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第1回 入門編 カメラ用三脚を使った星空撮影 |
2013/10/31 |
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2013 年 11 月ごろから観測できると言われている「 アイソン彗星 」。撮影を楽しみにしている人も多いことでしょう。そこで、本講座では、天空撮影の第一線で活躍する吉田隆行氏に、星空撮影のテクニックを披露していただくことにしました。入門から上級まで、氏の丁寧な解説をお楽しみください。
<はじめにを読む> |
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銀塩フィルム時代には難易度の高かった星空撮影が、デジタルカメラの性能向上と共に身近なものとなってきました。既に風景写真の延長として、星空撮影を楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。2013 年 11 月 29 日にはアイソン彗星が太陽に最も近づくとされていることから、その撮影をしたいと考えている方も多いことでしょう。 そこで今回は、星空撮影について2回に分けて紹介していきます。第1回目は、カメラ用の三脚を使った星空の基本的な撮影方法についてです。話題のアイソン彗星の撮影についても触れたいと思います。 |
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星空撮影には、デジタル一眼レフカメラやレンズの他にも必要になってくる機材があります。それらの機材をご紹介しましょう。 |
● カメラ用三脚
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星空の撮影では少なくとも数秒以上の露光が必要なため、カメラ用の三脚が必要になります。数分以上にわたって長時間露光することもあるので、なるべくしっかりした三脚を選ぶのが良いでしょう。ただし、あまり重い三脚は持ち運びが大変ですので、風景撮影等でよく使われるカーボン製の三脚がお勧めです。
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● ケーブルレリーズ( リモートコントローラー )
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次に、カメラのシャッターをコントロールするケーブルレリーズ( リモートコントローラー )が必要です。ケーブルレリーズは、シャッターボタンを指で押すことで起こる手ブレを防ぐ目的と、長時間露光のために使います。ほとんどのデジタル一眼レフカメラには、バルブモードがありますので、モードをそれに設定し、ケーブルレリーズを使って露出時間を調整します。 |
● レンズフード
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レンズフードは、周囲の余計な光がレンズに入ってくるのを遮るのに役立ちます。特に星空撮影では長時間露出をするので、周囲の光の影響を少なくするために、レンズフードは是非とも用意しておきたいアイテムです。またレンズフードは迷光を防止するだけではなく、レンズに夜露が付くのを防止する効果もあります。 |
● 絞り値の明るいレンズ
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星空は暗いため、絞り値が明るいレンズの方が速いシャッターが切れ、また同じ露出時間でも多くの星を写せます。最近の明るいズームレンズは高性能ですので、絞り値の明るいレンズを使うと良いでしょう。特にカメラを固定した撮影では、超広角〜広角レンズを多用するので、この焦点域( 14〜24mm 前後 )のズームレンズが1本あれば重宝します。 |
● その他のアクセサリー
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撮影とは直接関係ありませんが、星座早見盤が1枚あれば、撮影時にどのような星が夜空に見えているのかが分かり便利です。また星空の撮影場所は暗いので、ヘッドライトを用意しておくと良いでしょう。できれば赤色の光のヘッドライトがお勧めです。オススメは、PETZL( ペツル )タクティカプラス E49P や Energizer( エナジャイザー )アルティメットヘッドライト 7LED HDL-7LED-JN などです。赤色ヘッドライトを使う理由は、周囲が暗い状況において、強いライトを使ってものを見ると、せっかく暗闇に慣れた目( 暗順応 )が元に戻ってしまい、星が見えにくくなってしまうのを防ぐためです。 |
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次に、星空の基本的な撮影方法を、順を追ってみていきましょう。カメラ三脚を使った星空撮影の基本的な流れは次のとおりです。
- カメラを設定する
- カメラを三脚に取り付ける
- ピントを合わせる
- 構図を合わせて撮影開始
では、以下でひとつずつ詳しくみていきましょう。 |
● カメラを設定する
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星空は暗いため、ほとんどの場合、オートフォーカス( AF )や自動露出( AE )は働きません。そのため撮影は、ピントも露出もマニュアルが基本になります。星空を撮影するときは、カメラの設定を以下のように変更しておきましょう。
まず、レンズのフォーカスをマニュアルフォーカスに、カメラの露出設定をマニュアルモードにして、シャッター速度はバルブ( B )に合わせましょう。星は暗いため、カメラ任せの設定では露出オーバーになったり、ピントを合わせられないためです。また、カメラやレンズに手ブレ防止機能がある場合は、撮影中に手ブレ防止機能が動作して星がブレて写ってしまうのを防ぐため、手ブレ防止機能をオフにしておきましょう。
次に、デジタルカメラの ISO 感度を上げます。最近のカメラは高感度ノイズが低減され、感度を上げてもノイズが目立たなくなっています。星空撮影では、ISO1600 〜 3200 を目安にするとよいでしょう。なお、カメラのノイズは気温の上昇と共に増加します。逆に、寒い冬はノイズが減りますので、この時期( 11 月 )は夏よりも多少 ISO 感度を高めに設定してもよいでしょう。
さらに、ノイズリダクションの設定をします。ノイズリダクションをオンにすると、本撮影後にノイズ減算用の画像をカメラが自動的に撮影し、カメラが演算して、ノイズを減らしてくれます。通常でもオンで使いたいノイズリダクション機能ですが、露出時間が2倍かかってしまうので、長時間露出をする場合には注意が必要です。寒さの厳しい冬場でノイズが少ない場合や、ノイズリダクションの時間が惜しいという場合には、ノイズリダクション機能をオフにするのもひとつの方法です。
最後に、液晶モニターの明るさも変更しておきましょう。暗い場所で、液晶モニターが通常の明るさでは眩しく感じます。最大輝度を下げておくと、暗い場所でも液晶モニターを確認しやすくなるでしょう。 |
● カメラを三脚に取り付ける
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カメラの設定が終了したら、カメラを三脚に取り付けましょう。長時間露出をするので、カメラがぐらつかないようにしっかりと取り付けます。
また、天頂付近の星空を狙うときには、雲台のハンドル( パーン棒 )が三脚の脚に干渉してしまうことがあります。このような場合には、通常は手前に来るハンドルが逆になるように、カメラを反対に向けて取り付けるとよいでしょう。 |
● ピントを合わせる
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初めて星空を撮影する方が最もとまどうのが、ピント合わせでしょう。逆に言えば、ピントさえ上手に合わせることができれば、星空撮影はそれほど難しいものではありません。
星空のピント合わせには、ライブビューモードが便利です。まず、レンズのピントリングの無限遠マーク( ∞ )を参考にして、おおよその無限遠を出します。次に、ファインダーを覗いて、夜空に見える明るい星を視野内に導入します。そしてライブビューを起動し、デジタルカメラの液晶モニターの画面に撮影したい星を表示させ、それを拡大します。その星の像を見ながら、ピントリングを少しずつ回して、星の像が最も小さくシャープに見えるピント位置を探します。広角レンズを使う場合には、拡大しても星が小さくて見づらいことがあります。そのようなときは、数倍程度のルーペを併用してピントを確認すると良いでしょう。
ピントを合わせたら、そのまま星空を 10 秒程度の露出時間でテスト撮影をしてみましょう。その画像を液晶モニターに拡大表示させ、星がシャープに写っているかどうかを確認します。ピントが合っていれば、その状態でピントリングをテープなどで固定しておくと、不用意にピントをずらしてしまうことを防止できます。ズーミングをしてもピントはずれますが、レンズによっては、気温の変化でピント位置がずれることがあります。急に冷え込んできた場合などは、ピントを再確認するようにしましょう。
※ ズームレンズを使用する場合は、一度撮影するズーミングの位置を決めてから、ピントを合わせるようにしましょう。 |
● 構図を合わせて撮影開始
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いよいよ構図合わせです。ファインダーを覗いて構図を合わせてもよいのですが、星は暗いため、ファインダー越しではどの星が写野( 視野 )に入っているのかよく分からないでしょう。そこで、レンズを撮りたい方向に向け、10 秒程度の露出でテスト撮影してみましょう。その画像を液晶モニターで確認し、徐々に構図を合わせていきます。一度テスト撮影すれば、明るい星の位置を参考にして、ファインダー越しでも構図を確認できるでしょう。最後にもう一度試写して確認すれば、より確実です。
風景写真と同じように、星空撮影にも決まった構図というものはありません。星空だけを写すのではなく、地上風景を取り込むことによって、印象的な作品にすることもできます。また、星座を織り込むことによって、季節感のある作品に仕上げるのもよいでしょう。ここは撮影者のセンスの見せ所です。いろいろなロケーションで、様々な構図を試しながら撮影してみましょう。 |
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地球は自転しているため、星は1時間に( 北極星を中心にして )15 度ほどの速さで夜空を動いていきます。そのため、デジタルカメラを三脚に固定して長時間露光すると、星は点像ではなく、弧を描くような軌跡となって写ります。この軌跡は、露出時間が長いほど長くなります。
従来の銀塩フィルムでの固定撮影では、このような星の軌跡を捉える写真が一般的でしたが、現在のデジタルカメラでの撮影では、高感度で短時間露出により星を点像に写す撮影が主流です。星を点像に写すための上限の露出時間は、使うレンズの焦点距離と撮影する星空の方向によって異なります。焦点距離の短い広角レンズほど、また、北極星に近い星ほど星の動きは小さいので、点像に写すための露出時間には余裕ができます。
星空撮影によく使われる 24mm 広角レンズの場合、北極星の近くなら 100 秒前後の露出時間でも星の動きはわからないでしょう。一方、星の移動量が最も大きい天の赤道付近を写す場合は、30 秒程度でも星が流れて写ってしまいます。撮影する方向によって星の移動量が異なることを覚えておきましょう。
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2013 年話題の天文現象と言えば、世紀の大彗星と呼ばれるアイソン彗星の接近でしょう。アイソン彗星は、2013 年 11 月 29 日に太陽に最接近し、この時、最も明るくなると予想されています。この直前直後は太陽に近づきすぎて観察できませんが、太陽に近づいていく 11 月中旬から下旬と、その後に地球に近づいてくる 12 月下旬から1月にかけてが、明るい彗星を撮影する絶好の機会となります。比較的長い期間に渡って撮影を楽しむことができますので、是非この機会にアイソン彗星の撮影にもチャレンジしてみましょう。
( 写真08は、今年春に近づいたパンスターズ彗星 )
アイソン彗星に限らず、彗星を撮影する際に大切なのは、事前に彗星の位置や明るさの情報を集めておくことです。彗星は星空の中を移動しますから、地球から見た位置は日々変わっていきます。アイソン彗星が最も明るくなる 11 月末から 12 月初めにかけては、彗星は明け方の東空の低い位置で輝いています。そのため、この時期にアイソン彗星を撮影しようと思えば、東の空が開けた場所で撮影する必要があります。日の出スポット等の情報を参考に、事前に撮影場所を探しておくとよいでしょう。
また、彗星は刻一刻と明るさを変えていますので、昨日まで暗かった彗星が突然明るくなったり、長大な尾を見せることもあります。そのような突然の変化を逃さないためにも、アイソン彗星の情報は、日々チェックするようにしましょう。
アイソン彗星の撮影自体は、星空の撮影と同様ですが、彗星の尾の長さはその時になってみないとわからないので、ズームレンズや焦点距離の異なるレンズを何本か用意しておくと安心です。また、撮影場所にあるランドマークなどを前景として構図に入れると、後で見たとき、良い記念になるでしょう。 |
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● 西空に沈む夏の天の川
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西空に沈んでいく夏の天の川の写真です。秋に入ると、夏の星空を賑わせてくれた夏の天の川は、早々と西空に傾いていきます。その様子を撮影した1枚です。写真中央には、はくちょう座が、左下にはいて座が写っています。
( 撮影データー:トキナー ATX 16-28mm ( 16mm F2.8 で撮影 )、キヤノン EOS 5D MarkII ISO:3200 60 秒 ) |
● 秋の天の川を撮る
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西空から北に視線を移して、北天にかかる秋の天の川を撮影しました。画面右寄りにカシオペア座が写り、よく見るとアンドロメダ銀河も写っているのがわかります。天の川の流れはよく目立つので、星空写真のよいアクセントになります。積極的に構図に入れると良いでしょう。
( 撮影データー:トキナー ATX 16-28mm ( 16mm F2.8 で撮影 )、キヤノン EOS 5D MarkII ISO:3200 60 秒 ) |
● 形の良い木をアクセントに
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撮影場所に形の良い木があったので、それをアクセントにしてフレーミングして撮影した写真です。星空を撮影するときに、前景として利用しやすいのが木です。自分のイメージにあった形のものを選ぶと良いでしょう。写真の木の上には、アンドロメダ銀河も見えます。
( 撮影データー:トキナー ATX 16-28mm ( 16mm F2.8 で撮影 )、キヤノン EOS 5D MarkII ISO:3200 40 秒 ) |
● 季節感のある星座を入れる
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東の空から上ってきた冬の星々の写真です。画面右に写っているのはオリオン座です。オリオン座は大変有名な星座なので、この星座を見ただけで冬という季節を連想します。このように、よく知られている星座を写真の中に入れることによって、季節感を出すことができます。
( 撮影データー:トキナー ATX 16-28mm ( 16mm F2.8 で撮影 )、キヤノン EOS 5D MarkII ISO:3200 45 秒 ) |
● 月明かりを利用する
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月明かりに照らされた風景は、星空撮影の印象的な前景になります。写真は、月明かりに照らされた枯れ木の上に浮かぶ星空です。月明かりがガスで錯乱されたため、写っている星々の数が少なくなってしまいましたが、条件が良い状態で撮影できれば、幻想的な写真にすることができるでしょう。一般的に天体撮影では嫌われる月明かりですが、積極的に利用してみるのも面白いでしょう。ただし、満月は明るすぎるので、半月の頃がお勧めです。
( 撮影データー:トキナー ATX 16-28mm ( 16mm F3.5 で撮影 )、キヤノン EOS 5D MarkII ISO:3200 20 秒 ) |
● まとめ
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今回は、カメラ用の三脚を使った星空の基本的な撮影方法についてまとめてみました。最初は戸惑うかもしれませんが、撮影をこなしていくうちにコツが分かってきて、徐々に上手く撮れるようになるでしょう。満天の星空を楽しみながら、星空撮影にチャレンジしてみてください。 |
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次回は、ポータブル赤道儀・ケンコースカイメモ RS を使った星空撮影について紹介します。アイソン彗星も刻々と近づいています。今から準備を整えて、世紀の大彗星の撮影を楽しみましょう。 |
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
吉田隆行 |
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