皆さん、お元気ですか。
以前よりこちらでご紹介している、私の著書『体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ』(日経BPソフトプレス刊
神崎洋治、西井美鷹著)が発売になりました。知っているようで解っていないデジタルカメラのしくみを学び直す、待望のしくみ解説書の改訂版です(2009年2月加筆)。ぜひ読んで下さい。
■利用してますか、デジタルプリント
さて、みなさんはデジタルカメラで撮影した画像をどのように活用しているでしょうか。なに? 「ハードディスクに保存したきり、撮ったことすら忘れている」ですと・・それではあまりにもったいない。ほかには、「WEBページに掲載して友人に見せている」、「テレビに映して家族でわいわい観ている」、「気に入った画像をWindowsの壁紙にしている」、「画像掲示板に投稿して仲間と和気あいあい」など、楽しみ方はいろいろありますよね。
「デジタルカメラで撮ったといえども、プリントしてこそ写真」という人も多いかもしれません。気に入った写真をカラープリンタで写真画質で印刷することも手軽にできる時代です。ただ、私的には、印刷はDPEショップや大型電気店で印刷するのがお勧めです。以前は市販のカラープリンタで印刷していましたが、インク代がベラボウに高くて、カラープリントをホイホイやっていたら、それはもうお金の垂れ流しです。更に、使いもしないのにインクは消耗していきます。綺麗な画像を得るためヘッドクリーニングなんてやると、これまたすごい勢いでインクが消耗します(僕が使っている機種のヘッドクリーニングはインクを吹きかけて洗浄します)。それでいてプリントの仕上がりがいいかというと、そうでもありません。小さな線が入ったり、階調表現に満足できないのです。
そこで、僕はデジカメ画像のプリントは店頭のデジタル・プリント・サービスを利用しています。(ここで言うデジタルプリントとは、デジカメで撮った画像をプリントして写真にしてくれるサービスのことで、デジカメプリントと呼ぶ場合もあります。)
■3つのデジタルプリント
近所のデジタル・プリントの場合はL判(127×89mm)で1枚30〜40円程度。僕がデジタルプリントを利用するときは、ポストカード判(145×95mm)を選択しています。米国に住んでいたとき、あちらではポストカードサイズが標準だったので、L判ではとても小さく感じてしまってダメなのです。アルバムを探すのに少し大変ですが、わずかなサイズの違いで写真の迫力や美しさがずいぶんと違います。
プリントする方法は富士写真フイルムのホームページを参考にすると解りやすいですが、大きく分けて「お店で注文」「店頭でセルフプリント」「インターネットで注文」の3種類があります。
「お店で注文」の場合は、メモリカードやCD-Rを預けて数時間〜数日で仕上がります。最大のウリは印画紙にプリントしてくれること。銀塩フィルム式カメラと同様にきれいで長持ちする写真ができあがります。旅行などで大量に撮ったときはこの方法がお勧めです。
「店頭でセルフプリント」はセルフ端末機で撮った画像を見ながら選択してその場でプリントする方法です。通常は「お店で注文」より少し割高で、仕上がりはやや劣ります。とはいってもカラープリンタよりはずっときれいです。特に暗い写真などは、カラープリンタで階調表現できずに真っ黒で潰れてしまう画像でも暗部がきちんと印刷されることもあり、そんな時は少し得した気分になります。
「店頭でセルフプリント」には厳密には2種類あって、ひとつはその場でセルフ端末がプリントする方法と、セルフ端末ではプリントの指定だけして90分後くらいに店の受付でできあがったプリントを受け取る方法です。後者の方が仕上がりも色持ちも良いようです。印画紙にプリントしてくれるならば、後者の方がお勧めです。セルフ端末は最近、とても人気があり、土曜日曜の夕方に行くと、携帯電話の画像をふたりでイチャイチャ選びながら、楽しそうにプリントしているカップルが列を作っていたりします。いくら待たされても、どんなにカップルの女性が綺麗でうらめしくても、後ろから呪いの呪文とか唱えたりしてはいけません(意味不明)。すぐにプリントしたい、気軽に少量をプリントしたいというときに利用するのが良いでしょう。
最後は「インターネットで注文」です。WWWブラウザでアクセスして、プリントして欲しい画像を転送(アップロード)します。プリントされた写真は宅配便などで自宅や会社など指定した住所に届くという仕組みです。いくらブロードバンドが普及し、ネットをいくら使っても苦にならないといっても、大容量の画像を大量に送ることはお勧めできません。そのため、どちらかと言えば、同じ画像を大量枚数プリントしたいときに有効なサービスとして、僕は利用しています。すなわち、年賀状、暑中見舞い、ご案内葉書などのプリントに向いています。
デジタル・プリントでも、大判にプリントすることができますので、気に入った画像は大きな写真に焼いて飾りたいものです。
■トリミングで迫力アップ
写真A
写真B
EOS Kiss Digitalで撮影した画像(写真A)と、その画像をFZ1で撮った画像と同等サイズにトリミングした画像(写真B)。結果的に望遠と同じ効果になっている。
写真C
EOS Kiss Digitalの画像を縮小などを使って、適正な構図に調整した写真。迫力も出て、後ろのバスケットゴールも構図の外へ排除できた。
写真D
デジタルカメラの画像サイズとL判プリントなどの印刷サイズが少しだけ違うことも知っておこう。白っぽい部分がプリントできる部分。縦(上下)が少し切れてしまうのを念頭にトリミングしたい。
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トリミングは後から行う構図補正で、プリント写真のデキを大きく左右します。通常は、被写体に大きく近づいたり、写ってしまった余計なものを排除するためなどに使います。
僕は以前から、パナソニックの『DMC-FZ1』を使っています。200万画素ですが420mm相当の超望遠機能が付いたカメラです。200万画素ですから、L判やポストカードサイズ程度がいっぱいいっぱいです。構図も一発で決めたいところです。
一方、仕事では『EOS
Kiss Digital』を使っています。EOS Kiss DigitalはFZ1と比較するとはるかに大きな画像を記録します。仮に、EOS
Kiss Digitalで撮影した画像をFZ-1で撮影した画像と同じサイズにトリミングすると、左の写真Bのようになります。いわゆる望遠と同じような効果が結果として得られます。L判プリント程度を前提としたならば、これが一眼レフや高解像度デジタルカメラの余裕というところでしょう。少々ラフに撮っても、後でトリミングの調整がきくので、より近づいた写真やダイナミックな構図もいろいろと試してみることができます。
■レタッチには注意
レタッチをする人にとって、デジタル・プリントには大きな注意点があります。カラープリンタと比較して、どうにもならない唯一の欠点と言えるかもしれません。それは、画像を自動補正してプリントしてくれることです。
初心者の人が撮った、もともと補正が必要な画像であれば、それは嬉しい処理に違いありません。また、銀塩フィルム写真であれば、撮影時のミスを現像の際に補正してくれるのは大変ありがたいことです。しかし、デジタル画像の場合は、常にそうとは限りません。パソコンなどを使ってユーザーが好みの色合いや明るさに補正した画像をプリントに出すこともあります。しかし、そんな時でもデジタル・プリントでは通常、自動的に色補正がかけられてしまうので、ユーザが意図的に明るさや色の振りを変更しても、勝手に補正した画像となってプリントされてしまうことがしばしばあります。僕の場合、一応、提出するCD-Rに「カラー補正済み」と書いて出しますが、いつもそのままの状態でプリントされるとは限りません。
ユーザーが補正した画像は、プリント機で自動的に補正され(それを再び担当者が目視確認で補正する場合もあります)、仕上がったプリントはとてもガッカリするようなデキになってしまいます。
この特徴を踏まえて言うと、結論として、初心者は変にカラー補正をしたりせず、トリミング程度だけ行った画像をプリントに出した方が良い結果が得られる場合が多いということです。というのも、無理にパソコンでいじり倒して劣化させたり、階調を失くすと、自動的にカラー補正されたときに大きくバランスが崩れたひどい画像になります。デジタル・プリント機の自動カラー補正機能や専門家によるカラー調整の方が、むしろ良い仕上がりになる場合もある、ということを念頭に置いておくのもひとつの手段です。
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