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スタグラ・特集記事
メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!
第3回 シグマに聞く 「手ぶれ補正のしくみと特長」 2008/10/08
 


質問ボディ内とレンズ内
    手ぶれ補正はどっちがベター?
質問レンズ内手ぶれ補正は
    画質が劣るって本当?
手ぶれ補正はいつもONがいいの?
三脚を使うとき、手ぶれ補正はON? OFF?

ボディ内 vs レンズ内 手ぶれ補正。レンズメーカーとしてはどっちを支持しますか? また、手ぶれ補正機能はいつでもONで使っている方がベターなんですか?

聞き手 神崎洋治、西井美鷹
 

今回、インタビューに応えてくれたのは、株式会社シグマの桑山輝明氏。


  レンズメーカーにとっての"手ぶれ補正"機能 このページのトップへ  

画像A シグマ デジタルカメラ用レンズ
18-125mm F3.8-5.6 DC OS HSM

独自の OS (Optical Stabilizer) 機構を搭載。レンズ内の2つのセンサーが上下左右の揺れを検出し、約4段分の手ブレ軽減効果を発揮。モータースポーツ等の流し撮りでは、カメラの動きを自動的に判断し、効果的に手ブレを補正する。
画像B シグマに聞く
今回、インタビューに応えてくれた、株式会社シグマ 経営企画室 広報課 課長の桑山輝明氏。

解説

昭和36年に設立したシグマは、一眼レフカメラ用交換レンズのメーカーとして知られています。フルサイズデジタル一眼レフカメラ対応した「DG」、イメージサークルをAPS-Cサイズデジタル一眼レフの撮像素子の大きさに合わせて設計した「DC」レンズなど、数多くの製品群をラインアップしています。手ぶれ補正機構を持ったレンズ製品もあります。また、デジタルカメラ本体の開発と販売も手がけ、新しいセンサー・テクノロジーを採用したレンズ交換式デジタル一眼レフ『SD14』やコンパクトデジタルカメラ『DP1』は注目を集めています。

同社には、手ぶれ補正技術、独特のイメージセンサー「Foveon X3」とそれを採用したデジタルカメラ製品、についてお伺いしましたが、今回はまず読者の皆さんが気になる「手ぶれ補正」について「ココが知りたい!!」と迫ります。


Q:
手ぶれ補正は大別してボディ内手ぶれ補正(イメージセンサーシフト式)とレンズ内手ぶれ補正(レンズシフト式)があります。御社は知名度が高く、たくさんのユーザーを持つレンズメーカーですが、レンズメーカーとしてどちらの方式が優れていると思われますか。

手ぶれ補正はとても高度な技術で、今とても熱くて面白い分野ですから、これから数年でますます技術は進歩していくと思っています。

ボディ内とレンズ内のどちらの方式にもメリットとデメリットがありますから優劣をつけるのは難しいですね。当社はレンズメーカーなので、すべてのメーカーがボディ内に手ぶれ補正機構を組み込むようにならない限りは、手ぶれ補正機構はレンズ製品の内部に組み込みます。

Q:
御社はレンズメーカーとしてレンズ内補正のメリットを選択したと思っていいですか。

当社はレンズにとって良い技術はすべて製品に取り入れよう、と考えています。手ぶれ補正もレンズ技術のひとつとして蓄積していきたいし、製品に反映したいという思いはあります。


  レンズ内手ぶれ補正のしくみとメリット このページのトップへ  

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画像C

レンズ内手ぶれ補正
レンズシフト方式は、レンズ内に搭載した手ぶれ補正用レンズを移動させることにより光の屈折方向を修正して、像がブレないように補正するしくみです。※イラストは
わかりやすく表現したイメージ例です。『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)

画像D 500mm望遠レンズを付けたカメラを使い、手持ちで被写体を狙ったときのファインダーのイメージ
手ぶれの影響が大きくてフレーミングすら大変(画像は状況を表現するために作成したイメージです)。
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画像E ファインダーで見た画像と撮った画像のフレーミングが異なる
ボディ内手ぶれ補正の場合、手ぶれを検知してセンサーがシフトした場合、ファインダーで見た画像と撮った画像のフレーミングが異なる可能性がある。被写体の周囲に余裕を持たせたフレーミングがベター。(画像は解りやすく表現したイメージです)
画像F どちらの手ぶれ補正にもメリットがある
「レンズ内」はファインダーで見る時の手ぶれも止められるし、ファインダーで見たままに撮れる。「ボディ内」はどのレンズでも機能が使えてレンズが小型化できる。

解説
ボヤけた写真を撮影してしまう大きな理由に手ぶれがあります。特に、被写界深度が浅い望遠レンズでは、手の微妙な震えでさえ写真のボヤケに影響します。これを抑えるのが手ぶれ補正です。

光学式の手ぶれ補正には大きく分けて2種類があり、レンズ内部にこの機構を装備して光(像)のぶれを補正する「レンズシフト方式」(右図 画像C)と、受光するセンサーを動かしてぶれを補正する「センサーシフト方式」です。前者を「レンズ内」手ぶれ補正、後者を「ボディ内」手ぶれ補正と呼ぶこともあり、前回のオリンパスのインタビューでは同社が採用している「ボディ内」手ぶれ補正に触れました。今回は、シグマに「レンズ内」手ぶれ補正について聞いてみましょう。

Q:
御社ではレンズ内手ぶれ補正を選択しているということですが、ボディ内手ぶれ補正と比べてそれぞれのメリット、デメリットはなんでしょうか?

ボディ内手ぶれ補正の場合、すべてのレンズで手ぶれ補正が使える点がメリットですね。また、手ぶれ補正機構がない分、レンズは小型です。また、価格も手ぶれ補正機構搭載レンズと比べて安いと思います。

ただ、500mmや800mmなどの超望遠レンズを付けたときなどに顕著ですが、撮影した画像の手ぶれは止まっても、光学ファインダーに見える像は止まりません。これは手ぶれ補正機構付きの500mm望遠レンズを付けたカメラですが、このファインダーを覗いて遠くの被写体を見てください。

解説
桑山さんは手ぶれ補正の効果の実感をデモするために500mm望遠レンズを装着したデジタルカメラを用意してくれました。500mm望遠ともなると、手持ちで構えたのでは手ぶれというか「
揺れ」るために、遠くの被写体がファインダーでは画像Dのように見えてしまい、定まりません。

Q:
超望遠で光学ファインダーを覗くと手ぶれで被写体が定まらないですね。

実はこれはレンズ内補正がオフの状態です。一眼レフの光学ファインダーはセンサーで受けた画像ではなくレンズを通した像を見ますので、ボディ内手ぶれ補正のファインダーではこのように手ぶれした像になります。

Q:
三脚なしで超望遠で狙うと被写体を定めるだけでも難しいですね。こうなると被写体を真ん中に置くことすら難しい、まぐれ当たり的な願望でシャッターを押すというか…(笑)。

ボディ内手ぶれ補正ならファインダーがぶれていても撮った画像は止まります。それは良いところですが、超望遠になるとフレーミングすらなかなか決めにくく、シャッターを押すチャンスが減ってしまうかもしれません。

また、ボディ内の場合、手ぶれした分だけセンサーを動かして補正しますので、光学ファインダーで見たフレームと、撮ったフレームが異なる可能性があります。そのため周囲に少し余裕を持たせたフレーミングが必要です。被写体をフレームのギリギリに配置すると、センサーがシフトした分で切れてしまうかもしれません。

Q:
あ、なるほど。画像Eの白枠のようにフレーミングしてシャッターを押しても、手ぶれ補正がセンサーをシフトすることによって画像Eの赤枠のように写る可能性があるんですね。画像Eはちょっとオーバーな表現かもしれませんが。

では次に、レンズ内手ぶれ補正機能をオンしますね。ファインダーで見ている像が変わると思います。

Q:
お、手ぶれがかなり収まりました。この程度なら被写体が狙えます。

レンズ内手ぶれ補正のメリットは、撮るままの像を光学ファインダーで見ることができることです。手ぶれ補正をオンすれば補正後の像を見ることができますし、フレーミングや構図もより正確になります。

とはいえ、ボディ内手ぶれ補正にもメリットがあるので否定は決してしません。実際に手ぶれ補正のないレンズ製品の方が細くコンパクトですし。

Q:
なるほど、違いがよく解りました。

 

  手ぶれ補正オンでは画質は低下する? このページのトップへ  

画像G 500mm望遠レンズを付けたカメラ
望遠レンズでファインダー越しに被写体を狙うには手ぶれ補正付きがベター。
画像H デモで使った150-500mmズームの望遠レンズ
シグマ『APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM』。独自の手ブレ補正OS(Optical Stabilizer)機構付き。風景やスナップ撮影に最適な手ブレ補正モード1、モータースポーツ等の流し撮りに最適な手ブレ補正モード2の2つの補正モードを搭載。
画像I

手ぶれ補正は常時ONが良い?
「三脚を使うときは手ぶれ補正はオフに、高速シャッターが使えるときもオフの方が良い場合があります」と桑山氏。

Q:
レンズ内手ぶれ補正のメリットは解りました。次に新たな疑問なんですが、手ぶれ補正用のレンズ機構を入れることによって、製品としてのレンズの画質性能は低下しないんですか?

例えば、旧式の手ぶれ補正なしレンズと、最近の手ぶれ補正機構付きレンズの性能を比較するのは難しいと思いますが、あえて構造やしくみ、理屈的な疑問として「レンズ内に手ぶれ補正機構を入れることでレンズ本来の画質に関わる性能は悪くならないのか」と思うのですが。

おっしゃるとおり、レンズの性能はマチマチですし、技術的な革新がありますので新旧のレンズ製品を比較することはできませんが、それは別の話として。
全く同じ性能のレンズで、手ぶれ補正機構を付けたものと付けないものを作ったと仮定した場合、手振れ補正をするためにレンズが偏芯することによる若干の性能低下があります。

ただ、レンズ性能が低下するということではなく、手ぶれを補正するために移動した結果として、画質にとっては最適なレンズ部分を使わない場合があるからです。

Q:
つまり手ぶれ補正がガンガン効いているときは、画質的には最良ではない可能性があるのですね。

そうです。しかし、レンズを偏芯させることによる画質低下に比べれば、手振れによる画質低下の方が数倍大きいため、光学系の一部を偏芯させても、その偏芯による画質への影響は少なくなっています。また手ぶれ補正機能付きのレンズ製品は、光学性能を従来レンズと比べ全体的に底上げしておりますので、お客様に安心して手振れ補正レンズをご使用いただけるよう開発しております。

Q:
例えばブツ撮りのときも、手ぶれ補正機能はオフにして撮った方が(理屈上は)良い画質になるわけですね。

はい、特に三脚に付けてカメラを固定して撮影する場合は、手ぶれ補正はオフにすることをお勧めします。また、1000分の1秒以上などの高速シャッターが使える場合もオフにした方が良いですね。ただ、これは、別の理由からですが…

Q:
三脚使用や高速シャッター時にはぶれないからですか?

いえ、三脚に固定しても厳密にはぶれますし、高速シャッターでも手ぶれは起こりますが、手ぶれ補正は万能ではなく、"手に持って撮影したときのぶれに対して"でプログラムされていますので、逆効果になることもあり得るからです。

Q:
サッカーや野球場、スタジアムやサーキットなどで望遠を使った撮影をするとします。光は十分だから高画質に撮りたい、でも手ぶれも心配というときはどうでしょうか?

被写体が動くなら流し撮りモードがベターです。流し撮りを手ぶれだと判断してしまうと逆方向に補正が作動してしまうので、かえって被写体がブレてしまうからです。手ぶれ補正の流し撮りモードがレンズに用意されていれば、それを使うと良いと思います。

Q:
次回は、技術的に変わった特徴を持っていることで注目されているイメージセンサー「FOVEON X3(R)」とその搭載機についてお伺いします。よろしくお願いいたします。

※ FOVEON X3 はFoveon Inc.の登録商標です。

 

 

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>> 次回の「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!」

  第04回 シグマに聞く 「フォビオンの三層CMOSセンサー

  • いま主流のイメージセンサーの欠点とは?
  • ダイレクトイメージセンサーってなに?
  • ローパスフィルターって悪役なの?
  • Foveon X3 がレンズの性能を活かせるのはなぜ?

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  第02回 オリンパスに聞く 「フォーサーズとマイクロフォーサーズ その2.」

  • イメージセンサーは大きいほど高画質?
  • 一眼レフと一眼システムの違いはなに?
  • ボディ内とレンズ内、
     どっちの手ぶれ補正が良いの?
  • オリンパスの手ぶれ補正の特長は?

 

■ご注意
本文および、メーカーご担当者のコメント、写真/画像等、許可なく転載することはご遠慮ください。
記事内容は記事初出当時のもので、記事で紹介した機能や仕様、しくみなどは変更になる場合があります。製品や機能など、最新情報はご自身でご確認ください。
本文および、メーカーご担当者のコメント内容などは、規格や製品の仕様や特長を保証するものではありません。

 
初出:2008/10/08
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