第 1 回 三脚はなぜ必要? 三脚の役割とメリット
ブレのないきれいな写真を撮ったり、イメージ通りの写真を撮るために、三脚はとても重要なツールです。プロカメラマンやハイアマチュアには三脚にこだわりを持つ人も少なくありませんが、初級者がいざ三脚を購入しようと思うと、たくさんの種類があって迷いがち。そんな悩みをこの講座「三脚活用テクニック入門」(全4回)が解決します。まずは第1回、きれいな作品作りに三脚が必要な理由、を解説します。(編集部)
本文 Photo & Text by 荻窪圭
三脚&雲台 活用テクニック講座 入門スタート
「三脚」って悩ましい存在で、今日は三脚を使いそうだと思って背負っていっても結局使わずじまいで「ああ疲れた」となったり、今日は手持ちで済みそうだなと置いていくと「しまった三脚を持ってくれば良かった」と後悔したり、今日は荷物が多いから軽い三脚で済まそうと思うと高さが足りなくて苦労したり。
時には途中で「あ、三脚が必要じゃん」とカメラ店に駆け込んで安い三脚を買ったことも。
そんなこんなで手元に三脚が増えてくると、必要に応じて「今日は軽い撮影だからこのトラベル三脚でいいや、今日はちゃんと夜景を撮るからしっかりした三脚を持って行こう」というのがわかるようになってくるわけです。
今はレンズなりボディなりに「手ぶれ補正機構」を備えるのが当たり前なので、以前より三脚の重要性が忘れられがちですが、実はそんなことはありません。
スローシャッター時だけのものでもありません、手ブレ補正機構があろうがなかろうが、三脚を必要とするシーンってけっこうたくさんあるのです。
そんなわけで三脚入門であります。
三脚が必要なシーン
まずはどんなときに三脚を使うのか。シンプルなところからいきましょう。
手ブレ補正機構は、実はシャッタースピードが落ちるほど効きは悪くなります。スローシャッター時は様々な種類のブレがはいってくる上に、シャッタースピードが大きくなるほどブレも大きくなって補正可能範囲を越えやすいからですね。いくら優秀な手ブレ補正でもカメラが大きく動いてはアウトです。
よって、三脚の出番。
NDフィルタをつけて水の流れを撮りたいとき、湖面を超スローシャッターでフラットに撮りたいとき。
もちろん、打ち上げ花火の撮影や夜景を撮りたいときもです。
最近は手持ちで夜景を撮れるカメラが増えてますが、点光源をきれいに撮りたいときは F8 以上に絞り込みたいですし、ISO感度を落としてノイズも減らしたいとなればスローシャッターの出番です。
手ブレ補正機構はもともと望遠レンズを念頭に開発されたものです。カメラを構える人間の手は常に微妙にぶれてるものです。何しろ人間ですから。ただ広角レンズ時は画角が広いので微細なブレなら影響しません。望遠レンズは画角が非常に狭いので、ほんのわずかな手の震えが大きなブレになるわけです。
そこで手ブレ補正機構の出番なのですが、レンズがどんどん望遠になると、補正どころじゃなくなるわけです。
- レンズが重くて腕が疲れるしブルブルと震える
- 手持ちでじっと狙ってると腕が疲れる
- わずかな手の動きで肝心の被写体がフレームアウトしてしまうので構図決めが大変
などなどで、三脚の出番なのです。
三脚を手ブレ補正の補助的に使うのもいいでしょう。
三脚をある程度緩めてセットし、細かいフレーミングはリアルタイムで行うようにすれば腕もあまり疲れないし手ブレも抑えられますし、疲れたらカメラとレンズを三脚に固定して、ストレッチでもしてお茶でも飲んでればいいわけです。
撮影ポイントが決まってるときも三脚があると便利。
野鳥の巣に狙いを定めて……ってときは、「あっきたっ」と急にカメラを持ち上げるよりは、あらかじめ三脚上にセッティングしておいた方がすぐに撮れますしね。
風景をしっかり撮るとき、三脚があるとじっくり構えられます。
広角で風景を狙うときも、構図を決めて雲の動きを待つとか、陽射しがよくなる時間を待つときも三脚があるといいでしょう。
目の高さで撮るときはいいですがちょっと低い位置から見上げて撮りたいとき、中腰になってカメラを構えてると疲れやすいものですが、三脚を使って構図を決めていけば身体はかなり楽できます。パンしながらパノラマ撮影をするときも回転軸や水平をしっかり固定するためにも三脚は必須です。
マクロ撮影時に難しいのはピントの山。被写界深度が浅くなるので、どこにピークを持ってくるかはとても大事なわけで、相手がモノならいいのですが、植物ですと、ちょっと風が吹くだけでずれちゃうわけです。しかも、AFロックして構図を変えて、なんていうちょっとした動作で山がずれがち。
特に風が強いときはもうどうしようかと思うくらい。
じっと構えて風が止まるのを待つのも大変ですし。
そういうときは構図を決めて三脚をセットし、ピントを慎重に合わせ、タイミングを見計らって撮るわけです。風を待ったりいい光を待ったり。設定を変えながら何枚も抑えたり。
三脚を使う分片手が空きますから空いた手にレフ板を持って光を回すのもいいでしょう。
動画は写真に比べてブレに対して敏感です。スチルなら撮影する瞬間だけ止まってればいいのですが、動画は常に動いているのでわずかなブレも気になるもの。
手持ちの方が躍動感があるシーンならよいですが、構図固定で撮るとき、パンやズームを使うとき、三脚を使わないときれいな動画は難しいのです。
特にパンを多用するときは、ビデオ用の三脚を使いましょう。稼働部にオイルが入っており、レバーを動かすだけで滑らかにカメラを動かすことができます。
三脚を買おう
このようにいろんなシーンで活躍する三脚ですが、大手のカメラ店にいくと実にたくさんの三脚が展示されています。
いざ買おうと思うと、コンデジ用や旅行用として売られている軽くてコンパクトだけどその分頑丈さには劣る 1万円台のものから、それなりにしっかりした 2 ~ 3 万円のもの。中級者以上にむけた本格的な 3 ~ 6 万円のもの。でかくて重くて頑丈で上に乗っかっても大丈夫そうだけど 7 万円以上するプロ向けのモデル。などなどたくさんあります。
予算がないからといって安いものを買って後悔するのももったいないですし、大は小を兼ねると大きくてがっしりしたものを買ったのはいいけどかさばるからと持ち歩かなくなったりしももったいないものです。
どのように選べばいいでしょう。
本格的な三脚選びや三脚の基本構造は次回ということにして、ここでは代表的な三脚ブランドとその特徴を記しておきましょう。ブランドによって特徴があって面白いものです。
日本の三脚ブランドで有名なのは次のふたつです。
ベルボン
軽量のコンデジ向けトラベル三脚から本格的なカーボン三脚まで幅広く揃えてます。
>?ベルボンのホームページ
SLIK
非常にラインナップが多く、グリップ式など独特のデザインを持つものも用意しています。
>?SLIKのホームページ
はじめて三脚を使う、手頃で便利な三脚が欲しいというときは、この両者から選ぶのがいいでしょう。それぞれベーシックな三脚から個性的な三脚まで取り扱ってます。
海外のブランドでは次の3つをあげましょう。
マンフロット(イタリア)
イタリアの大手三脚ブランドで、旅行に向いた細くて軽いものから大型の製品、ビデオ用やスタジオ用品まで幅広く扱ってます。
>?マンフロットのホームページ
ジッツオ(フランス):
フランスの三脚ブランドでかつては高くて重くて頑丈で使いやすくてプロ御用達のブランドでした。最近はカーボンやバサルトといった軽量の素材も多く使ってます。ミドルクラス以上の三脚がメインです。
>?ジッツオのホームページ
クイックセット(米):
ハスキーという三脚を出してます。モデルチェンジもなく、機能も最小限ですが、作りがしっかりしていて信頼性が高いのでプロがよく使ってます。
BENRO(中国)
21世紀になって登場した新しいブランドです。他のブランドに比べて割安感があります。
>?BENROのホームページ
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