このエリアには大小あわせて 60 を超える店舗、ギャラリー、アトリエ、工房などがあるそうだが、入れ替わりが激しく、また休日にしか営業しないような店もあって、実際にはどのくらいが稼働しているのかは分からないらしい。ちなみに、エプソンの運営する epSITE や日本の女子美術大学の Joshibi Art Gallery など、日本の企業や学校が運営するギャラリーも存在する。
場所は上海駅の近くだが、運河のような川を挟んだ対岸にある。最寄りの地下鉄駅( 中潭路 )からは徒歩で 20 分ほど。タクシーで訪れるのが便利だが、帰りのタクシーがなかなかつかまらないような、交通の便は決していいとは言えないところだ。そんな土地柄、平日はかなり閑散としている。しかし、週末には恋人同士、家族連れ、観光客などで賑わいを見せ、驚くほどの来場者がある。3月中旬のおだやかな気候の良さもその一因らしい。たしかに真夏や真冬には、ちょっと散歩がてらに訪れてみようという場所ではない。上海というと PM2.5 が気になるところだが、心地よい春風が吹き、青空が見える。報道されている北京のような酷さは感じられない。マスクをしている人は皆無だった。
春の陽気に誘われて M50 創意園を訪れる人の多くは、欧米の観光客やアートに興味のある学生たち。中には、最新の一眼レフを手にした写真愛好家の姿も見受けられる。身なりや持ち物から、かなり生活レベルが高いと思われる人たちだ。上海駅の周辺で大きな荷物を抱えて歩いているような人たちとは明らかに違う。どこかゆとりを感じさせる雰囲気は、景気が悪くなってきているとは言え「 持っている人は持っている 」、そう感じさせるものがある。そんなわけで、この区画だけ上海の他のエリアとは違う雰囲気が漂っているように思える。日本では想像できないほどの貧富の差がある国なのだから、そんな一角が街の中にあっても不思議ではないのだが。
同じ建物の中にある幾つかのギャラリーを覗いてみると、それぞれ部屋の形も大きさも異なっていることに気がつく。いずれも建物の構造を上手く活かして作品を見せているのが特徴だ。では、どんな作品が展示されているのかというと、レベルもジャンルも実に様々。学生たちが制作したような手作り感溢れるものから海外の有名アーティストの迫力ある作品まで、まさに玉石混交の状態。そんなギャラリーの隣にギャラリー風の土産物店やブックカフェなどもあったりする。「 とにかくアートと名の付くものを集めました 」という印象だ。その混沌としたところが、まさに今の中国の文化事情を反映していると言えるのかもしれない。
写真展 FirstContact in Shanghai が開催されている office339(www.office339.com) は、工場らしさの残るレンガ作りの建物の2階にある。天窓から自然光が差し込み、壁面に所々剥き出しのレンガを残した、趣きのあるギャラリーだ。私が写真展会場にいたのは最初の週末だけだったが、来場者が途切れることがなかった。訪れるのは若者たちのグループが多く、アジア人以外の来場者も多く目にしたのが印象的だった。3月中に上海を訪れる機会がある人は、ぜひ足を伸ばしてみるといいだろう。