第 2 回 三脚の基礎知識を知る
前回は、三脚はなぜ必要か? 三脚の役割とメリットを解説しました。今回は、実際に三脚を買ったり使ったりする前に三脚の基本的な知識の話をしましょう。雲台、三脚、それぞれの種類、メリットと活用例、購入時の選び方など、知っておきたい基礎知識です。(編集部)
本文 Photo & Text by 荻窪圭
三脚は雲台と三脚の組み合わせで出来ている
実際に三脚を買ったり使ったりする前に三脚の基本的な知識の話をしましょう。
一般に三脚というと写真のようなものを指します。
実はこれ、2つの部品から構成されてます。
ひとつは3本足の部分。ここが「三脚本体」。あるいは「脚部」。伸縮可能で、何本のパイプで構成されているかで縮めた時の長さに差がありますが、たいていは3段か4段です。3本の中央に上下に動く「センターポール」(カメラを上下させるため、「エレベーター」と呼ぶことも多い)があり、高さの微調整を行います。
もうひとつは三脚とカメラの間にあるパーツです。カメラを三脚に固定し、自由な角度に固定する役割を持ってます。これを「雲台」といいます。とても重要な部品ですが、なぜここを「雲台」と呼ぶようになったかはわかっていません。英語では「ヘッド」あるいは「パンヘッド」と呼んでます。
非常に低価格なコンデジ用三脚や一部のプロ用三脚を除けば、ほとんどの三脚は、脚部と雲台を切り離せるようになってます。
大事なのは、使うカメラや用途で両者の組み合わせを変えることで、適材適所で、効率よく撮りたい写真を撮れることです。用途や好みにあった雲台と三脚。これを見つけるのがまた楽しい作業なわけです。
実際にカメラを乗せるのは雲台ですからそこから行きましょう。
雲台の種類と選び方
雲台といっても実にたくさんの種類があります。たとえば日本の三脚メーカー「ベルボン」のサイトへ行くと、雲台コーナーだけで35種類も並んでます。同じく「SLIK」のサイトでは50種類以上あります。
実に種類は多いのです。
雲台選びは3つの要素で考えます。
ひとつは形状、ひとつはカメラの取り付け方法、ひとつは大きさです。
形状の話からいきましょう。大きくわけて、次の3種類があります。
自由雲台
ボール雲台ともいいます。ボール状のパーツをはさむような形状で、ネジを緩めてボールを自由に動かし、ここぞという角度でギュッと締めます。
メリットはとにかくコンパクトなこと。それから一瞬で自由な角度にセットできること。デメリットは微妙な構図決めが難しいことやネジを締める際に構図が微妙にずれやすいこと、機材が重い場合はしっかり締めないと安定しないこと。
長時間露光のときやマクロ撮影など構図の微調整が必要なシーンには向きませんが、気軽に使えますし持ち運びでは有利です。瞬時にレンズの方向を変えられますので動物やスポーツといった動く被写体にも向いてます。
3WAY雲台
もっとも一般的な雲台のスタイルです。左右の回転、前後の傾き、左右の傾きの3つをそれぞれ動かせるようになっているので「3WAY」なのですね。
前後、左右の傾きはそれぞれ専用のハンドルを持って行います。
ハンドルを緩めて雲台を動かし、ぎゅっとしめて固定。
左右の回転は独立したネジを持っているものもあれば、前後の傾きを調整するハンドルが回転の締め付けを兼ねているものもあります。兼ねているとハンドルひとつを締めたり緩めたりするだけで構図を変えられます。
メリットは水平をとりやすいこと、構図をピシッと決めやすいこと、構図を微調整しやすいこと。デメリットは瞬時に構図を変えるのに向かないことと、ちょっと大きくてかさばること。
前後左右の動きをレバーではなくダイヤルで行う「ギア雲台」もこの一種です。マクロ撮影時など微細な構図調整をしたいときに便利です。マンフロットから出ています。
ビデオ用雲台
動画用と静止画用で向いている雲台は異なります。ビデオ用雲台の特徴は、「左右の傾き」を調整する機構がなく、後ろに長く飛び出た「パンハンドル」で左右の回転と前後の傾きをコントロールすること。左右の傾きは「三脚」側で固定します。ビデオは常に水平の状態で使うからです。縦位置撮影もしませんしね。
その代わり、「パン」操作に力をいれています。カメラを左右や上下に傾けるとき、スムーズに滑らかに動かないと、きれいな動画が撮れません。静止画用雲台でカメラをゆっくり滑らかに動かすのは困難ですが、ビデオ用雲台はオイルを封入して軽く力を入れるだけで雲台が滑らかに動くようになっています。
使うのがデジカメでも、ちゃんと動画を撮りたいなら、ビデオ用雲台は欠かせません。
2番目はカメラを雲台にとりつける方式です。
「直付け方式」と「クイックシュー方式」があります。
直付け方式
見ての通り、雲台からネジが出てますので、これをそのままカメラの三脚穴にねじ込みます。極めて単純な方式です(写真一番右)。
メリットはコンパクトで安いこと。デメリットは着脱が面倒なこと。
これを改良したタイプもあります。カメラネジが台座と独立して動作するタイプで、これなら台座にカメラを置き、ネジを回すだけで大丈夫です(写真中央)。
クイックシュー方式
カメラ台座部分(クイックシュー)を着脱可能にした雲台です。クイックシューを予めカメラにつけておけば、着脱は超簡単でクイックシューは軽いのでつけたままにしておく人もいます(写真左)。
複数のカメラをつけかえながら撮りたいときは台数分クイックシューが必要になりますが、カメラを何台も使い分ける人はそうはいないので、一般的にはこの方式がもっとも便利でしょう。
三番目は雲台のサイズです。
正確にいえば、雲台の頑丈さ。どのくらいどのくらい重い機材までOkかということ。
一応カタログスペックには「3kg」とか「5kg」と書いてありますが、同じ 3kg でも重いボディに広角系ズームで 3kg なのと、中級のボディに重い望遠レンズで 3kg とは安定度が違うわけで、単純に計算しては危険です。画素数が増えれば増えるほど、微細なブレが画像に記録されてしまいますから、1000万画素のカメラより3600万画素のカメラの方がよりシビアになります。
ミラーレス一眼、あるいは一眼レフ + 標準ズームくらいなら 3kg 前後までイケる雲台なら大丈夫でしょう。300mm 以上の望遠レンズをつけるのならできるだけ頑丈なものにすべきです。
フルサイズ一眼レフ + 望遠レンズともなるともうワンランク上を。大きくて頑丈だとその分高価で重くなりますが、雲台のクオリティは使い勝手や安定性に大きく関わるのでケチらないように。
一般に、頑丈な雲台の方が重くて大きくて高価だけれども、その分細かいブレもなくビシッと狙った位置で固定できますので使い勝手はあがります。
三脚の種類と選び方
次は脚部の話です。
大事なのは、頑丈さ、長さ、材質といったところでしょう。これもまたバリエーションは無限にある感じなので、スタジオ用の巨大なものやテーブル三脚と呼ばれる小さなモノ、コンデジ用の簡易三脚以外の一般的なところで見ていきましょう。
大ざっぱにいって、2つに分かれると思ってください。
「トラベル三脚」と「スタンダード三脚」です。
トラベル三脚というのは文字通り「旅行用三脚」で、軽くて細くて伸縮率が高い(つまり縮めると短くなる)ものです。もちろん、その分頑丈さに欠けますから、重いカメラを乗せたり、長秒時露光したりという用途には向きませんが、携帯性にとても優れています。ミラーレス一眼に標準ズームくらいなら問題なく使えますし、気をつけて使えば一眼レフでも大丈夫でしょう。
縮めると30~40cmになりますから、バッグへの収納もできますし、重さも1~2kgちょっとですから持ち歩いてもあまり負担になりません。そして価格も手頃です。
各社とも力をいれているジャンルです。雲台を分離できるモデルもあるので、買うのならそちらがお勧めです。
とりあえず念のため三脚も持って行こうか、とか、旅行で記念写真を撮るとか風景を撮るとか、マクロ撮影や望遠撮影時の補助的に使いたいというそういう用途なら最適でしょう。
でもしっかりした三脚を求めるなら一般的な「スタンダード三脚」に目を向けるべきでしょう。
昔ながらの素材(アルミが多い)から、軽くて頑丈な素材(カーボンやバサルトなど)を使ったものまであります。
アルミ製三脚は「安いけど、カーボンに比べると重い」。カーボンは「アルミより軽くて剛性が高いが、アルミに比べると高い」と思えばOk。
BENROが同じシリーズでカーボンものとアルミものの2種類用意してますから比べてみましょう。
カーボンプロナットロックシリーズの耐荷重8kgの3段三脚で比べてみると、
- アルミ 1.46kg 16,800円
- カーボン 1.16kg 41,580円
です。実際には雲台の価格が加わりますし、実売価格はそこより何割か安くなりますのでセットとしての価格差や重量差は縮まりますが、これだけ違います。それでもカーボン三脚が主流なのは、軽くて頑丈で剛性が高い(たわまない)という特性ゆえでしょう。
長さには2つのポイントがあります。
ひとつは持ち運ぶときに重要な「縮めたときの長さ」です。
もうひとつは足をすべて伸ばしたときの高さです。
特に大事なのは後者。
三脚は2つの部分に分かれます。ひとつは脚部で3本あります。三脚ですから。
もうひとつはセンターポール。実際に雲台をつける部分ですね。センターポールは上げたり下げたりで高さの微調節ができます。エレベーターと呼ぶこともあります。大型の三脚だと、レバーを回すだけで上下させられるものもあります。
3本脚をめいっぱい伸ばし、センターポールも一番高いところまで上げたときの高さが全高ですが、実際にはセンターポールは少しだけ出した状態で必要な高さになるくらいがよいでしょう。
これは実に様々です。脚を伸ばせば2mになる大型三脚もあれば、1m20cmくらいの小型の三脚もあります。
実際にどのくらいの高さのものを買えばいいのでしょう?
直立して目の高さでファインダーを覗いて撮る場合を考えましょう。身長170cmだと目の高さは160cmくらい。雲台の高さ+カメラの高さを足すと、まあだいたい20~30cmくらいとみていいでしょう。
であれば、センターポールを伸ばしたときの三脚の高さが140cmあればファインダーまで160cmですから目安となります。センターポールを1/3ほど出した状態でファインダーが目の高さに来るくらいが一番のお勧めです。
三脚の長さでもうひとつ重要なのが、足を縮めたときのサイズです。
当然、長い三脚は足を縮めたときも長いわけで、持ち歩くとき気を使います。
足を縮めたときのサイズに影響するのが「段数」です。3段と4段が主流ですが、同じ高さの三脚なら、4段の方がより短くできます。段数が多いとその分、一番内側の足が細くなりますから、縮めたときの長さより、撮影時の安定性の方が大事、というのなら3段のものがよいでしょう。
持ち運びや重さを気にして高さはちょっと犠牲にする人もあれば、多少重くて長くても安定した三脚がいいという人もいるでしょう。そこはお好みや撮る写真の種類で考えましょう。
長さと同時に太さも重要です。
太くて重い三脚の方がより重量を支えられますから、フルサイズ一眼に大口径レンズをつけて……なんて人はそれを支えられる太さのがっしりした三脚が必要、ってことですね。三脚のパイプの太さ(つまり頑丈さ)をI型II型III型と数字で呼ぶことがあります。これは仏ジッツォ社が自社の三脚をパイプの太さによって分類したのがはじまり。太い方が頑丈でより思い機材、より望遠の機材を支えてくれます。
あまりに大きな三脚だと持ち歩くのが大変ですが、そこはがんばってください、ということで。
三脚と雲台は自由に組み合わせられるの?
三脚と雲台の組み合わせは自由、と書きました。
その通りですが、実は両者をつなぐ「ネジ」には2種類の規格があります。
太いのと細いの、ちゃんとした名前はあるのですが、一般の太ネジ、細ネジと呼んでます。
細ネジはカメラの三脚穴と同じ規格で、ベルボンやSLIKといった日本の三脚メーカーが中級以下の三脚で採用してます。
太ネジはジッツォやマンフロットといった欧米のメーカーや、日本メーカーのプロ向けの大型三脚で採用してます。
上位モデルの雲台はどちらのネジにも対応してますし、ネジ径を変換するアダプタもあるので事実上、組み合わせは自由です。
と、ここまで書いておいてなんですが、一般的な三脚は雲台とセットで売ってまして、その方が価格的にも割安感があります。
ですから、最初の1本は、必要な長さや頑丈さをベースに、三脚と雲台のセットで買うといいでしょう。
ともあれ、持ち運ぶときは細くて軽くて短いものが、いざ使うときは重くて頑丈で長いものがいいという二律背反な性格を持つのが三脚の悩ましさ。その上「買うときは安いものがいい」となれば、種類がたくさんあるのもやむなしというものでありますな。
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