問題なく出国するのは 実は簡単じゃない
そこでまず、自分のバックに入っているものがその国から持ち出しできるのか、日本に持ち込めるものなのかは、最低限知っておく必要がある。たとえ、それが故意ではなく過失であったとしても、犯罪となってしまう場合もあるからだ。しかも、国によって罰則規定が大きく違うし、その国に再入国できなくなってしまうことだってある。そうなってしまっては大変だ。時間のある時に、ガイドブックの後ろの方にある現地情報や帰国の際の案内などによく目を通しておくようにしよう。
特に持ち出し品で気をつけなくてはいけないのが、ワシントン条約に関連するもの。生きている動植物だけでなく、象牙や毛皮、またサンゴやウミガメを素材にしたアクセサリーなども対象に入っているからだ。撮影用のちょっとした小物になりそうだということで買うのはもちろん構わないが、国によっては、それらを国外に持ち出すことができない場合がある。しかも、ワシントン条約の対象となる規制品ということになれば、日本に持ち帰ることは出来なくなる。
違法なコピーソフトやブランド品、本物そっくりの偽札なども、もちろん日本への持ち込みは NG。面白い現地のお土産という軽い気持ちで買ったとしても、それが没収されてしまっては意味がない。そんなモノを苦労して買っても、いいことがひとつもないということを、お土産を買う際にちょっと頭に入れておきたい。
ところで、最終日に現地通貨をどの程度残しておくのか、というのが帰国時の悩ましいところ。ホテルの支払いはクレジットカードで済ませるとしても、空港までの交通費は必要だし、出発時間によっては食事もしなくてはいけない。また、空港利用税を空港で支払わなければいけない場合もある( たいていの場合、航空券の料金に含まれている )。私自身、いい解決策が見出せないでいるのだが、少なくとも日本で再両替をすることだけは絶対に避けたい。空港の免税店では各国の通貨を組み合わせて使うことができるので、空港までの交通費が足りなくならないようにだけ注意して、食事はクレジットカードの使える店やホテルのレストランを利用するとか、自分へのお土産は空港で買うようにすれば、残すお金はかなり少なくできる。残った小銭はユニセフに寄付してしまえばいい。
課税対象となるものを日本に持ち帰る場合、帰国の際に税関で購入した時の領収書やクレジットカードの控えなど、金額の分かるものの提示を求められるので、すぐに取り出せるように用意しておこう。また日本から持って行った製品が、海外で購入してきたものと区別できずに課税されるのを避けるために、海外製品のカメラや三脚を持って行く場合には「 外国製品の持ち出し届 」を出国時に書いて、出発の際に税関で確認してもらっておく必要がある。ライカやハッセル、ジッツォなどを愛用してるユーザーは、出国の際に忘れずにやっておくのが安心だ。
また、ドイツやフランスなどいくつかの国では、旅行者が購入したものに支払った付加価値税などの一部を免税する制度がある( カナダは 2007 年4月に廃止 )。フランスの場合、1店舗で 175 ユーロ以上( 店により 305 ユーロ以上 )の商品を購入する際にパスポートを提示し、Deetaxe s'il vous pla^it( デタックス・スィル・ヴ・プレ )という免税の手続きをしてもらうと、帰国後に免税分の小切手が送られて来る( クレジットカードで購入した場合は銀行口座に振り込まれる )。これには、販売店で明細書とその写し、小切手を送るための封筒などを受け取り、出国時にこれらの書類と免税対象の商品、パスポート、航空券を提示して承認を受ける必要がある。免税対象の商品をスーツケースに入れて預けてしまうと、承認を受けることが出来なくなってしまう。そのため、機内持ち込みの手荷物にしておくか、チェックインの前に手続きを済ませる必要がある。
しばらくして送られてくる免税分の小切手は、外国為替を取り扱っている日本の銀行で換金できるが、日本の銀行の手数料は高額なので、せっかく手続きをしたのにほとんど手元に残らないという場合もある。実際に手続きをするかどうかは、手間と金額を考えてやるのがいいだろう。
ちなみに新品のカメラやレンズは、私の個人的な経験から言えば、日本で買うのがどこの国で買うよりも一番安い。物価の安い国なら、カメラのような高額商品も日本より安く買えるのではないかと思いがちだが、実は意外と安くはない。なぜなら、海外ではカメラの価格が日本のように大きく変動しない。また新製品の情報が出たからといって、それがすぐに市場価格に反映されるようなことも少ない。こうした理由もあって、海外のカメラの価格は日本と比べると高い傾向にあるようだ。円安の今は、「 自国で買うよりも日本で買った方が、カメラが安く買える 」ということで、日本を訪れる多くの外国人旅行客が、カメラ量販店に足を運んでいる。
とは言え、海外仕様のものや日本では買えなかった限定品など、日本では手に入れにくい製品を見つけてしまうこともある。どうしても手に入れたいという場合には、買ってしまうに限る。そうした商品には、二度と出会うことがないかもしれないからだ。こうした出会いもまた、海外旅行のひとつの楽しみ方だし、いい想い出にもなるのだ。
ちなみに、グレードの高いホテルにはバスルームに体重計が備え付けられている。預け入れ荷物の重さが心配な場合は、パッキングが終わったら重さを測ってみるといいだろう。空港でスーツケースを開けて、壊れ物のリスクを増やすことはない。開けなくて済むようにパッキングしてしまおう。
壊れやすい物を入れたスーツケースを預ける場合には、カウンターで壊れ物が入っていることを伝えると、それが分かるようにタグを付けてもらえる。ただし、貴重品や壊れ物はスーツケースに入れないのが原則。破損した場合も航空会社が全面的に悪いということにはならないことを覚えておこう。しかもスーツケースの破損などの場合、航空会社ではなく空港に責任が発生するある場合もある。いずれにしろ旅行保険の期間内なので、そうなった場合、まずは保険会社に保険が適用になるかどうかを問い合わせる必要がある。
ホテルを出る際には、セーフティボックスの中身を取り出すのを忘れないようにしよう! また、レンズキャップや記録メディアなどの小物をデスクの上、ベッドサイドのテーブル、洗面所などに置いたままでチェックアウトしてしまわないように、部屋の中を見渡すのを忘れずに。海外で忘れ物をすると、取りに戻ることが難しいし、送ってもらうにしても送料も時間も結構かかる。空港までの移動には、充分な時間の余裕を持ってチェックアウトするようにしよう。
画像データの保存は、記録メディアを順番にコピーしていけばいいだけだが、通常はカメラが同じならフォルダ名が同じになってしまう。そこで上書きされてしまうのを防ぐために、コピーが終わったらフォルダ名を日付けなどに書き換えておく。そうすれば、後でデータを探す時にも便利だ。私は、2013 年のフォルダの中に、7月香港というように何月+地名というフォルダを作り、その中に日付けごとのフォルダを置いて管理している。フォルダに入っている画像が多すぎると、表示にも検索にも時間がかかるため、あまりたくさんの画像をひとつのフォルダにまとめてしまわないのが整理のコツ。
データの保存は時間がかかるので、その間にカメラのメンテナンスに取りかかろう。基本的にメンテナンスは、撮影が終わったら毎日やるものだが、帰ってきたら少し丁寧に。フィルターの汚れ具合やぶつけて潰れたり削れたりしたところがないかなどを調べ、ボタンやレバーに不具合がないかをじっくりチェックする。レンズのピントリングやズームリングなどの可動部分がスムーズに動くかどうかも忘れずに確認しよう。また、埃や湿気の多い場所で撮影した場合には、カメラやレンズ内部も汚れていることがある。頻繁にレンズ交換した場合には、念のためサービスセンターできちんとメンテナンスしてもらうといいだろう。
さて、データの保存が終わったところで、いよいよ画像のセレクト。旅の気分が抜けないうちに、気に入った画像を選び出してプリント用にセレクトしておこう。旅行のフォルダにセレクト用のフォルダを作っても構わないし、デスクトップにプリント用のフォルダを作ってもいい。ルールさえ決めておけば、やりやすい方法で構わない。必要なのは撮影を振り返って、作品を選ぶ作業をすること。作品を選ぶことは、撮影上達の早道であると同時に、自分自身を見詰め直す作業でもある。
そして、気に入った画像は必ず大きくプリントしてみる。モニターの画面で見るのとプリントは全然別モノ。そして画像は、プリントして初めて作品になる。そのための撮影旅行だったということを忘れずに!
次回、最終回は番外編。これまでの流れでお伝えできなかった、撮影旅行に便利なちょっとしたアイデアや情報を紹介していきます。