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Cokin レンズフィルター講座
第2回 Cokin レンズフィルターが広げる写真表現の幅 2013/04/11
 
▼TOPIX
ポートレートを中心として雑誌の表紙やコマーシャルフォトで活躍中の写真家、萩原先生がお送りする Cokin レンズフィルター講座の第2回目です。今回は、プロの人物写真家が角形フィルターを使って、いかにポートレートの表現を広げていくかを、いくつか作例を通して見ていく実践編です。
■ モデル ■
荒川 結奈 ( 所属 ABP inc.
澤田 園子 ( 所属 ABP inc.
ヘアメイク : 渡嘉敷愛子
▼目次  

作品の“カラー”を演出する

ハーフグラデーションフィルターの活かし方
スタジオ撮影におけるフィルターワーク
次回予告
▼写真0 フィルター使用例
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Cokin P077 フィルター使用
▼著者 萩原和幸 ( はぎわら かずゆき )
萩原和幸
静岡県出身 東京工芸大学写真技術科卒業、静岡大学人文学部法学科卒業。故今井友一氏師事した後、K&S Photograph∞ を設立。フリーランスのフォトグラファーとして雑誌や広告撮影などで活動中。日本写真家協会会員。静岡デザイン専門学校非常勤講師。
 
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■ 作品の“カラー”を演出する
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● 本稿で使用するフィルターについて

 

 前回、フィルターというアイテムによって、表現の振り幅を大きく変えることができることを紹介させていただいた。そこで、今回から Cokin レンズフィルターを使った実践編を、実際の作品を例に撮影方法の解説や注意点などを述べていきたい。

 前回も紹介したとおり、本講座で利用する「 cokin・クリエイティブフィルターシステム 」は、フランス人写真家ジャン・コカン( Jean Coquin )により開発され、さまざまな効果のフィルターを素早く交換できるのが特徴だ。本講座では、82mm までのフィルター径をカバーする 「 Pシリーズ 」 を中心に解説を行なっていくが、現在はミラーレスカメラもターゲットにした小口径のフィルターシステム 「 Aシリーズ 」 もラインナップに追加されているので、本稿では撮影に利用した実際の製品名と型番 ( Pxxxなど ) に加えて、Aシリーズの型番を以下のような形で紹介する。

「 製品名 」( P シリーズ型番 / A シリーズ型番 )

 

● 作品の“カラー”を演出する

 

 写真1は、スッと引き込まれるような構図。建物の柱だけでなく床に伸びる影を含め、直線的な要素で構成されたカットで、シャープさは出せているが、構図中に色味がなく、インパクトに欠ける印象になってしまった。 そこで、全面のカラーフィルターを使うことで、作品の“カラー”を印象づけるようにする。ここで言う“カラー”とは、作品が醸し出す雰囲気のことで、そのために選択したのは、「 ウォーム81A 」( P026 / A026 ) だ。

   
 
▼写真1 フィルター未使用
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Canon EOS5D MarkIII EF24-105mm F4L IS USM f4.0 1/640秒 ISO200 WB:太陽光 RAW
モデル:荒川結奈( ABP )
▼写真2 P026 フィルター使用
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Canon EOS5D MarkIII EF24-105mm F4L IS USM f4.0 1/400秒 ISO200 WB:太陽光 RAW
モデル:荒川結奈( ABP )
   
 

 この写真2のように、カラー”付けによって、「 夕暮れ感 」 もしくは 「 レトロ感 」 のような、時間が過ぎていく寂しさを加えることを意識した。フィルターによるアンバー系の色味が、作品を見る者に 『 時間が過ぎていく寂しさ 』 という雰囲気を伝えながら、作品鑑賞に入ってもらえるようになったと思う。 このように、撮影者が抱く作品の“カラー”を前面に押し出す効果が、全面カラーフィルターには期待できるわけだ。

   
■ ハーフグラデーションフィルターの活かし方
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● 部分的にフィルター効果を加えてみよう

 

 ハーフグラデーションフィルターは、文字通りフィルターの半分にのみ効果が得られるフィルターだ。カラーグラデーションのように色味を加えるタイプと、NDグラデーションのように、光そのものをコントロールするタイプがある。

 写真3のように、都会的な雰囲気の作品に仕上げるよう、赤のモニュメントを活かしたカットを考えた。赤はポートレートでは扱いに気をつけなければならない“注意色”で、目に飛び込みやすく、キツい印象を与えてしまうことがある。そこで、構図の中に中和するような別の色を、ポイントで加えることにした。

 ここで、ハーフグラデーションフィルターの登場だ。cokin・クリエイティブフィルターシステムでは、ハーフグラデーションフィルターでも、丸枠フィルターのように構図半分に必ず効果が出てしまうわけではない。効果の範囲や角度にかなりの自由度があるところが、角形フィルターのおおきなメリットと言えるのだ。

 空の部分が白ヌケになるので、そこに 「 エメラルド2 」( P131 / A131 ) を用い、色を加えてみたのが写真4だ。このフィルターは赤のモニュメントの補色に近い色で、赤の強さを抑え、構図全体に落ち着きを出すことができた。また、都会的なクールさもプラスされたと思う。

 このようなカットのときは、ライブビュー機能のあるカメラなら、モニターでフィルターによる色の位置を確認しながら撮影を行なうことができて便利だろう。

   
 
▼写真3 フィルター未使用
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Canon EOS5D MarkIII F24-105mm F4L IS USM f4.0 1/800秒 ISO200 WB:太陽光 RAW
モデル:澤田園子( ABP )
▼写真4 P131 フィルター使用
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Canon EOS5D MarkIII EF24-105mmF4L IS USM 1/800 秒 f4.0 ISO200 WB:太陽光 RAW
モデル:澤田園子 ( ABP )エメラルド2 ( P131 )を使用
   
 
 写真6は、同じくハーフグラデーションフィルターで、ハーフNDの「ミディアムグレー2(ND4)」(P121M/A121M)も使って撮影したものだ。  このカットでは、白くなりがちな空の青さを強調する意図と、構図右上の三角のモニュメントの白さを抑える意図でハーフNDを使用している。

 空の青さが増し、先のフィルターなしのカットのように、空も地面も白…という印象から、遠景による奥行きがでていることが分かるだろう。また、構図右上の三角のモニュメントも白が抑えられ、構図に締まりが出るようになった。

 なお、ここでも液晶モニターでフィルターのポジションを確認しながら撮影を行なっている。

   
 
▼写真5 フィルター未使用
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Canon EOS5D MarkIII F24-105mm F4L IS USM f4.0 1/800秒 ISO200 WB:太陽光 RAW
モデル:澤田園子( ABP )
▼写真6 P121M フィルター使用
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Canon EOS5D Mark・ EF24-105mm F4L IS USM f4.0 1/800秒 ISO200 WB:太陽光 RAW
モデル:澤田園子( ABP )
   
 

 写真7では、画面左からセンター奥に伸びる黄色の柵をポイントにフレーミングを構成していく。屋内での、少しクールな印象を持たせながら、静かな印象のカットを目指したが、構図左の外光 ( 自然光 ) に色味があるので、冷たさや静けさという印象に水をさしている感じだ。

 そこで、写真8ではハーフグラデーションフィルターの 「 ブルー2ライト 」( P123L / A123L ) を使い、構図左側にのみ効果を加えてみた。構図左の外光 ( 自然光 ) は青っぽくなってモデルの衣装にもマッチし、統一感ある色味になった。このように、ハーフグラデーションフィルターを使うことで、意図していた冷たさや静けさという印象を出すことができた。

   
 
▼写真7 フィルター未使用
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm f2.8 1/60秒 ISO200 WB:マニュアル RAW
モデル:荒川結奈( ABP )
▼写真8 P123L フィルター使用
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm f2.8 1/60秒 ISO200 WB:マニュアル RAW
モデル:荒川結奈( ABP )
   
■ スタジオ撮影におけるフィルターワーク
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● 白バックを活かしたフィルターワーク

 

 「 cokin・クリエイティブフィルターシステム 」 には数多くのフィルターがラインアップされているが、今度はセンタースポットの効果が得られるフィルターを使いたくなり、スタジオへ移動した。

 写真10 は 「 CS ブルー&イエロー 」( P674 / A674 ) を使って撮影したもの。このような複数のカラーが混じりあうようなフィルターは、スッキリした背景のほうがが効果をしっかり見ることができる。そこで背景は白バックにし、効果そのものを楽しんでみた。

 このフィルターは、センターに透明の箇所があるだけで、全面にカラーが施されていることから、色の印象ばかりでメリハリがつきにくい感じだ。そこでストロボを使い、画面右斜め奥からアクセントライトをつけることにした。これにより、髪も光り、奥行きも出てペッタリした印象を回避できた。

   
 
▼写真9 フィルター未使用
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm f5.0 1/60秒 ISO200 WB:マニュアル RAW  ストロボ使用
モデル:澤田園子( ABP )
▼写真10 P674 フィルター使用
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm f5.0 1/60秒 ISO200 WB:マニュアル RAW  ストロボ使用
モデル:澤田園子( ABP )
   
 

 別のカラーバリエーションである 「 CS イエロー / ピンク 」( P673 / A673 ) を用いて撮影したのが写真12 だ。このフィルターもセンターが透明のスポットになっているが、もちろん構図の“真ん中”にのみ透明の箇所をポジショニングする必要はない。フレーミング内で許す限り透明スポットを移動させることができる。

 このカットも大胆に左上隅に透明のスポットを配置した。また、複数のカラーが混ざっているおかげで、空間を持て余すこともなかった。なお、ここでもメリハリを付けるために、モデルの背後からアクセントライトとしてのストロボを使用している。

   
 
▼写真11 フィルター未使用
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm f5.0 1/60秒 ISO200 WB:マニュアル RAW  ストロボ使用
モデル:荒川結奈( ABP )
▼写真12 P673 フィルター使用
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm f5.0 1/60秒 ISO200 WB:マニュアル RAW  ストロボ使用
モデル:荒川結奈( ABP )
   
 
 写真13 は、同じライティングでフィルターを 「 SC ブルー( 広角用 )」( P077 / A077 ) に換えて撮影したもの。もともと 「 cokin・クリエイティブフィルターシステム 」 はファッションポートレート系の撮影での利用がきっかけとなった仕組みだ。好みに色を付け加えていく発想を考えれば、一番シンプルな白バックでの撮影は、フィルター ( 特にセンタースポット系のフィルター ) の効果をしっかりと感じられる。このフィルターを何種類か手元に置いておけば、変化を付けにくい状況下でも、ちょうどいいアクセント的な存在になることが実感できるはずだ。
   
 
▼写真13 P077 フィルター使用
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Canon EOS7D Tokina AT-X165 16-50mm f5.0 1/60秒 ISO200 WB:マニュアル RAW  ストロボ使用
モデル:荒川結奈( ABP )
   
■ 次回予告
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 次回は、ハウススタジオでフィルターを用いた撮影をします。アクセントを効かせたフィルターワークで、ハウススタジオでの撮影を数倍おもしろくします! お楽しみに!

   

■ 協力企業 ■
ケンコートキナー


■ 制作・著作 ■
萩原 和幸
スタジオグラフィックス

 
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初出:2013/04/11 このページのトップへ
 
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