写真のコダワリ
フォトグラファーに聞け!
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Photo & Text by
編集部
第6回 萩原 和幸 / Kazuyuki Hagiwara
〜 アルチザン写真家でいたい
2013/07/26
● 萩原 和幸 インタビュー
写真家 1969 年、静岡県出身
Web :
http://www.ikkyow.com/
▼ Topix
今回の 「 写真のコダワリ~フォトグラファーに聞け! 」 は、本サイトでお馴染みの萩原和幸氏に登場していただきました。ポートレート一筋で、独自の世界観でファンの心を掴んでいる氏は、師匠譲りのアルチザン気質。被写体とのコミュニケーションを大切にする氏の写真へのコダワリをレポートします。
▼ 萩原 和幸 情報
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● 萩原 和幸 ●
静岡大学人文学部法学科および東京工芸大学写真技術科卒業後、写真家・故今井友一氏に師事、ファッション系を中心とした撮影術を学ぶ。独立後、K&S photograph∞ 設立。主に広告・雑誌で活動。写真専門誌撮影・執筆多数。学研パブリッシング「 デジキャパ! 」表紙担当。また写真教室講師、フォトコンテストや芸術祭審査委員も数多くつとめる。日本写真家協会( JPS )会員、静岡デザイン専門学校講師。
編集部
ポートレート写真家として活躍されている萩原さんですが、プロになる前から人物を撮るのがお好きだったんですか?
萩原
人を前にして撮るのは、実は超苦手だったんですよね。本当はものすごくあがり症で、なんて言ったらいいのかな……そう、コミュニケーションがうまくとれ……( 着メロが鳴り出す ) あっ、すみません、今止めます……。
編集部
い、今のメロディ、なんですかそれ?
萩原
あ、これね、「
がんばれ!!バリ勝男クン
」っていう静岡の焼津ローカルのキャラクターで……。
編集部
そういえば萩原さんは、静岡出身で、静岡デザイン専門学校の講師もされているんでしたよね。
萩原
東京を中心に仕事をしてますけど、静岡は講師の他に役所関係とか、静岡市でワークショップとか…。それと伊東市の芸術祭の審査員もしてますから、今でも週に2度は静岡の仕事をしています。伊豆もタレントの撮影でよく使いますよ。
編集部
話を戻しますが、あがり症でコミュニケーションが苦手な方が、なぜポートレートへ?
萩原
これも静岡つながりなんですけどね、僕の師匠だった今井先生に初めてお目にかかったとき、「 お前、静岡か! 俺も静岡だ、よし採ってやる 」って言われて、人物は撮ってなかった僕を採用してくれたんですよ。(笑) 先生はファッションを撮ってた方で、「 人物写真は仕事がなくならないからやれ 」 って言われて、結構単純な理由でポートレートを始めたんです。実際に撮ってみると、ファインダー越しならモデルに話しかけられることがわかって、そのままズルズルって(笑)。
編集部
今の萩原さんのお仕事スタイルからすると考えられないですよね。苦手意識を克服できたのは今井先生の指導ですか?
萩原
う〜ん、先生は昔ながらの職人気質の人で、言葉で若手を育てる人じゃ無かったので、先生の仕事を観ながら自分で克服しましたね。とにかく、自分のやりたいことを仕事で実現させるためには、積極的に話してコミュニケーションしていかないとダメだってことを、現場でイヤっていうほど感じましたから。それで自分なりの努力をコツコツと続けて、苦手意識を克服していきましたよ。
編集部
今井先生から受け継いだものはなんですか?
萩原
先生のお弟子さんはたくさんいらしたんですが、僕は劣等生でね(笑)、先生のところにいる間は、よくわからなかった。独立してから、あ〜そういうことか! って気づくことがありますね。先生の仕事で印象に残ってるのは、現場に先生が出てこられると、パッと一瞬にして空気が変わること。モデルもスタッフも、みんなその空気に動かされるんですよ。当然仕事のクオリティも高い。当時はハッセルやシノゴだから、ワンカットずつ大切に撮るわけですが、少ないカットでも確実に決めてくる。これこそ職人、アルチザンだって思いましたね。
編集部
萩原さんも連写はお好きじゃないみたいですし、ワンショット勝負なところがありますよね。
萩原
先生は酔っ払うとよく 「 写真やはアーティストじゃない、アルチザンだ! 」って仰ってた。僕もそう思ってるんです。デジタルカメラは捨てカットもお金の無駄にはならないし、コンシューマ向けカメラでも連写ができるような時代だけど、だからってババババッて撮るのは好きじゃないんです。ワンカットずつ大切に撮って行きたい。そうやっていくことで、今は先生の足下にも及びませんけど、なんとか背中が見えるところにまで上り詰めていきたい。
編集部
萩原さんはタレントを撮るときにストーリー性を重視しているとうかがっていますが、そのストーリー性をどうやって現場に伝えているのですか? 特に売れっ子のタレントですと、時間制限がきついですよね?
萩原
時間制限がきついタレントさんの場合は、メイク中に今日考えているストーリーを話しますね。メイク中だとヘアメイクさんやスタイリストさんも一緒にいますから、一石三鳥だし(笑)。僕が先生の弟子だった時代、未熟だったなーって思うのは、先生が撮影している状況をまったく理解していなかったんですね。どうせ僕はアシスタントだからって、先生が考えているストーリーを聞いていなかったために、今何をやっているのかがわからないだけじゃなくて、一体感も得られないし、進行具合が掴めないからすごく疲れたんですよ。だから今はタレントはもちろん、スタッフみんなに僕が考えていることを話す。みんなが僕の描くストーリーを理解してくれれば、仕事もスムーズに進むし、現場に一体感が生まれるわけです。
編集部
若いタレントですと、ストーリーを理解してもらうのに苦労しませんか?
萩原
ぶっちゃけ言いますと、若くてもすごく勘のいい子とそうでない子の二通りがいて、それがタレント力の差なんですが、猛烈に勘のいい子なんかだと想像力が豊かだから、こちらの要求をすぐに理解してくれる。かたやそうでない子の場合には、想像で動けないわけだから、実際に経験してみろよ、っていうようなことをアドバイスしますね。経験することが難しいストーリーの場合は、本を読め、映画を観ろ! ですかね(笑)。才能のある子は、若くても勉強してるんですよ。本とか映画とか、実際に経験したりして、そうして表現の引き出しを大きくしている。
編集部
ここら辺で、これからポートレート写真家を目指す読者に、モデルとのコミュニケーション術をアドバイスしていただけますか?
萩原
モデルと一緒に同じ土俵でふざけあってみてください。プロの写真家ほど、特に売れてらっしゃる写真家はみな、モデルと同じ土俵に立って、カメラマンとモデルの間にある壁を崩す努力をしてるはずなんですよ。それが、アマチュアの方ほど、モデルとの間に「 壁 」を作っちゃうんです。なんて言うのかな、アマチュアで多いのが、ものすごく高価な機材を使って「 俺、今、撮ってるぜ! 」って、自分に酔って格好つける人が多い。そうじゃなくて、それこそ安っすいカメラでもいいから、モデルの興味のある話を振って、聞いてあげて、一緒にふざけ合って……。そうやって撮っても良いカットが撮れなかったら、次回につなげるためのコミュニケーションに心を砕いてみるんです。格好つけてると、次は撮らせてもらえないですからね。
編集部
確かにアマチュアほど高価な機材を持ってらっしゃいますよね。
萩原
機材に頼ってちゃダメです。インナーフォーカスのでかいレンズとか、必要もないのにバッテリーグリップなんて付けて重くしてたら疲れちゃいますよね(笑)。そんな体力があるなら 50mm の単焦点一本で、前後左右にガンガン動きなさいよと。それと、何も話しかけずに同じシーンを連写で撮るのはまるっきり意味がないですよ。撮るのなら1枚ずつ、はい、はい、はいって、ポーズを変えてもらいながら撮りましょうよ。
編集部
萩原さんの撮影リズムは?
萩原
ハッセルが 12 コマだったので、それの癖で、はい、はい、はいっとゆっくり切って、12 回区切りですね。ひたすらゆっくり撮ってますよ。タレントさんやプロのモデルさんなら、このリズムに乗ってポーズを変えてくれますし、ショット間で瞬きも終えてますから、目を瞑ってるカットはまずありません。素人モデルの場合、ワンショットずつ、指示しながら動いてもらえばいいんです。
編集部
萩原さんが思う、これだからポートレートはやめらないっていうポイントはなんですか?
萩原
……波長…? そう、タレントさんと僕との間で、お互いの波長がリンクしたとき、そんなときに撮った一枚は、まさしく「 これだ! 」ってなりますね。そんな感覚は、動物や風景写真だと、撮る人間だけが味わえるものでしょ? でも被写体と撮影者の両方で、いや、スタッフも含めて「 これだ! 」ってなるのは人物写真だけだと思うんですよ。そんな実感を伴った写真が撮れると、もう、ポートレートはやめられなくなりますね。
編集部
「 これだ! 」感を味わうための秘訣はなんでしょうか。
萩原
ポートレートなどの人物写真以外の撮影って、すべてが撮影者からの一方通行だと思うんですね。でも人物撮影って、2Way なんですよ。だから、前にも言ったけど、撮影者の一方通行で撮っちゃいけない。必ず被写体である人物と言葉のキャッチボールをしながら撮ること。それはたとえ赤ちゃんが被写体でも同じですよ。
編集部
萩原さんのライティングテクニックを少しだけ教えていただこうと思うのですが、その前に萩原さんは自然光派ですか? 人工光派ですか?
萩原
元々がファッション撮影から出てますから、最初からバルカやコメットをバンバン使っていたので、そうですね、人工光派かな。ストロボ大好きですよ。最近のクリップオンストロボは、ある意味でモノブロックに匹敵するほどの性能を持ってるから、頻繁に使ってますよ。スタジオはもちろんですが、ピーカンの日中でもアクセント用に使うことが多いですね。
編集部
モノブロックよりもクリップオンの方が良い場合を教えてください。
萩原
クリップオンはとにかく自由度が高いでしょ? 持ち運びが楽で、小さいくせに光量は十分にありますからね。光量の点で見ればモノブロックでしょうけれど、何灯も持ち運ぶのは一人じゃ難しいし、なによりも高価ですよ。モノブロック一灯の値段で、クリップオンなら何台も買えちゃう。だから、できれば2、3台のクリップオンを手に入れて、ぜひ多灯撮影をしていただきたい。
編集部
萩原さんのクリップオンストロボの使い方は?
萩原
僕はクリップオンの場合は、ストロボをメイン光として使わないんですね。自然光とか、その場にある定常光をメイン光として捉えて、クリップオンをアクセントライトとして使う。だから当然ですけど、クリップオンストロボをカメラから外して、スタンドに立てて使ったり、アシスタントに持ってもらったりします。
編集部
アマチュアの場合、ストロボをオフカメラで使うのは難しいと感じる方が多いようですが、ヒントはありますか?
萩原
難しいことを考えずに、まずは一灯でいいので、カメラからストロボを離して、どこに置いてもいいから、まずは一枚撮ってみてください。それまでのストロボ撮影と劇的に違う一枚が撮れるはずですから。その一灯をあっちこっち置いてみて、自分の好きな絵が撮れる場所を探すんです。もう遊び感覚でね。
編集部
8月3日は
StudioGraphics on the ROAD でポートレートセミナー
が予定されていますね。今後も StudioGraphics をよろしくお願いします。
萩原
こちらこそ!
編集部
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
萩原
ありがとうございました。
次回の 「 写真のコダワリ〜フォトグラファーに聞け! 」 は、
2013 年 8 月中旬頃を予定しています。お楽しみに!
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初出:2013/07/26
Photo & Text by 編集部
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