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Cokin レンズフィルター講座
第3回 Cokin フィルターを使ったフラット光でのポートレート 2013/05/28
 
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ポートレートを中心として雑誌の表紙やコマーシャルフォトで活躍中の写真家、萩原先生がお送りする Cokin レンズフィルター講座の第3回目です。今回から3回に分けて、ポートレートでよく使われるハウススタジオでの撮影を紹介します。今回は、フラット光での ポートレートで角形フィルターの効果を見ていきます。
■ スタジオ ■
STUDIO EASE

■ モデル ■
島村みやこ ( 所属 ABP inc.
田中茉里愛 ( 所属 ABP inc.
ヘアメイク : 渡嘉敷愛子
▼目次  

SCENE 1 フィルターが演出する時間表現

SCENE2 ガーリーで可愛らしく
SCENE3 半逆光でグレーのシンプルな背景
次回予告
▼写真0 フィルター使用例
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Cokin P077 フィルター使用
▼著者 萩原和幸 ( はぎわら かずゆき )
萩原和幸
静岡県出身 東京工芸大学写真技術科卒業、静岡大学人文学部法学科卒業。故今井友一氏師事した後、K&S Photograph∞ を設立。フリーランスのフォトグラファーとして雑誌や広告撮影などで活動中。日本写真家協会会員。静岡デザイン専門学校非常勤講師。
 
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■ SCENE 1 フィルターが演出する時間表現
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● ハウススタジオとは

 

 今回から 3回にわたって、ハウススタジオにてフィルターを使ったカットを紹介していく。ハウススタジオは、ポートレートではよく使われる撮影場所だ。多くのスタジ オでいくつものバリエーションが撮れるようになっている。そこで、今回は『フラット光でのポートレート』を念頭に、作例を紹介してゆく。

 本連 載の最初にも述べたが、フィルターの選択や露出については「正解」いうものはなく、個人個人のイメージにあった写真が撮れるかどうかのほうが重要だ。そこ で、本講座の作例は、あくまでも提案であると同時に、読者の方々が使用される際の参考にしていただきたいという気持ちのもとに、さまざまな条件の効果を感 じ取って欲しい。なお、今回は多くの作例を紹介するため、露出の違う写真の効果を分かりやすくするために、写真を並べて紹介しているが、各写真は、本文中 のリンクから拡大表示できるようにしているので、参考にしてほしい。

 

● フィルターが演出する時間表現

 

 作例1は、爽やかさを感じるダイニングでの撮影。朝の雰囲気をイメージしている。左側がフィルターなしの撮影(写真1-1)だが、爽やかさを強調するため、「シアン」( P050 / A050 )を試してみたのが、真ん中の写真1-2だ。ただし、いわゆる“適”の露出では、シアンの色味が強く感じられたので、右側の写真1-3のようにオーバー目で撮影してみた。ハイライト部はクールな色味に、シャドウ部はシアンが残り、深呼吸したくなるようなすっきりした印象になった。思い切ったオーバー露出のほうが、このシーンにはふさわしかったようだ。

   
 
▼作例1 P050 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真1-1:フィルターなし f4.0 1/30秒 +2/3補正
写真1-2:P050フィルター使用 “適”露出 f4.0 1/15秒 +1 2/3補正
写真1-3:P050フィルター使用 オーバー目 f4.0 1/5秒 +2 2/3補正
モデル:島村みやこ( ABP )
   
 

 傾向を変えるべく、マゼンタ系の色補正フィルター「 FL-W 」( P036 )も試してみたのが作例2だ。オーバー目で撮影してみた写真2-1では、P050のときと違い、少々メルヘンチックな雰囲気が強調された。そこで、いわゆる“適”の露出で撮影してみると、写真2-2のように肌色が落ち着き、マゼンタながら、このシチュエーションに馴染んだ感がある。

   
 
▼作例2 P036 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真2-1:P036 フィルター使用 “適”露出 f4.0 1/10秒 +2補正
写真2-2:P036 フィルター使用 アンダー目 f4.0 1/25秒 +2/3補正
モデル:島村みやこ( ABP )
   
 
  さらに、「ウォーム 81A 」( P026 / A026 )を使って撮影したのが作例3写真3-1だ。 この写真では、さらにしっとりとした雰囲気になり、ここでは一番の好みになった。朝というより午後の少しまったりした時間帯のようだ。もともと、朝のよう な爽やかさをイメージしてはじめたこのシーンだが、フィルターで感じる時間帯まで変わる面白さがある。ちなみに、同じフィルターでもオーバー目で撮影する と、写真3-2のように、ナチュラルさが全面に押し出された感じになった。小道具の緑やグリーンの瓶などもマッチしている。
   
 
▼作例3 P026 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真3-1:P026 フィルター使用 “適”露出  f4.0 1/80秒
写真3-2:P026 フィルター使用 オーバー目 f4.0 1/15秒 +1 1/3補正
モデル:島村みやこ( ABP )
   
 

 同じライティングで、寄りでも撮影したのが、作例4だ。写真4-1がフィルターなしの状態だが、引きの撮影では背景のカラーや状況も、フィルターカラーのマッチングに大きな影響をおよぼす。とくに、寄りでの撮影はライティングと肌の色の調子、それに表情が大きな要素となるので、同じフィルターを使っても印象が変わることが多い。
そこで、寄りのカットにおけるフィルターの効果を、引きのカットを参考に好みの露出で撮影してみた。具体的には、写真4-2の「シアン」( P050 / A050 )ではオーバー目、写真4-3の「 FL-W 」( P036 )ではアンダー目、写真4-4の「ウォーム 81A 」( P026 / A026 )でもアンダー目といった具合だ。これらの作例を見ても分かるとおり、とくにP050は引きのカットの方が情報が多い分、シアン色の違和感が少ない。P036ではしっとりした雰囲気が似合うようだ。

   
 
▼作例4 寄りのフィルター効果1
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真4-1:フィルターなし f4.0 1/10秒 +1補正
写真4-2:P050 フィルター使用 オーバー目 f4.0 1/5秒 +2 1/3補正
写真4-3:P036 フィルター使用 アンダー目 f4.0 1/25秒 +1/3補正
写真4-4:P026 フィルター使用 アンダー目 f4.0 1/50秒
モデル:島村みやこ( ABP )
   
   
■ SCENE2 ガーリーで可愛らしく
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● フィルターで雰囲気も演出

 

 今度は、少々ガーリーな、可愛らしい雰囲気を演出してみよう。作例5写真5-1のように、柄の多い壁に長椅子、彼女のスカートも花柄と、可愛らしさは整っている。あとはカラーで変化を付けることで、どれだけバリエーションが広がるかを観察したい。
 そこで、まずは可愛らしさの強調ということで、ソフトに表現できる「パステル1」(P086 / A086)を使って撮影してみた(写真5-2)。パステルは、光を拡散させて、コントラストを和らげる効果があり、心地よいソフト感が好印象だ。ソフト系フィルターは、オーバー目のほうが効きが顕著に出るので、少しだけオーバー目で撮影してみると、写真5-3のように、ハイライト部の光の広がり具合が大きい分、こちらの方がソフト感が大きい。ただあまりオーバーにし過ぎると、せっかくのサイド光によるメリハリがなくなってしまう上、コントラストがさらに低くなってしまうので気をつけたい。

   
 
▼作例5 P086 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真5-1:フィルターなし f4.5 1/10秒
写真5-2:P086フィルター使用 “適”露出 f4.0 1/8秒
写真5-3:P086フィルター使用 オーバー目 f4.0 1/8秒 +1/3補正
モデル:田中茉里愛( ABP )
   
 
 次にガーリーさを演出するために、ピンクを加えることにした。ハーフグラデーションフィルターの「フルーピンク」( P671 / A671 )は、明るいピンクのハーフグラデーションフィルターで撮影したのが作例6写真6-1だ。 この P671は、色が思いのほか効きやすく、印象が強い色なのであまりに効かせすぎると当初の雰囲気を出しにくくなる。その点、角形のCokinフィルターシ ステムでは、構図内でフィルター効果の量や角度を自由に変えられるという利点があるので、ファインダー内でピンクがつく位置や量を調整し、ややオーバー目 の露出で撮影した。

 

 さらに全面カラーフィルターで全体の色調に変化をつけてみることにした。選択したのは「イエローグリーン」( P006 / A006 )だ。写真6-2を見ても分かるとおり、P006 を付けての色味はイエローが強調される結果になった。そこで露出をアンダー目にして、全体的に落ち着きを付けてみたのが写真6-3だ。この露出補正により、夕方の空気を彷彿とさせるような、可愛らしさとは逆のベクトルの雰囲気がでてきており、フィルターによってガラッと雰囲気が変わるおもしろさが分かるだろう。

 

 

 
▼作例6 P671・P006 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真6-1:P0671 フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/10秒 +2/3補正
写真6-2:P006 フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/8秒 +1/3補正
写真6-3:P006 フィルター使用 アンダー目 f4.5 1/20秒
モデル:田中茉里愛( ABP )
   
 

 さて、ここでも寄りのカットを比較しておく。作例7写真7-1がフィルターなしの状態、写真7-2が「パステル1」(P086 / A086)、写真7-3が「フルーピンク」( P671 / A671 )、写真7-4が「イエローグリーン」( P006 / A006 )による撮影だ。これらの作例を見ても分かるとおり、P086 は肌を優しく表現できて、この状況ではおススメだ。

 

 

 
▼作例7 寄りのフィルター効果2
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真7-1:フィルターなし f4.5 1/25秒
写真7-2:P086 フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/25秒 ー2/3補正
写真7-3:P671 フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/25秒 ー2/3補正
写真7-4:P006 フィルター使用 アンダー目 f4.5 1/50秒 ー1 1/3補正
モデル:田中茉里愛( ABP )
   
   
■ SCENE3 半逆光でグレーのシンプルな背景
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● 構図内にアクセントをつける

 

 作例8は、半逆光から光が全体に回る状態。グレーのシンプルな背景で、モデルの目線や口元の変化だけでも、見る者に与える印象が違うシチュエーションだ(写真8-1)。背景がシンプルなので、ハーフグラデーションフィルターで、構図内にアクセントをつけるようにしたが、そもそものアンニュイを崩したくないので、「さりげなさ」を念頭にフィルターをチョイスしてみた。
 まず、ハーフグラデーションフィルターの「ブルーハーフ」( P122 )で、少しクールさを付けてみた(写真8-2)。モデルの顔の向きの空間にブルーを足すと、ブルーの印象が強くなってしまう。ここではあくまでも「ちょっと付け足す」程度ということで、モデルの背の方に、冷たい影を演出している。

 その影の冷たさをもう少し引き出そうと、アンダーで撮影してみたのが写真8-3だ。半逆光によるラインが際立ち、モデルの顔の前の背景のグレーと背後のブルーがマッチし、いい雰囲気に仕上がった。定常光の色温度とフィルターのカラーの構図内の混在がキレイにまとまった好例といえる。

   
 
▼作例8 P122 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真8-1:フィルターなし f4.5 1/100秒 +1/3補正
写真8-2:P122フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/80秒 +1/3補正
写真8-3:P122フィルター使用 オーバー目 f4.5 1/400秒 +1 2/3補正
モデル:島村みやこ( ABP )
   
 
 つぎに「グレー2ライト(ソフトND2)」( P121L )をつけて撮影した。(作例9)半逆光による背景の壁のトーンをフラットにするためだ。“適”な露出の写真9-1 ハイライトによるラインが浮かび上がり、とても印象的になった。しかし、もう少しその印象を強調するために、アンダー目に撮影してみる(写真9-2。 先の「ブルーハーフ」( P122 )のアンダーカット(写真8-3)と比べてほしいのだが、顔周辺の露出は同じなのに、モデルの背中の明るさが大きく異なるのが分かるだろう。好みの問題でもあるが、「グレー2ライト(ソフトND2)」( P121L )のアンダーカットの写真9-2のほうが、モデル全体が浮かび上がって見え、その上ナチュラルだ。
   
 
▼作例9 P121L 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真9-1:P121L フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/100秒
写真9-2:P121L フィルター使用 アンダー目 f4.5 1/200秒 ー1 1/3補正
モデル:島村みやこ( ABP )
   
 
 もう一つは、趣向を思い切って変えて、暖かみの感じられるようなカットにすべく、ソフト系フィルターの「サンライト」( P694 / A694 )を選択した(写真 10 - 1)。淡いオレンジ色で柔らかいソフト効果があるので、意図した暖かみを前面に出すことができた。また、ソフト効果はオーバー目の方が出やすいので、ちょっとだけオーバー気味にしたのが写真 10 - 2だが、アンダー目にした写真 10 - 3 のほうが、カットに黄昏感が出て好みだ。
   
 
▼作例 10 P694 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真 10-1 :PP694 フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/40秒 +1/3補正
写真 10-2 :PP694 フィルター使用 オーバー目 f4.5 1/40秒 +1補正
写真 10-3 :PP694 フィルター使用 アンダー目 f4.5 1/60秒
モデル:島村みやこ( ABP )
   
   こちらも、寄りの作例をふたつ紹介しよう。作例 11写真 11 - 1 がフィルターなしの状態だが、「ブルーハーフ」( P122 )を使って写真 11 - 2 のように、背景としての残された空間にブルーを加えている。また、露出をアンダーにした写真 11 - 3 では、その印象がさらに強調された。このほか、作例 12として、「グレー2ライト(ソフトND2)」( P121L )を使った写真 12 - 1 と、「サンライト」( P694 / A694 )を使った写真 12 - 2 の効果も見てほしい。
 このように、ある意味わがままに、効果をつけたいところに付けられる cokinフィルターなので、丁寧に効果のほどを比較しながら撮影を試みてほしい。
   
 
▼作例 11 寄りのフィルター効果3
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真 11-1 :フィルターなし f4.5 1/100秒 +1/3補正
写真 11-2 :P122 フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/50秒 +1 1/3補正
写真 11-3 :P122フィルター使用 アンダー目 f4.0 1/100秒 +1/3補正
モデル:島村みやこ( ABP )
   
 
▼作例 12 P121L・P694 使用例
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm ISO320 WB:マニュアル RAW
写真 12-1 :P121L フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/60秒 +1/3補正
写真 12-2 :P694 フィルター使用 “適”露出 f4.5 1/80秒
モデル:島村みやこ( ABP )
   
■ 次回予告
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 次回は、ハウススタジオ編の第2弾。窓のある状況での撮影においてのフィルターの展開をしていきます。お楽しみに!

   

■ 協力企業 ■
ケンコートキナー
STUDIO EASE

■ 制作・著作 ■
萩原 和幸
スタジオグラフィックス

 
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初出:2013/05/28 このページのトップへ
 
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