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水咲奈々の水族館写真の撮り方~ 応用編

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TOPIX

前回での「 基礎編 」に続きまして、「 応用編 」を更新いたしました。水族館写真を多く撮影している、水咲先生とっておきの水族館撮影テクニックを豊富に開示していただきました。これを知ると水族館での撮影のバリエーションが増え、すぐに水族館に行って試したくなりますね。by 編集部

前回は水族館での基本的な撮影方法についてお話ししましたが、今回はそこから一歩進んだ応用的な撮影方法をお教えしたいと思います。

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■ 水族館撮影の応用テクニック集

1)ホワイトバランスを変えてイメージ通りの色合いにする
水族館撮影で積極的に行って欲しいのはホワイトバランスの調節です。最初はオートで撮ってみて、もっと青味が欲しいと思ったら電球にしたり、透明感を増したいと思ったら青い照明下でも晴天にすると透明感のある白色にすることができます。水槽の照明演出にもよりますので、RAWで撮って後で現像するときに色々なホワイトバランスにしてみるのもいいでしょう。ホワイトバランスは見た目通りの色合いにするのもいいですが、自分で被写体を演出する気持ちで全く違う色合いにして遊んでしまうのも楽しいですよ。

▼写真1
ホワイトバランスを電球にすると実際の見た目よりも青くなります

ホワイトバランスを電球にすると実際の見た目よりも青くなります

▼写真2
ホワイトバランスを晴天にすると実際の見た目よりも白っぽくなりました

ホワイトバランスを晴天にすると実際の見た目よりも白っぽくなりました

2)構図を考えてみる
お魚撮影では主役の被写体を中央付近に置くほうが収まりがいいことが多いのですが、慣れてきたらあえてその位置をずらすことをしてみましょう。黄金分割のどこかの交点付近に主役の被写体を配置するという一般的な構図のセオリーは、水族館撮影にも当てはめることができます。

▼写真3(サンシャイン水族館では展示しておりません)
右上方向に泳いでいるので右上の交点に主役の被写体を配置して、左側の空いている箇所は他の被写体をボカして入れることで構図内が寂しくなることを避けました

右上方向に泳いでいるので右上の交点に主役の被写体を配置して、左側の空いている箇所は他の被写体をボカして入れることで構図内が寂しくなることを避けました

3)露出をマイナス補正する
通常写真を撮っていると露出補正はプラスにする機会のほうが多いかと思いますが、水族館撮影ではマイナス補正して水槽の水の青味や黒味を濃くするほうが格好良くなることが多いです。マイナス0.3~0.7EVくらいがちょうどいいでしょう。

▼写真4(サンシャイン水族館では展示しておりません)
背景の黒色と白いクラゲとのコントラストをより強調するためにマイナス0.3EVにして黒を引き締めました

背景の黒色と白いクラゲとのコントラストをより強調するためにマイナス0.3EVにして黒を引き締めました

4)画づくり設定を変えてみる
画づくり設定とは、ニコンでいうとピクチャーコントロールのような彩度やコントラストなどをイメージに沿って変えることができるシステムです。通常、初期設定は「 スタンダード 」になっていますが、水族館撮影では「 風景 」での撮影がお勧めです。この「 風景 」ですと「 スタンダード 」よりは鮮やかで深みのある色合いに、でも「 ビビッド 」ほど派手になり過ぎないので程よくインパクトのある画にすることができます。ふんわりとした優しいイメージの画にしたいときは「 ポートレート 」がお勧めです。また、「 モノクローム 」にするとまったくイメージの違った画になるのでこちらもぜひ挑戦してみてください。モノクロームにする場合は露出補正を少しマイナスにすると黒が引き締まった画になります。そして構図内に明暗の差があるほうが似合います。 被写体の魚によってこの画づくり設定を変えてみるのは、実は筆者が一番お勧めしたい楽しい裏技なのです!

▼写真5
ピクチャーコントロールを「 風景 」にして撮影。「 スタンダード 」よりも深みのある画になります

ピクチャーコントロールを「 風景 」にして撮影。「 スタンダード 」よりも深みのある画になります

▼写真6
魚の表情を柔らかいイメージで表現したかったのでピクチャーコントロールを「 ポートレート 」にしました

魚の表情を捉えたので柔らかいイメージにしたかったのでピクチャーコントロールを「 ポートレート 」にしました

▼写真7
「 モノクローム 」にするときは露出補正を少しマイナスにすると画面内の明暗の差が強調されて締まりのある画になります

「 モノクローム 」にするときは露出補正を少しマイナスにすると画面内の明暗の差が強調されて締まりのある画になります

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■ 簡単にガラスの反射を軽減する奥の手!

基礎編でもお話ししましたが、水族館撮影が成功するか否かは水槽のガラスの反射をいかに無くせるかにかかっています。水槽に接触しないように細心の注意を払ってガラス面になるべく平行になるようにカメラを構えて構図の四隅に余計な写り込みがないかを確認して……慣れれば一瞬でできてしまう作業ですが、水族館撮影の初心者さんには撮影の気が削がれてしまう大変な作業でしょう。

そんな方にお勧めしたいのがC-PLフィルターです。C-PLフィルターとはレンズの前面に着けて使用するもので、ガラスや水面の写り込みを消したり、青空や水の色などの色彩を鮮やかにしてくれるフィルターです。 今回使用したのはKenkoの『 Zeta Quint C-PL 』というフィルターで、従来の一般的なC-PLフィルターは使用することで露出が落ちてシャッタースピードが低下することがあったのですが、この『 Zeta Quint C-PL 』は高透過率偏光膜を採用しているため通常のPLフィルターよりも約1EVほど明るいので、水族館のような暗い空間でも安心して使用することができます。 例えば、水槽のガラスに向かい側の照明が写り込んでしまうような状況の時でも…

▼写真8
正面からそのまま撮影すると向かい側の照明がばっちり写り込んでしまいました

正面からそのまま撮影すると向かい側の照明がばっちり写り込んでしまいました

C-PLフィルターを着けて、撮影の立ち位置に注意し、フィルターの効果が一番高くなるように回転枠を操作すると…

▼写真9
写り込みを消すことに成功!

写り込みを消すことに成功!

邪魔な写り込みを排除することができました。同時に水の青色と魚の黄金色の彩度が鮮やかに表現されて一石二鳥!C-PLフィルターは紅葉や花などネイチャー撮影される方にはお馴染みですが、実は水族館撮影でも活躍してくれるのです。これから水族館撮影を楽しむぞと意気込まれた方は、マクロレンズの径に合わせて購入することをお勧めします。

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■ 水族館撮影で一番大切なこと

▼写真10
魚の正面顔はちょっぴり間が抜けていて、でもとても愛らしい

魚の正面顔はちょっぴり間が抜けていて、でもとても愛らしい

2回に渡ってお送りした水族館写真の撮り方ですが、いかがでしたか? 色々な水族館に行って色々な写真を撮るのもいいのですし、お気に入りの水族館を見つけて年間パスなどを購入してじっくりと撮り続けるのも自分の腕が上がるのが見えるので楽しいですよ。サンシャイン水族館では2回分の入場料金で1年間何度でも入場できる年間パスポートが販売されています。とてもお得です!( 2015年12月現在 ) 最後に、水族館撮影で一番大切なのは魚の表情をしっかりと見ることです。ポートレートを撮るときはモデルさんの表情を見てその心の動きを掴むように、魚も生き物なので心や表情があります。その表情をしっかりと見て撮るようにしましょう。魚の体の側面ではなく、顔を正面から撮れるようになれれば、水族館撮影の初心者卒業です!

■ 制作・著作 ■

スタジオグラフィックス
水咲 奈々

■ 撮影協力 ■

サンシャイン水族館

著者について
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味がわき写真を学ぶ。作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し、様々なジャンルの写真家の作品と撮影現場に触れる機会を得る。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活躍している。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。