コンテンツのトップページへ 髭達磨・薮田織也のプチ日記
 2005年 3月 12日 土曜日 超近代都市北京と胡同(フートン)
 
めての北京である。中国である。韓国から帰国してすぐ、博多での風車の撮影があって、一息ついてから大陸に渡った。もちろん撮影機材一式と一緒の旅である。今回は仕事らしい仕事がないので、なるべく軽装で行こうと思い、大型アルミケースはもちろん、リュックもやめて、北海道の撮影で使ったウエストバッグと、ノベルティでもらったミノルタの小型のソフトバッグのみにしてみた。いやあ、なんとかなるものだ。要は着替えを持っていかなければいいのである。服やズボンは着の身着のまま、パンツは裏返せばいいのだ……、あっ、嘘、うそ、ちゃんと替えは持っていきましたよ。やだなぁ。


回の旅行は、ほとんど観光。唯一の仕事といえば、2月からアップするといい続けてできなかった「新・女性の撮りかた講座」用のネタ撮りだ。そのネタは、先月行ったの韓国で、藍海夏をモデルに撮ろうと思ったのだが、持って行った機材が正常に動作しなかったために断念。帰国後、使えなかった機材をショップで交換してもらい、この北京で新たにチャレンジということになったのだ。そのネタというのは、「2つの外部ストロボを使った多灯撮影のテクニック」だ。この多灯撮影というもの、業務用スタジオでの人物撮影においては標準的に使うテクニックなのだが、一般的な環境では基本的にストロボは1灯しか使えない。でももし、外部ストロボが2個あるなら、数千円の出費で多灯撮影が可能になるというわけで、その方法を紹介しようと思い立ったのである。2つ以上のストロボを使うと、当たり前だが、暗い室内でも明るい写真が撮れる。それだけじゃなく、もうひとつのストロボを設置する場所をいろいろと変えることで、被写体に思い通りの影を作ることもできる。
 
▼写真1  
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昔、新聞やテレビでよく見ていた天安門広場。実際に自分の脚で立ってみると……。なんのことはない、ただだだっ広い広場。いくら国土が大きいからってこんな無駄遣いを…と思ったが、実は、広い国土の独裁的な統治者というものは、その権力を誇示するため(そして、その他大勢の権力者の金を浪費させるため)に、国土に見合った建造物を作らなければならなかったのだろう。


でだ…。一番重要なことなのだが、この北京旅行に藍海夏は参加していない…。だから…、いろんな意味でとっても残念なのだが、ツアーリーダーである澤口留美をモデルにした…。ごめん…なさい…。藍海夏を期待していた人たち…。
京に着いた初日は、天安門を見学。天安門や故宮などの観光施設だけを眺めていれば、テレビや書物で見慣れた中国なのだが、ぐるりと見渡せばそこはまさしく近代都市。3年後に控えた夏季オリンピックに備えてだろう、スクラップ&ビルドの建築ラッシュで、そのため街全体は活気付き、明るく騒然とした様相を呈している。これはまったくの予想外、いや期待ハズレである。誠に自分勝手な期待だが、髭が見たかったのは、高層ビルの立ち並ぶ北京ではない。故宮を中心に広がる迷路のような胡同(フートン=路地)であり、その胡同に雑然と存在する庶民の四合院住宅のはずだった。

都北京は急速に失われつつあるのだという。オリンピックもひとつの名目だろうが、再度アジアの覇権を取り戻したいと考えている中国共産党としては、首都北京が旧態依然とした四合院住宅で埋め尽くされているのは耐えられないのだろう。追いつけ追い越せ「東京」なのである。髭に言わせれば、反面教師にすべき対象だと思うのだが…。

れでも、各国の中国研究機関や団体、自国の有識者からの熱烈なラブコールを受けて、北京市は、旧市街地に残る四合院住宅の一部を保存対象に指定したのだそうだ。また、重点区域内での新たな建築には、古都の景観を損なわない規制も設けたという。ガイドから「まだ取り壊されていない胡同に行ってみるか」と聞かれ、「是非」と答え、紫禁城の近くの胡同を人力車で巡ることにした。

ずは市場に…。昔の本牧埠頭にあった倉庫のような建物の中で開かれている市場に足を踏み入れると、激しく鼻を突く八角の匂い。大陸は初めての訪問だが、香港、台湾は仕事で何度も訪れているので、この匂いに「うわぁ、中国だぁ」と思った。香港、台湾と違うのは、それぞれの店の構えに何の気取りもないことだろう。もう雑然という言葉通りに商品が乱雑に並べられていた。この市場も観光のルートに組み込まれているのだろうが、北京市民の生活感がみなぎっていて、カメラを向けてもそっけないものだった。これでいいんだ。これで。観光用の笑顔は欲しくない。



▼写真2  
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胡同にある市場では、雑貨が、読んで字のごとく、雑然と売られていた。う〜ん、これぞ中国という変な感慨に…。写真は安易にプログラムモードで撮ったので、ブレブレにブレてしまった。

▼写真3  
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市場の中では、豚や羊が平然と解体され、その場で量り売りされていた。う〜ん、これぞ中国…。中国人のガイドは、「不衛生だから買っちゃだめ」と言っていた。



合院住宅にある一般家庭を訪問させてもらった。もちろん、観光ルートに組み込まれている家庭である。そこで北京市民が食べる日常的な手作りお菓子をいただき、ご主人のペットである蟋蟀や鈴虫を見せてもらった。この家庭には日本の元首相のファーストレディーも訪れたことがあったそうで、写真が額に入れて飾ってあった。

外の一般市民の家庭を訪問させてもらうなんてことは、なかなか体験できないことなのだが、髭はどこか醒めていて、以前、木曽路を一人旅したときに感じた哀切が去来してしまった。一般家庭は観光気分で訪れるものじゃないのにという……。矛盾である。ジレンマである。四合院住宅が見たかったのは髭自身なのに……。

の家庭のある四合院住宅も、もうすぐ取り壊されて近代的なビルが建つのだという。中国では土地自体は国の所有であり、住民には異を唱える権利はないのだそうだ。もちろん、強制転居の際には何がしかの保証金はもらえるのだそうだが、それも微々たるもの。まぁ、いずれにしても一般的な庶民の収入では、新しく建てられた北京のマンションにはとても住めないらしい。民主化が進み始めたとはいえ、やはり中国は中国なのだなぁ。しかし、住民にしてみれば老朽化した住宅で観光客相手にビジネスをしているより、国から与えられた何がしかのお金で、新天地の住宅に移り住んだ方がいいのではないだろうか。ん? いらぬお世話か…。

宮にも行った。映画「ラストエンペラー」の舞台となった、あの紫禁城だ。ただ残念ながら補修作業中だということで、多くはシートで覆われていた。驚いたのは、補修工事と言いながらも、屋根瓦などは巨大なハンマーで殴り壊しているのである。これじゃ補修じゃなく、改築と呼んだ方がいいのではないか? 木よりも石の多い中国の建築物自体の構造からして、そうする方が早いのかもしれないが、どうも中国人のやり方には馴染めないことが多い。何よりも興醒めしたのが、故宮の中にスタバがあって、大きく看板を出していたことだ。日本の法隆寺にスタバがありますか? 最近の京都は知らんけど、日本人なら古式ゆかしい茶屋程度にしておくでしょ。

国四千年の歴史と言うけれど、都が変わる度にそれまでの王族や文化を容赦なく抹殺してきたお国柄がそうさせているのだろうか。たかが数日の中国滞在ではあるが、中国人は自分達の世界に誇るべき文化を大切にしているとは、正直言って思えなかった。故宮にある、以前には金箔が施されていたが占領時アメリカ人に全部剥がされてしまったという大きな水がめの前で、「こうしたことが二度とないように中国は強い国になりたいし、なるべきなんだ」とガイドは言った。その通り、今の中国を見ている限り間違いなく強大国になれるだろう。でも、スクラップ&ビルドでは、かつて日本が歩んできて、今ひたすら反省している道と同じではないか? もったいない。ああもったいない。ん? これもいらぬお世話だった…。



▼写真4  
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庶民向け四合院住宅に居を構える家族に、お菓子をご馳走になった。蟋蟀や鈴虫など、ご自慢のペットを見せてくれた。

▼写真5  
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土産物店ではお目にかかれない、北京の一般家庭の軒先に吊られていた小型の鉢。夕刻の北京の空を背景に撮ってみた。

▼写真6  
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まっすぐの道路の脇に、これまた果てしなく並ぶ屋台。こんなとき、超広角レンズが欲しいのだが、フォーサーズレンズにはまだ……と思ってたら出ましたね。7-14mm! 35mm 換算だと 14-28mm になる。レンズがかなり飛び出していて、レンズフードが組み込み型になっているため、フィルタが装着できないのが難点だが、欲しいなぁ…。オリンパスさん……。
 
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