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新・女性の撮りかた講座
第2部 太陽光との上手な付き合い方
第21回 側光(サイド光)でコントラストを出そう 2005/04/20
 
■桜の森の満開の下
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●桜がキレイでした…

 

 東京や横浜では桜もすっかり散ってしまいましたが、皆さんはお花見を楽しみましたか? 私はしていません。でも近所にたくさん咲いていた桜を撮りにはいきました。近所にある某大学のグランドの脇が桜並木の遊歩道になっているのですが、快晴の日曜日という日柄も手伝って大勢のお花見客で賑わっていました。家族連れやカップルが楽しげにお花見しているそばを一眼レフを構えながら歩いていると、折りしも突風がごうっと吹きぬけ花びらを巻き上げていきました。坂口安吾の「桜の森の満開の下」の世界を思い出しながら、その華麗さに見惚れてぼうっとしていたのですが、風が止むと同時に後悔…。あああ、シャッターチャンスだったのに…。まったく、これだから魅力的な写真が撮れないんですよね。

 さて、どうでもいい前置きはこのくらいにして、本題に入りましょう。

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写真0 風景写真って得意じゃないんですよね…。 拡大写真
   
■側光はコントラストの強い写真になる
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●おさらいしておいてください

 

 前回は順光と斜光の使い方を紹介しましたが、今回は側光の使い方をご紹介しましょう。側光とはサイド光とも呼び、呼んで字のごとく被写体の真横から当たる光のことです。「順だの斜だのなんのこっちゃ」と思った方は、こちら(光の種類)を読んでおいてください。

●側光の特徴

 

 さて、被写体の真横から当たる側光の特徴は、被写体であるモデルの体や背景に強い影が出るために、写真全体のコントラストがかなりきつくなります。 写真1がその一例です。この写真は今年の1月中旬に、世田谷は用賀にあるハウススタジオ「Studio Vintage」で撮ったものです。時刻は14時過ぎ。側光で撮影したために、モデルの肌のコントラストが高くなり、服装も相まって真冬の撮影なのに夏の写真に見えませんか? もちろん、季節柄ですが、日差しの角度は低くなっているので、夏の夕方の写真といった雰囲気ですが。

  写真1を撮るときに考えたことは、構図全体に大きな影を取り入れて、光と影のコントラストを強調することでした。そのために、カメラの測光方式を「スポット測光」にして、モデルの胸元で露出を決め、「 -0.7EV 」 と、シャドウが黒くつぶれない程度に露出をマイナス補正しています。

 こうした強い光がモデルに直接当たり、大きな影が構図全体にある状況では、顔が明るく飛んでしまいがちです。いくらコントラストを強く出したいとはいっても、主題である顔を飛ばしてしまうわけにはいきませんので、露出をマイナス補正して回避しているわけです。

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写真1 まるで夏の夕方の日差しを浴びている写真のようですが、撮影はなんと1月中旬の屋外…。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル : 藍 海夏
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解説1 側光(サイド光)とは
 (図をClickで拡大)
   
■スポット測光と AE ロック
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●測光プログラム

 

 最近の一眼レフカメラの測光方式は、被写体がフレームのどの位置にあっても適正な露光が行なえるようにと、インテリジェントな測光プログラムが用意されています。しかし、こうした機能も決して完璧とはいえません。やはり、写真1のような撮影者の意図するイメージで撮影するためには、自分で露出を決定することが重要です。そのためにはまず、カメラにどんな測光方式が用意されているのかを知っておきましょう。以下は、オリンパスの E-1 に搭載されている測光方式の紹介です。( E-1 マニュアルより引用 )


OLYMPUS E-1 の測光方式
■デジタルESP測光 ESP
  画面の中央部と周辺部を個別に測光しそれぞれの輝度、輝度差などを考慮して露出を演算します。被写体が逆光下にあったり、強いスポット光を浴びているなど、中央と周辺に大きな輝度差があるときは、デジタルESP測光をおすすめします。

■中央重点平均測光
  画面の中央部に重点を置いて、画面全域を平均測光します。周辺部の輝度を露出に影響させたくないときに使います。

■スポット測光
  画面中央の狭い範囲を測光します。デジタルESP測光で補正しきれないような強い逆光シーンなどに適しています。
  ※ E-1 のマニュアルより引用

主題の明るさをスポット測光で測る

 

 スポット測光は上記した通り、ファインダー中央の極めて狭い範囲で測光します。ということは、主題と背景の明暗の差が大きな写真などで、周囲の明るさに影響されることなく主題の適正露出を決められるということです。

露出補正で調整する

 

 スポット測光を使ってピンポイントの露出を決めたら、後は周囲の明るさと撮りたいイメージを考慮して、露出補正(解説3)を行ないます。カメラが決めた適正露出というのは、あくまでも機械のやることですので、完璧であるわけがありません。周囲の明るさによっては、主題がハイキーになったり、アンダーになったりします。ハイキーになりがちなときは、露出補正でマイナス補正、アンダーになりがちなときは、プラス補正してやります。


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解説3 露出をマイナス補正する
E-1 での露出補正の方法を紹介しています。
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解説
2-1
スポット測光への変更方法
測光方式の変更方法と、AE ロックを使ったフレーミング修正の方法を紹介しています。
(写真をClickで拡大)

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解説
2-2
AE ロックの方法
(写真をClickで拡大)

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解説
2-3
AE ロックの方法
(写真をClickで拡大)

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解説
2-4
AE ロックの方法
(写真をClickで拡大)

●主題を中央におきたくないとき

 スポット測光したい主題を画面中央におきたくないときは、AE ロックを使います。カメラの測光方式をスポット測光に設定したら、まず主題をファインダー中央におき、そこで AEL ボタンを押しながらシャッターボタンを半押しにして、フレーミングしなおしてからシャッターを押し切ります。
 AEL ボタンを離すと、 AE ロックは解除されます。
   
■側(サイド)光での撮影例
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側光での注意点

 

 側光(サイド光)を使って撮影する場合は、主題であるモデルの顔や体に、どのように影が出るかに注意しましょう。どのように注意するのかは、撮る人の価値観にもよるので具体的には書きようがありませんが、モデルが魅力的に見えないような影は敬遠しましょう。また、瞳にキャッチライトが入るように工夫するのは、側光だけではありませんが、特に側光は目が影になりやすいので注意が必要です。

側光はキャッチライトが魅力的

 

 側光の場合は、光が真横から当たっているわけですので、瞳への光の入り方が、他のライティングとは大きく異なります。写真2の目に入った光をよく見てください。真横から入った光によって、虹彩が浮かび上がっていますよね。極端なハイライトになってしまいがちで、少し派手なキャッチライトとは異なり、控えめな魅力があると思いませんか?

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写真2 完全な側光(サイド光)の例です。影がはっきりと出て、コントラストの高い写真になります。モデルの斜め下には、キャッチライトを入れるために銀レフを転がしてあります。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル : 藍 海夏

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写真3 全体的に大胆なコントラストが欲しくて、建物の影を使って撮ってみました。一番暗くなっている脚でスポット測光して、-0.7EV マイナス補正しています。また、E-1 の設定でコントラストを強くしています。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル : 藍 海夏
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写真4 韓国、ミョンドンの商店街に出ていた帽子売りの屋台で、裏側に回って展示してある帽子の隙間から撮ってみました。レフ版を使っているように見えますが、これは展示の帽子からの反射光です。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル : 藍 海夏
●次回予告

 次回は、逆光と半逆光の使い方と、前回予告しておいた、青空をキレイに表現するために必要な機材とテクニックを紹介します。
 
初出:2005/04/20 このページのトップへ
 

     
 
 

     
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