってことね。井戸端会議か!?
酒蔵が見えてくると、一気に気分が高まるねえ。周辺の新しい建物も雰囲気を合わせていて、この地区一帯で気持ちが高まる。来るのは夜の方が面白かったかもな。
この先に、もう一軒の造り酒屋「 小西酒造 」があるのだが、残念ながらまだ開店前。工場見学したかったんだけどね。先に裏手にある旧岡田家住宅と酒蔵を見ることとするか。
みやのまえ文化の郷という施設の一角にそれはある。店舗・釜屋・酒蔵からなる旧岡田住宅、店舗は兵庫県最古の街並み。歴史好きにはたまらない建物で、ずっといたくなる。……決して外が土砂降りだから、というわけではない……。
釜場。レンガの美しさとか、形の綺麗さとか、特にそういったものが感じられるわけではないのに、惹かれた。妙に息遣いを感じたからか。シャッターを切る際、構図に迷った。でも、なんでだろうなあ。
店舗から土間に向けて風が通る。通るたびにのれんが揺れる。当時の賑わいが、こののれんの揺れにリンクしているかのよう。揺れ感を出したかったが、手ぶれも同時に起きてしまうので、ここらが限界かな。ここで三脚を立てて撮影するのは無粋だな。雰囲気さえ伝われば、それで十分だと思う。
酒蔵はホールに使っている。それはいい。幾つかの酒蔵で、同じような使い方をしているのを見た。澄んだ音色を聴かせてくれるに違いない。
隣には、江戸時代後期に建てられた商家・旧石橋家住宅。つい最近まで商売をされていたという店舗では、展示か小物を売ってらしたのか、とにかく入りづらかったので、裏手の住宅のみを見学。
ここは住宅の中まで上がって見学できる。何がどう特別なものが展示してあるわけではないんだけど、時間がゆっくり動いている実感。それと作り物ではない、時間を刻んだ生活品がそそる。こういったものをじっくり撮るが、実は好き。
しっかし、すごい雨。外に出掛ける以上、雨は付きものだが、でも足が重くなることも確か。伊丹では先ほどの造り酒屋2軒で試飲だけさせてもらい、神戸に移動することに。考える以上に空が暗くなってきた。同じ雨でも、明るければ気分も違うのにねえ。
神戸へは阪急をつなぎ、三ノ宮で。まずの目的は、北野の異人館街。慣れた洋館といえば、横浜・山手の洋館街で大好きなエリア。以前行ったことがあるはずなのだが、なぜか思い出せない。でもその方が新鮮でいいか。
三ノ宮駅から歩くことに。北野坂からトーマス坂をつなぐ。途中、外観で有名なスタバを横目に。かなりの土砂降りながら、多くの観光客で賑わっている。狭い路地で傘だから、ちょっと風情がねえ……。
異人館の一つ、「 オランダ館 」に、逃げ込むように入る。すっごい雨で、中も人でいっぱい。どうやらここは、好みの香水を作ることができるらしく、いい香りがする。
元はオランダ王国総領事館として使われていたもので、その後 I.S. ヴォルヒン氏なる方のお住まいだったそう。建築は大正中期だそうだ。
民族衣装を召しての撮影ができるそうで、お嬢様方が邸内で楽しそうに自撮りされていた。撮影を頼まれた代わりに、一枚お写真を撮らせていただいた。ありがとうございます! 雨で地味な写真が多い中、このように撮らせていただけると、華やいでいいわね。感謝です! 雨が止んでいれば、外でもお願いできたのにねえ。
少し小降りになったから、異人館の中ではなく、街そのものを見てみることにしよう。もちろん、一般の方もお住まいなわけで、横浜の山手もそうだが、住まわれている人は、それはそれで大変なんだろうなあ。でもそれ以上にその雰囲気とか、景色とか、変え難いものはあるんだろうけどね。
カフェもそうだが、ウェディング関係の会社も多い。この日も土曜日ということもあり、結婚式に出席された方々を多く見かけた。せっかくだから、こういう洋館で式を挙げるのもいいなあ……と、覗いた窓から打ち合わせと思しきお二人とスタッフ。ついつい微笑んでしまう。
雨もあって、夕方はすぐに暗くなってしまった。夕方のうちにメリケンパーク方面に行ってみたかったが、挫折。旧居留地周辺をウロウロしながら、本日の宿方向へ。びしょびしょになっちまったし、一度着替えに帰ることとしよう。
こういうディスプレイってそそられる。モダンな感じがしていいじゃない! 残念ながらまだ開店していなかったけど、寄ってみたかったなあ。シチュービーフ、食べたかったな。
三宮駅の裏は裏で、たまらない光景が広がっているじゃない! 昼間っから飲めたっぽいな。こういう、ちょい飲みのお店には目がなくてねえ。かなり後ろ髪を引かれながら、泣く泣く後に。お店を物色している人たちがうらやましい~~!
ということで、改めてなみさんと夜景を眺めに出発! ……おおっと、でも今回はここまで!
激しい雨の中、頑張ってくれたなみさんのポートレートと、翌日のカットは次回! ポートレートと、翌朝撮影の神戸スナップをお楽しみに!
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萩原 和幸