第3回 Cokin フィルターを使ったフラット光でのポートレート
TOPIX
ポートレートを中心として雑誌の表紙やコマーシャルフォトで活躍中の写真家、萩原先生がお送りする Cokin レンズフィルター講座の第3回目です。今回から3回に分けて、ポートレートでよく使われるハウススタジオでの撮影を紹介します。今回は、フラット光での ポートレートで角形フィルターの効果を見ていきます。
■ SCENE 1 フィルターが演出する時間表現
● ハウススタジオとは
今回から 3回にわたって、ハウススタジオにてフィルターを使ったカットを紹介していく。ハウススタジオは、ポートレートではよく使われる撮影場所だ。多くのスタジ オでいくつものバリエーションが撮れるようになっている。そこで、今回は『フラット光でのポートレート』を念頭に、作例を紹介してゆく。
本連 載の最初にも述べたが、フィルターの選択や露出については「正解」いうものはなく、個人個人のイメージにあった写真が撮れるかどうかのほうが重要だ。そこ で、本講座の作例は、あくまでも提案であると同時に、読者の方々が使用される際の参考にしていただきたいという気持ちのもとに、さまざまな条件の効果を感 じ取って欲しい。なお、今回は多くの作例を紹介するため、露出の違う写真の効果を分かりやすくするために、写真を並べて紹介しているが、各写真は、本文中 のリンクから拡大表示できるようにしているので、参考にしてほしい。
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作例1は、爽やかさを感じるダイニングでの撮影。朝の雰囲気をイメージしている。左側がフィルターなしの撮影(写真1-1)だが、爽やかさを強調するため、「シアン」( P050 / A050 )を試してみたのが、真ん中の写真1-2だ。ただし、いわゆる“適”の露出では、シアンの色味が強く感じられたので、右側の写真1-3のようにオーバー目で撮影してみた。ハイライト部はクールな色味に、シャドウ部はシアンが残り、深呼吸したくなるようなすっきりした印象になった。思い切ったオーバー露出のほうが、このシーンにはふさわしかったようだ。
作例1 P050使用例
作例2 P036 使用例
作例3 P026使用例
同じライティングで、寄りでも撮影したのが、作例4だ。写真4-1がフィルターなしの状態だが、引きの撮影では背景のカラーや状況も、フィルターカラーのマッチングに大きな影響をおよぼす。とくに、寄りでの撮影はライティングと肌の色の調子、それに表情が大きな要素となるので、同じフィルターを使っても印象が変わることが多い。
そこで、寄りのカットにおけるフィルターの効果を、引きのカットを参考に好みの露出で撮影してみた。具体的には、写真4-2の「シアン」( P050 / A050 )ではオーバー目、写真4-3の「 FL-W 」( P036 )ではアンダー目、写真4-4の「ウォーム 81A 」( P026 / A026 )でもアンダー目といった具合だ。これらの作例を見ても分かるとおり、とくにP050は引きのカットの方が情報が多い分、シアン色の違和感が少ない。P036ではしっとりした雰囲気が似合うようだ。
作例4 寄りのフィルター効果1
■ SCENE2 ガーリーで可愛らしく
● フィルターで雰囲気も演出
そこで、まずは可愛らしさの強調ということで、ソフトに表現できる「パステル1」(P086 / A086)を使って撮影してみた(写真5-2)。パステルは、光を拡散させて、コントラストを和らげる効果があり、心地よいソフト感が好印象だ。ソフト系フィルターは、オーバー目のほうが効きが顕著に出るので、少しだけオーバー目で撮影してみると、写真5-3のように、ハイライト部の光の広がり具合が大きい分、こちらの方がソフト感が大きい。ただあまりオーバーにし過ぎると、せっかくのサイド光によるメリハリがなくなってしまう上、コントラストがさらに低くなってしまうので気をつけたい。
作例5 P086使用例
作例6 P671・P006使用例
さて、ここでも寄りのカットを比較しておく。作例7の写真7-1がフィルターなしの状態、写真7-2が「パステル1」(P086 / A086)、写真7-3が「フルーピンク」( P671 / A671 )、写真7-4が「イエローグリーン」( P006 / A006 )による撮影だ。これらの作例を見ても分かるとおり、P086 は肌を優しく表現できて、この状況ではおススメだ。
作例7 寄りのフィルター効果2
■ SCENE3 半逆光でグレーのシンプルな背景
● 構図内にアクセントをつける
まず、ハーフグラデーションフィルターの「ブルーハーフ」( P122 )で、少しクールさを付けてみた(写真8-2)。モデルの顔の向きの空間にブルーを足すと、ブルーの印象が強くなってしまう。ここではあくまでも「ちょっと付け足す」程度ということで、モデルの背の方に、冷たい影を演出している。
ブルーハーフ?P122 |
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その影の冷たさをもう少し引き出そうと、アンダーで撮影してみたのが写真8-3だ。半逆光によるラインが際立ち、モデルの顔の前の背景のグレーと背後のブルーがマッチし、いい雰囲気に仕上がった。定常光の色温度とフィルターのカラーの構図内の混在がキレイにまとまった好例といえる。
作例8 P122使用例
グレー2ライト P121L |
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作例9 P121L使用例
作例10 P694使用例
こちらも、寄りの作例をふたつ紹介しよう。作例 11の写真 11 – 1?がフィルターなしの状態だが、「ブルーハーフ」( P122 )を使って写真 11 – 2?のように、背景としての残された空間にブルーを加えている。また、露出をアンダーにした写真 11 – 3?では、その印象がさらに強調された。このほか、作例 12として、「グレー2ライト(ソフトND2)」( P121L )を使った写真 12 – 1?と、「サンライト」( P694 / A694 )を使った写真 12 – 2?の効果も見てほしい。
このように、ある意味わがままに、効果をつけたいところに付けられる cokinフィルターなので、丁寧に効果のほどを比較しながら撮影を試みてほしい。
作例11 寄りのフィルター効果3
作例12 P121L・P694使用例
■ 次回予告
次回は、ハウススタジオ編の第2弾。窓のある状況での撮影においてのフィルターの展開をしていきます。お楽しみに!
■ 協力企業 ■
ケンコートキナー
STUDIO EASE
■ 制作・著作 ■
萩原 和幸?
スタジオグラフィックス