Rotolightで撮るシネマティック・ポートレート～お耽美写真家KayのLEDライトレビュー

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１．定常光と瞬間光を１台で制御できるAEOS 2 & NEO 3

大きいLEDライトが AEOS 2、小さいLEDライトが NEO 3

「 1/8000 秒でシンクロします。」

普通のカメラマンであれば「？」マークが頭を埋め尽くすはずです。なぜならば、一般的なストロボ撮影で設定する際のシャッタースピードは1/125 秒や 1/160 秒、どんなに速くても 1/400 秒と言ったところです。結論から先に言います。今回のメインビジュアルでの撮影データはこんな感じです。

使用カメラ/NikonD850 24-70f2.8G
ISO400
F2.8
1/8000 秒と1/4000 秒

今回は時間的余裕がなく見送りましたが、この数値は日中シンクロでの超ハイスピード撮影の可能性の高さを示すものです。
また、Rotolightは映画撮影向けの照明も開発しています。仕事で映画やドラマの現場に行くことが多く、また、映画スタジオで写真撮影する機会もあるのでとても興味深い話です。

通常のLED照明は、撮影用の高演色製品であっても RGBW の4色の基盤が入っていることが普通ですが、Rotolight は RGBWW の5色で、暖色系のホワイトが一色多く構成されています。
演色性とはライトの色の綺麗さを表す、今流行りの数値です。Raという値で表記されますが、Ra95より高い数値が高演色と言われています。

簡単にいうと色がとても綺麗なのです。

実際にAEOS 2の色温度を5600Kに設定してカラーメーターで計測してみました。

驚異的な数値です。実際の設定との誤差は僅か36Kしかありません。単位の読み方はケルビンです。簡単に説明すると晴天時の太陽光の一般的な実測値が5500Kになります。

分かりやすい比較として一般家庭用のLEDの数値を載せておきます。

非常に優秀な数値であることがわかると思います。

映画やドラマの撮影現場で、LEDライトが急速に普及してきているせいで、ライト側の設定数値がどこまで信用できるか怪しいものが多いという話をいろんな撮影現場で耳にします。Rotolight のこの数値はとても優秀で何より信頼性の高さを示すものです。

測った数値を詳しく説明してみます。僕は特に写真で重要なものだけに絞ってカスタム表示させる設定でカラーメーターを使っています。CCT は色温度、CCi は色被りの補正値、Raは演色性、グラフはスペクトル波形です。Rotolight の実測数値は非常に優れていて、最近よく目にするようになったRa演色平均値は95 以上で高演色であることを示しています。

２．AEOS 2 & NEO 3 が可能にするシネマティック・ポートレート

今回撮影をするにあたり担当の方からとても熱いメールを頂きました。その熱意に応えるために僕はいくつかのビジュアルを提案しました。その中で、日本から世界に対して発信していく事を踏まえ「 Japanese New Traditional 」を作品のテーマとして撮影に臨む事が決まりました。

撮影チームは、フランスで開催されているジャパンエキスポの日本伝統ブースプロデューサーでもある、ヘア＆メイクアップアーティスト美呼(MIKO)さん、元ケラ専属モデルの東 真千子さん、フラワーディレクターの相壁タクトさんにお願いしました。

作品の方向性について話し合いを続け、最終的なテーマは「水引」(みずひき)に決定しました。「水引」とは祝儀などに用いられる飾り紐のことで、息災の祈願や人と人とを結ぶ意味合いを持った日本の伝統文化です。それを耽美的作品に仕上げることで、世界と日本を結ぶ意味合いを込めて作品作りをして行くという事で方向性を固めました。

ぶっちゃけた話をしてしまえば、撮影当日の明け方4:00まで打ち合わせをしていました。撮影場所は、指定文化財の古民家です。

僕は「ストロボのマエストロ」の異名をいただいています。それだけ照明は信頼性の高いものを選んでいますが、演色性については先に述べた通り安定した数値が計測されました。では、今回一番の「？」でもある 1/8000 秒で同調可能な表現へのチャレンジをどうしようか考えてみました。なびく髪の毛の一本一本をしっかりと止める撮影をする事はすぐに思いつきました。

もうひとつのテーマとして考えていたのが「シネマティック・ポートレート」です。想像上の架空の映画仕立てで、ドラマティックを超えたシネマティックな作品作りを目指したいのです。

つまり「色の演出」です。

Rotolight はあらゆる色彩を簡単に作り出すことが可能です。フルカラーのタッチスクリーンディスプレイと物理的なダイヤルが搭載されていて、タッチ操作でも、ダイヤル操作でも素早く簡単に目標の数値に設定できます。操作はとてもシンプルで、ホームボタン押してホーム画面から色温度設定画面か色彩設定画面を表示させて、タッチするか、ダイヤルを回すだけです。ダイヤルの操作性も安定していて、素早く目標の数値に設定できます。目標とする数値がよくわからない場合は、見た目の色を変更しながら好みの色に設定が出来ます。

まずは、ウォーミングアップとして 1/8000 秒でなびく髪の毛の一本一本をしっかりと止める撮影です。と言っても、この試み自体がすでにウォーミングアップの域を超えちゃってるかも知れません。

全ての Rotolight 本体とコマンダーをフラッシュモードに設定します。

３灯の多灯ライティングで、全てのライトを 1/8000 秒の超高速シャッタースピードの撮影で同調させます。モデルにあたるメインライトは画面右から、NEO 3で設定は 4600K。画面左からふわりと髪の毛が揺れる様を見せるためにアクセントライトとしてNEO 3を同じ設定で配置しています。背景の障子の裏側に AEOS 2 を配置しています。

３．AEOS 2 & NEO 3 ならフィルターでしかできなかった表現を可能にする

撮影データ　ISO400　F2.8　1/8000秒　WB4000K

イメージしたのは行燈の光と月明かりです。
背景の障子裏側の AEOS 2 の色温度を 3000K と 10000K に変更するだけでイメージがガラッと変わります。このイメージは障子裏側のAEOS 2を3000Kに設定して撮影しています。RGB ではなく、色温度のブルーとアンバー、僕も好んで使うフィルター効果です。
そうです。今まではフィルターでしか出せなかった表現を LED ならではの色を即時に変更できる利点を活かす事で、行燈の光と月光の光を素早く変更する事が可能なのです。

撮影データ　ISO400　F2.8　1/8000秒　WB4000K

AEOS 2 の色温度設定を 3000K から 10000K に変更しただけですがガラリと雰囲気が変わりました。撮影データは同じです。
ただ、これだけだとシネマティックとまではいきません。では１灯増やして、さらにファンタジーシネマティックな演出にチャレンジしてみたいと思います。

撮影データ　ISO400　F2.8　1/8000秒　WB10000K

最初の行燈の光の中で、緑がかったシアン系の怪しい光を足してみました。こういう色表現が即座に感覚的に演出できるのが Rotolight です。

しかもシャッタースピードは1/8000 秒。

なびく髪の毛の一本一本を表現することは、高価なストロボでしか出来ませんでしたが、1/8000 秒でシンクロする LEDフラッシュがそれを可能にしています。一般的な定常光や、閃光時間が 1/1000 秒程度のストロボでは不可能な表現です。動画ではなおさら無理で、とても写真的表現のひとつです。そう、動画では無理なのです。

４．フリッカー・フリー。超ハイスピード動画撮影が可能

「動画では無理？」

ここであることに気づきました。

フリッカーが出ていない！

一般的に LEDライトは高速シャッターを使えば使うほどフリッカーと呼ばれる格子模様が発生しやすくなります。HSと呼ばれるハイスピード撮影では、映画だと秒間に24コマ、一般的なドラマなどでは30コマの画像が記録されており、これを60コマや120コマに増やすことで滑らかなスロー表現を可能にしています。つまり、動画カメラを 1/120秒 や、1/250秒 などのシャッタースピードに設定して撮影するわけですが、ここでネックになるのが、高速シャッターになればなるほど発生しやすくなるフリッカーです。ですが、1/8000秒 という超高速のシャッタースピードで撮影しているにも関わらずフリッカーは全く発生していません。

そこで、 5 倍スーパースローのハイスピード撮影にチャレンジしてみました。シャッタースピードは1/250秒です。ハイスピード撮影でもフリッカーは発生しませんでした。Rotolight の LEDライトは、フリッカーが生じないフリッカー・フリー仕様なのです。

５．AEOS 2 & NEO 3 の光が演出する「水引」の世界

さて、ウォーミングアップも終え、十分な性能がある事が確認できました。

ヘアメイクアップを進めながら、花の作品がある程度仕上がった段階で、ライティングを作っていきます。考え方は先ほどの考え方と同じです。イメージの舞台となる時間帯や、ロケーションの中にある光の意味を考えながらまずベーシックな光を作り上げます。そこから巨大な花のオブジェに怪しい光を演出していきます。花の仕上がりも見ながら被写体を照らす光も細かく設定していきます。

イメージの舞台となる時間帯は夜。
月明かりと行燈の光が融合する中で花のオブジェに怪しい演出しつつも、モデルにはノーマルな色を残しつつも行燈の色を残した 4600K に設定します。
障子の裏側の光には、行燈をイメージして蝋燭の光に見立てた 3000K に設定した AEOS 2 を仕込みます。月明かりに見立てた上手の AEOS 2 は他への影響の出ない被写体のみに演出できるようにバーンドアをつけて絞り込みます。10000K です。

花を演出する光の２灯は被写体同様の 4600K です。
カメラ側のWBはマニュアル 5000K に設定して全ての Rotoright をフラッシュで同調させることで、超高速のシャッタースピード使って撮影することが可能になります。
部屋に舞う白い羽毛で、陰影のコントラストを強調することでポジティブなイメージとシネマティックでファンタジーなイメージを同時に表現したいと考えました。

撮影データ ISO400 F2.8 1/4000秒 WB5000K

Rotoright はもちろん通常の LED定常光としても撮影が可能です。
全ての Rotolight を定常光モードに設定し、また、画面右側から花のオブジェにあたってる光を怪しい紫寄りのブルーに直感的に変化させてみます。カメラのシャッタースピードだけを1/250に設定して撮影開始です。

撮影データ ISO400 F2.8 1/250秒 WB5000K

TTLコマンダーでグループ分けをしてそれぞれのグループの色味、出力などをコントロールできます。

６．可能性を感じる新機軸のライティング機材 AEOS 2 & NEO 3

今回さまざまな撮影にチャレンジしました。なぜなら、Rotolight はそれだけの可能性を感じられる新機軸のライティング機材だからです。最高の撮影チームを組み、みんなで話し合い、意見を言い合い、日本から初めて発信する作品作りに取り組みました。

最高の機材、最高のスタッフと熱い思いで取り組めるだけの可能性と性能をマッチングできるもの、それが Rotolight だと思いました。スタッフと話し合い、基本テーマである「和」をどこまで掘り下げ、どこまで広げるか、H＆M の美呼さん、フラワーコーディネーターの相壁タクトさんに美術設計をお願いし、新しいけど分かりやすさを目指しました。不安としては LEDライトである事が、繊細な花々の美術の色味などに破綻をきたさないかどうかでしたが、実際撮影し、仕上げてみると、複雑で彩色鮮やかな花々の表現に破綻は一切ない、完璧なシネマティックイメージが出来上がりました。

こちらは今回の撮影時のライティング配置図です。

スタッフ
Model :東　真千子（MachikoAzuma）
https://twitter.com/machiko801

Hair & Make-up :Miko (KIRIE代表)
http://kirie-jp.com

Head dress :須田ユカリYukari Suda
https://stringworks.thebase.in

Flower director相壁 琢人Aikabe Takuto(ahi.)
https://www.ahi-aikabe.com/

Rotolight 製品ページ
https://dirigent.jp/rotolight/

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