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薮田織也のデジカメ1・2・3
第8回 露出設定の基本を覚えよう ~ 絞り

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TOPIX

今回の薮田織也のデジカメ1・2・3は、前回の「 シャッタースピード 」に引き続き、露出設定の要のひとつ「 絞り 」について紹介します。絞りとはどんなもので、それを使うことで写真がどう変化するのかを、まずは概念として理解していただきます。

 

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■ 絞りとは

● 絞りってなに? どこにあるの?

写真01 絞りはレンズの中にある レンズ内に組み込まれた、複数枚の板を組み合わせた「 絞り羽根 」で、光が通る穴の大きさを調節する機構が「 絞り 」。

写真01 絞りはレンズの中にある
レンズ内に組み込まれた、複数枚の板を組み合わせた「 絞り羽根 」で、光が通る穴の大きさを調節する機構が「 絞り 」。

カメラの「 絞り 」とは、レンズを通る光の量を調節する機構のことです。目でたとえると、シャッターが瞼(まぶた)で、「 絞り 」が虹彩に当たります。人の目の虹彩は、暗いところでは大きく開き、明るいところでは小さくなるのをご存じですよね? この虹彩と似た動きで、光の通る量を調節する絞りを「 虹彩絞り 」と呼びます。現在のデジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラのほとんどは、この「 虹彩絞り 」を採用しています。

 

一般的なデジタル一眼における「 絞り 」は、カメラの「 露出モード 」( 後日解説 )を「 マニュアル 」( 後日解説 )か「 絞り優先モード 」( 後日解説 )にすると手動で調節できます。「 プログラムモード 」( 後日解説 )と「 シャッター優先モード 」( 後日解説 )の場合は、カメラが自動で調節します。

一般的なデジタル一眼では、絞りを調節するダイヤルが用意されていて、ダイヤルを回すことで調節できます。このダイヤルの場所はカメラによって異なり、複数あるダイヤルのどれに割り当てるかを変更できるので、カメラのマニュアルを読んで位置を確かめる必要があります。

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写真02 絞りの調節と表示
絞りの調節は、カメラで絞り設定を割り振ったダイヤルで行ない、調節された絞り値は液晶パネルに表示される。( 写真は Nikon D7000 の場合 )

 

● 絞りの形状とそれによる絵の変化

絞りの機構は、一般的なデジタルカメラではレンズの中に組み込まれています。

絞りの構造は、中央に光が通過する穴ができるように、複数の黒い板( 絞り羽根と呼ぶ )を重ねて作られています。(?写真03?)絞り羽根の枚数はレンズによって違い、5~9枚程度で構成されていて、その枚数によって穴( 開口部 )の形状は5角形や9角形になります。この開口部の形状によって、絞りを開いたときの光がボケる形状や、絞りを閉じたときにできる光芒の形状に影響を与えます。

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写真03 絞り羽根の形状
Nikon AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G。50mm 単焦点レンズ。このレンズの絞り羽根枚数は 9 枚で、限りなく円形絞りに近づける努力をしている。

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写真04 開いた絞りによる玉ボケ
絞りの開口部を大きく開き、映る光をボケさすと光が丸くボケる。これを玉ボケと呼ぶ。絞りを少し閉じた状態でぼかすと、玉ボケが絞り羽根の形状になる。写真は7枚絞りのレンズで撮っているので、7角形になっている。

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写真05 絞り込みによる光芒
ピントが合った状態で絞りを大きく閉じていくと、光るものに光芒が現れる。このときの光の本数や形状に絞り羽根の枚数が影響する。絞り羽根の枚数と光芒の本数が同じとは限らない。

 

● 絞りリングがあるレンズ

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写真06 絞りリングの無いレンズ
最近の一般的なレンズには絞りを調節するリングは搭載されていない。

レンズによっては絞りリングが搭載されていることがある。絞りリングの位置はレンズによって異なる。

写真07 絞りリングの有るレンズ
レンズによっては絞りリングが搭載されていることがある。絞りリングの位置はレンズによって異なる。

一部のレンズと、古いフィルムカメラのレンズでは、「 絞りリング 」という絞りを調整するリングが鏡筒部分にあり、これを回すことで絞りを調節します。最近のデジタル一眼ではカメラ本体でレンズの絞りを調節するので、レンズ側に絞りリングは必要ありません。最近のレンズなのに絞りリングが搭載されているものは、カメラ本体に絞りを調節する機能のない古いカメラなどに装着して使えるようにしているものです。

 

 

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■ 絞り値

● 絞り値と開口部の大きさ

写真08絞り値と開口部の大きさ

写真08 絞り値と開口部の大きさ

 

絞りは絞り羽根の開口度合いにより、特定の数値で表わされます。これを「 絞り値 」または「 F値 」と呼び、f2.8 や f5.6 などと表記します。(*1)「 F値 」が小さいほど絞り羽根は大きく開口して、レンズを通過する光の量は多くなります。逆に「 F値 」が大きくなると、絞り羽根は小さく閉じ、レンズを通過する光の量は少なくなります。

実際のカメラで使える絞り値の範囲は、装着しているレンズの性能によって異なります。レンズで使える一番小さな絞り値(「 最大絞り 」または「 開放 F 値 」と呼ぶ )が f/1.2 といった、極めて明るい絞り値が使えるレンズもありますが、手頃な標準ズームレンズでは f/2.8 あたりが一般的だと言えます。望遠レンズや広角レンズになると、開放 F 値は f/4.0 などと、比較的大きな値のものが多くなります。また、レンズで使える一番大きな絞り値(「 最小絞り 」と呼ぶ )は f/16 ~ f/22 あたりが一般的ですが、レンズによっては f/32 や f/57 まで絞れるものがあります。

 

● 絞り値のステップとその意味

●絞り値のステップ
f/1.4 f/2.0 f/2.8 f/4.0 f/5.6 f/8.0 f/11 f/16
1.6 1.8 2.2 2.5 3.2 3.5 4.5 5.0 6.3 7.1 9.0 10 13 14
← 明 ・ 暗 →

 

絞り値は f/1.0 から始まり、基本的なステップは √2 倍( √ は平方根 )で次の絞り値に移行します。√2倍は約 1.4 倍です。よって、レンズの基本的な絞りのステップは f/1.4、f/2.0、f/2.8、f/4.0、f/5.6、f/8.0、f/11、f/16 といった感じになります。絞り値を √2倍すると、レンズを通る光の量は 1/2 になります。逆に絞り値を 1/√2 倍すると、レンズを通る光の量は2倍になります。

この √2倍または 1/√2倍のステップを専門用語で「 段 」と呼び、現在の絞り値から √2倍暗い絞り値へ移行することを「 1段絞る 」、逆に現在の絞り値から 1/√2倍明るい絞り値へ移行することを「 1段開ける 」と表現します。

最近のレンズは各1段の間に2つの絞り値が選べるものが多くなりました。たとえば f/2.0 と f/2.8 の間に f/2.2、f/2.5 が選べます。つまり 1/3 段刻みで絞りが選べるということです。こうしたレンズを使っているとき、絞りを1ステップ前後に動かすときは、1/3 段絞る、1/3 段開けると表現します。

●1段と 1/3 段
一段 f/2.8 f/4
1/3段 f/2.8 f/3.2 f/3.5 f/4

 

※01 F値の大文字と小文字
絞り値の「 F 」の部分を大文字で表記するときはレンズの性能としての一番明るい絞り値を、小文字で表記するときは実際に撮影したときの絞りの値を表わすことによく使われるが、最近はすべて大文字で表記することが多くなっている。

 

 

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■ 絞りによる明暗とピントの合う範囲

● 絞りの変化による明暗

それでは実際に絞り値を変化させることで、写真がどのように変化していくのかを見てみましょう。下の写真09?は、シャッタースピードを 1/80 秒に固定して、絞り値だけを f/2.8 から f/8.0 まで、1段ずつ変更して撮影したものです。これによると、絞り値が小さい( 絞り羽根の開口部が大きい )ほど写真は明るく、絞り値が大きい( 絞り羽根による開口部が小さい )ほど写真は暗くなることがわかります。

写真09絞りを1段ずつ絞って撮影 シャッタースピードを 1/80 秒に固定して、絞りだけを f/2.8 から f/8 まで1段ずつ変更して撮影。徐々に暗くなっていくのがわかる。

写真09 絞りを1段ずつ絞って撮影
シャッタースピードを 1/80 秒に固定して、絞りだけを f/2.8 から f/8 まで1段ずつ変更して撮影。徐々に暗くなっていくのがわかる。

 

写真09?では写真の明暗だけに注目してもらいましたが、よく観察するとピントの合う範囲が前後に変化しているのがわかると思います。この変化をもっとわかりやすくするために、写真10?を用意しました。

写真10?は、絞り値を変化させても写真の明るさが一定になるように、シャッタースピードを調節して撮ったものです。( この方法は後日解説します )ここで注目してもらいたいのは、ピントが合っているように見える前後の範囲の変化です。

写真10絞りの変化によるピントの合う範囲 一番手前に大きなボトル、少し離して小さなボトル、一番奥にフォトフレームを置き、小さなボトルの表面にピントを合わせる。絞り値を最大開放値 f/1.4 から f/11 まで2段ずつ変化させて4枚撮影してピントの合う範囲の変化を見た。なお、絞り値を変えることによる明るさの変化は、シャッタースピードを変えることで相殺して一定の明るさになるようにしている。

写真10 絞りの変化によるピントの合う範囲
一番手前に大きなボトル、少し離して小さなボトル、一番奥にフォトフレームを置き、小さなボトルの表面にピントを合わせる。絞り値を最大開放値 f/1.4 から f/11 まで2段ずつ変化させて4枚撮影してピントの合う範囲の変化を見た。なお、絞り値を変えることによる明るさの変化は、シャッタースピードを変えることで相殺して一定の明るさになるようにしている。

 

写真10?でわかることは、絞り値が小さい( 絞り羽根の開口部が大きい )ほどピントの合う範囲は前後に狭くなり、絞り値が大きい( 絞り羽根による開口部が小さい )ほどピントの合う範囲は前後に広くなることがわかります。

こうしたピントが合う前後の範囲のことを「 被写界深度 」と呼びます。被写界深度に関する詳しいことは、後日解説します。

 

 

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■新企画・あなたの質問が本 ?Web講座を作る!

● 質問待ってます!

超初心者向けに始まった長期連載「 薮田織也のデジカメ1・2・3 」では、読者の皆様から撮影やカメラについてのご質問を募っています。いただいたご質問への回答は、本講座、またはメールマガジンに掲載する予定です。

「 撮影での悩み 」、「 カメラのココがわからない 」など、質問したいことがあれば以下のリンクからドシドシお寄せください。質問は無料です。リンク先の注意事項をお読みいただき、ご了承の上で質問をお送りください。

 

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■次回予告

●?次回は ISO 感度

絞りについての概要は理解していただけたでしょうか。前回のシャッタースピードと同様に、今の段階では概要だけを理解してもらい、次回の ISO 感度以降の記事で、露出設定のノウハウについて紹介していく予定です。お楽しみに。

 

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著者について
■ 薮田 織也( Oliya T. Yabuta )人物・光景写真家 ■  1961 年生まれ。テレビ番組制作会社、コンピュータ周辺機器メーカーの製品企画と広告制作担当を経て、1995 年独立、人物写真家に。2000 年よりモデルプロダクションの経営に参画し、モデル初心者へのポージング指導をしながらポージングの研究を始める。2008 年「モテ写: キレイに見せるポージング」を共著で上梓。2003年か らStudioGraphics on the Web の創設メンバーとして活動。近著に「 美しいポートレートを撮るためのポージングの教科書 」( MdN 刊 )、監修書籍に「 ちょっとしたコツで10倍かわいく見える モテ[写]の教科書。」(MdN 刊)がある。公益社団法人 日本広告写真家協会 正会員