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ストロボ達人への道!
第7回 リングフラッシュでジュエリーを撮る 2012/03/14
 
▼目次  
小さな被写体はライティングが難しい?
カメラとリングフラッシュの設定 1
カメラとリングフラッシュの設定 2
実際に撮影してみよう
次回予告
アンケートにお答えください
▼写真0 リングフラッシュのみでの撮影
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今回は、ちょっと特殊なストロボ、「 リングフラッシュ 」 MF18 を1灯だけ使ってジュエリーを撮影しましょう。リングフラッシュは、ジュエリーのような小物を撮影するときに威力を発揮します。
Camera NIKON D7000
Lens Tokina AT-X 165 PRO DX
F. Dist. 75 mm EV 0.0
Aperture F11.0 S. Speed 1/125 sec
ISO 100 WB 6600
M.Mode ESP Strobe MF18
S. Light 白レフ
Filter Non
▼トピック  
指輪やピアスなどの小さなジュエリーを撮るときに使うストロボには、リングタイプのストロボが最適です。今回はニッシンデジタルのリングフラッシュ MF18 を使って撮影します。 ( MF18 の Web ページ
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■ 小さな被写体はライティングが難しい?
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● 道具を変えると簡単になる

 

 皆さんは指輪とかピアスような、小さなジュエリーを撮ったことがありますか? 一度でも撮ったことがあれば、そのライティングの難しさを感じたことでしょう。被写体がとにかく小さいですから、カメラを被写体にぐぐっと寄せて撮ることになります。使うレンズによっては、被写体とレンズ表面までの距離が 2cm 程度になることもあるでしょう。そんな状態での撮影ですから、本講座でこれまでに紹介したようなライトの設定では、カメラやレンズの影が被写体や背景に落ちることもあるはずです。また、こうしたジュエリーには光沢面も多いので、カメラやレンズ、カメラマンが被写体に映り込むことも考えられます。こういう場合のライティング方法をクリップオンストロボを使って紹介するのが本講座の役目でもあるわけですが、今回紹介するテクニックは 「 薮田め、手を抜きやがったな 」 と思われるくらいに極めて簡単な方法です。それは、これまでの講座で紹介してきたクリップオンストロボと、そのテクニックはちょっと脇にどけて、写真2のようなリング状のストロボを使います。

● リングフラッシュを使うワケ

 

 写真2のようなストロボを 「 リングフラッシュ 」、または 「 リングストロボ 」 と呼びます。名前の通り、ストロボの発光部がリングチューブになっていて、ストロボの本体 ( ジェネレータ部 ) から分離しています。分離していることで、発光部を自由な場所で使えるわけですが、通常はレンズ鏡筒 ( ※01 ) の先端部に装着 ( 写真3 ) して使います。レンズに発光部を装着することで、レンズの光軸とストロボの光軸を近づけることができ、被写体に対して均質な光を照射できます。また、一般的なクリップオンストロボをカメラ上部に装着してマクロ撮影するときにありがちな、レンズやレンズフードによるケラレ ( ※02 ) を心配することもなくりなります。


※01 鏡筒
正しくは 「 鏡胴 」。望遠鏡やカメラのレンズは単体レンズを複数枚組み合わせたもので、それらレンズを固定し、不必要な横からの光を防ぐための筒状のものを鏡胴、または鏡筒と呼ぶ。単にレンズと呼ぶときもある。  戻る
※02 ケラレ
レンズ内に入射する光がレンズフィルターやレンズフードなどによって邪魔されて影になり、画像の周辺光量が低下する現象をケラレと呼ぶ。また、クリップオンストロボの光がレンズの鏡筒やレンズフードに当たり影を落とす場合もケラレと呼ぶことがある。  戻る

▼写真1 リングフラッシュ MF18 を使って撮ったピアス
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カットされた小さな石がいくつも埋め込まれている 1cm 程度のピアス。こうした被写体のライティングはかなり難しいが、この写真ではリングフラッシュを1灯だけ使って撮影している。
( 写真を Click で拡大 )

▼写真2 リングフラッシュ MF18
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多くのリングストロボは、本体 ( ジェネレータ部 ) と発光部が分離していて、ケーブルによって繋がっており、発光部をレンズ鏡筒 ( ※01 ) に装着して使う。MF18 のユニークなところは、発光部のリングチューブが2つに分割でき、開くことでケラレ ( ※02 ) を最小限に抑えられる。
( 写真を Click で拡大 )

▼写真3 カメラ+ MF18
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リングフラッシュ MF18 をカメラ D7000 に装着した写真。ストロボの発光部がレンズの光軸上にあるため、クリップオンストロボによるマクロ撮影においてありがちな、レンズ鏡筒の影の心配がない。また、光が均質になる特徴がある。
( 写真を Click で拡大 )
 

 

■ カメラとリングフラッシュの設定 1
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● レンズの焦点距離に注意

 

 それでは実際にリングフラッシュ MF18 を使って撮影をしてみましょう。今回は大きさが 1cm 程度の小さなケシェルシャロームのピアスを撮影してみます。こうした小さな被写体を撮るときは、「 第3回 光沢のある物撮り ( 時計を撮る ) 2 」 で使ったマクロレンズが最適ですが、こうしたレンズを持たない人もいると思うので、今回は敢えて標準ズームレンズを使って撮影してみました。今回使った焦点距離が 16-50mm の 「 Tokina AT-X 165 PRO DX 」 のようなレンズでリングフラッシュを使う場合、レンズの焦点距離によっては写真5のようにケラレが出てしまうことがあるので注意しましょう。たいがいの場合はズームを望遠寄りにしていけば、こうしたケラレは解消できるはずです。


● どうしてもケラレるときは

 

 MF18 は多くのマクロレンズでケラレがでないようにリング発光部を広げられる工夫がなされていますが、広角寄りのレンズや φ77mm より大きな大口径マクロレンズの場合、どうしてもケラレが出てしまうことがあります。ケラレが解消できないときは、最終的にトリミング ( ※03 ) することを考えて構図を決める必要があります。今回の写真も、標準ズームでは寄り切れなかったため、撮影後にトリミングしています。今回の撮影結果、写真1も、実は撮影後にトリミングしています。元の画角は写真6のように、かなり広範囲の画角になっています。


● 自分のレンズの口径に合せるには

   リングフラッシュ MF18 に標準添付されているアダプターリングでは、手持ちのレンズの口径に合わないというときは、コンバージョンレンズやレンズフィルターに使う市販のステップアップリングを使うと良いでしょう。


 
▼写真6 実際の画角
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16-50mm の 「 Tokina AT-X 165 PRO DX 」 では、ここまで寄るのが精一杯。MF18 のリングチューブを開いても、四隅にはケラレが残る。こういうときは、撮影後にトリミング ( ※03 ) することを前提に構図を決めよう。
( 写真を Click で拡大 )

▼写真4 カメラのセッティング
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今回はマクロレンズを使わずに、標準ズームレンズ 16-50mm の 「 Tokina AT-X 165 PRO DX 」 を使った。こうした標準ズームレンズで接写をする場合、ズームをテレ側 ( 望遠側 ) にして、寄れるとこまで寄って撮ると良い。
( 写真を Click で拡大 )

▼写真5 広角側を使った場合
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リングフラッシュ MF18 を標準ズームレンズに装着して広角側を使って撮影すると、焦点距離によってはリングチューブの影 ( ケラレ ) が大きく出てしまうことがある。ズームを操作して望遠側にし、ケラレの出ない焦点距離を使うようにしよう。 ( 写真を Click で拡大 )


※03 トリミング
画像の周辺部分を切り取って構図を変化させることをトリミングと呼ぶ。銀塩フィルムの時代からある加工処理。デジタル写真では、Raw 現像ソフトや Adobe Photoshop などの画像処理ソフトを使ってトリミングする。   戻る
   
■ カメラとリングフラッシュの設定 2
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● マクロ用の弱い光が使える!

 

 リングフラッシュ MF18 は、もちろん TTL 機能を搭載していますし、Auto モードもあるので、慣れるまでは Auto や TTL を使って練習すると良いのですが、本講座の鉄則として、本番ではマニュアル設定で臨みます。そして、マニュアル設定に挑戦するときは、是非ともマクロ撮影で使って欲しい機能があります。それは 「 ファインマクロ 」 という、微少発光モードです。通常のマニュアルモードは 1/1 〜 1/64 を -2/3EV、1/3EV ステップで調整できますが、ファインマクロモードだと、1/128 〜 1/1024 の微小発光を 1/6EV ステップごとに微細に制御できるのです。このような微小な光量設定は光量や発光時間が不安定になりがちなのですが、MF18 ではその安定化に成功しているようです。マクロ撮影では写真4のように被写体とレンズのワーキングディスタンス ( ※04 ) が極めて狭くなるので、MF18 のようなファインマクロモードがないリングストロボの場合は、レンズに入射する光量を弱める ND フィルター ( ※05 ) を使わなければなりません。



 
▼写真9 ワイヤレス TTL モードもある
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MF18 には、他のニッシンデジタルのハイエンドストロボにも搭載されている 「 ワイヤレス TTL モード 」 がある。( 続きは写真を Click )

▼写真7 MF18 の設定
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MF18 の背面で電源ボタンを On にすると液晶パネルにメニューが表示される。既に電源が入っているのに液晶パネルが暗いときは ボタン ( 1 ) を押すと表示……
( 続きは写真を Click )
▼写真8 [ Fine Macro ] の設定
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トップメニューで ボタンを使って を選び、 ボタンを押すと、[ Fine Macro ] 画面 ( ) が表示される。( 続きは写真を Click )

※04 ワーキングディスタンス
被写体からレンズ表面までの距離のことをワーキングディスタンスと呼ぶ。ちなみに焦点距離は、レンズから焦点までの距離で、被写体から焦点までではない。   戻る
※05 ND フィルター
減光 ( Neutral Density ) フィルターのこと。レンズの先頭に装着し、レンズに入射する光量を減少させるフィルター。1/2 にするものを ND2、1/4 が ND4、1/8 が ND8 というように、光量の減少度合いによって種類がある。→ Kenko Tokina ND フィルター   戻る
   
■ 実際に撮影してみよう
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● 一灯でも十分な絵になった

 

 ここまでの設定で、撮影したジュエリーが写真10です。このとき、MF18 の光量設定は [ Fine Macro ] で、左右のリングが同じ光量 1/512 に設定しています。もちろん部屋は真っ暗にして撮っていますから、光は MF18 のみ。白バックと左右の白レフからの反射光もありますが、光量は微少なので、被写体への回り込みは極めて少なくなっています。当初はフィルインとアクセントライトを使う必要があるのではと考えていたのですが、リングフラッシュだけでも結構いい絵になったと思っています。もちろん、主題以外の被写体のイメージを変化させたいと思うのなら、リングフラッシュ以外のストロボを用意して、多灯撮影する必要があります。


● マクロ撮影時に嬉しいモデリングライト

 

 写真10のようなマクロ撮影時に困るのは、レンズを被写体に近づけるために、被写体が暗くなってフォーカシングがしづらくなることです。オートフォーカスを使えばいいのではと思うかもしれませんが、マクロ撮影の場合は基本的にオートフォーカスは使いません。マクロ撮影では被写界深度が浅くなるため、オートフォーカスでは思いも寄らない場所にフォーカスが合い、主題がボケてしまうことがあるからです。イメージ通りの絵に仕上げたければフォーカスもマニュアルにしなければなりません。しかし被写体が暗いのはいかんともしがたい……というときに便利なのが、「 モデリング LED ライト 」 です。モデリングライトとは、ストロボと同じ位置、同じ角度で被写体を照らしてくれる補助灯で、ストロボが発光するときは消えるライトのことです。このライトがあれば、真っ暗な部屋で撮影するときもフォーカシングできますし、なによりストロボ光が被写体にどのように当たるかを事前に確認できます。業務用のストロボには標準で搭載されているモデリングライトですが、一般的なクリップオンストロボにはほとんどありません。ニッシンデジタルの一部のハイエンドモデルには、このモデリングライトが LED ライトで搭載されているので、とても重宝します。


● 人物写真のキャッチライトにも使える

 

 グラビア写真などで、瞳の中に丸いキャッチライト ( ※06 ) が入っている写真を見たことがありませんか? あのキャッチライト、実は MF18 のようなリングストロボをキャッチライトに使っています。( 実際にはもう少し大きいサイズのストロボになります ) リングストロボというと物撮りのマクロ撮影用というイメージがありますが、実はポートレイトでも頻繁に使われるストロボなので、もしポートレイトを撮ることがあるなら、使ってみると面白いかもしれません。ただ、MF18 だと少し小さいので、メインライトは他のクリップオンストロボにし、MF18 はキャッチライト用のアクセントライトとして使うと良いかもしれません。



▼写真10 MF18 だけで撮ったピアス
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部屋を真っ暗にして、リングフラッシュだけの光で撮ったピアス。バック紙と、白レフは左右のみ。カメラ側には何も無い状態。
( 写真を Click で拡大 )

▼写真11 便利なモデリング LED ライト
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マクロ撮影時は被写体が暗くなりがちで、マニュアルでのフォーカシングがしづらいものだが、MF18 のモデリング LED ライトを使えば、フォーカス合せはもちろん、撮影結果の光のイメージも掴みやすい。 ( 写真を Click で拡大 )

▼写真12 こんな写真も撮ってみました
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バックに光沢のある布を使い、グラスからネックレスを垂らして撮影。光はもちろんリングフラッシュ MF18 のみ。 ( 写真を Click で拡大 )
※06 キャッチライト
人物の目に入れる光のこと。アイキャッチと呼ぶこともある。 → モテ写 on The Web 「 第6回 キャッチライトでモテ写真! 1 」   戻る
   
■ 次回予告
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● 次回はいよいよ料理!

 

 次回は物撮りの中でもっとも難しいと個人的に思っている料理を撮ってみたいと思います。前7回で紹介したテクニックをフル動員しての回になると思っていますが、実は次回で 「 薮田織也の物撮り講座〜ストロボ達人への道! 」 はいったん終了します。そんなこんなで、最終回は今まで以上に充実した内容になるように頑張りますので応援してくださいね。それでは次回をご期待ください。




■ 協力企業 ■
ニッシンデジタル
ニコンイメージング
ケンコー・トキナー
ケシェルシャローム


■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
薮田織也事務所
 

 

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初出:2012/03/14 このページのトップへ
 
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