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光画倶楽部
第1回 独断レビュー 「 オリンパス OM-D E-M5 」 2012/08/30
 
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かつてのオリンパス OM の面影を復活させたOM-D そのファーストインプレッションレポート

写真家、笠井アキラ先生の新連載、「 笠井アキラの光画倶楽部 」 第1回目は、オリンパス OM-D の毒舌レビュー! フィルム時代の 「 OM 」 と、ミラーレスデジタル一眼の 「 OM-D 」 をあらゆる角度から独断的に比較。さて、笠井目線での結論は?

オリンパス OM-D E-M5
+ M.ZUIKO DIGITAL 12-50mm F3.5-6.3 EZ
+ M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 R
+ トキナー Reflex 300mm F6.3 MF MACRO
<著者メッセージ>

▼目次  

オリンパス 「 OM 」 って知ってるかい?

OM-D の OM らしさ考
OM-D の操作感
撮影行動が劇的に変革
次回予告
▼写真0 Olympus OM-D E-M5
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男子の標準的な手の大きさと自負する僕が持った状態。フィルム一眼レフのイメージのある OM-D E-M5 だが、僕がガリバーになったみたいだ。( オリンパス OM-D E-M5
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■ オリンパス 「 OM 」 って知ってるかい?
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● ライカ M をお手本 ※14 にした初代 OM-1

 

 オリンパスは大正時代 ( 1918 年 ) に顕微鏡を作る会社 ( 当初は 「 高千穂製作所 」 ) として創業し、カメラ作りは 1936 年から始まった。

 オリンパスカメラが現代市民に広く知られるのはやはり 「 オリンパス・ペン 」 ( ※01 ) の登場 ( 1959 年 ) からだろう。とにかく小型で簡単操作だったので、ちょうど僕が小学生のころ、運動会などでは父親だけでなく母親も 「 ペン 」 を持って写真を撮るというようなシーンがいたるところで見られるようになった。

 オリンパス 「 OM 」 はというと、忘れもしない 1973 年、僕が高校三年生で進学を大学写真学科へと決断したときに登場した。

 その頃、僕はミノルタ一眼レフとニコンレンジファインダーカメラ ( ※02 ) のユーザだったのだが、74 年に大学に入学したとき、幾人かの同級生たちが新発売のオリンパス OM-1 を持っていて、驚愕したことをはっきり覚えている。

 僕はもともとニコン S3 というレンジファインダーカメラを主として使っていたので、そのコンパクトさ故にそのころの一眼レフは大きいな、重いなと、疑問を持っていたのだが、OM-1 はニコン S3 並みにコンパクトだった。

 OM-1 を開発したチームリーダーである故・米谷美久 ( まいたによしひさ ) 氏は、あのライカ M ( ※03 ) を若いころから手にしていて、かつ、オリパス社内では OM-1 の開発以前にペンの開発も手がけていたことから、コンパクトだが高性能・高操作性の元祖であるライカ M ボディをお手本にして OM-1 を開発したことがうかがい知れる。

▼写真1 ライカ M4 とオリンパス OM-1
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左:ライカのレンジファインダーカメラの完成形ライカ M4。右:ライカ M シリーズを目標に小型化を極めたオリンパス OM-1。OM-1 のフィルム巻戻しノブ上部が、ライカ M4 のボディ天部とほぼ同じ高さになる。当時の一眼レフカメラでは考えられないコンパクトさである。
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▼写真2 ライカ M4 とオリンパス OM-1
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二台のカメラの底部を合掌させてみれば、おどろくほどぴったり一致するカメラの横幅。
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  写真1写真2をよく見て欲しい。カメラのサイズをライカ M 系ボディに近づけようとしたのは明確だし、カメラ名は当初 「 M-1 」 ( ライカ社からの申し入れで OM-1 と改称 ) だったのだ。

 さて、この画期的コンパクトさを武器にしたオリンパスのフィルム一眼レフは、その後、進化して 83 年発売の OM-4 あたりで完成形となったと僕は思う。OM-4 以降も 86 年まで OM シリーズの新製品は登場したが、OM-4 以降はイマイチしっくりくる一眼レフとはならず、86 年発売の AF 化された OM-707 が、同社レンズ交換式フィルム一眼レフとしては実質最後となってしまった。 その後 17 年間の長きにわたりオリンパス製レンズ交換式カメラは途絶えたのだが、2003 年に CAMEDIA E-1 という同社初のデジタル一眼レフが発売された。

 実は、このカメラの開発前後の時代、同社技術チームさんとは親しく交流があり、試行錯誤して生まれた E-1 にはひとしおの愛着がある。と同時に、E-1 は OM とは異なる匂いのレンズ交換式カメラであり、外観や大きさについては、僕的には正直がっかりでもあった。というのも、その頃、僕は、「 OM のデジタル復活 」 を主張してきた一人でもあったのだ。 とにもかくにも OM シリーズは、レンズや接写ツール、ストロボなどシステム化されたフィルム一眼レフにおける操作性とポータビリティにおいてその頂点を極め、しかも、一眼レフにもかかわらず極めて静かに動作するシャッター音でもあり全体としてライカ的なエレガントさを併せ持つ 「 持つことそのもの 」 へのこだわりを彷彿としてくれた数少ないカメラのひとつだった。そんなワケで僕は OM-1 を未だに手放せない。


※01

オリンパス・ペンオリンパスのサイトへ
 1959 年に登場したコンパクトカメラ。当初の価格は約 6000 円と、当時にあって大幅に安価だった。初代ペンはすべてマニュアル操作だったが、61 年発売のペン EE はフォーカスが固定焦点、シャッター速度は 1/60 秒に固定、絞りだけが露出計に連動して自動設定されるという、非常に簡単な操作であり爆発的に普及した……
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※02 レンジファインダーカメラ
 土木工事の三角測量では、ある場所までの距離を測るのに、別の二か所、A 地点・B 地点から、そのポイントを見たときの首振り角度と、A-B 地点間距離を元にして三角関数に基づいた計算をする。レンジファインダーカメラも同じ原理を使っていて…… --> 続きを読む  戻る
※03 ライカ M
 ライカ ( Leica ) はカメラの商品名で、ドイツの光学機器メーカーであるエルンスト・ライツ ( Ernst Leitz ) 社によって製造されているカメラの1モデル。ライカ M の原型は、1914 年に試作されたウル・ライカで、映画用 35mm フィルムを使うカメラとして登場した…… --> 続きを読む  戻る
   
■ OM-D の OM らしさ考
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● 形状は OM にそっくり

 

 OM-D が発表されたのは本年 2 月のこと。OM-D が OM を冠している最大の理由は、上述した名器 OM を復活させることにあったと見ている。その発表を受けて僕は即反応した。ものすごく楽しみだったのだ。しかし、発表された外観や仕様を見て 「 スタイルから OM に入ってもいいのか?」 という疑問も生じた。

 同社は 「 レトロを目指したワケではない 」 と言っているのだが、OM-D を見ると、レトロかどうかはともかく、明らかに OM に意識的に似せていると言える。写真3写真4を見て欲しい。見るからに両者には近似点が多いことがわかるだろう。特に写真4のように上部から比較すると、ボディ左右端の多角形処理の仕方は相当なもんだぞ!

 さて、フィルム一眼レフの OM がめざしたものがライカ M だったとすれば、OM の設計者は、コンパクト化のためにはペンタプリズム ( ※04 ) 部突起も取り払いたかったに違いない。現に、OM 以前に発売され一世を風靡したオリンパスペン F というハーフサイズ判フィルム一眼レフでは軍艦部プリズム突起を無くした実績があるし、OM ボディにおいては、プリズム突起がなければ、フィルム巻戻しノブの上部がライカ M の軍艦部とほぼ同じ高さになるほどまでに、カメラボディの高さを低く抑えているのだ ( 写真1 )。フイルム OM の場合は、本当はフラットな軍艦部を目指したのだが、一眼レフの構造故にいたしかたなく三角突起が残ってしまったと見るのはどうだろうか ( ね、米谷さん! !)。

▼写真3 OM-D E-M5 と
フィルム OM-1
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左 : OM-D E-M5 / 右 : フィルム OM-1。 レンズマウントエプロン部分の形状、ペンタプリズムの社名表記やプレートの形状など、兄弟だなと思わせる。 (写真をClickで拡大)


▼写真4

OM-D E-M5 と
フィルム OM-1
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上 : OM-D E-M5 / 下 : フィルム OM-1。フィルムパトローネ室がない分だけ OM-D E-M5 の方が横幅が小さいという印象だ。カメラボディの左右両端の多角形形状は共通デザインであることがよく分かる。 (写真をClickで拡大)

● OM を手本にする意味

 

 そんなわけで OM-D は、「 ミラーレスイチガン 」 カメラ、すなわち構造上プリズム突起の必然性はないにもかかわらず、「 OM スタイル 」 デザインを敢えて追っていると言えそうで、ここは僕にとってそこまでやっていいの? と疑問を感じてしまう。
  実際、このペンタプリズムがあるかのような突起はカメラの携行性やバッグへの収納性を鑑みると少なからずマイナスのはずである。これは、144 万画素の EVF ( ※05 ) 液晶と五軸モーションセンサー ( ※06 ) をこの部位に配置したが故であるが、少なくとも光軸上にある方がよい光学ビューファインダーとは異なり、EVF はこの位置の必然がなくなったはずだから、こうした機能ユニットをボディ各所に 「 散らす 」 ことで、軍艦部をフラットに仕上げることはできたはずだ。
  たとえば、多くのプロや 「 撮影ツウ 」 は、右目でファインダーを覗きながら左目で実体光景を観察するというカメラの使い方をするが、そうであるならファインダー接眼窓はカメラボディ背面から見て左端にあってほしい。 そうすれば、かくのようにカメラが小型になって、特に欧米人などの大きな手がボディからあふれ出てもファインダーを覗く頬に右手が接触せずに使い勝手もまた向上するだろう。




▼写真5 OM-D E-M5 と E-P2
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左 : OM-D E-M5 / 右 : E-P2。 化粧カバーをはずしたシャーシ部分は共通なのじゃないかな? と思わせるほどそっくり形状だ。E-M5 に 「 OM 」 を冠し、E-P2 に 「 PEN 」 を冠するオリンパスのセンチメンタリズムってとこかな〜 ( きらいじゃないけど ) 。 (写真をClickで拡大)

 

 また、カメラボディ正面からの見えにおいても、レンズマウント周辺に一眼レフカメラで言うところのミラーボックス部のエプロン状の構造体を配置している。これも、フィルム OM = ミラーのある一眼レフカメラの見てくれを意識してのことだろうか? すなわち、ミラーレスであれば、エプロン部がカメラボディ正面左右パネルよりも飛び出る必然はないのだが、あえてそうしたと読んだ。
 結果として、写真3のように、フィルム OM のムードを出せたわけであるから、OM-D 構想が 「 見た目を OM に似せる 」 ということであればプロジェクト成功と言える。 一方で、手元のマイクロフォーサーズ ( ※07 ) 機である E-P2 と並べてみると写真5のようにボディサイズなどは本質的に何も変わってはおらず、E-P2 をベースにして OM 風にリ・デザインしたと見えなくもない。OM を手本にするというのはこういうことではないのではないか〜というのが僕の OM-D のルックスへの偽らざる気持ちである。


※04
※12
ペンタプリズム / フォーカシングスクリーン
 一眼レフカメラは、レンズからの光をミラーで 90 度、カメラボディの真上に折り曲げ、フィルムやイメージセンサーの焦点像を結ぶのと同じ距離にあるすりガラス状の 「 フォーカシングスクリーン 」 に被写体像を投影…… --> 続きを読む  戻る
※05 EVF
 もともとカメラには 「 ビューファインダー ( =のぞき穴 ) 」 はつきもので、フィルムカメラではかならず存在した構造体だ。もっとも簡単なものは、レンズ付きフィルムなどに組み込まれていて、箱にただ四角い穴が空いた状態のものである……
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※06 五軸モーションセンサー
 センサー自体を搭載している装置の動きを感知するセンサーを 「 モーションセンサー 」 と総称する…… --> 続きを読む
※07

マイクロフォーサーズ ( システム )
 マイクロフォーサーズ ( Micro Four Thirds System ) は、2002 年にコダックとオリンパスによって制定・提唱された 「 フォーサーズシステム 」 から発展したデジタルカメラ標準規格仕様を言う…… --> 続きを読む  戻る

   
■ OM-D の操作感
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● 右手指が忙しくなったぞ

 

 OM を冠した OM-D は、フィルム OM を知り、あるいは OM に惚れている世代を意識したからこそ OM-D なのだと思う。僕もその購買層の一人というわけだ。 そういう僕などは、外観もさることながらフィルム OM の機能面・操作性面の OM らしさを切望してやまない。特に、カメラを構えたときと、フィルム一眼レフの OM のファインダーを覗いたときに、そしてハスキーなシャッター音ややさしい振動などに惚れ入ってしまう点が多々ある。

 たとえば、ホールド感。シャッターボタンを人差し指で押す以外にフィルム OM では右手はほとんど何もしなくてよかった。そして、左手はレンズとボディの付け根をホールドし、マウント部周辺にあるシャッターリング、フォーカスリング、そして他社一眼レフとは異なってレンズ先端側にある絞りリングの三要素を操作するように設計されていた。特に、マニュアル測光の OM-1 だったが、絞りリングとシャッター速リングを同じ方向に同じクリック数分回転させれば、プログラムシフト ( ※08 ) のような使い方が簡単にできて非常に便利であった。


 

 さて、OM-D E-M5 の場合はというと、左手で保持しているレンズ鏡筒にあるフォーカスリングは通常撮影では AF ( オートフォーカス ) なので触ることは少ないが、主としてズームリングを保持し続けるようになっている。

 むしろフィルム OM とは異なり右手が忙しくて、シャッターボタン、メインダイヤル、サブダイヤルの三要素を頻繁に制御することになる。また、ホールドしたときの見え方は写真6のような状態で一見ごく普通のホールド状態だが、僕より手の大きいユーザでは手が余ってしまうことになりそうだ。

 この二つのダイヤルの役割は、露出制御方式によって変化し、たとえばプログラム AE ( ※09 ) の場合、メインダイヤルはプログラムシフトに活用し、サブダイヤルが露出補正を担う。絞り優先 ( ※10 ) の時は、メインダイヤルが絞り制御、サブダイヤルは露出補正だ。二つのダイヤルは写真7のようにメインダイヤルを右手親指、サブダイヤルを右手人差し指で回転させるのが一般的操作となる。よって、人差し指は 「 1.シャッターを押す行為 」 と 「 2.サブダイヤル を回転させる行為 」 の2つの行為を担うのでちょっと忙しい。ただ、実際には、各ダイヤルの位置や回転させる感触は、僕の主観的な感覚では、良好で特段の違和感を覚えることはない。

 また、デジタルカメラの時代になって、撮影スタイルが大きく変化し、腕を体だからつきだして背面液晶ファインダーを見ながら撮影することも多くなった。こうすると、俯瞰撮影などに好適でもある。この撮影スタイルでは、右手だけでカメラを保持することも多々あるので、右手に機能を集約する傾向にあるのかもしれない。

 現実にカメラをホールドすると、僕の右手ではカメラがやや小さすぎると感じた。写真8のように、右手小指のみならず薬指もカメラ底部からはみ出してしまう ( 手指をいっぱいに広げて親指と小指の先端の距離を測ると約 21 センチある僕の手は、だいたい平均的な男子の手の大きさではないかと思う )。このカメラはどちらかと言うと男性向きのカメラであるが、しっかり、かつ長時間疲れずにホールドするのなら別売の 「 パワーバッテリーホルダー 」 を併用した方がよいだろう ( その分、コンパクト感は薄れるが )。なお、こうした小ボディでもホールドし易いように右手親指をひっかけるラバー製突起がボディ背面右上にある。

▼写真6 OM-D のホールディング感
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ごく普通にカメラを構えるとこうなる。左手でズームリングを操作するときは、親指と人差し指でつまむような感覚となる。かなりコンパクト。
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▼写真7 OM-D の操作性
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カメラボディ右手側。メインダイヤル・サブダイヤルの操作性は悪くない。もう少し硬めの方が好きだが、好みかな。 (写真をClickで拡大)

▼写真8 OM-D ホールドの工夫
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右手小指と中指ははみ出してしまう。小指の側面でボデイ底部を支えるようなホールドにすれば思いの外安定する。 (写真をClickで拡大)

● 気になる電子ファインダー


 

 EVF を覗いたときの印象は良好である。もう少しファインダー像倍率 ( ※11 ) が大きくてもよいような気もするが、ま、こんなものであろう。144 万画素という緻密なドット表示であるので一眼レフカメラの光学ファインダーのフォーカシングスクリーン ( ※12 ) を観察するのと似た感覚である。しかし、フィルム OM 信奉者の僕には 「 まだまだ 」 という気持ちもある。 と言っても、数ある EVF の中では最高峰の見えだし、ないものねだりをしてもしかたがないとフラストレーションを打ち消そうとする自分がいる。 電子ビュー方式が光学ビュー方式を越えるには、まだ今少し技術的なハードルがあるように思えるが、この E-M5 に限らずオリンパスの EVF は、まずは合格点を出せる EVF であることは確かだ。なお、ファインダーは、作品作りカメラにとってレンズと並ぶ 「 命 」 である。このヘンについては次回、もう少し詳しく解説したい。


※08
※09
プログラムシフトプログラム AE
 カメラの自動露出決定 ( Auto Exposure = AE ) 方式の一種を 「 プログラム AE 」 と呼ぶ。写真の適正露出は…… --> 続きを読む  戻る
※10 絞り優先
 カメラの自動露出決定 ( Auto Exposure = AE ) 方式には、上述の 「 プログラム AE 」 に加えて、「 絞り優先 AE 」 ならびに 「 シャッター速優先 AE 」 の3通りがある。何通りもあるシャッター速と絞りの組合せによって得られる適正露出の中で、先に絞り値を撮影者が定めておき、その絞り値で適正露出が得られるようにシャッター速をカメラが自動決定する方式を…… --> 続きを読む  戻る
※11 ファインダー像倍率
 カメラや顕微鏡、望遠鏡などでは、観察対象物がどのくらいの大きさで写る ( 見える ) かを、レンズから観察対象物の距離、レンズからセンサー ( や眼 ) までの距離、ならびにレンズの焦点距離で算出できる。このうちカメラのファインダー内に見える光景が、実際に裸眼で観察する同じ光景の何倍で見えるかを言い表すのが 「 ファインダー像倍率 」 で…… --> 続きを読む  戻る
   
■ 撮影行動が劇的に変革
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● 撮影行時の総重量は 1/3 に

 

 OM-D E-M5 のみならず、ミラーレスカメラは全体に軽量でコンパクトである。しかし、センサーサイズが APS-C ( ※13 ) タイプのミラーレス機はカメラボディの割にレンズの小型化には限界があるようで 35mm フルサイズカメラのレンズとそんなに違わないくらい大きい。

  これに対してマイクロフォーサーズセンサー用レンズは、レンズが比較的小型化できるようで、この点は大きな魅力だ。

 特に、レンズの大きさで僕が気にするのは、長さではなく直径である。レンズを 2〜3本収納するのが一般的と想定すると、直径が大きいとカメラバッグの奥行き ( 厚み ) 方向 ( 肩からさげた場合なら、背もたれ側から正面への距離 ) が分厚くなる。



▼写真9 Canon EOS 5D との比較
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この二機種のサイズ関係、かつてのペンタックス 67 vs 35mm 一眼レフのような関係だな〜。 (写真をClickで拡大)
 

 これは混み合った電車内やひとごみの中では近傍の他者をジャマしてしまうし、カメラバッグそのものの体への密着感が損なわれる。僕が好きなストリートスナップ撮影やお散歩グラフィではカメラバッグの薄さは結構重要なのだ。

 今回、評価したオリンパス純正レンズは、12 - 50mm 電動ズームと 40 - 150mm 普及レンズであるが、いずれもとてもスリムで携行性にすぐれている。鏡筒最大径は前者が 57mm ・ 後者は 63.5mm で、デジタル一眼レフの同クラスのレンズのおよそ3分の2の直径である。このコンパクトさはたいへんありがたい。 写真9を見て欲しい。キヤノン製デジタル一眼レフで、上記二本のレンズと同じ焦点距離域をカバーするセットを組んだときの比較である。体積は半分以下、重量にいたっては、OM-D セットが約 780g。キヤノンセットが約 2.6Kg。そう、3分の1なのである。これにレンズフードやスペアバッテリーなど携行必須品を含めるとこれらを収納するカメラバッグの大きさの違いは容易に想像できるだろう。



● 缶ビール1本の大きさで超望遠

 

 そして、今回、もう一本、レビューしたいレンズを加えた。トキナーレフレックス300mm だ。このレンズ、35mm 判に換算すると 600mm という超望遠レンズなのだが、その大きさはフードを装着しても缶ビール一本程度のコンパクトさである ( 写真10 )。

 鏡筒部分のボディはアルミで、質感や操作駆動感などとても高級感のあるレンズだ。マニュアルフォーカスのレンズではあるがフォーカシングリングの動きの適度な硬さとグリップのし易さが合わさり、微妙になるピント合わせもかなりラクチンである。重さは約 300g であり、先の二本のレンズと OM-D E-M5 ボディを合わせても、1.1kg にしかならない。

▼写真10 トキナーレフレックス 300mm
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こんなデザインのビヤマグがあれば即買いだな! (写真をClickで拡大)

 

 僕の夢は、仕事ではない海外撮影旅行だ。仕事だと 100Kg 近い重量機材を携行し、現地でも盗難などのセキュリティに気遣いながら、滞在のほぼ全日程を撮影行動にあてるからへとへとになる。あちこちを撮影旅行したけれど、どこものんびり旅した記憶はない。

 そんなわけでカメラバッグひとつでワイフとどこかに出かけたいと思う。そういう撮影旅行のカバンの中に入れるレンズは、35mm 換算で 24mm から 300mm 程度の数本のレンズ、すなわち、今回のズームレンズ二本がちょうどカバーしてくれる。そして、600mm 相当の望遠レンズを重さやかさばり感を気にすること無くバッグにひょいと収納できるなら持参しても悪くないと思う。 これらレンズとボディを眼前に、地中海あたりをのんびり旅する空想&機材シミュレーションをしている今日このごろである。ま、そんな旅がいつできるかは神のみぞ知るってとこですね〜。


※13 APS-Cサイズ
 フィルムメーカー各社は、1996 年、台頭するデジタルカメラに対向するために、ラボで行う現像・プリントなどに接極的にデジタル処理を取り入れるため 「 アドバンストフォトシステム ( Advanced Photo System = APS ) 」 という新しいフィルム形状を含む写真システムを開発し…… --> 続きを読む  戻る

※14 ★お詫びして訂正します
 この記事を掲載後、読者さんから 「 米谷さんがこだわったのはライカ M ではなくバルナック型ライカ ( ライカ M 型登場前のスクリューマウントのライカの総称 ) だ 」 というご指摘をいただきました。 調べてみると、それが事実のようですので、その旨、訂正いたしたく報告させていただきます。
 よって、この段落のみだし 「 ● ライカ M をお手本にした初代 OM-1 」 ならびに本文の 「 あのライカ M を若いころから〜 」 以下、「 OM-1 を開発したことがうかがい知れる 」 までの記述にある 「 ライカM 」 については 「 バルナック型ライカ 」 と読み替えてご解釈ください。
 Web 上の私の記事を直接修正すると、( それが Web マガジンのよいところなのですが ) 日によって内容が異なる記事が生み出されますので直接の修正は控えさせていただき、筆者自身のいたらなさをも敢えて残しつつ、このコラム内にて報告することにしました。悪しからずご容赦ください。  戻る
2012年9月7日 笠井 アキラ
   
■ 次回予告
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 次回は、いよいよ OM-D E-M5 と3本のレンズについて性能評価へと突入だ。僕は、性能試験や画質試験をやるのは好きだが、結果にはあまりこだわらない。特性が分かればその性格の範囲内で使えばよいのだ。

 今日のデジタルカメラは、ある意味、すでに十分にハイレベルな位置で性能・画質ともに飽和しているとも言える。要は使う側がどう使うかが総合評価となるはずだ。 そこで、ひとひねりして、あまり目にすることのないような試験方法や使いこなし法なんぞも交えながら風変わりなレビューに挑戦します。乞うご期待!

▼写真11 次回評価予定のレンズ
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次回以降に評価する3本のレンズ。
(写真をClickで拡大)

■ 協力企業 ■
ケンコートキナー
オリンパスイメージング

■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
笠井アキラ
   
 
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初出:2012/08/30 このページのトップへ
 
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