第7回 Cokin レンズフィルターでスナップ風ポートレート:散歩編
TOPIX
ポートレートを中心として雑誌の表紙やコマーシャルフォトで活躍中の写真家、萩原先生がお送りする Cokin レンズフィルター講座の第7回目です。今回は、横浜の街を散歩しながら角形フィルターを使ったスナップ風ポートレートを撮影しました。
■ 角形フィルターのメリット
● ピンポイントで効果をプラス
前回に引き続き、横浜で撮影したスナップ風ポートレートを紹介する。前回は洋館内での撮影だったが、今回はぶらぶらと外をお散歩しながらの撮影だ。
イチから作り上げるスタジオでの撮影とはちがい、屋外の撮影は、いわゆる“ロケ”となるわけで、その場にあるものを構図に取り込むことになる。その場の雰囲気を壊さずに、Cokin フィルターが角形フィルターであることを最大限に活かし、ピンポイントでカラーや効果をプラスすることを心がけた。
時にさりげなく、ときに大胆に効果を構図内に取り入れた作品を、じっくりとご覧いただきたい。
Cokin レンズフィルター |
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?● 坂道のある光景
彼女と坂道をゆっくり歩きながら、撮影ポイントまで。ポイントについてからも、あれこれと話しながら、フィルターを通して彼女を見る。今見ている坂のある光景が気持ちよく写るようにと、ハーフグラデーションフィルターの「グレー2 (ハードND8 )」( P121 )と「ブルー1」( P122 )の2枚を使い(写真1)、P121で木々の緑の飛びを抑えつつ、P122で空に青みを加えた。彼女の仕草や表情に合ったキュートさを際立たせることができた(写真2、写真3)
夏の日差しに暑さを感じ、日差しを避けるように、緑のトンネルを歩く。
足下の木漏れ日と戯れるような彼女の仕草が可愛らしく、気づかれないようにシャッターを切る。その写真4では、背景の日差しのコントラストをまろやかにするために、フィルターはソフト系フィルターの「フォグ1(ハーフ)」( A150 / P150 )をチョイスした。
フォグ 1(ハーフ) P150 / A150 |
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気づいた彼女との距離をつめる。
横位置で、構図の左半分にフォグの効果をそっと効かせる。さりげない滲みが、シャープな部分(向かって右目)をなお際立たせ、瞳に吸い込まれてゆく(写真5)。
■ 使い方しだいで変わる表現力
● お気に入りのフィルターで
僕のお気に入りのフィルターは、ハーフグラデーションフィルターの「タバコ2」( A125 / P125 )。独特な茶色でレトロな匂いを感じさせるカラーが、どことなく叙情をさそう。
写真6は、山手の洋館でのカット。モデルの後ろの爽やかなグリーンから、ノスタルジックな雰囲気をさらに助長させてくれるタバコ色が、『現在~過去』と1カットの中で明確な2つの時代を見せてくれているようでおもしろい。
タバコ 2 P125 / A125 |
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山手から海の方へと下りてきた。天気は曇りから、雨の匂いがする風が吹きはじめた(写真7)。
懐かしい雰囲気へと一気に導いてくれるハーフグラデーションフィルター「タバコ2」( P125 )は、たとえば夕方っぽい匂いを加えたり、ポイントカラーとして加えたりしても、大いに活躍してくれる
このフィルターは、某誌の表紙撮影でも活用した。アジアンな暑い夜を作り出してくれた(写真8、写真9)。角型フィルターだからこそ、使い方しだいで、さまざまな表現力を演出してくれる。
■ 空気全体の室温も表現
● 雨が降り出しそうな雰囲気を演出
いよいよ雨が降り出しそうな、高い湿度が感じられるようになってきた。この湿気感は、フォグで表現できそうだ。そこで、ここでもう一度、ソフト系フィルター「フォグ1 (ハーフ)」( P150 )をフォルダーに差し込んだ。
風の吹く方を向きながら、「もうすぐ雨、振りそうだね」と彼女(写真 10?)。
フォグ 1(ハーフ) P150 / A150 |
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「降る前にもうちょっとだけ歩こうよ。」空気全体が湿気を含み、まとわりつくようだ(写真 11)。
「雨が降り出したら、帰ろう」。じっとりした湿度の高い空気感を、「フォグ1 (ハーフ)」( P150 )が絶妙に表現してくれた。まるで空から湿気が降ってくるよう。写真 12?がラストカット。今回の撮影も終了だ。
■ さいごに
今回、Cokin 角形フィルター講座の機会をいただき、改めてフィルターのおもしろさを再発見した。そして、自分の使い方次第で、表現の可能性を広げることができることを大いに感じることができた。今ではグラビア撮影だけでなく、雑誌の表紙撮影や広告撮影でも、大いに使わせてもらっている。
まずはここの講座で気になった2~3枚を、ぜひお手に取っていただきたい。そして、それらのフィルターを使って実際に撮影されることで、「へぇ~」と思えるシーンに必ず出会うことでしょう。そのうち、撮影に出かけるたびに「あそこであのフィルターを入れたい」と感じるようになるかも……。そうなったら、もうフィルターの虜だ。僕も常に数種類のフィルターをカメラバッグに入れている。「あそこであのフィルターを入れたい」と感じた時に、入れられるように。
僕は、もうすっかりフィルターの虜だ。