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ストロボ達人への道!
第6回 3灯の多灯撮影 − 各ストロボの役割 2012/02/23
 
▼目次  
ストロボを3灯使う意味
メインライト
フィルインライト
アクセントライト
次回予告
アンケートにお答えください
▼写真0 ストロボ3灯で撮影した花瓶
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ストロボ3灯を使って多灯撮影した花瓶です。今回はそれぞれのストロボに明確な役割を与えて、被写体の質感を引き出す方法を紹介!
Camera NIKON D7000
Lens Tokina AT-X 165 PRO DX
F. Dist. 30 mm EV 0.0
Aperture F11.0 S. Speed 1/125 sec
ISO 100 WB 5800
M.Mode ESP Strobe x 3
S. Light 白レフ
Filter Non
▼トピック  
物撮りライティングの基本ともいえるメインライト、フィルインライト、アクセントライトを使った多灯撮影テクニックをサンプル写真を交えて紹介。
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■ ストロボを3灯使う意味
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● なぜ3灯も使う必要が?

 

 今回は前回の2灯撮影から1灯増やした、ストロボ3灯による多灯撮影の方法を紹介します。
「 ストロボを3灯も使うなんて贅沢な! 」、と思う読者もいることでしょう。しかし、光を自在にコントロールするためには、3灯による撮影がもっとも基本的なライティングなのです。もちろんレフ板を工夫することで1灯だけでも魅力的な物撮りはできますが、イメージ通りに素早くライティングしようと思ったら、やはり3灯による多灯撮影には1灯撮影ではとても太刀打ちできません。イメージ通りに素早くとは言っても、具体的にどんなことができて、どんなメリットがあるのかわからなければ、安くはないストロボを3灯も揃えることはできないでしょう。そこで、前回も紹介した多灯撮影で使うライトの名称を思い出してください。

  ・メインライト
  ・フィルインライト
  ・アクセントライト

 それぞれの名称の具体的な役割は後述しますが、こうした名称があるように、多灯撮影はただ単にストロボの数を多くすればいいというわけではもちろんなく、それぞれのストロボにきちんと役割を担わせることで、より効果的なライティングをするわけです。


▼写真1 ニッシン Di866 MARK II
ニッシン Di622 MARK II
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ニッシンデジタルストロボのプロシューマー用外付けストロボ。左が GN※2:44 の Di622 MARK II、右がフラッグシップ機の Di866 MARK II ( GN:60 ) 。多灯撮影するときは、Di866 MARK II 1台に、Di622 MARK II を複数台揃えるのがコストパフォーマンス的に良いかも。

※2 GN=ガイドナンバー。
「 プロが教える 新・女性の撮りかた講座
第17回 ストロボは反射させて使う 」 を参照

 

 

■ メインライト
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● 主役でもある太陽の光

 

  「 メインライト 」 は名前の通り主役のライトで、太陽の直接光に相当する光であるとも考えてください。太陽の直接光だとすれば、被写体にハイライトとシャドウを描き出す役割はメインライトにあるわけです。よって、必ず最初にメインライトだけでライティングして、ハイライトとシャドウをどのように作るかを決めます。今回のメインライトは、写真2のように右斜め 45°前方から被写体に当て、被写体の右側にハイライト、左側にシャドウを作ります。

 ところで太陽の直接光は被写体をどのように照らしているのでしょうか。ご存じのように、太陽の光は直線的に被写体を照らします。その直線的な光が物体に反射したり、半透明な物体を透過することで広がりを持つ光、つまり拡散光になります。では、一般的なストロボの光はどうでしょう。一部の特殊なストロボを除いて、ほとんどのストロボが広がる光です。こうしたストロボをメインライトとして使うとき、より太陽光に近づけるためにちょっとした工夫をしてみましょう。写真2をもう一度見てください。ストロボの前に、ちょっと変わった機材を使っているのがわかるでしょう。この機材は 「 グリッド 」 と呼ばれるもので、写真3のように格子状をしています。この升目が放射状に広がる光を制限して直線的にしてくれます。当然ですが周辺光量も低下します。グリッドは、必ずディフューザーの前に付けて使います。

 こうしたグリッドは、業務用としては豊富に市販されていますが、クリップオンストロボ用はほとんど見かけないので、今回はプラダンボードで自作してみました。 費用は外枠込みで 1,300 円です。製作にかかった時間はサボりサボり6時間。途中で飽きてしまい、何度も逃げそうになりました。(笑) 格子部分は黒いものであれば紙でも構わないでしょう。ただし、クリップオンストロボ以外で使うときは、燃えない素材であることが重要です。


▼写真2 メインライトの設置
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メインライトは、グリッド越しに斜め 45°前方から当てる。グリッドは、放射状に広がる光を直進させる効果がある。 ( 写真を Click で拡大 )


▼写真3 自作グリッド
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ホームセンターで買える材料で作ったグリッド。格子部分はプラダンボード ( 約 300 円 )を幅3 cm の短冊に切って組み合わせた。外枠は固定する方法を選ばなければあってもなくても構わない。今回はアルミ製パイプ ( 全部で約 1,000 円 ) で組んだ。 ( 写真を Click で拡大 )


● グリッドを使うと太陽光に近くなる

 

 さて、非常に面倒なグリッドを作ったのはいいのですが、その効果はどれほどあるのでしょうか。自作グリッドを使うのは初めてだったので少し心配だったのですが………、写真4写真5を比べてみてください。これらはメインライトのみで撮影したものです。写真4がディフューザーのみ、写真5がディフューザー+グリッドです。どうでしょうか。それなりの効果が出ているのがわかると思います。

  わかりにくいかもしれないので、比較用の写真を用意しました。写真6は、ディフューザーのみの写真とグリッドを使った写真を切り替えて見比べられるポップアップウインドウです。それぞれの写真は、グリッドの有る無し以外はカメラもストロボもすべて同じ設定で撮影しています。違いをじっくり確認してみてください。

 さて、これでメインライトの設定は終わりです。次はフィルインライトを設定しましょう。


 
▼写真6 比較用
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写真をクリックして表示されたウインドウで、右上の Before After ボタンをそれぞれクリックして、違いを確認してみよう。Before がディフューザーのみ、After がグリッド使用。
( 写真を Click で拡大 )

▼写真4 ディフューザーのみ
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メインライトのストロボのみで、ディフューザーを使って撮影したもの。ディフューザーで拡散された光が四方の白レフに反射して、被写体全体に回り込んで明るくなっている。
( 写真を Click で拡大 )

▼写真5 グリッド使用
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ディフューザーでいったん拡散された光が、グリッドによって直進性を与えられため、反射光が少なくなり、シャドウ部が増え、結果ハイライトが強調されている。 ( 写真を Click で拡大 )
   
■ フィルインライト
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● フィルインライトは空の光

 

 メインライトが太陽の直接光だとすれば、「 フィルインライト 」 は太陽の光が乱反射している空自体の光です。フィルイン ( fill in ) とは、「 〜の代理をする 」、や、「 〜に記入する 」、という熟語ですが、フィルに 「 満たす 」 という意味があるように、ライティングの場合は 「 空間を満たす ( 光 ) 」、とでも訳すのが適当でしょう。フィルインライトはメインライトと異なり、ハイライトやシャドウを描くために使われません。写真全体の明るさをコントロールするために使い、また、メインライトが作ったシャドウを補正して明るくするためなどに使われます。あくまでも脇役なので、当然メインライトよりも柔らかく弱い拡散光であるべきで、そのためにディフューザーを使うことが一般的です。注意しなければならない点は、フィルインライトによって被写体の影が落ちないようにすることです。影を消すという作業はライティングにおいて大変難しく、影ができないように光量を弱くしすぎて光量不足になることもあります。基本的に影はレフ板の反射光やライトの余計な光をハレ切りで消します。



● フィルインライトのストロボはスレーブに

 

 今回の多灯撮影も、メインライト以外のストロボは 「 スレーブモード 」 に設定します。メインライトはコマンダーとして使うので、「 マスターモード 」 に設定します。マスターとスレーブの設定は、前回の 「 ストロボのスレーブ ( リモート ) 設定 」 の項を参照してください。



● メインライトよりも弱く広く

 

 フィルインライトは前述したように、光量の弱い拡散光にしなければならないので、ストロボの設定はメインライトの光量よりも低く、そして照射角は広く設定します。また、被写体の周囲を白レフなどで囲んで、反射光が被写体に当たるようにします。フィルインライトをメインライトに追加すると、当然ですが全体的に明るくなります。これにより、メインライトだけで設定したときのハイライトとシャドウのコントラストが失われることがあります。もし必要以上にコントラストが低下したときは、フィルインライトを加えることを前提に、再度メインライトのみで設定をし直します。



● メインライトのみと比較してみよう

 

 こうしてメインライトとフィルインライトの2灯を使って撮影したのが写真9です。メインライトのみで少しコントラストが強すぎる写真8に比べて、落ち着いた感じになったと思います。違いを直接比較できるように、写真10を用意しました。見比べてみてください。



● しかし何か物足りない

 

 メインライトとフィルインライトでの撮影でも、それなりの絵になっていますが、何か物足りないと感じませんか? もし、物撮りのテクニックをもう一段向上させたいと考えているなら、今の写真に対して何をどうすればより良い絵になるかを考えてみることです。では写真9には何が足りないのでしょう。私が思うには、半透明な花瓶のガラスの質感が足りないのです。そこで次の項でアクセントライトを使って、質感の向上にチャレンジしてみましょう。



▼写真7 フィルインライトの設置
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フィルインライトはいわば太陽光が乱反射した空の光なので、トップライトとして設置し、天トレ越しに被写体に照射して拡散光にする。このとき、被写体の周囲に白レフも配置する。
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▼写真8 メインライトのみ
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グリッド+ディフューザーを使ったメインライトのみで撮影した花瓶。 ( 写真を Click で拡大 )

▼写真9 メインライト+フィルインライト
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メインライトに天トレ越しのフィルインライトを加えて撮影した花瓶。 ( 写真を Click で拡大 )

▼写真10 メインライトのみとの比較
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写真をクリックして表示されたウインドウで、右上の Before After ボタンをそれぞれクリックして、違いを確認してみよう。Before がメインライトのみ、After がメインライト+フィルインライト。 ( 写真を Click で拡大 )
   
■ アクセントライト
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● 魅力を引き出すアクセントライト

 

 アクセントライトは絵面にアクセントを付けるためのライトです。アクセントを付けるポイントや方法は様々ですが、共通している目的は被写体の質感を向上させ、魅力的に見せることです。ここでは被写体が半透明のガラスですから、花瓶の内部に光を入れてガラスの質感を出し、被写体の輪郭を際立たせるためにバックライトとしてアクセントライトを設置してみました。



● ストロボにトレペを貼る

 

 アクセントライトは効果を適用したい場所だけに絞って照射するのがポイントです。よって、照射角を任意に調整する必要があります。また、光量の調節もストロボ任せにするのではなく、写真11のように発光面にトレペを貼るなどして調節することもときには必要です。

 今回使ったストロボは3台とも同じものですが、ここで紹介しているように、ライトとしての役割の違いに合わせて光の照射角や強さをストロボの機能以外で変えています。こうした工夫が多灯撮影では必須ですので覚えておいてください。



● 完成写真

 

 こうして撮影したのが写真12です。アクセントライト無しの写真と比較するとよくわかりますが、花瓶内部に光が入ったことで、ガラスの質感が格段に向上していると思います。また、バックライトの特性で被写体の輪郭が浮かび上がり、被写体の魅力もアップしているはずです。



● アクセントライトは工夫次第

 

 アクセントライトの使いかたは、ここで紹介した以外にも撮影者のイメージやアイディア次第で無限大にあるのではないでしょうか。たとえば、被写体にではなく、黒っぽいバックの一部に映す光や、メインライトでは入らない場所にいれるハイライトなど、また、ハイライトだけではなく、ハレ切りを使ってシャドウを落とすのもアクセントライトの役割だと思います。

 さて、今回の講座はこれで終わりです。ストロボ3灯の多灯撮影のテクニックは、今回紹介したサンプル写真の撮影方法以外にも数限りなく存在します。ストロボ1灯に比べて撮影機材が余計に必要になりますが、実際に試してみると物撮りがとても楽しくなるはずです。チャレンジしてみてください。



▼写真11 アクセントライトの設置
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アクセントライトは絵面にアクセントをいれるためのライト。使い方はいろいろあるが、ここでは被写体の内部に光を入れることと輪郭を際立たせるために使う。 ( 写真を Click で拡大 )

▼写真12 メインライト+フィルインライト
+アクセントライト
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アクセントライトとして設置したバックライトを加えて撮影した花瓶。 ( 写真を Click で拡大 )

▼写真13 アクセントライト無しとの比較
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写真をクリックして表示されたウインドウで、右上の Before After ボタンをそれぞれクリックして、違いを確認してみよう。Before がアクセントライト無し、After がアクセントライト有り。。
( 写真を Click で拡大 )
   
■ 次回予告
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● 料理写真かも?

 

 次回も多灯撮影のテクニックを紹介する予定ですが、被写体を何にするのかは未定です。料理の写真になるかもしれませんし、ジュエリーの撮影になるかもしれません。いずれにしてもなるべく役に立つテクニックを紹介したいと思っています。




■ 協力企業 ■
ニッシンデジタル
ニコンイメージング
ケンコー・トキナー


■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
薮田織也事務所
 

 

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初出:2012/02/23 このページのトップへ
 
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