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礒村浩一のフィルター画作り講座 第4回
クロスフィルターで
キラキラした夜景を撮る


TOPIX

秋まっただ中! 空気も澄んできて夜景が綺麗に撮れる季節になってきました! そんな季節にぴったりな魅力的画作りには、特殊効果系の光学フィルターを使うのがオススメ! レンズフィルターとそのポイントを紹介する「 礒村浩一のフィルター画作り講座 」、第4回目「 秋 」の講座は、「 クロスフィルター 」を使ったキラキラ輝く夜景の撮りかたを写真家・礒村浩一氏が詳しく伝授してくれます。  by 編集部

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■ 意外と簡単な夜景撮影の基本

夜景撮影は写真撮影のジャンルのなかでもとても人気のあるジャンルだ。特にここ数年は LED 照明の普及に伴い鮮やかな色彩に彩られたイルミネーションも多く、さまざまなデザインのイルミネーションをデジタルカメラで捉えることはとても楽しい。でもいざ夜景撮影をしよう思ってもどのような手順で撮影すればよいのか戸惑ってしまう方もいるだろう。そこで今回は夜景撮影の基本的な方法と、より魅力的な写真とするのに効果的なフィルターについてお話ししよう。

写真1 三脚とカメラ
三脚とカメラ

三脚とカメラ

さて夜景撮影といっても実はそれほど難しいものではない。基本的には撮りたいものにピントを合わせて、絞りとシャッタースピード、ISO 感度の組み合わせを調整して明るさを整えて撮影すれば良い。ただ夜景は昼間の撮影ほど明るさがないので、シャッタースピードが遅くなってしまう。そのため手ぶれを防ぐ為にはカメラを三脚に据えて撮影する必要がある。

夜景撮影の際にはカメラをしっかりと三脚に据え付けたうえで、撮りたい被写体に向けて構図を整える。このときライブビュー撮影ができるカメラは背面モニターに画像を表示させて確認すると良い。夜景撮影は AF でピント合わせをするのが難しいので、ライブビューで画像を拡大してマニュアルフォーカスでピントを合わせると、より正確なピント合わせができる。

カメラの露出モードもマニュアルにして、使うレンズの開放絞りもしくは1段ほど絞って、できるだけ光を多く取り入れる設定にしよう。ISO 感度は撮影に使うカメラの基本感度 ISO 100 もしくは ISO 200 に設定する。できるだけノイズの少ない高画質な画像を得る為だ。その状態でシャッタースピードを 1/2 ~ 1秒でまずはテスト撮影する。撮影画像を確認して明るければシャッタースピードを速く、暗ければシャッタースピードを遅くする。ただしシャッタースピードを4秒まで遅くしても暗いようなら、ISO 感度を上げて調整するようにしよう。もちろんシャッタースピードを遅くすれば明るく撮影できるが、あまり遅いシャッタースピードにすると三脚を使用していてもブレる恐れが出てくる。まずはこの設定を基本に夜景撮影に慣れるようにしよう。

手ぶれ補正機構がついたカメラ・レンズは誤作動を避けるためにあらかじめオフにしておこう。またシャッターボタンを直に指で押すとその振動でカメラがぶれてしまうので、カメラに触れずにシャッターが切れるリモートケーブルを使うようにしたい。もしもリモートケーブルが手元に無い場合はセルフタイマーを利用してシャッターを切ると、指でシャッターボタンを押した振動が収まった後にシャッターが切れるのでカメラぶれの防止となる。

写真2 夜景作例1
夜景作例1

夜景作例1

写真3 夜景作例2
夜景作例2

夜景作例2

このように夜景撮影は基本的な撮影方法さえ理解してしまえば思いのほか簡単に素敵な写真が撮れる。またカメラぶれに十分に注意したうえで、シャッタースピードを 10 秒 ~ 60 秒といった長秒露光にして撮影すれば、普段は目にする事ができない光の動きを輝線として表現することも可能だ。

写真4 長秒露光作例1
長秒露光作例2

長秒露光作例2

写真5 長秒露光作例2
長秒露光作例1

長秒露光作例1

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■ クロスフィルターでより煌びやかな光を捉える

夜景の表現として、光をより輝かすような効果を持たせるフィルターを使う方法もある。その際に有効なのがクロスフィルターだ。クロスフィルターとは電球やイルミネーションなどの光の点光源に「 キラッ 」といった光条を作り出せるフィルターのことだ。

写真6 DHG 6X クロスの作例
DHG 6X クロスの作例

DHG 6X クロスの作例

クロスフィルターの表面には細い筋が格子状に刻み込まれている。この格子状の筋に沿うように光が滲み光条が作り出される仕組みだ。

写真7 マルミ のクロスフィルター DHG シリーズ
クロスフィルターの表面に刻まれた格子状の細い筋に沿って光が伸びることで、キラッとした光条が作り出される

クロスフィルターの表面に刻まれた格子状の細い筋に沿って光が伸びることで、キラッとした光条が作り出される

クロスフィルターは枠が二重構造となっており、前枠だけを回してフィルターのガラスを回転させることで、点光源に発生する光条の角度を回転させられる。

写真8
おなじイルミネーションをクロスフィルターを回転させて光条の角度を変えて撮影

おなじイルミネーションをクロスフィルターを回転させて光条の角度を変えて撮影

写真9
おなじイルミネーションをクロスフィルターを回転させて光条の角度を変えて撮影

おなじイルミネーションをクロスフィルターを回転させて光条の角度を変えて撮影

動画1 光条の角度の変化

クロスフィルターを回転しながら撮影したムービー。画面内の点光源に発生した光条は大きさは異なるが、いずれも同じ形と角度で回転する

クロスフィルターはガラス面の筋の刻み方が変わることで、点光源に発生する光条の本数が変わる。撮影のイメージに合わせてフィルターを選ぼう

写真10 光条の違い(無・4本・6本・8本)
クロスフィルターには光条の本数の違いで、4本、6本、8本の光条が現れるフィルターがある

クロスフィルターには光条の本数の違いで、4本、6本、8本の光条が現れるフィルターがある

実はクロスフィルターにはいくつか使いどころがある。ただやみくもにクロスフィルターをレンズに装着するだけではあまり効果的とはならない。まずキレイな光条を発生させるには点光源であることが重要だ。電球や LED がひとつずつ分離して光っているのが理想だ。大きな街灯や LED を複数並べて面光源としているライトなどは、ぼやっとした滲みとなりあまりキラキラ感が生まれない。また広角レンズで撮るよりも標準から望遠レンズで撮影したものの方がキレイな光条となりやすい。

写真11 効果が控えめな例
広角レンズで撮影したイルミネーション。ひとつひとつの LED はクロス効果が表れているが全体で見ると効果は控えめ

広角レンズで撮影したイルミネーション。ひとつひとつの LED はクロス効果が表れているが全体で見ると効果は控えめ

写真12 光条が滲んだ例
おなじく広角レンズで撮影。木の枝のイルミネーションは光条がはっきりしているが、奥のクリスマスツリーや建物のイルミネーションの光が固まって見えるため、光条がも重なり合ってしまいおおきな滲みのようになってしまった

おなじく広角レンズで撮影。木の枝のイルミネーションは光条がはっきりしているが、奥のクリスマスツリーや建物のイルミネーションの光が固まって見えるため、光条がも重なり合ってしまいおおきな滲みのようになってしまった

ここでレンズの焦点距離とクロスフィルターの効果の出方の関係を見てみよう。LED で彩られたイルミネーションを、レンズの焦点距離を変えながらも画面内でほぼ同じ大きさになるように被写体との距離を変えながら撮影した。

写真13 広角レンズでの利用例
汽車のイルミネーションの、さらに背後のイルミネーションの見え方に注目する。広角レンズでは近くの物は大きく遠くの物は小さく写るという特性があるため、背景のイルミネーションは小さく写る。これによって画面内を占めるイルミネーションの面積も小さくなるため相対的に光条も短くなる

汽車のイルミネーションの、さらに背後のイルミネーションの見え方に注目する。広角レンズでは近くの物は大きく遠くの物は小さく写るという特性があるため、背景のイルミネーションは小さく写る。これによって画面内を占めるイルミネーションの面積も小さくなるため相対的に光条も短くなる

写真14 50mm ~ 200mm の焦点距離での利用例
さらに焦点距離を長くしていくと、その特性から背後のイルミネーションが相対的に大きく写るようになる。それに伴い点光源も大きくなると同時に光条が長くなり、よりキラキラとしたイメージとなる。このことからもクロスフィルターは広角域で使うよりも、標準域から望遠域の方がより効果が高いといえる

さらに焦点距離を長くしていくと、その特性から背後のイルミネーションが相対的に大きく写るようになる。それに伴い点光源も大きくなると同時に光条が長くなり、よりキラキラとしたイメージとなる。このことからもクロスフィルターは広角域で使うよりも、標準域から望遠域の方がより効果が高いといえる

次にレンズの焦点距離は変えずに、絞り値を変えることによるクロスフィルターの効果の変化に注目しよう。ここではクロスフィルターの効果が出やすい望遠で撮影した。

写真15 絞り値の変化による光条の違い
開放絞りでは汽車のイルミネーションにのみピントが合っているため、背景のイルミネーションの点光源と光条が大きくぼけている。そこから絞りを絞り込むにつれ、背景のイルミネーションにもピントが合い、点光源および光条がはっきりと判るようになる。このように明るい絞り値で撮影したほうが、より輝いたイメージの光条となることが判るだろう

開放絞りでは汽車のイルミネーションにのみピントが合っているため、背景のイルミネーションの点光源と光条が大きくぼけている。そこから絞りを絞り込むにつれ、背景のイルミネーションにもピントが合い、点光源および光条がはっきりと判るようになる。このように明るい絞り値で撮影したほうが、より輝いたイメージの光条となることが判るだろう

これらのことから広角よりは望遠で、絞りはあまり絞らずに撮影するとクロスフィルターをより効果的に活用できる。この「 使いどころ 」を念頭に撮影することでよりキラキラとした夜景撮影を楽しんでいただけるはずだ。

写真16 DHG 6X クロス使用1
DHG 6X クロス使用

 

写真17 DHG 6X クロス使用2
DHG 6X クロス使用2

 

写真18 DHG 8X クロス使用1
DHG 8X クロス使用1

 

写真19 DHG 8X クロス使用2
DHG 8X クロス使用2

 

写真20 DHG 8X クロス使用3
DHG 8X クロス使用3

 

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■ クロスフィルターの活用例

クロスフィルターは夜景撮影以外でも撮影に活かせる。点光源で効果的な被写体を探すと面白い効果が出せる。

写真21 作例1
室内にてテーブルに灯されたロウソクの火をクロスフィルターで演出。 協力 フラワーショップ&スクールゆりの木

室内にてテーブルに灯されたロウソクの火をクロスフィルターで演出。 協力 フラワーショップ&スクールゆりの木

写真22 作例2
室内にてテーブルに灯されたロウソクの火をクロスフィルターで演出。 協力 フラワーショップ&スクールゆりの木

室内にてテーブルに灯されたロウソクの火をクロスフィルターで演出。 協力 フラワーショップ&スクールゆりの木

写真23 作例3
水面に反射した日光の輝きをクロスフィルターでよりキラキラに

水面に反射した日光の輝きをクロスフィルターでよりキラキラに

写真24 作例4
水面に反射した日光の輝きをクロスフィルターでよりキラキラに

水面に反射した日光の輝きをクロスフィルターでよりキラキラに

写真25 作例5
木の葉や枝の隙間からのぞく太陽をクロスフィルターで捉えた

木の葉や枝の隙間からのぞく太陽をクロスフィルターで捉えた

写真26 作例6
星の輝きをクロス効果でより神秘的に表現

星の輝きをクロス効果でより神秘的に表現

クロスフィルターは通常では目にすることができない「 キラキラ 」した輝きを演出してくれるフィルターだ。フィルターを使わないそのままの夜景写真も十分に魅力的だが、イメージに合わせてクロスフィルターを使うことでより輝きを増した写真にできる。また水面の輝きやキャンドルの灯火などでもクロスフィルターをうまくつかうことで、イメージアップした作品が作れる。クロス効果の度合いの違うフィルターを使うことによって光条の出方を選ぶこともできるので、レンズの焦点距離や絞り値の組み合わせをいろいろと変えて試していただきたい。きっとこれまでとはひと味違った作品創りができるだろう。

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著者について
■ 礒村 浩一 写真家 ■(いそむらこういち)   1967 年福岡県生まれ。東京写真専門学校( 現 東京ビジュアルアーツ )卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍や Web 誌にも数多く寄稿している。近著「 オリンパス OM-D の撮り方教室 OM-D で写真表現と仲良くなる 」( 朝日新聞出版社 )、「 マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド 」( 玄光社 )など。 2015 年 9 月よりデジタルハリウッド「 カメラの学校 」講師。Web サイトは http://isopy.jp/ Twitter ID : k_isopy