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〜 女性撮影の基本とコミュニケーション 〜 |
2003/6/4 |
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■下準備と無理のないコミュニケーション |
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●女性を撮る基本中の基本が会話
女性を撮影するとき、あなたは被写体であるモデルと会話してますか? ただ黙々とシャッターを押していたりしませんか?
当たり前のことですが、モデルとの会話はとても大切です。撮影中はもちろんのこと、撮影前にも十分な会話の時間をとってモデルとしっかりコミュニケーションしましょう。十分なコミュニケーションもとらずに撮影を始めては、いい表情なんて撮れるはずがありません。突然カメラのレンズを向けられればプロのモデルだって一瞬身構えてしまうのですから、素人や駆け出しのモデルならなおさらです。撮影前の会話が弾んできたら、会話しながらカメラを向けてシャッターを切り続けましょう。これは、モデルにシャッター音に慣れてもらうためです。こんなことを書いていると、プロのカメラマンはさぞかしモデルと会話するのがうまいんじゃないかと思うかもしれませんが、意外に会話できないカメラマンもいるんですねぇ。撮る方もプロなら撮られる方もプロのモデル。モデルが表情やポーズを作るのが当たり前とばかり、無言で撮るプロもいます。私のような端くれの端くれの端くれに言われたくはないでしょうが、こういう人はプロとして失格です。女性を撮る資格はありませんね。
●下心…じゃなくて下準備は万全に
私の場合はモデルのプロフィールをあらかじめ良く読んでおいて、モデルの好きな音楽や趣味を勉強しておきます。そして撮影前に趣味の話で盛り上がることができれば、その撮影の半分は成功したも同じです。また、スタジオ撮影のときはモデルの好きな音楽をかけながら撮ります。次回以降も出てきますが音楽ってかなり重要ですよ。モデルの気分をリラックスさせることもできるし、高揚させることもできる。それどころか意地悪せずに(笑)泣かせることもできます。
●モデルは褒めて褒めて褒めまくろう
撮影中に言う「可愛い」とか、「綺麗だよ」っていう言葉。これって結構勇気がいりますよね。私は厚顔無恥なので今は連発する方ですが、正直言ってはじめは言えませんでした。「可愛い」って思っていることが気持ちや、写真で伝わればいいなんて思っていましたが、やっぱり口に出さなけりゃ伝わりっこないんです。女性モデルは本当は誰もが「可愛い」って言って欲しいんです。褒められれば、もっと表情が良くなることは間違いありません。もちろん、褒められることで照れてしまうモデルもいますが、その照れた表情だって良い被写体になるはずです。でもカメラマンが照れてしまっていては、モデルの緊張をほぐすことはできません。だから、勇気を振り絞ってモデルを褒めましょう。でもどうしても恥ずかしくて言えないとしたら……。
●恥ずかしかったら間接的に…
私が以前やっていた方法をお教えしましょう。まず、撮影に他の人に立ち会ってもらいます。そして、モデルが表情を作ったらわざとファインダーから目を離して、立会人に向かって、「くぅ〜! ねぇねぇこの表情可愛いと思わない?」と大袈裟に話しかけます。もちろん、立会人とは前もって打ち合わせしておいて、「俺も(私も)今ゾクってした!」などとリアクションしてもらいます。続いて立会人に、「っていうかお前、今がシャッターチャンスだったんじゃないの?」と突っ込んでもらいます。その後、あなたがボケる必要があるのは言うまでもありません。ベタかもしれませんが、これが結構効果があるんです。モデルを中心にして立会人と漫才じみた会話をすることで場が和みます。はい。
今でもこの手法は使います。モデルが初対面のとき、立会人は私と気のあった女性に頼みます。女性がいることでモデルも安心します。もちろん、しばらくしてモデルが心を開いてくれるようになったら立会人には出て行ってもらい、モデルと二人きりで撮影します。その後は「可愛い」、「綺麗だ」、「くぅ〜」、「わぉ」なんてわけのわからない言葉まで持ち出して大騒ぎで撮影します。要は楽しく撮影できなけりゃ駄目ってことですな。
●モデルと同じ年齢になれるか!
仕事柄、ジャリタレ……、もとい、子供のタレントの写真を撮ることもあります。そういうとき、私は子供と同じ年齢になって遊びます。髭面のでっかいオヤジが子供と同じ目線で遊んでいるわけですから子供は最初戸惑いますが、そのうち「このおっさん、何か変」って思うようになり、次に「変なおっさんと遊びながら撮影されてみようかな」って気持ちに変わります。その時はもう子供とオヤジはタメグチです。子供から「おっさん!」とか「薮ちゃん」と呼ばれ、私もモデルの子の名前を呼び捨てします。
こうなれば、難しいと思われがちな子供の撮影も半分成功です。
これって、実は女性の撮影にも応用できるんです。モデルの好きなことで一緒に遊べたら大成功です。私はよく公園で撮影しますが、遊具などでモデルと一緒に遊ぶのも良い手です。それから、モデルを名前で呼ぶことはとっても大切。「君さぁ」とか、「お前」なんて呼ぶのは論外。丁寧に「○○さん」なんてのもダメ。モデルの名前で「○○ちゃん」と呼んでも不自然な関係でなくなれば撮影はスムーズに進むはずです
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■360℃アングル・カメラマンが動いて狙え! |
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●いろんな角度から撮ろう!
言い尽くされたことかもしれませんが、カメラマンはモデルの魅力的なアングルを探すために動き回らなければなりません。そりゃもう高いところに昇る、水に浸かるは当たり前でしょう。雨上がりの公園の空気をバックに撮りたければ、湿った草に寝転ぶ位の覚悟は必要だと思いますよ。普段のポートレート撮影でそこまではできないでしょうが、モデルを上から下からアングルを変えて撮ることで、もう素人写真は卒業です。写真1は少しワザとらしい、というか変態チックに見えるかもしれませんが、モデルの体のラインをダイナミックに見せるために公園の駐車場で寝転んで撮影しています。
決して撮影中に倒れたわけではありません。
●カメラマンは酸欠になりやすい?
これは蛇足ですが、撮影中は無意識のうちに息を止めているため、ぶっ続けで撮影していると時々酸欠状態に陥って倒れそうになることはありますね。
この日も二人のモデルを屋外とスタジオの3箇所のロケーションで10時間に及ぶ撮影だったため、終了間際は眩暈がしました。本来は、こんな長時間の撮影はしてはいけません。カメラマンの体力よりもモデルの集中力が低下してしまうからです。
さて、 写真1の方法で撮った写真が写真2です。この日はやや曇り空だったために、空の色が少し残念な感じですが、このくらい青味がかっていればレタッチで空の色を強調することができます。この講座は撮影術について語るところなので、ここではレタッチの方法やレタッチを意識した撮影方法は紹介しません。グラフィックソフトを使ったレタッチに興味がある方は、「写真レタッチ講座」をご覧ください。ちなみに、ここで掲載している写真は一切レタッチをしていません。念のため……。
●アングルは画一的にならないようにしよう
素人の写真にありがちなのが、撮影者の目の高さがほとんど同じという写真。つまり、どんなシチュエーションにおいても撮影者が棒立ちになって写真を撮っているということです。女性モデルよりも背の高い撮影者の目線で撮影すると、中途半端に目線が高い写真になってしまい、モデルの背の低さが強調されてしまいます。こうした写真ばかりですと、大変つまらない写真になりがちです。
●目線の高さに気をつけよう
私は普段、モデルの喉もとくらいまでカメラを下げて撮影します。(写真3)
私は身長が178cmあるので、たいていのモデルの撮影は中腰でします。中腰が疲れたときは、脚を左右に大きく広げて背筋を伸ばして撮影します。仕事以外のスナップ写真を撮るときもこうした姿勢で撮るので良く笑われますが、もう癖になってしまっています。
中腰がつらいと感じたら 、いっそのことモデルに座ってもらい、高い位置から撮影してみましょう。
写真4は、花壇に座ったモデルにグッと寄って真上に近い位置から撮影しています。こうした位置から撮影するとき、モデルに軽く顎を引かせるとモデルが上目遣いになりやすいので、目が大きく開いた魅力的な写真が撮りやすくなります。写真5は、スタジオでの撮影です。3方向からストロボを照射しているので平面的になっていますが、これは宣材写真用に撮影したものでなのでこれでいいんです。個人的には影のない写真はあまり好きじゃありませんが……。
同じロケーションでも、カメラマンの目の高さを変えることで写真は大きく違ってきます。前述したように寝転ぶまでしなくてもいいですから、しゃがんだり高い所に昇ったりして、いろんなアングルを試してみてください。
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■モデルにも積極的に動いてもらおう! |
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●モデルに遊んでもらおう
カメラマンがアクティブに動き回って魅力的なアングルを探すのは基本中の基本ですが、モデルにも積極的に動いてもらうことも必要です。でも、いきなり動いてと言ったところで、どんな風に動いたらいいのかプロのモデルでも悩んでしまいます。まずはカメラマンが周囲に注意して、モデルを魅力的に撮影できる場所や小道具を探してみましょう。見つかったら、そこで自由に遊んでもらいます。写真6は、大きな切り株が見つかったので、モデルのsaraちゃんに遊んでもらいました。こうしたシチュエーションだと、普通のポートレートとは違った表情が撮れるものです。また、ちょっとしたトラブルがあったりすると、モデルは妙に色っぽい表情をするものです。それはまさしくシャッターチャンス。もう全自動でガンガン撮りましょう。ちょっとくらいピントがボケたり手ぶれしたっていいんです。その方が生きた写真になることも多いはずです。
●普段では撮れない場所が身近にあるはず
私の場合、モデルに「どんなシチュエーションで撮りたい?」とよく聞きます。今回の撮影では、モデルの寺崎佑紀ちゃんに聞いてみました。普段、雑誌のモデルでプロカメラマンに撮られなれている彼女は、なんと「木の上で撮りたい!」と……。一見お嬢様風な彼女ですが、結構お茶目な一面もあるようです。
それではってことで、寺崎佑紀ちゃんに木の上に登ってもらうことに……。(写真7) もちろん、ひとりでは登れそうもないので、スタジオグラフィックスの「デジカメ基礎知識」を担当している飯倉茂久に踏み台になってもらいました。(笑)
彼はまだ若くて丈夫だし、キレイな女の子の脚で踏まれるのも役得といえるんじゃないでしょうかねぇ……。
無事に木の上に登ることもできて、いざ撮影です。初めはモデルも少し不安そうでしたが、慣れてくると普段の撮影とは違う雰囲気と景色のせいか、いつもは見せることのない子供に戻ったような表情をしてくれました。
さて、これで第1回目の「女性の撮りかた講座」はおしまいです。今回の講座は、デジタルカメラに限った内容ではありませんでしたが、次回以降にはデジタルカメラならではのテクニックも紹介していくつもりです。それではまた来週。
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■どんなカメラマンに撮ってもらいたい? 寺崎佑紀 |
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Q.佑紀ちゃんが撮られやすいって思えるカメラマンってどんな人?
寺崎 「なんて言ったらいいのかな、やぱり私と波長が合うカメラマンさんがいいですね。撮影に入る前にリラックスさせてくれると嬉しいです。そして撮影中はカメラマンとモデルの2人だけの世界を作ってくれるとやりやすいです。私は自分から表情やポーズを作っていく方なんですけど、私が自分でいいと思っているのと同じ感覚を持っている人だと気持ちよく仕事ができますね。もし何か気づくことがあったら、次のカットを撮る前にアドバイスをしてくれると頑張れます。」
Q.撮影中に褒められると嬉しい?
寺崎 「もちろんです」
Q.逆に嫌なカメラマンは?
寺崎 「撮影に熱中するあまり、自分だけの世界に没頭して無言で撮影を続ける人がいるんですけど、それはとてもやりにくいです。それから、撮った後で注意とか欠点を指摘されるとテンションが下がっちゃいますね。事務的に撮る人も嫌です」
Q.撮影前にすることって何?
寺崎 「撮影日の朝からテンション上げるために、音楽を聴いたり、お香を焚いたりしてます。こうすると、撮影中に集中できるんです」
Q.撮られているときはどんなことに注意してる?
寺崎 「単純なことですけど、シャッターの瞬間に瞬きしないようにとか、顔に何かの影を感じたら少し顔を左右に振って影を作らないようとか…。体がカメラに対して真正面に向かないようにも注意してますね。それと、何枚も同じポージングにならないように注意もしてます」
Q.プロのモデルとしてどんな努力をしてるの?
寺崎 「普段は、鏡の前で表情やポージングの練習をしています。表情では、まぶたの開き加減の練習ですね。撮影中は、カメラマンさんのシャッターのタイミングを早めに掴めるようにとか、カメラマンさんの好きな表情やポージングなどを見抜けるように努力しています」
Q.最後に、読者へのアドバイスをお願いします
寺崎 「カメラマンも笑ってくれると、モデルもいい表情ができると思いますよ」
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■ベタ褒めしてその気にさせる! 若林直樹 |
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Q.若林さんが女性を撮るときのコツは?
若林 「私が女性の写真を撮るときに大切にしているのは、やはりモデルとのコミュニケーションですね。モデルがアマチュアの場合は、限られた撮影時間の大半をコミュニケーションに割いています。多いときでは30分から1時間はモデルと世間話をします。相手がどんな感じの女性なのか理解するまで話しこみますね。ポイントは、共通の話題を探すこと。動物が好きな女性なら私も動物好きだから、ペットなんかの話題で盛り上げますね。共通の話題があると笑顔が出やすいんです。そうして話をしているうちに、その女性が持っている表情を引き出すようにします。同時に、その表情をどういったアングルで撮るのがいいのかを探し出します。撮影に入ったら、初めの30分くらいは捨てカットのつもりで撮っています」
Q.捨てカットとは予行演習みたいなものですね
若林 「このカットは、モデルにシャッター音とストロボの光に慣れてもらうためです。そして、私からの注文に対して余計な照れをなくしてもらうために、軽いポージングもしてもらいます。捨てカットの場合、フィルムを入れずにシャッター音だけモデルに聞かすカメラマンもいますが、私はフィルムを入れて撮ります。もちろんその中に良い写真があることも期待していますが、フィルムを入れて撮ると本番さながらの準備運動になるからです」
Q.モデルを褒めますか?
若林 「捨てカットの撮影時にもモデルが表情を作り出したらベダ褒めしますよ。最初はモデルも照れていますが、褒め言葉の洪水でモデルも私もだんだんと高揚してきますからね。盛り上がったところで本番かな」
Q.女性の撮影時に注意していることってなんでしょう
若林 「うーん、あえて言うなら下ネタは禁句ってことかな(笑)。肌を露出する撮影なんかの場合、モデルは緊張しているわけで、それを和ませようとするためとはいえ下ネタを言ってしまうと、モデルは嫌悪感を感じてしまうことが多いんですよね。私たちがする撮影はあくまでもビジネスなわけで、女性を口説いているわけじゃないですから」
Q.アングルのとりかたについてもアドバイスをお願いします
若林 「アングルとフレーミングの話になるけど、撮影開始時はズームを望遠側で使ってモデルから少し離れて撮影しましょう。このとき、オーソドックスなポーズをとらせて、全身もしくはバストショットで撮ります。ズームレンズをワイド側にしてモデルに寄って撮るのはモデルが撮影に慣れてきてからにしたほうがいいでしょうね。慣れてきたらいろんなポーズをとってもらい、躍動感を出すためにカメラマンも上下左右に動いて撮影しましょう。最後は、モデルに近寄ってダイナミックな写真を撮るように心がけます」
Q.最後に若林さんが撮りたいと思っている女性写真とご自身のPRを
東京書籍刊 「幻影の蔵」 |
若林 「自然の中に溶け込んでいる女性を撮りたいですねぇ。最近、アフリカの写真に凝っているので、アフリカまでモデルを連れて行って撮りたいな。自分のPR…? 最近、『幻影の蔵』という江戸川乱歩に関する書籍が出版されたんですけど、その本に掲載されている写真を担当しました。一度読んでみてください」
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