第５回　主題と背景のコントラスト　　～　林英吉の女性の撮りかた講座

林英吉の
　女性の撮りかた講座

Photo by 林英吉　& Text by 薮田織也

第５回　主題と背景のコントラスト

2006/06/28

１	主題を引き立てるのは背景
２	主題と背景のコントラスト
３	想像を膨らませる絵作り
４	次回予告

講師　林英吉 フォトグラファー
　あくまでも「シューティング感覚」を大切にするフォトグラファー、林英吉氏。商品撮影や建築撮影もこなすが、最近は専らタレントや女優などの人物撮影で活躍中。

聞き手　薮田織也
　人物写真（特に女性）にしか興味のないチャランポランなカメラマン。林氏のテクニックを聞いて少しは勉強しる！

写真０

黄色の車をバックに黄色の衣装。同系色の背景に被写体が埋没しないようにするには、被写体への光の当て方次第です。また、主題の衣装の質感が出せれば、背景の車の硬質感とのコントラストで、主題が引き立ちます。（拡大写真）

モデル：水沢彩

■主題を引き立てるのは背景

●メイド服のカタログがもらえる？

	これまで掲載した林さんの写真を見てると、背景に対してこだわっているのがわかりますよね。

	この講座に掲載した写真はすべて、メイド服ブランドのエミリーのカタログのために撮ったもので、写真の主題はあくまでも衣装なんだけど、普通のカタログ写真のように撮りたくなかったんだよね。だから、背景にこだわったんだよ。

	普通のカタログだと、主題が衣装の場合、背景にホリゾントを使った写真が多いですもんね。つまり、エミリーのカタログは写真集風にしたかったと。

	クライアントの要望もあったんだけど、どうせ撮るなら魅力的な写真にしたいしね。

	ところで、エミリーのサイトで、林さんの写真が使われたカタログが、2006年6月30日まで無料でもらえるキャンペーンやってますね。あと２日しかないけど。

写真１

古いオートバイとナースの衣装を着た女の子のコントラストを楽しみます。真っ白な衣装なので、背景の沈んだ壁のグラデーションも重要です。（拡大写真）

モデル：石川久美子

	薮ちゃんがもっと前にリンクしてくれればいいのに、いつまで経っても更新してくれないから。でも、エミリーの衣装は人気があるみたいだから、まっ、いいけどね。

	僕も仕事の関係でエミリーの実物を触ったことありますけど、質感がいいですよね。パーティグッズの店で売ってる衣装とはまったく違う。

	だからこそ、衣装の質感を出すための背景が欲しかったんだよね。主題は背景で引き立つからね。

	女の子の体や衣装の柔らかさを引き立てるのに、車やバイクの硬質感を背景に使うのは常套手段ですよね。さりげなく林さん所有のコペンも映ってるし。

■主題と背景のコントラスト

●トーンの違いだけじゃない

	写真１と写真２は、白い衣装だから背景を暗いトーンにしているんですよね。

	それもあるけど、どちらかというと雰囲気だよ。雰囲気。これだけ主題と背景でトーンの違いがあれば、衣装のシルエットがはっきりと際立つから、確かに衣装を見せるのには都合がいい。でも、実はそんなことより、衣装と女の子の柔らかさを引き立てるために、こうした背景を使ってるんだよね。

	うん、主題と背景のトーンの違いによるコントラストより、質感の違いによるコントラストの方が、個人的には魅力を感じますな。これが主題と背景で同じ質感だったら、かなり違った印象になってるでしょうね。でも、白や黒の衣装を撮るのって難しいですよね。

	だから地明かりで、超スローシャッターで撮ってる。（前回参照）　あまり強い光を当ててないから、生地のグラデーションが綺麗に出てるんだよね。

写真２

木製の古い脚立と、ナースの衣装。不安定な場所にモデルを置くことで、見る人の視線を集めることができます。（拡大写真）

モデル：水沢彩

■想像を膨らませる絵作り

●背景や小道具で積極手な絵作り

	僕なんか、女の子を綺麗に撮ろうとするあまり、撮影時の頭の中が、技術的なことに囚われてしまうことがよくあるんですけど、林さんの写真って、やっぱり余裕がありますよね。きんちんと絵作りしてる。

	ただ女の子を写すだけなら誰でもできるじゃない。女の子が可愛かったり、スタイルがよければ、それだけで絵になっちゃう。でもそれじゃつまらないでしょ。

	冒頭の写真は、僕なんかだと、ちょっとＨな想像しちゃいますね。メイドさんが衣装の乱れも気にせず一心不乱に車の手入れしてるところに、主人が帰ってきて、それに気付いたメイドさんが裾を抑えながら振り向く、ってなシーンを勝手に想像しちゃいました。

	いいんじゃない？　想像は勝手で。

	写真１はオートバイに巻かれた包帯が面白いっすね。いろんな想像ができる。ちょっとお間抜けなナースとか、それとも野戦病院で包帯を乾かしている、ちょっと疲れ気味のナースとか。写真４なんか、自分のバイト時代を思い出しちゃいますよ。

	えっ！　薮ちゃんメイドやってたの？

	ち、違いますよ。やだなぁ。休憩時間が取れないほど忙しい職場のバイトをやってたとき、上司の目を盗んで休むのがトイレしかなかったってことですよ。まっ、それはともかく、背景や小道具をうまく使うと、想像をかきたてる絵作りができますよね。

	うん。だから、撮影前のロケハンがとっても大切なんだよね。どんな絵が作れるか、自分の作りたい絵に必要な背景や小道具があるのかを知っておく必要がある。

	僕も、前もってモデルに撮りたい内容の絵コンテを渡したりするんですよ。本当は他人の写真を見せるのが手っ取り早いんですけど、やっぱり他人の写真なんでね。面倒だけど絵コンテで確認してもらう。

写真３

古い電話ボックスと黒としろを基調にしたメイド衣装。これも背景と主題が同系色ですが、決して主題が背景に埋没していません。（拡大写真）

モデル：石川久美子

写真４

トイレとメイド衣装。このシチュエーションで何を想像しますか？　休む暇も無く働くメイドが、唯一隠れ場所として使う場所。若いときのバイト時代を思い出してしまいます。
（拡大写真）

モデル：水沢彩

■次回予告

●次回から撮り下ろしでスタート

	さて、この回で、林さんの撮影講座は前半が終了です。次回からの後半は、いよいよ林さんの撮り下ろしで連載がスタートです。

	まだ何にも考えてないよ。っていうか、テーマを考えるのは薮ちゃんにお任せ。僕はそれに合わせて撮るからね。

	またぁ、ちょっとは林さんも考えてくださいよ。それはともかく、コンテンツ内容を考えたら、モデル選びっすよ。モデル。もう、めちゃくちゃセクシーな写真撮ってくださいよ。っていうか、その撮りかたを教えてくださいよ。（ハアハア…）

	息が荒いよ息が。いいの？　スタグラのイメージが「Ｈ」になっても。

	個人的にはＯＫなんですけどねぇ。神崎洋治がうるさいんですよ。神崎が。本当はどスケベなんですよ。あいつ。

写真５

明るい窓を背景にした難しいカット。モデルの顔が暗くならないように、レフが必要で、レンズ前のハレ切りも重要。（拡大写真）

モデル：石川久美子

	まっ、できるだけ簡素な機材で、初中級者でも撮れる魅力的な撮影術を心がけようよ。内容は「Ｈ」でもさ。だって、女の子は多かれ少なかれ、ちょっとは「Ｈ」に撮って欲しいって思ってるもんなんだよ。いやらしいのはダメだけどね。

	そうなんですよね～。そうなんですよね～。なんだかね～、僕もまた「女性の撮りかた講座」を復活させたくなってきました～。なんか別の切り口で。

	なんで２回繰り返す……。それにしても、最近のスタグラは、「レタッチ」のハウツー講座に思われ始めてるもんね。もう少し、撮影術も頑張らないと。

	まっ、そういうわけで、撮り下ろしのため、またまた更新が遅れますけど、「林英吉の女性の撮りかた講座」、後半をお楽しみに。そりでぃは！

協力：モデル Excel Human Agency

初出：2006/06/28

Photo by 林英吉　& Text by 薮田織也

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