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第4回 ライティングによるハイライトの違い |
2012/01/25 |
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ボトルなどの透明、半透明な光沢のある被写体を上手に撮影するために、特に意識しなければならないのポイントのひとつが 「 ハイライト 」 でしょう。今回は、ライティングの違いで、「 ハイライト 」 がどのように変化するのかを探っていきましょう。
撮影データ ( 写真を Click で拡大 ) |
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● 写真を魅力的にするハイライト
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「 第1回 ライティングの基礎 」 でも書いていますが、写真の魅力は 「 光 」 と 「 かげ 」 をどのように描くかで大きく変わってきます。そこで、写真1を観てください。これは、同じ被写体を同じ位置、同じカメラの設定のまま、ストロボ光の強さと当たり方を変えて撮ったものです。上の写真は 「 ハイライト 」 と 「 シャドウ 」 をはっきりと描くことに注力して撮ったもの。下の写真はできる限り 「 ハイライト 」 が入らないようにストロボ光を拡散させて撮ったものです。どうでしょうか、受ける印象はかなり違うと思います。
やはり、「 ハイライト 」 と 「 シャドウ 」 の少ない下の写真は、平面的で被写体の持つ形状をよく表していませんよね。「 ハイライト 」 が少ないと、こうした光沢のある被写体の場合は表面の質感が伝わりにくくなります。
特にボトルなどの透明や半透明で光沢のある被写体を上手に撮影するためには、この 「 ハイライト 」 をどう表現するかが鍵になってきます。前回の予告では、すぐにボトルの撮影方法を紹介するつもりでしたが、ストロボの使い方によって、こうした光沢のある被写体の 「 ハイライト 」 が大きく変化することを先に紹介する必要があることに気づきました。今回は、黒いボトルを被写体に、いろんな 「 ハイライト 」 の描き方を紹介していきましょう。
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カメラの設定はまった同じにし、ストロボ光の強さと当たり方を調節して撮影したもの。ハイライトとシャドウの有無によって被写体の印象は大きく変わる。( 写真を Click で拡大 ) |
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● 全域 F2.8 の大口径標準ズーム
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前回は接写に威力を発揮するマクロレンズを使いましたが、今回は被写体にあまり寄る必要がないので標準ズームレンズ ( ※01 ) を使います。このニコン用 Kenko-Tokina AT-X 165 PRO DX という標準ズームレンズは、24 〜 75mm ( 35mm 換算 ) のズーム全域で開放 F 値 ( ※02 ) 2.8 を実現している明るい大口径のレンズです。一般的にズームレンズは、焦点距離を長くするほど開放 F 値が大きくなり、その結果、暗くなるものですが、光学系の設計やレンズそのものを工夫することで光量の低下を抑えています。こうした開放 F 値が一定のズームレンズの場合は口径が大きくになり、結果レンズ全体が大きくなりがちですが、 Kenko-Tokina AT-X 165 PRO DX は APS-C サイズ用にしてはかなりコンパクトに仕上がっています。これなら Nikon D7000 のようにコンパクトな一眼レフの機動性を損なうことがないでしょう。 |
● ストロボ
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今回はストロボの光の当たりかたを変えることで、被写体に映る 「 ハイライト 」 がどう変わるのかを見てもらうため、ストロボの設定はあまりいじりません。ほとんど固定のまま、何種類かのディフューザーを使ったり、レフ板にバウンスさせたりして、「 ハイライト 」 が変化する様を見てみましょう。 |
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※01 |
標準ズームレンズ
一般的には、35mm フィルムカメラの標準レンズとされる、焦点距離 50mm レンズの特性を中心にして作られたズームレンズを標準ズームレンズと呼ぶ。ズームレンズではあるが広角と望遠の特性が弱い分、標準レンズのように収差が少ないという特徴がある。 戻る |
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※02 |
開放 F 値
F 値とは、レンズの明るさをあらわす値として一般的に使われているもので、開放 F 値とは、レンズの絞りを開放 ( 全開 ) にしたときの F 値をさす。絞りを開放にした状態は、レンズに入射する光が最大になるので、撮影画像はもっとも明るくなる。ズームレンズにおける開放 F 値は、広角側 ( 焦点距離が短い ) で最小 ( 明るい状態 ) になり、望遠側 ( 焦点距離が長い ) で最大になるのが一般的だが、レンズの光学設計を工夫することで、すべての焦点距離において一定の開放 F 値を実現しているズームレンズもある。 戻る |
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● 真っ暗な室内で黒いボトルの撮影
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今回は、ストロボ ( Di866 MARK II ) の光量の調節に加え、光の照射角を変えて撮影していき、黒いボトルに映る 「 ハイライト 」 がどのように変化するのかを見ていきましょう。写真4のように、「 ハイライト 」 の入り方を視認しやすくするため、ボトルの左側に設置したストロボ1灯の光だけで撮影します。また、ストロボの反射光がボトルに回り込まないようにボトルの右側に黒レフを置き、撮影する周囲も黒い布などで囲むことで、「 ハイライト 」 だけを目立たせます。もちろん部屋の照明は全部消し、真っ暗な状態で撮影します。
今回はテスト撮影で作品作りではありませんが、本稿を読んだ後、実際にご自分で試してみることをおすすめします。撮影する場所やストロボを設置する場所、レフやディフューザーの位置で 「 ハイライト 」 の入り方は大きく変わり、ここに掲載する写真とは違ってくるはずです。実際に試してみることで、物撮りの技術はかなり向上すると思います。
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「 ハイライト 」 の入り方をわかりやすくするため、黒マットのバック紙と、右サイドに黒レフ、ストロボは1灯で、左方向から当てる。
( 写真を Click で拡大 ) |
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● Zoom と Power の関係
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ここで注意しなければならないのは、一般的なクリップオンストロボのほとんどは、照射角を変更するとそのときの最大光量が変化するということです。照射角を広くすると弱く、狭くすると強くなります。Di866 MARK II の場合は、[ Zoom ] をもっとも広角よりの 「 24mm 」 にすると光量の指標で使われるガイドナンバーが 「 31 」 に、望遠よりの 「 105mm 」 にすると、ガイドナンバーが 「 60 」 になります。この数値はあくまでも各照射角においての最大値で、この値に [ Power ] の設定値をかけ合わせて発光量を調節します。
では、Zoom 「 105mm 」 で、Power 「 1/8 」 の場合、実際のガイドナンバーはいくつになるでしょう。「 105mm 」 はガイドナンバー 「 60 」 ですから、これに 1/8 をかけて、答えは 「 7.5 」? いえ違います。Power で表記される 「 1/x 」 の数値は、x分の一ではなく、実は √x を意味しているのです。1と/を組み合わせることで、√ ( ルート ) を表現していたわけですね。ですから正しくは GN60÷√8 で、答えは 21.2132.... となり、このときのガイドナンバーは 「 約 21 」 ということになります。
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■ 照射角の違いによる 「 ハイライト 」 の変化 |
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● 照射角を変えて撮る
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ストロボ光の照射角を変えることで、被写体にできる 「 ハイライト 」 がどのように変化するのかを見てみましょう。ここで紹介している写真は、Di866 MARK II の照射角だけを変えて撮影したものです。ストロボ光は被写体に直接照射しています。
本来は光量を完全に固定して照射角だけを変えたものを例にするのがベストだとは思いますが、一般的なクリップオンストロボの場合、照射角を変えると自動的に光量が変化するので、ここの写真では照射角を狭くしたものほど光量が大きくなっています。ここでは光の強さよりも 「 ハイライト 」 のグラデーションがどのようになっているかと、被写体およびバック紙に届いている光に注目してください。
Di866 MARK II の場合、照射角を最小値の 「 24mm 」 に設定すると、照射角はもっとも広く、ガイドナンバーは 「 31 」 になります。最大値の 「 105mm 」 に設定すると、照射角がもっとも狭くなり、ガイドナンバーは 「 60 」 になってもっとも明るい発光ができます。写真7と写真8は、この違いが表れた写真です。
写真7と写真8を拡大表示して見比べてみてください。ボトル上にできたハイライトは、発光量の強さから、写真8の方が強くできていますが、その面積には大きな違いがありません。しかし、写真7では黒バック紙にまで光が届いているのに、写真8では真っ暗ですね。ストロボは同じ位置にありますから、これは照射角の違いがそのまま出たことになります。
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ストロボの Power を 「 1/8 」、Zoom を 「 24mm 」 に設定して左方向から直接照射した写真。
( 写真を Click で拡大 ) |
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Power を 「 1/8 」 、Zoom を 「 105mm 」 に設定して撮った写真。Di866 MARK II の場合、Zoom 「 105mm 」 で発光量が最大の GN : 60 になる。発光量が強いにも関わらず、バック紙まで光が届いていないのがわかる。
( 写真を Click で拡大 ) |
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■ ディフューザーによる 「 ハイライト 」 の変化 |
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● トレーシングペーパーでディフューズ
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次は、写真8のカメラとストロボの設定はそのままにして、ストロボと被写体の間にトレーシングペーパーを置いて撮影してみましょう。トレーシングペーパーはディフューザー代わりに使うわけですが、「 第2回 光沢のある物撮り ( 時計を撮る ) 1 」 で紹介しているもので構いません。画材店やホームセンターで購入できる一般的なものを使っています。
ではまず、写真8と写真9を拡大して見比べてみましょう。その差は歴然ですね。トレーシングペーパーによるディフューズ効果によって、光量は一段落ちていますが、ハイライトが滲んでいるのがわかります。また、光が拡散されたことにより、黒バック紙にも光が届いています。
続いて写真10を見てください。この写真はトレーシングペーパーを2枚使っているため、写真9よりも若干光量が落ち、さらに光の拡散度合いが高くなっています。そのために、光の滲み方が大きくなり、黒バック紙に届く光の量も少しだけ増えています。
トレーシングペーパーによるディフューズ効果は、被写体のソリッド感は低下しますが、その雰囲気を落ち着いたものにしてくれる効果があるようです。
ディフューザーとして使えるものには、トレーシングペーパーの他にもいろいろありますが、後日、そういったものも紹介していく予定です。
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写真8のカメラやストロボの設定はそのままにして、ストロボと被写体の間に……
( 続きは写真を Click ) |
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写真9に、もう一枚の同じトレーシングペーパーを設置した写真。写真9にくらべて……
( 続きは写真を Click ) |
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● 白レフにバウンスさせてみる
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最後は、ストロボの光を白レフにバウンスさせて撮影してみましょう。バウンス発光の方法は、「 第1回 ライティングの基本 」 の 「 ストロボ光を天井に反射させて使う 」 を参照してください。
写真11 は、写真8のカメラ設定はそのままにして、ストロボの設定だけを変えた後、ストロボの背後に置いた大きめの白レフにバウンスさせて撮ったものです。ストロボの位置は敢えて写真8の位置から変えていないので、ストロボの Power の値を 「 1/8 」 から 「 1/2 」 に、ガイドナンバーの値としては2倍の数値である 「 42 」 に設定しています。これは、バウンスによって光の到達距離が増えてしまうからです。厳密にいうと 「 光の逆二乗則 」 を考えて光量はアップしなければなりませんが、このことについてはまた今度……。
白レフへのバウンス発光では、これまでの例と比べて大きく異なる点があります。それは、ボトルの輪郭にハイライトが増えていることです。写真10 以前の撮影では、撮影している部屋の中に光源はストロボだけ、さらにそのストロボ光を反射するものが何もない状態でしたので、被写体に映り込むハイライトはストロボの光源だけになります。しかし写真11 ではストロボの光を受けた大きな白レフがあるためにハイライトが増えることになります。この輪郭にできたハイライトによって、ボトルの形状が伝わりやすくなっています。今回のボトルのような被写体のフェイスは曲面なので、思いがけないものが映り込むことがあります。それがまた曲面を持つ被写体の質感を表現することにもなるので、とても重要な特性だと覚えておいてください。
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写真8のカメラの設定はそのまま、ストロボのみ Power を 「 1/2 」 に上げて、背後に置いた白レフにバウンスさせる。レフ板の大きさ、また、設置方法にもよるが、ボトルに映り込むハイライトが増えることがある……
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写真11 の設定のまま、ストロボと被写体の間に大きめのトレーシングペーパーを1枚設置して撮ったもの……
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● さらにディフューザーを加えると
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写真11 にディフューザーを加えて撮影したのが写真12 です。テスト撮影なので、作品としては未完成もいいところですが、とてもユニークなハイライトが入りました。これは、白レフにバウンスした光がディフューザー全体に明るく映り込んだ結果、ボトルのハイライトとしてそのまま映り込んでいるのです。ハイライトの輪郭、右端がシャープなのは、ディフューザーの端がそのまま映っているためです。かなり大きめのトレーシングペーパーを用意したのですが、ボトルの曲面には間に合わなかったようですね。
以上のことを考えると、ボトルのような曲面を持つ被写体を撮るときは、トレーシングペーパーやレフ板のサイズは、撮影のテーマによって考えなければならいでしょう。
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● ボトルの撮影の本番
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今回わかったことを踏まえて、次回は透明なボトルの本番撮影を紹介する予定です。ボトルの持つ質感を忠実に再現する方法や、さらに魅力的に表現するテクニックを紹介できるかもしれません。お楽しみに。 |
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