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 女性の撮りかた講座
最終回 自然な表情を引き出せ! 2007/02/21
 
自然な表情を撮るには
リズムのある撮影を心がけよう
最終回なのに次回予告



林 英吉

講師 林英吉 フォトグラファー
 あくまでも「シューティング感覚」を大切にするフォトグラファー、林英吉氏。商品撮影や建築撮影もこなすが、最近は専らタレントや女優などの人物撮影で活躍中。

聞き手 薮田織也
 人物写真(特に女性)にしか興味のないチャランポランなカメラマン。林氏のテクニックを聞いて少しは勉強しる!

薮田 織也

神崎 洋治

アシスタント 神崎洋治
 本来は当サイトのプロデューサー。今回はレフ板持ちとして登場。趣味:○な写真集。

メイク 澤口留美
 本来はサンタ・クローチェ代表取締役。今回はメイクとして登場。趣味:コスメ集め。

澤口 留美

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写真0
革のジャケットの下に、なにも付けずに撮影。モデルにしてみれば、ちょっと恥ずかしくてドキドキの心理状態ですが、きっと微妙に複雑な表情になっているはずなので、そんなときこそシャッターチャンスです。モデルに無理に表情を作らせずに、状況に合わせた自然な表情を撮っていきましょう!
拡大写真
モデル:藍 海夏
 
■自然な表情を撮るには
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●やっぱり会話が大切

 さあて、今回は前回の予告通り、「表情」についての解説ですよね? 2ヶ月も待たせたんだから、かなり内容の濃い回になるはずですよね、ええ? 林さん、薮田さん。
   
 僕の担当分は、昨年の末には終わってるよ。書きたいことは薮ちゃんに全部伝えてあるし。
   
 はははは…。いやその、最終回だからさ、ちょっともったいぶって…いや、あの、今回は掲載写真が多かったんで…そのほれ…。
   
 言い訳けはいいから、さっさと始めましょうよ。読者もこの展開には飽きてるはずよ。読者は私に期待してるんだから、PV を増やしたかったら、私を積極的に登場させればいいのよ。そういうわけで読者の皆さん、元気してた〜? 留美ちゃんの登場よ〜!
   
 あ〜あ、今回もグダグダになりそうだな。っていうか、とうとう、初回から最終回まで全部グダグダだもんなぁー。まぁいいや、じゃあ始めましょう。とりあえず、トートツですけど、僕から質問します。よく「自然な表情」を撮るのが難しいって読者から質問を受けるんですけど、どうしたら「自然な表情」撮れるんですかね。
   
 林さん、林さん、あなたの出番ですってば。前回ほとんど喋ってないんだから、最終回くらいビシッとなんか言っちゃってください。でまかせでもいいから…。
   
 はぁ〜? でまかせって、あなた、滅茶苦茶なこと言ってるねぇ。「自然な表情」ねぇ。う〜ん、「自然な表情」を撮りたかったら、まぁ、小難しいこと考えずに、カメラマンがモデルと一緒に撮影を楽しめばいいんじゃないかなぁ。僕はあんまり難しいことは考えないよ。撮影を楽しむことしか考えてないから。
   
 うーん、参考になるんだかならないんだかわかんないような答えですねぇ。
   
 だって、あくまでも「自然」な表情でしょう?理屈こねて撮れるもんじゃないよ。光の使い方とか、カメラの露出の設定とか、理屈こねられるものとは別次元の話だよね。だいたいね、自然な表情を撮りたいなんて面倒なこと考えるから、自然な表情が撮れないんだよ。
   
 それじゃぁ、林さんは、女性タレントとか撮るときに表情の注文とかしないんですか?
   
 まったくしないわけじゃないけど、特に細かな表情の注文はしないよ。相手はプロだからね。自分が魅力的に見える角度とか、ポイントを常日頃から研究してるんだからさ。スタッフ全員が緊張してるスタジオでも笑顔が作れる人たちなんだよ、彼女達は。
   
 それだと、表情はすべてモデルまかせってことになっちゃいますよね。
   
 だからこそ、モデルとの会話が重要なんだよね。カメラマンの方から積極的にモデルと会話して、その会話の中で時折見せる表情を逃さずに撮っていけばいいんだよ。自然な表情ってのは作ろうとして作れるものじゃないからね。
   
 なるほどね。それは、プロのモデルじゃなくても重要なことに思えますね。
   
 いや、素人のモデルの場合こそ、カメラマンが積極的に会話する必要があるんだよ。人物写真って、シャッター押してるよりも、喋ってる方が多いくらいの方がいいんだよ。
   
 そうよそうよ。無口なカメラマンだと緊張しちゃうわ。無口なくせに、突然「ハイ笑って」なんて言うんだから、笑顔だってひきつっちゃうわよねぇ〜。はぁ、やっと会話に入れた。
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写真1
モデルへの注文で、自然な笑顔を作るということは、一番難しい注文なのかもしれません。ただでさえ緊張する撮影で、自然な笑顔を作るのはプロのモデルでも難しいものですから、一般の女性は言わずもがなですね。笑顔の写真が撮りたいのなら、通りいっぺんとうに、「ハイ笑って」なんて注文はやめて、モデルが笑える状況を作り出しましょう。
拡大写真
モデル:藍 海夏

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写真2
拡大写真
モデル:藍 海夏

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写真3
このときは、「鏡の中の自分を見つめて」と注文。特に、表情の注文はしません。女性が鏡を見るときは、自分の世界に入り込んでしまうものですので、そんな表情を撮るのも面白いかもしれません。
ピントは鏡の中のモデルに合わせますが、実体の方のポーズにも注意を払います。この写真の場合は、モデルの胸元までしっかりフレームインさせています。
拡大写真
モデル:藍 海夏




 いやあの留美さん、無理やり会話に入ってくる必要はないんですけどね。
■リズムのある撮影を心がけよう
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●撮影と休憩のメリハリをしっかり

 モデルと会話しながら、その流れで変化するモデルの表情を逃さず撮るんだって林さんは言いましたけど、その辺で、具体的なテクニックとかありますか?
   
 テクニックと呼べるかどうかわからないけど、僕は撮影のリズムを大切にしてるよ。経験則だけど、リズムというか、テンポのいい撮影をしたときは、たいていモデルの表情が生きてるんだ。
   
 モデルとカメラマンの呼吸が合ってるってことですな。確かにリズムとか、テンポとか、撮影にとって大切な要素だよね。
   
 あ〜、わかる気がするわ。一枚撮っちゃ待たされての繰り返しだと、飽きちゃうもの。いくら仕事だとはいえ、撮影してない時間が長いと嫌になっちゃうわ。元モデルとしての経験則だけど。
   
 ほ〜、元モデルねぇ。それじゃぁ留美さんに聞くけど、テンポのいい撮影って具体的にはどんなの?
   
 半日拘束の仕事が1時間で終わることー! なんてのは嘘だけど、撮影してる時間と、休憩時間にメリハリがあってね、それで、撮影中はカメラマンとお話しながら、パシャパシャ連続的に撮られることね。 うーん、言葉じゃうまく言えないけど、なんかこう、遊び感覚で、ドンドン撮られて、なんていうの、モデルに考える暇を与えないっていうか、とにかく楽しくて、そんな風だと、いつの間にかカメラマンの言いなりになってるわ。
   
 よくわかるようで、わからないような、不思議な説明ですな。
   
 モデルってさ、プロでもアマでも、撮影するときの気持ちには、多かれ少なかれ、必ず「照れ」があるんだよね。その「照れ」をどうやって消すことができるのかが、人物撮影のポイントだと思うんだよね。テンポよく撮られると、「照れ」を感じる暇が少なくなる。逆に、テンポが悪いと、モデルはいろんなことを考える時間が増えて、女性によっては「照れ」が増幅しちゃう。


●笑顔を撮るチャンスは2〜3秒

 テンポの良さとか、「照れ」をなくすとか、そのことが、モデルの表情の良し悪しにどう繋がるんでしょう。
   
 人間ってさ、同じ表情って、長いこと続けられないんだよね。何かが可笑しくて笑ったとしても、いつまでも笑ってる人っていないでしょ? 撮影だって同じだよね。可笑しくもないのに、ずーっと笑顔を続けられるなんてできやしないよ。本当の笑顔って、2〜3秒程度しか持続できないんだ。そのわずかな時間に撮影する必要がある。だからこそテンポの良い撮影が必要だし、テンポがよければモデルも撮影に集中できるしね。
   
 うん、だから、笑顔の撮影がしたくても、笑顔の次に悲しい顔や、驚く顔なんかをわざと撮って、また次に笑顔を撮るように僕はしてる。もちろん、何も考えずに笑ったり驚いたりはできないから、表情が自然に変るように工夫をしているよ。
   
 たとえばどんな?
   
 何かモノを使って、モデルに遊んでもらうとかね。ただ遊んでもらうのもなんだから、ちょっとしたサプライズを作るってのもいいよね。たとえばモデルも知らないビックリ箱を用意して、モデルがしばらくいじってると箱が開いて「キャッ」ってな感じでね。もちろん、その間はシャッターを押しまくってる。
   
 ビックリ箱とまではいかなくても、簡単なストーリーを作るってのもありですよね。たとえば、熊のぬいぐるみでも用意して、子供の頃した一人遊びを思い出してもらう。子供の頃、ぬいぐるみで遊んだことあるでしょ?とか聞いて、どんなことして遊んだか思い出してみてよなんて言ってね、そのときの思い出をトレースしてもらって、昔話をしてもらう。モデルによっては、どっぷりと思い出につかっちゃって、涙ぐむ女の子だっている。もちろんシャッターチャンスだよね。
   
 なんか、この講座で初めて真面目な話を聞いた気がする〜。
   
 手前味噌で申し訳ないけど、この辺の話って、僕の講座でも以前に書いたから、そっちも(新・女性の撮りかた講座 第 29 回第 30 回)参考にしてみて。
   
 薮田さんて、無粋でデリカシーのないタダのオヤジに見えるけど、結構、「若い」女の子に優しいもんねー! 普段まったく気が利かないのに、女の子の撮影になると細かいこと気にしたりしてさー。
   
 デリカシーがなくて口うるさいトシ○女を撮るときは、タダの無粋で気が利かないオヤジですけどね。
   
 ちょ、ちょっと、誰がデリカシーのないト○マ女よ!
   
 はいはいはい、ケンカは裏でやってください。ところで林さん。右の写真ですけど、この写真の撮影データを見ると、焦点距離以外のデータはすべて同じですよね。
   
 うん。同じロケーションだからってのもあるけど、さっきも言ったように、テンポがあって、リズムの良い撮影をするのに、露出をいちいち変えてられないからね。だからって、焦点距離まで同じだと写真が画一的になっちゃうからね。モデルの表情やポーズによって、寄りから引きまで、いろんなカットを撮るんだ。もちろん、ズームを使わないで、カメラマン自身がモデルに寄ったり引いたりしてもいいんだよ。でも、この右の写真のロケーションだと、狭いからズームを使ったけどね。
   
 林さんからもらった写真データを見てて気付いたんだけど、林さんってあまり連射ってしませんよね。右の写真なんか、写真データのファイル名が全部連番になってたもんね。
   
 どういうこと?
   
 僕なんかが、写真4から写真 10 までの写真を見ると、それぞれの写真の間に、掲載しなかった写真がいっぱいあるんじゃないかと考えちゃうんだ。実際に僕だと、これだけのカットを撮ろうと思ったら、同じポーズや表情で連射して、同じような写真をいっぱい撮っちゃう。でも、林さんの場合だと、写真4から写真 10 って、全部ファイル名が繋がってて、捨てカットが一枚もないんだよね。
   
 薮ちゃんと一緒にしないでよねぇ。僕は仕事が速いだけじゃなくて、無駄なカットが少ないのもセールスポイントなんだから。
   
 恐れ入りました。先輩!

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写真4
水着の撮影は何度もあるけど、お風呂での撮影が初めてという海夏ちゃん。同じ衣装でも、ロケーションが変ると緊張するものです。お風呂での最初のカットでは、やっぱり緊張が隠せませんね。でも、捨てカットのつもりでドンドン撮っていきましょう。
拡大写真
モデル:藍 海夏

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写真5
本サイトの撮影講座で何度も出てくるテクニックですが、モデルにモノを持たせると、リラックスして表情も自然になります。この写真は、カメラマンに向かってモノを差し出すポーズをとってらもらい、写真を見る人にインパクトを与えています。
拡大写真
モデル:藍 海夏

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写真6
こうした写真を撮るときの注意点は、あたりまえですが、ピントが手前の物体に合わないようにすることです。できればマニュアルフォーカスでチャレンジしましょう。
拡大写真
モデル:藍 海夏

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写真7
同じモノばかりではつまらないので、周囲にあるモノをいろいろいじってもらいましょう。蓋が開いたり、駆動部分があるモノを持っていじってもらうと、微妙に変化していく表情が楽しめるかもしれません。
拡大写真
モデル:藍 海夏

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写真8
動かせるモノであれば、蓋を開けるなどして、積極的にモノをいじってもらいます。その流れを連射していけば、いろいろと、生きた表情が撮れるはずです。
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モデル:藍 海夏

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写真9
一連の写真の撮影データを見てもらえばわかりますが、レンズの焦点距離以外は同じ設定です。撮影のリズムを優先するために、同じ設定で、焦点距離だけを積極的に変化させて撮り続けましょう。
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モデル:藍 海夏

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写真10
拡大写真
モデル:藍 海夏
■最終回なのに次回予告
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●実は次回も続く?

 さて、なんですか、そろそろ本講座も終わりのようですね。最終回だから、テクニック盛りだくさんってのを期待してたんですけど。やっぱり短い原稿になりましたな。
   
 まぁ、そんなこと言わないで。原稿は短いかもしれないけど、掲載写真がいつもの倍あるじゃない。それと、前回予告した未掲載写真とオフショットを、特別編として、この後2回お届けする予定だからさ。
   
 ふ〜ん。海夏ちゃんの○○な写真が見られるなら許しましょう。それじゃぁ、お別れの挨拶も次回以降でいいね。林さん、悪いけど後2回出演してくださいね。
   
 え〜、もう解放してよ〜。僕は理屈こね…
   
 私も出るわー! 後2回ー! そんでもって喋りまくるわー!
   
 い、いや、未掲載写真とオフショットの回だから、喋りまくらなくても結構ですっ!
   
 ぶー!
   
 そういうわけで読者の皆様。後、2回だけお付き合いくださいね。それでは特別編でお会いしましょう。
 
モデル 藍 海夏
 
初出:2007/02/21 このページのトップへ
 

     
 
 

     
 
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