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フォトグラファーに聞け!

第2回 魚住 誠一 / Seiichi Uozumi

    〜 ポートレートはスリリングだから面白い! <後編>

2012/11/29
 
● 魚住誠一インタビュー
ポートレート・フォトグラファー
1963年、愛知県生まれ。
▼ Topix  
写真が好きだから、ポートレートに夢中になれるからプロのフォトグラファーを続けられる----そう話す魚住誠一氏。第2回目となる 「 写真のコダワリ・フォトグラファーに聞け! 」 の後編は、ポートレートの何が魚住氏を夢中にさせるのかを突き詰めて伺うつもりだ。また、氏のポートレートの極意についてや、撮影中の秘話なども可能な限り聞き出したいと思う。それでは存分にお楽しみを。

前回の 「 ポートレートはスリリングだから面白い! <前編> 」 はコチラから
 
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編集部 前回は魚住さんがフォトグラファーになるまでの経緯を中心にお話しを伺ってきましたが、そろそろ魚住さんを夢中にさせてやまない女の子のポートレートのお話しを伺いたいと思います。まず、ポートレートを撮るときに魚住さんが気にかけていることはなんですか?
魚住 その人らしさ 」 が表現できるようにすることかな。被写体になる人物の 「 らしさ 」 ってのは、ファーストインプレッションが大切でね、これは言葉では説明しずらいんだけど、たとえば堂々と構えている人は堂々とした感じで表現したいし、不安げな状態の人は、その不安さを表現したいと思っているよ。
編集部 なるほど。でも不安な気持ちのままでは自然な笑顔って難しいですよね。そういう女の子の自然な笑顔を撮るときはどうしてますか?
魚住 ぎこちない笑顔しかできない状態の女の子に 「 笑って 」 って言ったって無理だから、そんなときはカメラを女の子に渡して僕を撮ってもらうんだ。しばらく撮ってもらうんだけど、顔はむすっとして動かないようにしてるとね、たいていの女の子は 「 魚住さん表情が堅いですよ〜 」 なんて言ってくる。そうしたら今度は思い切りニカーって笑ってやるんだよ。すると 「 笑いすぎですよ〜 」 とくるんだ。そのタイミングでカメラを返してもらって今度は僕が撮るわけ。その頃には女の子の気持ちも和らいできてるし、自分がどんな表情をしたらいいのかがわかってくるんだ。
編集部 女の子によって撮りやすさや、撮りにくいさを感じることはありますか?
魚住 ないなー。他の人が撮りにくいと感じている女の子の場合でも、僕は鈍感だから撮りにくいということに気づかないんだよ。それに、一度撮影に入ったら主導権はこっちにあるしね、撮りにくかろうがどんどん進めちゃうよ。それでも撮った結果で相手を喜ばせる自信はあるからね。ポートレートを撮る上では、被写体の人物に一番喜んでもらいたいと思ってるから。
編集部 それでも仕事の内容によっては、クライアントからの依頼で被写体が喜べないような撮影もありますよね?
魚住 それは被写体がモデルかタレントかで違うよね。モデルの場合はクライアントの要求に応えるのが仕事だから、「 やれ 」 の一言でやらせるよ。でもタレントの場合は別だよ。タレントの撮影ってのはほとんどがタレント自身のパブリシティも兼ねているわけで、タレントが考える自分のアイデンティティと異なるような撮影は NG だよ。そういうときはクライアントに 「 前もってタレント側と打ち合わせておいてくれ 」 って言うようにしてるよ。
編集部 前もって打ち合わせてあったのに、現場で NG を出すタレントさんもいますよね。
魚住 うん。そういえば、大河ドラマのポスターを撮ったときに、大物俳優のAさんが決定稿だった絵コンテに NG を出したから、「 絵コンテ通りにやってもらわないと困る 」 って言ったところ、楽屋にこもって3時間出てこなかったんだ。仕方ないので僕が楽屋にいって 「 Aさんの気に入るように撮りますから、残りの 10 分間だけ僕に時間をください 」 ってお願いして、Aさんの好きなように撮影してから、最後の 10 分で絵コンテ通りに撮ったよ。結局、Aさんも最後の撮影の結果に満足して、それが使われたんだけどね。(笑) でも、そうやって NG を出すのも、自分のタレント性を常に考えているからだよ。やっぱりプロだと思うよ。
編集部 10 分って………。忠臣蔵のポスターは、そんな短時間で撮ったんですか?
魚住 撮影時間は短い方がいいんだよ。その方がスリリングでしょ?(笑)

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   魚住氏のモットーは 「 ポートレートは臨機応変に撮る 」 だ。大物俳優のわがままに対応しながらも仕事はきっちりとこなすあたりは、俳優と同じくプロである。そんな魚住氏に、被写体をその気にさせるノウハウを聞いてみた。
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編集部 一般の撮影者がポートレートを難しいと感じるのは、被写体が感情を持った人物だからだと思います。撮影者と被写体のコミュニケーションという点で魚住さんのテクニックを伺いたいのですが。
魚住 ポートレートで一番難しいとされるのが 「 子供 」 の撮影だよね。大人の女性なら表情の注文にとりあえず応えてくれるけど、幼い子供に 「 笑って 」 は通用しない。そんな現場で僕がするのは、子供にウケるキーワードをタイミングを見計らってぶっ放すことなんだ。
編集部 そのキーワードとは?
魚住 うんこー!
編集部 !!!!
魚住 「 うんこ 」 は子供にとって笑いの起爆剤なんだ。いい歳したおっさんが、カメラを構えて 「 うんこー! 」 と叫べば、ほとんどの子供が爆笑してくれるよ。一回、爆笑すれば筋肉が弛緩して、その後は自然にいい表情になるよ。大人の女性の場合は、「 うんこ 」 はちょっとまずいから別のキーワードを使うけどね。
編集部 聞きたいですね。
魚住 女性をどんな風に撮るのかにもよるけど、僕は女性のポートレートにはドキドキ感やスリリングさ欲しいんだ。たとえば、僕がカメラを向けたら 1000 人に1人くらいは 「 魚住さん!抱いてください! 」 って言ってくれるんじゃないかっていうドキドキ感って言えばいいのかな。(笑) これが 10 人に1人だったらドキドキしないんだけど。ま、実際は1万人に1人かもしれないけど。(笑) だから、そんな雰囲気っていうか空気感にするために、Hなキーワードは重要だね。僕は 「 おっぱい! 」 とか平気で言うけど、そう言うと女の子は 「 わーこの人、おっぱいとか言っちゃうんだ! 」 って表情になる。そうした空気感は写真を観る人にも伝わるからね。
編集部

ライティングテクニックについて伺います。前回、魚住さんは 「 ストロボを積極的に使いたい 」 と仰ってましたが、実際どんな風にストロボを使われるのですか?

魚住 自然光で撮るのも好きだけど、ストロボを使うのは大好きだね。十分に光がある場所でもストロボを使うことが多いよ。ポートレートでは絞りを浅くしてぼかして撮ることが多いけど、自然光だけだと女の子の着ている服のディテールが失われちゃうことが多いんだ。そんなときクリップオンストロボを一発バウンス発光させてやると、生地の質感だとか、色味が活きてくる。ストロボって、美味しい光のスパイスなんだよね。
編集部 その点に留意しているのはファッション誌でお仕事されているからでしょうか。
魚住 それも大切だけど、実際のところは違う。そうやって服の生地や色に注意して撮ってあげると、女の子が喜ぶからだよ。(笑) 我々男ってさ、青い服は単なる青としか認識しない人が多いけど、女の子は青にもいろんなバリエーションを観てとっているんだ。そうした女性の目線を意識して撮ると、次も撮ってもらいたいって思ってもらえるんだよね。それがストロボ一灯あればできるんだから、女性に喜んでもらいたい人はストロボは必須だね。(笑)
編集部 女性ポートレートが上手くなりたいと思っている読者にアドバイスをお願いします。
魚住 まず、ポートレートの場合はテクニックを追わない方がいい。大切なのはドキドキ感だよ。テクニックのアドバイスじゃないけど、カメラ雑誌の女性ポートレートよりも、ファッション誌の写真の方が参考になると思うよ。もしプロの真似をするならプロを越えるつもりで撮ったらいい。大切なのはその日、その時間に、どこで撮ったら女の子がキレイに撮れるのかを常に考えること。そして、女の子の髪型、服、気持ちを読んで、臨機応変に撮ってあげること。
編集部 映画は参考になりますか?
魚住 僕はあまりそうは思わない。もしポートレートが上手くなりたくて映画を観るのなら、できれば女の子と一緒に映画館に行って、「 ここで手を握ったらどうなるのかな? 」 なんてときのドキドキ感を味わってもらいたいね。ポートレートで大切なのはドキドキ感だと思うから。
編集部 魚住流の仕事のスタイルってありますか?
魚住 「 自分壊し 」 かな。いつも新しい提案をして、新しい試みをしたいけれど、現実はなかなか難しいでしょ? 日常的な仕事って、過去の自分のコピーになるわけですよ。それはクライアントが僕の過去の仕事を評価してくれて、それに類するモノを依頼してくるわけだから仕方ない。でもそればかり続けていると自分がダメになってしまうから、クライアントがいない仕事を自分で作って、というか、クライアントが自分の仕事を作って、いつも自分壊しをする。たとえばポートレート専科も、オリジナル写真集も顧客は自分。そうした仕事では常に新しい提案をしたいと思ってる。
編集部 壊せますか?
魚住 自分が可愛いから壊せない部分があるよ。でもだからこそ試みなければダメなんだと思う。
編集部 最近は沖縄を中心にしたランドスケープを撮ってらっしゃるようですが、それも自分壊しですか?
魚住 ランドスケープに関しては自分探し。探せないと思うけどね。なぜならそれは答えが出ないモノを撮りたいと思っているから。
編集部 最後に、写真をライフワークとして続けていくおつもりですか?
魚住 写真を死ぬまでやり続けるかと聞かれるとわからないな。もっとスリリングなものに出会ったら、そっちに行ってしまうかもしれない。(笑) 今は、自分にとって写真が一番スリリングだから面白いよ。自分壊しでもあるしね。

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  「 ポートレートは第三者が観てドキドキしなければだめ 」 だと言う魚住さん。2時間の取材の中で、もっとも口にしてくれた言葉が 「 ドキドキ 」 と 「 スリリング 」 だった。今後、観る人を魅了する写真とは何かという難題を前にしたとき、つい、氏の受け売りをしてしまいそうだ。
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第1回 魚住 誠一 / Seiichi Uozumi 〜 
ポートレートはスリリングだから面白い! <前編> はコチラ

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次回の 「 写真のコダワリ・フォトグラファーに聞け! 」 は、キヤノンEOS学園講師も勤めている 「 山田愼二氏 」にご登場いただく予定です。お楽しみに!

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初出:2012/11/29 このページのトップへ
 
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