萩原和幸の旅スナップ ~ Trip-Snap
第11回 静岡でスナップ・ポートレート<前編>
TOPIX
第 11 回目を迎えた「 萩原和幸の旅スナップ~ Trip-Snap 」、今回は萩原氏の故郷、駿河の国は静岡から。スタート以来スナップフォト一辺倒だった本連載ですが、次回を含めたこの2回は、モデルの「 いのうえのぞみ 」さんにご登場いただき、趣向を変えてスナップ・ポートレートでお届けします。萩原氏が旅のお供に選んだ広角、標準、望遠の3本のズームレンズ、「 AT-X 24-70 F2.8 PRO FX 」、「 AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S 」、そして「 AT-X 14-20 F2 PRO DX 」が描き出すスナップ・ポートレートをお楽しみください。 by 編集部 |
今回の「 萩原和幸の旅スナップ 」は、静岡県静岡市。私にとって、うんと想い出深いこの街、せっかくの静岡市だから、趣向を思い切って変えちゃいました! この連載、11 回目にして初めて、2人でブラブラ旅スナップ撮影を敢行! まったく、ポートレート撮影なのかスナップ撮影なのか……。それはそれ、ご覧いただく方々の、どうぞお好きに(笑)! そうよ、この連載の目的は、読者の方々に「 僕( 私 )の撮ってみたい! 撮りに行ってみたい! 」と思っていただくこと。なので、ジャンルの枠組みなんて気にしない!
ということで、今回の旅にお付き合いくださったのは、モデル・タレントの「 いのうえのぞみ 」さん。すっごく明るくてキュートな彼女。いつものこの連載なら、ひとり機材を背負って「 キツ~っ 」って感じのおっちゃんの姿が安易に思い浮かぶような、そんな撮影なのに、のぞみさんのようなモデルさんを連れ立っているだけで、そりゃ気分も変わるわよw。 初日の天候はイマイチだったけど、何気ない光景に華がフワッとあることで、画面( えづら )が良くなるわけですよ。今回の旅スナップの結論を先に書いちゃいますが、彼女や奥様がいらっしゃる方は、是非ご一緒にお出かけいただきたいってことです、はい。
今回の静岡へのお供の機材は、ニコン D610 にお気に入りのフルサイズ対応標準ズーム「 AT-X 24-70 F2.8 PRO FX 」、それと手ブレ補正機構搭載の望遠ズーム「 AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S 」、それにキヤノン EOS 7D mark IIに「 AT-X 14-20 F2 PRO DX 」。
ある意味、Tokina レンズの、現在の最高のラインナップで構成してみました! って感がする組み合わせだが、やはり今回の「 旅スナップ 」は、ひと味違うからねえ……いや、趣向がね。もっとも、二人でブラブラするスナップ撮影では、機材はできるだけ最小限にとどめたほうがいい。なぜって、重量が負担になるから。相手にも気を遣わせるし、何より行動範囲を小さくしてしまう可能性があるよね。よくよく吟味して、記念写真程度ならコンデジとか併用して、動きやすくするのって大事ですよ。
さて、スタートは静岡市の旧東海道、街道沿いの西端の集落、宇津ノ谷。今回は上り( 当時で言えば、京都から江戸方面に向かうのだから、下りですね )で、府中( 静岡市街 )経由清水方面行き、とした。時刻は正午ピッタリから。
宇津ノ谷は、旧東海道沿いの山間の集落で、いまでも当時の景観を色濃く残した地域。まるでタイムスリップしたかのような、生活感も感じられる素敵な場所。
ゆっくりと街道を歩いて進む。といっても小さな集落なので、歩いてもほんの 10 数分。でもまるでセットのようで、お互いにきょろきょろ。どこに立ってもらっても画になりそうなところ、それを抑えないと。だって「 旅スナップ 」ですからねえw。
彼女が先に歩いて、立ち止まると彼女の仕草を見る……というスタンスで。彼女の興味をもったものを教えてもらったり感想をきいたり。
一度この階段を登りきってから、集落を振り返る。この街道を今、京都側へと向かって歩いたのだが、京都から江戸に向かう旅人には、この振り返った光景は、きっと「 あー、やっと宇津ノ谷超えた…… 」って気分で見下ろしたんだろうな。
宇津ノ谷から隣の岡部宿(岡部町)に抜けるためには宇津ノ谷峠という峠を超えなければならない。これがなかなかの難所。そこで明治になってから、日本初の有料トンネルが作られることになった。一度は火災で消失するが、その後修復・改修された。そのトンネルは現存。レンガで作られたそのトンネルは、時代を感じさせる重厚さを静けさがあって、とても素敵だ。この日は鶯の鳴き声が竹林に響き渡って、その静寂さはなんとも叙情的だ。
トンネルから峠道を伝って、集落に戻る。
メインとなる旧東海道添いでも十分楽しいのだが、脇道もなかなか。ということで、ちょっとだけウロウロしていたのだが、地元の方々の生活道でもあるので、ちょっと遠慮しながら。
宇津ノ谷の次は、地理的には鞠子宿( 駿河区丸子 )となる。東海道の宿場ではもっとも小さい宿場だ。丸子と言えば、有名なのがとろろ汁。かの広重の「 東海道五十三次 」にも描かれている「 丁子屋 」という老舗店があるのだが、ここはスルー。目的が他にあるからだ。その目的は「 安倍川餅 」。静岡に来たのなら、本場というか本家というか、ようは元祖「 安倍川餅 」を食べたいのだ。
これって、実は十返舎一九の「 東海道中膝栗毛 」の逆パターン。書の中では、やじさんきたさんが府中から鞠子に向かう途中、安倍川のほとりで、有名な安倍川餅を食べようと考えるのだが、ここで食べてしまうと、鞠子の、前述「 丁子屋 」のとろろ汁を食べるのにお腹が張ってしまうから、ここは諦めて鞠子に向かう……といった下りがある。いうなれば、この逆のパターンを我々はしてみたというわけ。( もっとも、やじさんきたさんは、丁子屋に寄ってはみたものの、店の奥でとろろを擦る店主が夫婦喧嘩をしているものと勘違いをして、結局とろろ汁も食べられなかったのだが )
ということで、安倍川餅。老舗店は、ここ「 石部屋 」さん。
府中( 市街地 )に入る。駿府城下ということになるが、静岡市内でも一番の繁華街。駿府城は三重の平城。外堀と内堀(中堀)は現存。城外から城内へと、門の順を踏んで入る我々は律儀だなあ(笑)。
僕が回ると、どうしても歴史的な背景のあるところや、いわゆる神社仏閣を巡ることが多い。画として地味になりやすいところだが、のぞみちゃんと一緒なので華やかになる。
ここは大手門跡。高い石垣が続くこの場所も、ストーリーを感じる画へ。スナップのスパイスとは言い難い( ダブル主役ですから )。
駿府城の巽櫓前で、おじさんふたりと戯れるのぞみちゃん。いやあ、おじさんキラーぶりを発揮しているねえ。そのおじさん達は……おおっ、これはこれはやじさんきたさんのお二人で! のぞみちゃん、丁重にね(笑)。
駿府城公園内の紅葉山庭園もお休み。でも公園として親しまれている駿府城址がある。
駿府城は夜のライトアップを待つことにして、一旦離れることに。お城の周りは官庁街なので、徒歩 10 分程度の浅間神社まで。浅間神社には長谷通りと浅間通りの2つのアプローチがあるが、今回は長谷通りから。昔に比べだいぶ寂しくなってきてしまった長谷通りだが、是非とも頑張って欲しい。
夕暮れまでちょっと時間があるので、海にまで足を伸ばしてみた。街道からは外れるが。静岡市は、山は 3000m 級の南アルプス、海は日本一の深さを誇る駿河湾と、とてもバラエティに富んだ景色を楽しめる広い市だ。訪れたところは用宗海岸。海に行ったのは、気分転換。ずっと歴史だの神社仏閣だの、そういったものばかり見てきたから、自然に触れるというか、スッキリしていただきたく。
戻る途中、ちょっと寄り道して、今度は川へ。先ほどは安倍川に行ったが、今度はその支流となる藁科川。
頃よく陽も落ちた。ホテルにチェックインをし、急ぎ夕食に。静岡はなんでもあるところだけど、やっぱり海産物! でもその後があるので、バタバタっとしてしまった。のぞみちゃん、すみませんでした。また是非食べにきてくださいね。今度はゆっくりと。
で、駿府城公園に戻ると、巽櫓と坤櫓( ひつじさるやぐら )がライトアップされていた。
今日の撮影はこれまで! さあ、飲みにいくか! ……と思っていたが、翌日が早いこともあり、ホテルに帰ることに。「 しずおかおでん 」でちょいと一杯……なんてことにはならなかったけど、せめておでん街だけでも通ってみようか、ということで、本当に見るだけ、でした。
二日目の天気は晴れ。夏を思わせる陽射しが心地いい、そんな朝。この日は府中から清水方面に向かうことに。でも、帰りのことがあるので、結構タイト。旅はやっぱり予定を入れ過ぎると大変になるから、ゆとりを持ってのぞみたいね。
ホテルで朝食を済ませると、8時前に出発! 最初の目的地は久能山東照宮。久能山東照宮は名前の通り、東照宮( 徳川家康 )が祀られている大社。日光をはじめ全国に多く祀られている東照宮のうち、最初の東照宮が、ここ久能山東照宮。徳川家康の遺言により、この久能に埋葬されたのだ。その久能山東照宮の本殿、石の間、拝殿が国宝に指定されたので、どうしても見ておこう! ということになったのだ。
早く出発したのには訳がある。まずは観光客で連日混み合うので、少しでも空いている時間に拝観したい。現在の多くの人が、隣の日本平からのロープウェイで東照宮に向かうが、ロープウェイ運行開始時間になるとすぐに混む。だから開始時間前に参道から向かうことにしたのだ。
でもこの階段、「 いちいちごくろうさん 」といわれている 1159 段ものなが~い階段。これを登る時間も考慮。でも登った先には目の前に駿河湾が広がり、それは絶景! これを味わいたい、というわけだ。
社務所を通り、楼門 ~ 神厩 ~ 鼓楼 ~ 神楽殿 ~ 日枝神社など、多くの見所を横目に進むと、いよいよ久能山東照宮・社殿が見えてきたのです! 先にこちらを拝観させていただかなければ!
ご好意で社殿の中に入らせていただけることに。普段は、一般参拝客は入ることができない。国宝ですからね! 国宝! ドキドキするねえ。
社殿の装飾に圧倒! 平成の修復で、建立当時によみがえった極彩色の、目に飛び込む鮮やかさといったら。そればかりじゃない! 彫刻や絵など、当時の技術の粋の結集させた文化的価値の重さというか。言葉が不十分で、見合った単語が見当たらないのだが、とにかく凄い!
社殿は、本殿と拝殿と、それをつなぐ「 石の間 」と呼ばれる一段低い部屋から成り立っている。この「 石の間 」を持つ社殿の構造や様式が、いわゆる「 権現造 」だ。
丁寧にご説明くださった。ありがとうございます!
二人ですごかったねえの連発。日光も凄いけど、距離感というか、違う意味での圧倒感がある。私は日光よりも久能山東照宮の方が好きだ。神廟を拝見し、戻りながらもため息の連続だった。
さて、ここから清水に移動…だが、今回はここまで! 次回は由比 ~ 蒲原地区からスタートします! のぞみちゃんのポートレートもたっぷりお見せしちゃいますので、そちらもお楽しみに!