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■逆光を上手に使うコツ |
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「写真は光の芸術だ!」などと良く言われます。この「芸術」って言葉は個人的に好きじゃないんで、これっきりしか使いませんが、実際、写真は光を上手に使ってなんぼのものなんですね。屋外の同じロケーションでの撮影でも、時間帯や季節でまるっきり違った絵になるのは、天候はもちろん、太陽の角度が要因です。また、モデルを立たせる位置やカメラマンの位置でも写真は表情を変えます。これもモデルに当たる光の角度によるものですね。この光ってやつをきちんと掌握して、思い通りの絵が描けるようになれば、もう素人は卒業と言ってもいいでしょう。この光の使い方ってヤツは結構奥が深いので、少しずつ紹介していきましょう。
●逆光は女性をキレイにする
というわけで、今回は「逆光」(被写体の後ろからあたる光のこと)の使い方についてです。「逆光って基本的に使っちゃいけない光じゃないの?」と思った人もいるでしょうね。ところが、女性を撮るうえで欠かせない光が逆光なのです。写真7のように逆光は、被写体の輪郭に光のラインを作ってくれます。
もし写真7を順光(被写体の正面からあたる光のこと)で撮影するとどうなると思いますか?
順光だと、モデルの顔は明るくなりますが、モデルの髪の毛が背景の緑に溶け込んでしまうことでしょう。
●逆光にはストロボを使う
写真7は単純に逆光だけで撮影したものですので、モデルの顔が少し暗くなっています。これではあまりいい写真とはいえません。そこで写真7と同じロケーションで、撮影した写真8を見てください。違いはなんだかわかりますか?
答えは簡単ですね。そうですストロボです。逆光で被写体の輪郭を浮かび上がらせて、暗くなりがちな顔はストロボで明るくします。この写真は至近距離からストロボを発光させているために、「ストロボを使いましたよ〜」って感じがモロにしますが、光量が調節できるストロボなら、少し弱めに発光させてやるといいでしょう。光量が調節できないストロボの場合は、被写体から離れてズームで撮影します。つまり、距離によって光量を調節するってわけですな。
屋外のしかも晴れの日でも、ストロボは結構役に立ちます。例え順光であっても被写体より背景の方が明るいときなどは、ストロボを使ってみましょう。
●レフ板を使ってみる?
逆光で暗くなった顔を明るくするには、ストロボ以外に「レフ板」という手があります。レフとはReflector(反射板)の略で、白や銀の反射幕に光を反射させ、被写体を明るくできます。レフ板と聞くとなんだか大げさな感じがするかもしれませんが、畳くらい大きなものから折りたたんでポケットに入ってしまうくらい小さなものまで、大きさも形もさまざまなものがあります。モデルの顔だけに光を当てるのなら、小さなサイズのレフでも十分ですし、折りたたみタイプなら持ち運びも楽です。写真9は私が普段携帯している折りたたみタイプのレフ写真10を使って撮影したものです。このレフは直径60cmくらいで、折りたたむと25cm程度になります。「レフなんて持ってね〜よ」って人は、手近にある白い紙でもいいんですよ。日差しが強いときは自分が上半身裸になって、レフ板代わりになるってのも手です。その場合、モデルにかなり接近しなければならないわけで、モデルとの仲がかなり親密でないと、セクハラで訴えられるかもしれませんけど。
冗談ぽく書きましたけど、人の肌のレフ板ってのは、白い紙や本物のレフよりもいいんです。人の肌から反射する光ですから、モデルの顔を照らしても不自然じゃありません。そうそう、人肌レフで思い出しましたが、モデルに接近して撮影するときに注意しなければならないことがあります。それはカメラマンの着ている服の色です。白や黒、グレー以外の服を着ているときにモデルに接近して撮影しないこと。服の色が反射して顔色が変になることがありますから気をつけてくださいね。
●ハレーションに注意!
逆光撮影するときの注意点としては、「ハレーション」を防止することです。ハレーションとは、光源からの光が直接レンズに入って、画像の一部が白っぽく濁ることをさします。逆光撮影のときは、カメラが向いている方向に光源があるわけですから、特にハレーションが起きやすくなるわけです。写真7と写真8は少しだけハレーションを起こしているのがわかるでしょうか。ハレーションのために、画像全体のコントラストが少し落ちています。
ハレーションの対策としてもっとも簡単な方法は、レンズフードを装着することです。ハレーションはファインダーを覗いている状態でも確認できますから、どうしてもハレーションが起きてしまうようなら、黒い紙などで光をさえぎるのも手です。応急処置としては手の平でもOKです。
●半逆光ならハレーション対策もOK
完全な逆光はハレーション対策(ハレギレともいう)が大変ですが、半逆光なら写真12のようにハレーションのないコントラストの高い写真が撮れます。
●露出を制御して逆光上手になろう
写真12はレフ板もストロボも使っていませんが、モデルの顔が写真7よりも明るいのがわかりますか?このヒミツは少し難しいかもしれませんが、「露出」にあるんです。あっ、肌をさらけ出すことじゃありませ………、誰もそんなこたぁ思わないか……。「露出」とは、レンズを通る光の量のことで、デジタルカメラでは「絞り」と「シャッタースピード」、そして「ISO感度」で露出を制御します。「ISO感度」のことは今回は横に置いておいて、ここでは「絞り」と「シャッタースピード」を使った露出制御について少しだけ説明します。カメラのレンズを人間の目に例えると、「絞り」は目蓋の開き具合、「シャッタースピード」は目を開いて綴じる瞬間の速度です。なんじゃそりゃって感じですが、目蓋を大きく開くと目に光がたくさん入りますよね。逆に目を細めると光はあまり入ってこなくなりますね。人間は光がまぶしいと目を細めるじゃないですか。つまり、目蓋の開き具合によって目に入る光の強さをコントロールしているわけですよ。(実際には目の虹彩を使っているんですけどね…) 「絞り」はこれと同じで、レンズを通して入ってくる光の強さを制御する機能です。これに対して「シャッタースピード」は、「絞り」で制御した光の強さを、どれだけの時間通すかを制御する機能です。強さと時間で制御された光の量が「露出」というわけです。なんとなくわかりました?
「露出」が理解できたら次は「AE機能」について少しだけ説明します。ほとんどのデジタルカメラには「露出」を自動で調整する「AE機能」というものがあります。これは、レンズを通して入ってくる光の量が適正になるように、自動で調整する機能です。「適正」という言葉はとーってもいい加減な言葉なんですけど、要は見た目に可もなく不可もない程度の明るさということです。(さらにいい加減な説明になったな) 通常、逆光撮影時にAE機能が働くと写真7のように被写体が少し暗くなります。逆光だと背景に強い光があるために、画面全体が明るいのだとAE機能が判断して、光の量を少なくするように働いてしまいます。つまり、光を弱くして光を入れる時間を短くしてしまうわけです。このために、逆光の写真は被写体が暗い写真になりやすいわけです。AE機能についても、なんとなくわかりました?
さて、話を戻しましょう。 写真12の被写体が半逆光なのになぜそこそこ明るく撮れているかの説明です。この写真では、逆光がレンズに入ってこない比較的暗い場所で一度露出を固定してから、撮りたい構図にカメラを移動して撮影する「AEロック」という手法をとっています。つまり、最終的に撮りたい構図でAE機能を働かせなくする方法です。こうすると、逆光で暗くなりがちな顔を適正露出にして撮影できるわけです。AEロックはフォーカスロックと同じで、シャッターを半押しにした状態で機能します。
絞りとシャッタースピードが全てマニュアルで操作できるカメラなら、絞りとシャッタースピードを全て自分で設定して好みの明るさにする方法もあります。また、AE機能を使いながらも、露出を手動で補正するという方法もあります。こうした方法は後日あらためて紹介しましょう。
次回は室内での撮影を中心に、光の使い方についてもっと踏み込んでみましょう。それではまた来週。
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