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ブリリアント山崎の都市風景写真コレクション
第1回:都市風景の構図を考えてみる


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TOPIX

今月から3回に分けてスタグラ初登場となる写真家・ブリリアント山崎氏に「 都市風景 」の撮り方を連載いたします。氏はフォトマスターEX( エキスパート )の資格を持ち、大手ニュースサイトのデジカメWatch及び自身で運営するAmazing Graph( アメイジンググラフ )でも著述活動をされています。今回テーマとした都市風景撮影はお住まいの場所にもよってしまいますが、割と多くの方が近隣で撮影が可能だと思われます。第1回は都市風景の構図について述べていきます。街中のスナップ撮影にお役立てください。 by 編集部

風景撮影は写真の代表的なジャンルの一つですが、身の回りに絶景ポイントがあるという方は少ないのではないでしょうか?遠方まで行かずとも撮影できる都市風景写真は都市部に住む方にオススメの撮影ジャンルと言えるでしょう。そこで身近な場所で撮影できる都市風景写真の撮影テクニックをご紹介していきたいと思います。まず第1回目は、都市風景写真における構図の考え方についてご説明いたします。

■ 「 日の丸構図 」は構図の基本

▼写真1

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▼写真1構図線

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メインとなる被写体を中央に配置した、シンプルな構図です。日の丸構図は何も考えずに撮ると結果的にそうなることがあるため、単調で工夫が感じられないという場合に悪い構図の例として使われてしまうことも多いのですが、本来日の丸構図は決してダメな構図ではありません。

中心に主役を置くというのは最も基本的な見せ方で、その被写体を力強く、あるいはシンプルに見せたい場合などには最適の構図と言えます。都市風景撮影ではシンボリックな建築物を真正面から捉える場合などに使用されます。

国立科学博物館の天井です。うっかりしていると通り過ぎてしまう場所ですが、由緒正しき天井とのこと。こういった天井を写す場合は水平垂直の僅かな傾きやズレが非常に目立ってしまいます。

特に人工物で直線の多い場合は一目で傾きが分かってしまうため、水平を確認するために、撮影時はホットシューに差し込むタイプのレベラーやカメラ内の電子水準器を使用しますが、カメラを真上に向けるような天井の撮影などでは電子水準器は作動せず、気泡タイプのレベラーも確認が難しいために目視で水平垂直を出すことになります。水平がキッチリと決まるかどうかで画面の緊張感が変わってしまうため、慎重に行う必要があります。

とかく日の丸構図と言うと、中心に被写体を配置し周辺をボカすような撮影がイメージされますが、主役を画面中心に写し込み、その周辺に脇役を散りばめるといった方法も日の丸構図の代表例と言えるでしょう。

■ 「 放射構図 」で奥行きを演出する

放射構図は絵画で言うところの一点透視図法に似ています。画面の一点から放射状に広がるように画面を構成するもので、画面に奥行きを与えるのに適した構図で、ビルの谷間や吊り橋、真直ぐ伸びる道の奥行きを表現するのにも使えます。

▼写真2

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▼写真2構図線

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ベンチシートの裏側を撮影した作品です。ちょっとしたものでも見る角度や切り取り方で全く違ったものに見えるため、街中で面白い物を見つけたら表だけでなく裏側に回ったり極端なハイアングルやローアングルからも狙ったりしてみましょう。この撮影では床にカメラを置いて広角で撮影することで放射構図を作り、ベンチの並びに奥行き感を出しています。

放射構図では必ずしも中心に集束点を持ってくる必要はなく、後でご紹介する三分割法のようにやや斜めの位置などに集束点をもってくることでより放射状の伸びを表現する方法もあります。

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■ 「 三角構図 」で画面に変化を与える

三角構図は画面にリズム感を与えたり、一枚の写真で複数の物語を表現したりします。建築物では直線が多用されるためそれらを利用して三角構図を作ることが心がけると良いでしょう。

▼写真3

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▼写真3は国立新美術館で撮影した作品です。美術館は展示物だけでなく美術館そのものがデザインに拘って作られていることが多いため、内外装に注目してみると魅力的な被写体になります。作例では左側には読書をする女性、中央には親子連れ、右側はこの建築物を象徴するガラス窓となっています。それらを3つの三角構図で分割することで画面にリズムを与えています。

▼写真3構図線

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単純に画面を横で三分割する構図もあるのですが、コラージュ的な雰囲気が強くなります。比較して三角構図では分割されていても漫画のコマ割りのような流れを表現することが可能になります。

都市風景写真においては、建築物の高さを強調するような際あえて上すぼまりで撮影する場合がありますが、そういった構図も代表的な三角構図と言えるでしょう。

■ 「 シンメトリー構図 」で神秘的に写す

シンメトリー構図は画面に安定感を与えると共に不思議な雰囲気を出す際に有効な構図です。自然風景写真ではシンメトリー構図は湖などの水鏡などで使われることが非常に多い構図ですが、都市風景撮影では広い水面が画面上に含まれることは夜景撮影を除くとあまりありません。

▼写真4

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▼写真4構図線

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作例は東京国際フォーラムの天井ですが、それだけでは寂しいため、シンメトリー構図にしてみました。もちろん水面があるわけではないので、ガラスの手すりへの映り込みを利用することで水鏡のような効果を出しています。

都市風景写真ではショーウィンドーやガラス、雨上がりの水たまりなどの映り込みを利用することでシンメトリー構図を実現することも可能です。またシンメトリー構図は上下だけでなく左右対称でも構いません。


シンメトリー構図では上下左右どちらの方向に対してシンメトリーであっても構いませんが、存在感は均等であることが必要です。映り込みなどでシンメトリー構図を構成する際には、そのままでは実像と映り込みの像の明るさや彩度が大きく変わる場合があります。そうした場合にはレタッチなどで明るさや彩度を近づけることで、よりシンメトリーを強調することが可能です。

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■ 「 二分割構図 」で対比の面白さを出す

二分割構図の醍醐味は左右、もしくは上下で対照的な被写体や意味を持たせることにあります。一枚の写真の中に視覚的、あるいは象徴的に異なる被写体を同居させ、2つの被写体が互いに面白さを引き出せる構図と言えるでしょう。

▼写真5

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こちらの作例は六本ヒルズで撮影したものですが、右側には高層ビルを、左側にはクモのモニュメントを配置し、空に多少の雲が出るトワイライトタイムを狙うことで空に表情をもたせています。

▼写真5構図線

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右側のビルと左側のクモは建築物と節足動物という本来ミスマッチな組み合わせですが、二分割構図でクモとビルを大胆に均等の大きさで写しこむことで、まるで巨大なクモがビルに襲いかかろうとしているかのようなイメージを演出しています。このように2分割構図では、造形や意味合いの異なる二つの被写体を上下あるいは左右に均等の存在感として配置し、画面全体で一つの意味合いを持たせるのがポイントです。

対比として見せやすい構図法であるため、面白い物語やメッセージ性を持たせるのに適した構図と言えるでしょう。

■ 「 三分割構図 」は覚えやすいオールラウンダー

三分割構図は非常に良く使われる構図で、画面の三分割ずつし、その線が重なる交点に被写体を配置するという考え方です。交点に主題、その他の空間を余白にするも良し、副題を配置するも良しの使い勝手の良い構図です。

▼写真6

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階段の造形が面白い横浜の大さん橋は、階段だけではつまらないため何か入れたいところですが、あまり大きな被写体では折角の桟橋の形状が埋もれてしまいます。そこでワンポイントとして三分割構図に従って画面左上に人物を配置しています。三分割構図は主題のみの場合は画面の広がりを感じられるように配置するのがポイントです。

▼写真6構図線

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また主役と脇役のように被写体が2つ以上ある場合には、画面全体で被写体のパワーバランスが取れるように配置することもポイントとなります。つまり三分割では罫線が4本とそれらの交点が4点ありますから、左上の交点に主役となる被写体を配置した場合には脇役は右下に配置するとバランスが取りやすくなります。

これを主役を左上に、脇役も左下に配置してしまうと、画面全体では左側にウェイトが偏ってしまいアンバランスな画面構成になってしまいます。もしも3つの被写体を配置する場合には、主役をまず配置し、その対角に存在感が強い脇役を置き、そのとなりに最も存在感の小さい脇役を配置することで画面全体のバランスを取ることが出来るようになります。

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■ 構図はインスピレーションの裏付け

構図にはさまざまなパターンがありますが、構図の難しいところは、構図法通りに撮影しても良い写真になるとは限らないということです。逆に一般的な構図法に当てはまらない構図であっても良い写真はあるでしょう。

まずはその場での直感を頼りにどういう構図で撮影すれば面白い、あるいは美しいかを考えてみてみます。しかしどう撮れば良いのか思い浮かばないといった場合には、構図法を思い出してみましょう。構図を決める手がかりになり、方向性はあるがいま一つ決められないといった場合に、知識としての構図法は助け舟となってくれることでしょう。

著者について
■ブリリアント山崎(ぶりりあんとやまさき)■ フリーカメラマン、写真講師。カメラメーカーの講師や作例集制作を経て現在に至る。写真とカメラの事ならネジ一本に至るまで、ありとあらゆることを知りたいと思っている。フォトマスター検定エキスパート(総合)。家電製品アドバイザー(総合)。「ブリリアントの写真教室」主宰。