第6回 Cokin レンズフィルターでスナップ風ポートレート:洋館編
TOPIX
ポートレートを中心として雑誌の表紙やコマーシャルフォトで活躍中の写真家、萩原先生がお送りする Cokin レンズフィルター講座の第6回目です。今回は、横浜の洋館で角形フィルターを使ったスナップ風ポートレートに挑戦しました。
■ 角形フィルターをもっと活用する
● フィルターワークを楽しみながら撮影
Cokin 角形フィルター講座も今回が6回目。私自身、今回のフィルター講座を行なうことで、改めてフィルターを使た表現におもしろさを感じた。そこで、大好きな横浜に出かけ、スナップ風ポートレートを撮影してみた。
スナップと銘を打ったが、スナップ撮影をしながらだと確かにフィルターは装着の煩わしさがある。もちろん「ここではこのフィルターだ!」という直感的な発想は多いが、モデルの遠谷比芽子さんを前に、その場の雰囲気で決めるのもいい。彼女の仕草や、振舞い、彼女との会話の中からも、その空気を感じながら、一緒に作品をつくっていく。
焦ることもない。フィルターをゆっくり決め、構図内でのフィルターポジションを調整し、そして撮影へ。その過程すらもまったりと楽しめる、いい撮影になった。これこそが Cokin 角形フィルターを持ち歩きながらの撮影のおもしろさだ。
Cokin レンズフィルター |
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● 洋館の時間の流れを表現する
今回と次回の2回にわたり、スナップ風ポートレートの作品をご覧いただきたい。上記の通り、ゆったりとした、柔らかい雰囲気をもって撮影してきた。フィルターの有無を比較するカットは、必要に応じて掲載する。比較などせずとも、フィルターを使うことで成立した作品をご覧いただくことで、その効果は十分にご理解いただけると思うからだ。
洋館の中はゆっくりと時間が進んでいて、そこにある光はどこも優しい。その優しい光に包まれるように、にじみ効果のあるソフト系フィルター「パステル1」( A086 / P086 )を選択して撮影したのが、写真1、写真2、写真3だ。
■ 窓際での撮影
● 窓がある光景
私はこの洋館の窓際が好きだ。窓際での表現は多彩で、彼女の立ち位置によってもライティングが変わり、雰囲気にも違いが出る。また、窓を構図の中にどのように取り入れるかも、窓際での撮影のおもしろみだ。
そこで、窓のある光景を前面に出したカットを撮影したのが写真4だ。屋内で窓を構図に大きく取り入れるとき、屋内と屋外の露出差で、上のカットのように窓の外はハイライトになる場面が多い。これはこれで綺麗なのだが、構図内でハイライトの部分があまり多く占めてしまっては、奥行きが出ない。
そこで、ハーフグラデーションフィルターの「ソフトグレー2( ND8 )」( A121S / P121S )を使用し、窓の外のハイライトを整えてみたのが写真5だ。
フィルターの効果によって構図に締まりが出て、よりハイライト部の効果が高まった。そこで、さらに構図やフレーミングを変えながら作品としての完成度を高めていったのが、写真6と写真7だ。
次にアクセントとして、色をワンポイント加えてみることで、雰囲気を変えてみた。
落ち着いた色味をと、ハーフグラデーションフィルターの「モーブ1」( A126 / P126)をチョイス。肌色に影響がないよう、フィルターポジションを確認しながら、構図下1/4ほどに色を加えてみた(写真8)。窓の外の景色に、不自然にならないように色を加えたことで、緑一色の単調だった背景に変化がついた(写真9)
さらに、この部屋の壁の色、窓枠、彼女の衣装と、同じブルー系でまとめることで、一体的な落ち着きを狙ってみることにした。窓によるハイライトに、ハーフグラデーションフィルターの「ブルー2」( A123 / P123 )で青みを足してみたのが写真10?だ。窓全体とモデルにもフィルターがかかるように配置した結果、寂しい雰囲気が増した。
また、窓にのみうっすらとブルーが足される程度に効果を抑えてみる(写真11?)。統一感のある色味でありながら、彼女の白い肌が浮き上がり、色味を加えた効果が映えるカットになった。
■ ノスタルジックさを表現する
● ノスタルジーを演出する色選び
洋館はノスタルジックさを誘う。ノスタルジーにはイエロー系が似合うので、次のワンポイントはイエロー系のフィルターをと、ハーフグラデーションフィルターの「フルーイエロー」( A661 / P661)をチョイス。イエローが窓の外の木々とも馴染み、ノスタルジックさに花を添える(写真12)。
また、写真13?のようなシーンでも、ハイライト部にイエローを足すことで、時間的・懐古的な落ち着きを醸し出してくれる。とても使いやすいフィルターだ。
次に、部分的にイエロー系のアクセントをつけるのではなく、センタースポットフィルターの「CS イエロー / ピンク」( A673 / P673)を選択。センタースポットフィルターは中央が透明のスポットになっているため、全面カラーフィルターよりも顔の一部にでそのままの肌色を残したほうが、ナチュラルさを出せると判断したからだ。
フィルターなしの写真14?でも、十分に可愛らしいカットになっているが、センタースポットフィルターを使った写真15?では、時間的な翳りが感じられるようになった。肌色も違和感を感じない。さらに、やや引いた写真16?では、窓の外もいい感じに輝き、艶のあるカットに仕上がった。
■ 次回予告
洋館内での雰囲気のあるカットづくりを十分に楽しんだので、次は外をぶらぶら散歩みたいにゆっくりと歩きながら撮影する屋外編です。お楽しみに!
■ 協力企業 ■
ケンコートキナー
KKRポートヒル横浜
■ 制作・著作 ■
萩原 和幸?
スタジオグラフィックス