ブリリアント山﨑の今すぐ撮レビアン!
第2回 アクアリウムを撮ろう!
TOPIX
日本橋で開催されているアートアクアリウム2016は大人気のようです。江戸時代に迷い込んだ非日常空間の展示が好評を博しています。梅雨明けが遅れた日本列島も夏本番!ブリリアント山崎の”今すぐ撮レビアン”はそんな涼しげなアクアリウムをいかに撮影するかの解説をしております。by 編集部 |
夏真っ盛りの8月は、イベントが目白押しで写真を撮る機会も多いもの。皆さんも行きたい場所が沢山あるのではないでしょうか?
さて、最近話題の夏のイベントの一つに、カラフルに彩られたアクアリウムがあります。美しくライトアップされたアクアリウムは、見るだけでも涼やかで楽しいものですが、せっかく撮影OKのスポットなら上手に写真に残してみたいもの。今回はそんなアクアリウムに焦点を当てて、ちょっぴり手ごわい水槽撮影のコツをご紹介します。
■ 水槽を撮る難しさ
アクアリウムは薄暗い室内の中にあることが多く、時には時間によって移り変わるライトアップがされていることもあります。そういった演出は目で見たときに美しくても、写真にすると思うように色が再現されなかったり、暗すぎて感度が上がってノイズが出てしまったりなど、カメラにとっては厳しい環境です。
また、魚が近くに泳いできてシャッターチャンスと思っても、水槽の形によっては屈折が激しく中の生き物が歪んで見えることもあります。
なかなか思うように撮れない条件が揃ったアクアリウムですが、カメラの設定を見直し丁寧に対応することで、いい写真が撮れた時は嬉しいもの。また、演出に凝ったアクアリウムだからこそできる魅力的な撮り方もご紹介します。
■ 水槽を撮るためにオススメのカメラ・レンズは?
・カメラ
アクアリウムは先述のとおり、撮影環境としては厳しい条件が揃っています。まずはいかに暗い場所で正確なピント合わせが行えるかが大切です。
カメラの仕様表にオートフォーカスがどの程度の明るさ(暗さ)から測距できるかという記述があります。それを見てできるだけ低輝度でもピントの合いやすいカメラを選んでいただくのがお勧めです。
・レンズ
気軽にいろいろ撮って楽しみたいなら、標準ズームレンズがお勧めです。意図した画角でレンズを水槽にぴったりとつけて撮影しやすいためです。できれば大口径の明るいレンズがあれば、むやみに感度を上げることなくノイズの少ない写真を得られるでしょう。
また余裕があれば、広角レンズなら水槽の並びを広くダイナミックに見せたり、グッと被写体に寄ることでパースを強調したユーモラスな表情を撮影することができます。マクロレンズを使用することで小さな魚たちの表情を捉えることも可能です。
■ 水槽を撮るためのカメラの設定は?
・ホワイトバランス
適切なホワイトバランスは会場の照明によって異なります。今回は強い色味のないライティングの水槽ではホワイトバランスを「 温白色蛍光灯 」に設定することで、赤や青の強いライティングが行なわれている水槽ではホワイトバランスを「 マニュアル 」で設定することで、ニュートラルに近い印象になりました。複雑なミックス光では正解がないこともあります。その場合は神経質に正しいに色味を追うよりも、全体のバランスを見ながら写真として好ましいと感じるものを選ぶと良いでしょう。
水族館の中では強い環境光が背面液晶にもかぶってしまうため、その場で正確な色合わせを行おうとしても、撮影者自身の目が適切に色味を判断できていないことが多く、細かい調整は自宅でPCのモニターを見ながら行う方がお勧めです。
また例えば赤色の魚に赤いライトが当たっている場合や青い魚に青いライトが当たっている場合など、あっという間に色飽和が起きてしまう場合がありますから、JPEGのみで撮影される方やレタッチを行わない場合は注意する必要があります。その場合は彩度を低めに設定して撮影しましょう。
ライトアップが時間によって移り変わるような場合、白色のプレーンな光になるのを待ってから撮影したほうが、被写体本来の美しい色調を表現しやすくなります。
・ISO
暗い室内であることの多いアクアリウムでは、ある程度カメラの感度を上げる必要があります。しかし場所によって明るさが異なったり、被写体とする生き物の動きが速いか鈍いかによって必要なシャッタースピードが違うことも考えると、ISOはオートに設定するのがお勧めです。
オートならその時の状況に合わせてカメラが適切な感度まで上げてくれるので、勘で設定するよりも最低限必要な感度がキープされるためスムーズな撮影が行えます。
・絞り
アクアリウムでは感度の上がりすぎを防ぐため、開放に近いF値がお勧めです。本来レンズの性能を引き出すという意味では1~2段絞った状態のほうがそのレンズの最高画質であることが多いですが、絞ることによる感度の上昇=ノイズの増加を考えると、このような薄暗いシチュエーションでは開放の方が良い結果が得られる場合が多くなります。もしも感度を上げなくても十分な露光量を得られる場合であれば、多少絞り込んでみるのも良いでしょう。
・シャッタースピード
ゆったりとした動きの金魚の場合は、1/125秒程度のシャッタースピードで被写体ブレせずに写し止められることが多いです。同じ場所に停止しているような生き物でしたら、もっと遅くしてシャッタースピードを稼げるので感度の上がりすぎが防げます。
最低シャッタースピードを設定できるカメラであれば、とりあえずは1/125程度に設定して、被写体ブレが起こらないか確認し、ブレているようであればそれぞれの魚のスピードに合わせて適時シャッタースピードの低速限界を上げていきましょう。
・AFエリア
AFエリアはオートにしてしまうと、狙った魚になかなかピントが来てくれません。たくさんの魚が泳いでいる水槽の中の一匹を正確に狙うためには、シングルポイントAFなどの測距点をひとつ選ぶモードがお勧めです。ピントは魚の目に合っていると自然に見えます。
・保存形式
ホワイトバランスの項で申し上げた通り、アクアリウムでは照明の関係で適切なホワイトバランスの決定が困難です。また表現として大胆にホワイトバランスを変更したいというケースも多くなる被写体です。
画像の保存形式はJPEGよりもホワイトバランスの調整幅が広いRAWに設定しておくと、レタッチ面で有利になるでしょう。思い切って明るくしたり暗くしたりなど、大幅な露光量の変更にも対応しやすい形式です。
■ 水槽を泳ぐ魚を狙うコツ
構図を考える際、背景の石や水草の位置をある程度意識して撮影すると写真にまとまりが出ます。また水槽の奥の方ではどうしてもコントラストが低下して魚がぼんやりしてしまいがちなため、クリアな写真を撮るには魚ができるだけ水槽のガラス面に近づいた瞬間を狙うと良いでしょう。
■ 多重露光で幻想的に
使いどころが難しい多重露光ですが、ひとつアクアリウムにお勧めの撮影方法をご紹介します。
まず一枚目は、キラキラした照明や水槽の中に飾られているビー玉をアウトフォーカスで撮影します。マニュアルフォーカスで程よいボケが得られるところまでピントリングを回せば簡単です。画面全体をキラキラしたボケで埋めるのではなく、どこかに一部黒い背景の部分を残しておくのがポイントです。
そして二枚目は、先ほどの意識して残しておいた黒い背景に当たる箇所に、メインの被写体を配置するように撮影します。金魚が主役の水槽なので、見栄えのする金魚を一匹選んで撮影してみました。すると、多重露光の結果はこのような感じです。
簡単に幻想的な一枚を作ることができました。皆さんもぜひ挑戦してみてください。
■ 水槽自体も撮っておこう
最近のアクアリウムは展示が凝っていますので、水槽それ自体もアートとして成立していることがあります。魚を追いかけるだけでなく、引きの図でぜひとも水槽を撮影しておきましょう。シンプルな日の丸構図でも水平をきっちり取って仕上げることで、インパクトのある一枚になりました。
もしお友達や家族と一緒なら、協力してもらってこんな撮り方はいかがでしょうか。お相手にカメラアプリを起動したスマホを持ってもらい、自分は後ろからそのスマホの画面を狙ってピントを合わせます。スマホ越しに実際の水槽が背景になるのがポイントです。遊び心があって記念にもなる一枚です。
水槽をシンプルに収めても美しいですが、大胆に斜めに傾けてみると面白い図となりました。
■ 暑い夏を涼しく過ごそう
夏は太陽の下元気に遊びまわるのもいいですが、アクアリウムは涼しく撮影が楽しめる快適スポットです。上手に利用して夏も充実した写真ライフを送りましょう。