第 4 回 こんなときはこんな三脚をこう使おう
写真で見る 三脚活用テクニック入門 の最終回は、夜景、風景、花、月など、実際に三脚を使って撮影する際のノウハウを作例をまじえて解説します。また、気軽に持ち歩ける三脚や知っておくと便利な活用法も紹介します。
本文 Photo & Text by 荻窪圭
実際に三脚を使ってみましょう
三脚と雲台の組み合わせは今までに書いた通り、使う機材の重さ、撮りたい写真の種類、持ち運び方や自分の体力、そして予算のバランスで決まります。
簡単な話、車で移動する、現地ではそれほど動かないというのならごつくて頑丈な三脚がひとつあればいいですし、電車で移動する上に体力に自信が無いという人は軽量な三脚にすべきですし、できれば何本か用意してその日の機材や歩く距離などで使い分けたいところです。
では軽いところから行きましょう。
転ばぬ先のミニ三脚
三脚が必要かどうかわからないけど、念のためにバッグにひとつしのばせていきたい、ってときにお勧めなのがミニ三脚。
有名どころではSLIKの「ミニプロ7」や「ミニプロ6」、ベルボンの「ULTRA mini」。全高は数10cmしかないが、とてもコンパクトで軽くて、雲台も交換可能という優れもの。地面においてローアングル撮影したり、テーブルフォトに使ったりと何かと重宝します。低い位置でのマクロ撮影でも使えます。高い位置で撮りたいときは、テーブルなどちょっと高い場所を見つけてそこにおいて使いましょう。
あまり頑丈ではありませんが、脚が短い分そう不安定でもありません。ひとつバッグにいれていくとメチャ重宝します。
ミラーレス一眼でお気軽三脚撮影
ミラーレス一眼クラスの軽量のカメラやエントリー一眼レフに標準ズーム(あるいは広角から標準域の単焦点レンズ)であれば、しっかりしたトラベル三脚があれば7割くらいの用途で事足りるかと思います。残りの3割はスローシャッター時と超望遠撮影時でしょうか。
SLIKやベルボンがこのジャンルでいい製品を出してます。
写真はベルボンのUltrekシリーズです。(例:?ULTREK 45Lの価格を見る)
折り畳むとき、脚を上にすることで縮めた時の長さが30cmを切ります。そのため、多くのバッグにそのままいれられながら、全高は155cmに達するので高さ的にも問題有りません(ただし、脚を全部伸ばしてセンターポールも伸ばすと不安定感を醸し出してくれます)。
脚の伸縮も簡単で推奨積載量も 2kg です。たいていのミラーレス一眼は問題ないでしょう。
ただし、脚がとても細いため、全部伸ばしたときの安定度はいまひとつで、たわみもあるので、スローシャッター撮影には向きません。
ただ、それもケースバイケース。風の影響がない室内から脚をあまり伸ばさずにリモートレリーズを使って撮るのなら、シャッタースピード20秒でもなんとかなるもんです。
持ち運び時のコンパクトさ重視なので万能ってわけではありませんが、雲台の交換もできますし、その特性をわかって使うのであれば、お勧めできます。何より安くてコンパクトですから。
しっかり撮るならスタンダードな三脚を
一眼レフでちゃんと撮りたいと思ったら、それなりに頑丈な三脚が必要です。風が強いようなアウトドアで使いたいときもそうでしょう。
予算があるのならカーボン系の三脚がお勧めです。頑丈さと軽さのバランスがよいからです。カーボンは硬くてたわみませんから、しっかりとカメラを支えてくれますし、軽量ですから持ち運びも比較的楽です。
カーボン製三脚は頑丈さの割に軽いので、強い風が吹く場所や足場が危うい場所ではやや不安になります。特に重いカメラを乗せると重心が高くなりますから一工夫必要です。
たとえばストーンバッグを使います。ストーンというのは「石」。三脚の足の間にハンモックのような網をはってそこに「重たいものを放り込む」ことで重心を下げて安定させるわけです。
センターポールの下にフックをつけて、そこにカメラバッグなど重いものをぶら下げるという手もあります。
現場の状況に応じた臨機応変さで乗り切ろう、というわけですね。
使う雲台は、用途に応じてつけかえましょう。
しっかりした3WAY雲台がお勧めですが、構図をマメに変えるなら自由雲台もいいでしょう。
特に足場が不安定な場所で撮るときは三脚の安定性や信頼性が大事になります。普通の風景写真でも、やっぱ山の岩の上に上って撮ろうと思ったら、重くてがっしりした三脚が欲しくなるもんです。
月や星を撮る
現場で大切なのは、臨機応変さです。
たとえば、天井画を撮るとか、真上に近い位置にある月を撮るとき、試してみるとわかりますが、雲台は真上を向いてくれません。
ハンドルが邪魔をするのです。
そういうときはどうするか。
カメラを前後逆に(つまり、ハンドルがレンズ側にくるように)つけてみましょう。そうすると、ハンドルがセンターポールに当たることなく、ほぼ真上を向いてくれます。
2011年の月蝕はかなり高い位置で起きたので、そうして撮影しました。ちなみにそういうとき真下からファインダーを覗き込むのは大変なので、チルト式液晶モニタを使ってライブビューで撮ってます。
つまり、現場優先で、工夫して使いこなしましょう、ということですね。
縦位置で撮るときは
縦位置で撮るときはこのようにカメラを縦にセットします。
カメラを垂直にするとき水平を保つのが難しいのですが、雲台に縦位置用水準器がついていれば、それを使いましょう。
縦位置で撮るときはカメラがしっかり雲台に固定されているかどうか確認を。雲台へのカメラの締め付けが緩いと(あるいはクイックシューのカメラへの取り付けが甘いと)、レンズの重みでくるんとカメラがお辞儀してしまいます。
望遠系のレンズをつけているときは特にやらかしがちなので注意しましょう。
ローアングルで撮るときは脚を開いて安定させましょう
足の長い三脚は高い位置から撮れて便利ですが、逆に、低い位置で取りたいとき、脚が長すぎてこれ以上、下げられない、というケースもあります。ローアングル撮影をしたいとき、低い位置の花などを撮りたいとき、そういうときは、三脚の脚をさらに広げます。
脚部の根本にあるスイッチを切り替えて、より脚を広くするのです。
脚を広げると三脚がより安定するというメリットもあります。
特にマクロ撮影時は低い位置で安定させて撮るのが大事。
そして構図を決めたら、タイミングを見計らって取りましょう。ちょっとした風でピントの山がずれてしまうからです。マクロレンズで寄って撮るときは被写界深度が信じられないくらい浅くなりますから。こういうカットは手持ちではとても大変です
三脚につけると便利なのはカメラだけじゃない
お手軽な軽量三脚は、カメラのみならず、こんな風にライトやフラッシュをつけるのにも便利です。
屋内でも暗い屋外でも、ワイヤレス発光させてもいいですし、ケーブルを伸ばしてもいいでしょう。
軽量三脚は細くて場所も取らないので、手軽なライティングにぴったりです。
とまあ、まとめれば、三脚はできるだけ適材適所で適切な大きさ・強さのものを使うこと、自分の体力や予算にあったものを使うこと、そして現場であれこれ工夫してみることが大事という話です。
予算や体力の問題で、軽くて細い三脚しか手元にない、でも夜景を撮りたい、となったら、現場でいかに三脚を固定するかあれこれ考えるわけです。ストーンバッグを使ってみたり、脚をできるだけ出さずに撮れる場所を探してみたり、そういう臨機応変さも大切。
いざというとき「ああ、三脚があればあれがちゃんと撮れたのに」と思わなくても済むようにしたいものです。